2021年12月31日金曜日

正岡子規シリーズ おまけ回

冬服やウエストだけがふくよかに
笑うのも面倒なのよ日向ぼこ
息白し予測と違う現実へ
リスペクト無く怒り持ち北颪
みんな好きみかんと林檎干し柿も

YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』 
正岡子規シリーズ おまけ回

来年はよき句つくらんとぞ思ふ   正岡子規

うかうかと鴨見て居れは年くるる   正岡子規
(鴨と年くるる 季重なり 理想的俳人的年の暮れ)

年の暮財布の底を叩きけり   正岡子規
(年の暮れのおかしみがある。
 子規は類相類句を気にしなかった。
 分析はしても、自己否定はしないほうがよい。)

居酒屋に今年も暮れて面白や   正岡子規
(「面白や」がリフレインされるかも?)

最後の太陽、最初の太陽の提案がなされました。
去年今年を味わうって素敵…。格調が高い…。

来年も俳句を楽しみたいと思う大晦日(おおつごもり)なのでした。

2021年12月30日木曜日

令和相聞歌web投票

冬銀河死人(しびと)の歌を死に人が
元気という病気とともに冬を行く
つまらないことに拘り鎌鼬
冬夕焼一日がまた過ぎてゆく
我が儘と初志貫徹や冬の色

夏井いつき俳句チャンネル より
【令和相聞歌web投票】あなたの一票が10万円の行く末を左右する!

4500分の71に選ばれていたんだ!
https://www.reiwasoumonka.com

当選句
冬野菜恋したことも塩漬けに
https://www.reiwasoumonka.com/vote_smp.asp

落選句
舞う枯葉始まらなかった恋も恋
朱夏の恋引きずり生きて共に古稀

レベルの高さにびっくり。
よくぞ残してくださいました…。
嬉しい…。生きていて良かった…。

2021年12月29日水曜日

題「○○会」



















仕事納めの折り詰め❣美味しかったです。

冬日没(い)る痛みの記憶くっきりと
生き飽きた迎えはまだか冬日かな
冬畑アオサギの飲む牛蛙
冬の浜達磨朝日の隠れをり
雪晴れ落合集落輝かん

NHK短歌 題「○○会」
選者 佐伯裕子 ゲスト 濱田龍臣、小澤愛実 司会 小沢一敬

冒頭句
千年の源氏の恋を読む会に恋はさておく夜の酒盛り
佐伯裕子

◆今回のお気に入り入選句
我々は大人になってもたんぽぽをふーっ推進協議会です
神奈川県川崎市 岡奎那

勉強会それよりましな言い訳が今はまだ無い君と僕には
新潟県新潟市 中村聡

◆「短歌の基礎」
■ポイント①=具体的な名前を入れる。
例歌
年一度集ふ従兄弟会(いとこかい)しんがりの二十七人目われも還暦
松尾祥子

パープルのドレスに母の名前入りリップを付けて舞踏会気分
小澤愛実 添削
パープルのドレスに母のよく光るリップを塗れば舞踏会のよう

オンラインゲーム飲み会馬鹿騒ぎビデオ通話で繋がりながら
濱田龍臣 添削
オンラインゲーム飲み会空騒ぎビデオ通話で繋がりながら

毎クール始まるドラマを見る会の感想を聞いて一話で終える
小沢一敬 添削
毎クール始まるドラマを見る会の感想を聞き一話だけ見る

■ポイント②=数字を入れる。
例歌
六人が一人減りたる「六の会」修行仲間が今年も集う
大下一真

三脚の目の前に立ち一時間リズムに合わせ動画撮影
小澤愛実 添削
三脚の前に立ちつつ一時間リズムに合わせ動画撮影

大晦日家族四人で鍋つつくすき焼き会は毎年恒例
濱田龍臣 添削
大晦日家族四人で鍋つつくすき焼き会は今年もつづく

ゾロ目会10月10日の誕生日祝ってくれる3月3日
小澤一敬 添削
ゾロ目会10月10日の誕生を3月3日に祝われている

ティーバッグ2つで作る贅沢な紅茶とともに弾む女子会
小澤愛実 添削
ティーバッグ2つで作る贅沢な紅茶の香り弾む女子会

門限の五時が近づく帰りの会先生がする無駄話のせい
濱田龍臣 添削
門限の午後五時せまる帰りの会先生が長い無駄話して

午後2時の日差しが残る12月駐車場では野良猫の会
小沢一敬

2021年12月28日火曜日

兼題「炭」

年流るジャストボーイと呼びませう
あるがまま歩む人生去ぬる年
愛される人間となれ冬麗
北風や祖谷で脈々蕎麦すべし
粛々と褒め道を行く冬の景

NHK俳句 兼題「炭」
選者 櫂未知子 部員 いとうまい子 進行 塚地武雅

宿題提出
(炭は材料を蒸し焼きにし燃料などに使用する。
 季語「炭」は俳句では料理用ではなく、
 暖をとるためのものを詠む。)

塚地武雅
冬の水山容確と映しけり
可惜夜(あたらよ)に炭に話も尽きにけり
(「可惜夜」=あたらよ。明けてしまうのが惜しい夜。素晴らしい夜。)
佇みて瞬きしたる兎かな
行く年や薄き日めくり見つめをり
(薄き日めくり⇨古暦)

いとうまい子
手も足も長き影なり冬茜
つややかに天を切り取る冬の水
湯豆腐や昨日の言葉重ねつつ

田中要次
備長炭鋼の如く響きけり
巣穴より夜空見上げし兎かな
郷の夜青女が外にいた気配
(「青女」=せいじょ。雪や霜を降らせる女神の事で
 霜を表す季語ともなっている。)

今回のお気に入り入選句
炭継いで枕草子諳(そら)んじる 宮澤朝子
埋火(うずみび)や五分遅れの掛け時計 平岩ひろみ
炭ついで二人の黙(もだ)をかがやかす 阿部千保子

俳句、二歩目へ 句を引き立てる「名前」
「しばれる」と訳す倫敦(ロンドン)塔真裏   櫂未知子
公園の噴水凍(い)つる紐育(ニューヨーク)    塚地武雅
(噴水は夏の季語)
しぐるるや滑る羅馬(ローマ)の石畳   いとうまい子

俳句ドリル 12月の課題
季語「冬の海」と「夕星(ゆうづつ 金星のこと。)」を詠む。

夕星と月ともにあり冬の海   塚地武雅
波の間に夕星かかぐ冬の海   いとうまい子

田中要次さんの俳句は最初から魅力的だったので
最近のご躍進は嬉しいです。
益々楽しみにしています。

1月2日は「歳時記食堂~おいしい俳句召し上がれ~新年」
宇多喜代子先生、小林聡美さん、
夢枕獏さん、ビビる大木さんがご出演!楽しみ…。

2021年12月27日月曜日

Pavarottiとハイデッガーとロランの言葉

幅を持つ一瞬の継続の垂(た)る
冬日和時間の意識薄がりて
冬夕焼時間の幅を持ち歩き
個よりも社会に合わさん声冴ゆる
雨音や冷たし頬に手をあてて

Luciano Pavarotti 曰く
「音楽を聴くのに頭なんて必要ないのさ。」

ハイデッガー 曰く
「経験を積んだ人は、
 物事がこうであるという事を知っているが、
 なぜそうであるかということを知らない。」

ロマン・ロラン 曰く
「少しのきまじめさは恋愛においては結構だ。
 しかしあまり真面目すぎては困る。
 それは重荷であり、快楽でなくなる。」

2021年12月26日日曜日

12月の子規

クリスマス時を繋げん昨日今日
0.1秒の今を行く寒し
ポケットの中暖かいから遠廻り
冬銀河ゾーンを俯瞰できた日々
それぞれのゾーンの感じ方凍る

夏井いつき俳句チャンネル
【12月の子規】子規シリーズ最終回!?
1月から始まったシリーズがついに...

穴多きケットー疵(きず)多き火鉢かな   正岡子規
ケットーとは毛布の事
この時期はまだ季重なりは厳格ではなかった。
1897年明治30年の句
明治28年子規は大連から帰る船の中で吐血した。
子規は便所にも火鉢を抱えていくほどで
愛用のケットーには火の粉が飛ぶことなんぞ
日常茶飯事だったろう。

冬の日の筆の林に暮れて行く   正岡子規
碧梧桐の語りの一節。
「原稿や分類で普通人の何十倍か筆を使われる。
 十本ずつ買いだめの筆も時には二か月ぐらいで
 お終いになったかとも思われる。」
この時、子規が使っていた筆は
十本十銭か十五銭くらいの筆。

画室成る蕪を贈つて祝ひけり   正岡子規
「不折(ふせつ 画家)ニ寄ス」という前書きのある俳句
子規庵から200mほどのところに
新しい画室を不折が開いた12月26日の画室開きには
祝宴に湯婆(ゆたんぽ)かかへて参りけり   正岡子規

何はなくと巨燵(こたつ)一つを参らせん   正岡子規
夏目漱石がお見舞いに来てくれた時に送った俳句
「明治二十八年漱石来る」との前書きのある句。
漱石が松山を出発した理由は見合いだった。
見合いした3日後二人はあった。
この見合い相手がのちに漱石と夫婦になる鏡子さんだった。

次回は「付録」だとか…。楽しみ…。

2021年12月25日土曜日

夏井いつきのよみ旅!in・宮城・気仙沼 前編

庭枯れる近寄りたくはないけれど
雪催(ゆきもよい)片寄せ合いてもんじゃ焼き
独りぼち釜揚げうどんふうふうと
手足荒る心も荒れてEverything.
湯豆腐や心温めほっこりと

夏井いつきのよみ旅in宮城・気仙沼 前編
宮城で俳句旅 夏井いつき&ROLAND

光射すがれきの湾(うみ)に帰る漁船(ふね)   気仙沼つばき会 斉藤和枝
避難所に届けし柚子湯抱きしめる  菊田三恵子
冬の海箱眼鏡から見る未来   藤田純一
冬めく日歌って踊る半袖で   佐藤健
冬の宵笑顔で食すはリピーター   村上力男
枯草が枯木かき分け生えている   三浦雅哉
幼くも伝え続ける雪の日を   熊谷操
はっと汁見てみよ未来の気仙沼   畠山菜都

君たちのことばは冬青空である   夏井いつき

季重なり=下手と断定するのは如何なものか?
違和感を感じました。

2021年12月24日金曜日

吹雪倒れ 

望ましい欲そうでない欲墓囲ふ
冬晴や嫌こと言わず無視すべし
冬麗許し許され生かされて
無視以外問題回避できぬ冬
言うべきか言わざるべきか寒威かな

一分季語ウンチク 「吹雪倒れ」

これは非常に恐ろしい季語です。
現在は昔よりはそういうケースは
少なくなったかもしれませんが
北国の強烈な吹雪に倒れ人が亡くなること
これも季語として生まれていった。
それだけ人の生活の中ではこういうことが
あったと、そういう季語です。
かなり古く、まぁ由緒ある季語とも
いうことができるかもしれません。
江戸時代の雪国の民族を描いた
「北越雪譜(せっぷ)」という書物の中に
この「吹雪倒れ」の様子が描写されています。
これが非常に迫力がありまして
「夫は蓑笠を吹き取られ妻は帽子を吹きちぎられ
髪も吹きみだされ咄嗟という間に眼、口、襟、袖はさら也
裾へも雪をふき入れ全身凍え呼吸迫り助くる人なく
手足凍て枯木のごとく暴風雨に吹き僵(たお)され
夫婦頭を並べて雪中倒れ死けり」
と描かれているとのことです。
自然は本当に恐ろしいものですね。

2021年12月23日木曜日

文田聖二と種田山頭火の言葉

ちっぽけな吾と向き合わん冬銀河
言われた者の気持ち解るか冬の月
冬の夜あなたの声が琴線に
冬の朝時間が通り過ぎていく
見たかった流星群の冬の舞

文田聖二 曰く
「本物に触れることで 自分のDNAを呼び起こす時間が必要。
 美意識もその一つ。」

文田聖二 曰く
「誰かに指示されたり注意をされてからやることは、面倒くさい。
 誰かのために積極的に自分で判断してやることは
 人に喜ばれ、やりがいになっていく。
 『やりがい』と『面倒くさい』は紙一重。」

種田山頭火 曰く
「理解のない人間に会うよりも、山を見、樹を眺め、
 鳥を聞き、空を仰ぐ方がどのくらいうれしいかは、
 知る人は知っている。」

2021年12月22日水曜日

カール・ヒルティとジェームズ・アレンの言葉

年の空流星群を待ちわびて
十二月パヴァロッティ―を聞きながら
神楽月同じ時間はもう持てず
クリスマスローズ飾りて灯をともし
花屋ではポインセチアがそこここに

カール・ヒルティ 曰く
「挫折したことのない人は役に立たない。」

ジェームズ・アレン 曰く
「あなたは、自分が密かにもっとも愛しているものへと
 常に引き寄せられることになる
 あなたは、あなたの抑制された願望と同じほどに小さなものに、
 また、あなたの自由な熱望と同じほどに大きなものになる。」

2021年12月21日火曜日

題「眠り」

不機嫌なパソコン宥(なだ)め年賀状
冬の鳥雲なき空を悠々と
選択の自由奪わる声冴る
価値観を押し付けられし霜夜かな
歩むべき道を失う冬銀河

NHK短歌
題「眠り」
選者 大森静佳 ゲスト 長井短 司会 有森也実

冒頭句
やわらかなきみの寝顔を眠りたい寝顔のなかを岸まで泳ぐ 
大森静佳

夫婦でリレーした短歌
(亀島)チョコレート
(長井)それよりおかき
(亀島)食べたいな
(長井)きつね色した
(亀島)君の鼻声   長井短&亀島一徳

長井短さんのお好きな一句
湖だいつか巨大なてのひらがきみ押し倒す力のことも 
大森静佳

今回のお気に入り
鳩尾(みぞおち)へ伏せた文庫もぷかぷかときみの寝息の波にたゆたう
久藤さえ
明け方の夢を日記に書きとどめ現(うつつ)のことは何も記さず
梶田有紀子
今日は風明日は光に夫はなる永遠の眠りは退屈すぎて
桑原鶴代
母はもう兄と出会ったにちがいない私の夢から二人は消えた
小山睦美
冬眠の熊の寝姿おもひつつ手先が熊となるころねむる
加藤マスミ

今読みたい愛の歌
夜ごと君は先に眠れり眠剤の真っ白を飲みてあとを追ふなり 
大口玲子(おおぐちりょうこ)

大森静佳のポイントで改作!
テーマ 訪れる感覚を楽しもう
(元歌)片栗粉誰入れたのか全身にとろりと眠気の回る午後あり
改作①疑問形を生かそう
全身にとろりと眠気の回る午後われに片栗粉を入れたのはだれ
改作②あえて「誰か」を登場させよう
眠い昼からだとろりと溶けてゆく○○に片栗粉をかけられて

眠い昼からだとろりと溶けてゆくバッハに片栗粉をかけられて
有森也実
眠い昼からだとろりと溶けてゆく留守に片栗粉をかけられて
長井短
眠い昼からだとろりと溶けてゆく天使に片栗粉をかけられて
大森静佳(見えない存在をあえて描く)

選者からのメッセージ
訪れる感覚を楽しむためには違う視点で自分を見てみよう

2021年12月20日月曜日

兼題「枯れ野」

息とめて面相筆の描く冬
神帰月(かみきづき)鉄線描で描く心
匙加減してもされても雪見月
建設的選択をなす仲冬
札束で頬を張る人冬ざるる

NHK俳句 
俳句と想像力 兼題「枯れ野」
選者 岸本尚毅 ゲスト 立川こはる 司会 中田喜子

冒頭句
枯野人バナナを出して子をあやす   岸本尚毅

むさゝびの小鳥はみ居る枯野哉   与謝蕪村
(残酷な俳句。
 むさゝびは冬、小鳥は秋、枯野は冬の季語)

今回のお気に入り
青い海夜に現れ枯野かな   入澤大陸(小学校4年生)
海黒くうねる岬の枯野かな   堀内照美
スナフキン真似て枯野をハーモニカ   上田一樹
「花」の名の山羊は枯野の柵に棲み   内野悠

岸本教官の添削道場
枯野には大観覧車聳え立ち
添削(中田喜子添削 枯野なる)
枯野あり大観覧車聳え立ち

枯野ゆく白洲次郎のハンチング   中田喜子
添削(人物を大きく、目立たせるための添削。)
ハンチング枯野を白洲次郎かな

駆けくらの子らよどこ行く枯野かな   立川こはる
添削(解りやすく現代仮名遣いにした方が良い。)
駆けっこの子らよどこ行く大枯野(おおかれの)

季重なりを避ける必要はない。
主たる季語が確りしていれば問題はない。
伸び伸び作り仕上がりを見て季語が食い合っていれば捨てれば良い。
兼題はたしなみとして詠まなくてはならない。

2021年12月19日日曜日

種田山頭火の代表作

冬ざるる人それぞれの感じ方
渇筆や和紙を削りて金太郎(無季句)
掠筆(かっぴつ)で込めた思いの霜夜かな
越前麻紙の筆のにじみや冬ぬくし
冬日和(藤田)嗣治の白の影響か 

種田山頭火の代表作

分け入っても分け入っても青い山
まっすぐな道でさみしい
どうしやうもないわたしが歩いてゐる
濁れる水の流れつつ澄む
窓あけて窓いっぱいの春
ごろりと草にふんどしかわいた
いつもつながれてほえるほかない犬です
あるがまま雑草として芽をふく
いつも一人で赤とんぼ
いつでも死ねる草が咲いたり実つたり
なければないでさくら咲きさくら散る
生死の中の雪ふりしきる

焼き捨てて日記の灰のこれだけか

辞世の句
もりもり盛りあがる雲へあゆむ

晩年の日記より
無駄に無駄を重ねたやうな一生だつた、
それに酒をたえず注いで、
そこから句が生まれたやうな一生だつた

種田山頭火の名言
理解のない人間に会うよりも、山を見、樹を眺め、
鳥を聞き、空を仰ぐ方がどのくらいうれしいかは、
知る人は知っている

https://ii-hon.com/tanedasantouka/ より

日に日に種田山頭火に惹かれていきます。
You-Tubeさんが紹介してくださったお陰です。

2021年12月18日土曜日

ヒートテックで一句

冬ぬくし獅子ベジタリアンに非ず
熱燗や喜怒哀楽を肴にして
寒潮に見る黒の中の濃淡
鎌鼬(かまいたち)群れて自由を失いて
冬の朝雪見障子の竹の影

プレバト纏め 2021年12月16日
ヒーテックで一句

永世名人富美男のお手本
梅沢富美男
薄明り杜氏のすする粕の汁
添削(粕の汁は音数調整。季語が弱い。)
杜氏らのすする粕汁明けの星

永世名人への道
村上健志
冴ゆる夜やショウウインドウに黄の鞄

特待生昇格試験
北山宏光
衣装替え耳元爆ぜる静電気
添削(衣装替えは名詞か?動詞か?静電気は最近季語となりつつある。)
衣装替え耳元爆ぜる静電気

1位 トシ
着膨れてスープカレーの香りたつ
(着膨れないためのヒートテックではないのでしょうか?)

2位 ゆうちゃみ
落葉風渋谷を闊歩生脚で
添削
生脚の闊歩渋谷の落葉風

3位 徳光和夫
悴みがふと懐かしきティショット
添削
懐かしきものに悴むティショット

4位 原田龍二
着心地にあぁ身を捩(よじ)る冬麗(ふゆうらら)
添削
冬麗(とうれい)のごとし肌着の着心地は

次回のプレバトは2022年1月6日
2022年1月冬麗戦

初日冴ゆ着物の衿の紅椿   浅野ゆう子

寒明けや君の「お疲れさま。」の声   あんり

冬の朝チュロスを食べに映画館   嶋佐

カレーにトマト浮かぶ夏昼の鮮やかよ   村上

春寒し一人で座るカウンター   ミキ亜生

泥靴や頑張る君の夏近し   田辺

朧夜や四つ目のガム母まだか   福田麻貴

日盛りや母の二の腕は静謐   犬山紙子

子と昼寝顔に日よけのぐりとぐら   菊池桃子

ちびリュック中身はおむつ山笑う   本上まなみ

アイフォンに桜蘂降るハチ公前   石野真子

発表会シニヨン結ぶ春の朝   高橋克実

上京の春や深夜のユッケジャン   佐々木久美

リハ帰りのプラットホーム氷菓子   朝日奈央

扇風機持つ手甘噛む仔猫たち   中川翔子

やりくりも万策尽きて梅雨ごもり   加藤登紀子

濡れ鼠(ねずみ)せめてどこぞの喜雨であれ   伊集院光

住み込みの夜のケーキの苺かな   IKKO

十円のもやしで晩餐春を待つ   武尊

紅白帽脱いで焼き立て林檎パイ   小倉優子

鯖雲と無尽弁当販売所   星野真里

独立の夜やゴッホの星月夜   堀未央奈

殻破る閃閃秋の朝つれて   勝村政信

伊集院光さんと勝村政信さんは出場して欲しいなぁ~。
大好きな句です!こんな句が詠みたいです。

2021年12月17日金曜日

冬草

ガス足りず物価高騰社会鍋 
懸命に砂をついばむ冬の鳩
あっけなく実家売却柚子湯かな
冬の暮イーロン・マスク独り勝ち
フェミニズム感じず生きん冴ゆゴリラ

一分季語ウンチク 冬草
冬になると段々、草木も元気がなくなってきて
そこら辺に生えている雑草なんかも
段々しおれて枯れていくわけです。
しかし、この「冬草」という季語には
注意するポイントがあります。
これは枯れ草の意味ではないのです。
「冬草」という季語の本意は
冬になってもまだ青味を残している状態の草の
総称、それら全体を「冬草」と言う訳です。
もし自分が俳句を作る時に
すっかりと枯れてしまったしおしお
もう茶色くなって全体の青さの
残っていない光景を言うのであれば「枯草」
冬になってきて侘びしい光景の中で
まだでも青さを残した野原だったり
畦だったり、そういった草の光景を
言いたいのであれば「冬草」を
使う必要があるということです。

2021年12月16日木曜日

文田聖二氏の言葉

再エネ導入しっぺ返しの冬
(2021年)天然ガス不足深刻霜月
子の月排出権価格高騰
嫌われる石炭火力神帰月(かみきづき)
ガス価格高騰必至冬至かな

文田聖二 曰く
「芸術家は十人十色で、それぞれが違った生き方をしています。
 それだけ生き方にはたくさんの選択肢があるということです。」

文田聖二 曰く
「人の所為にしない。
 自分にある問題点から発見して、
 解決していく方が前進できる。
 相手に依存するほど、
 その状況に不満が湧き出てイライラする。
 その状況を楽しめばいい。
 現実を受け入れながら、自分の思いはあきらめないで
 できることで努力していけばいい。
 自分の好きなことをやればいい。」

2021年12月15日水曜日

題「声」

(種田山頭火)行乞(ぎょうこつ)と卑下、エポケーと写生の冬
冬夕焼どんどんと懐かしき道
大歩危や雪降る中のラフティング
冬日和八十八の謎抱え
(2021年)十二月エネルギー価格高騰

NHK短歌 題「声」
選者 佐佐木頼綱 ゲスト 植草歩 
司会 星野真里 レギュラー カン・ハンナ

冒頭短歌
我が知らぬ我が心身が新生児室のベッドに大声で鳴く
佐佐木頼綱

今回のお気に入り
決勝の余韻も消えたスタンドで夕風が聞く声の跡形
神奈川県川崎市 山口正剛
付き合いで「お幸せに」と言う時はわたしの声が鈍色になる
静岡県松崎町 鈴木真智子
いまひとつ満足できぬこの夏が虫の声もて押しやられゆく
愛知県半田市 佐藤幸
ここまでと栞はさみて書を置けばかなかな蝉の声ちかき窓
山口県防府市 木原樹庵
なにを感じてるのかわからずに声をさらわれ立ちつくす浜
福岡県筑紫野市 桂仁徳

選者のお話 スポーツと日常
宙に舞うシュートの行方歓声が俺の心を引き戻したり
根本慎志

頼綱さんの!短歌かかって来なさい!
題材は植草歩さん!

中段突きへ踏み込む半歩今日までの己の正中線を突くため 
佐佐木頼綱
祖母の声私の声と重ねあい歩んでゆこう空手の道を 
💮カン・ハンナ&星野真理

2021年12月14日火曜日

兼題「マスク」

うみ柿へ顔をうずめる野鳥かな
水素バス過疎から過疎へ冬デビュー
連綿かアラビア文字か冬の蝶
解読困難変体仮名よ侘助よ
冴る夜や体丸めて縮こまり

NHK俳句 兼題「マスク」
選者 阪西敦子 ゲスト ざわちん 司会 岸本葉子

冒頭の俳句
俯(うつむ)きて揺れてゐてみなマスクして   阪西敦子

「季題あるがまま」今回は「マスク」
マスクして人の背なかが前にある   加倉井秋を
(自分がしているマスクの俳句)
マスクかけ仄かに彼の眉目(びもく)かな   高浜虚子
(人がしているマスクの俳句)

今週のお気に入り
マスクして半分だけの人となる   野地垂木
先生のマスクが数式を唱ふ   岡一夏hg
マスクして外して一日(ひとひ)暮れにけり   宍野宏治

阪西敦子先生の即吟句 
眉へ足すうれひマスクの隠す分   阪西敦子

2021年12月13日月曜日

兼題「柚子湯」

日向ぼこほうれん草の青々と
ドローンの農薬散布冬田かな
冬田面(ふゆたのも)スマート農業の進化
冬迎へたるスカイブルーの鏡地 
大麻町心願の鏡地冴ゆ

ギュッと!四国
夏井いつきの俳句道場
兼題「柚子湯」

選句のポイント
柚子湯の豊かさ・心地よさ

■ギュッと!特選
あふるるを許す柚子湯の日なりけり   おきいふ

■放送で紹介された「秀作」
潰す派と潰さない派の柚子湯論   堀アンナ
おもさうに子は湯のゆずをしづめては   高尾里甫
ぶよぶよの柚子をつっつく柚子湯かな   猫雪すあま
しくじりしけふのおはりの柚子湯かな   ピアニシモ
カピバラの潜る柚湯のぽかんぽかん   綾竹あんどれ

■放送でご紹介された「佳作」
一年(ひととせ)の思いが浮かぶ柚子湯かな   なおひとさん
ライオンの湯口柚子のタップダンス   織部なつめ
「サクラサク」ほつこりふはり柚子湯の香   紫菜子
ふるさとの柚子湯や吾子(あこ)の笑顔満つ   雪たらば
仕舞(しまい)風呂柚子もほとびぬ午前二時   岡井稀音
柚子湯より馴染(なじ)みの客の弾む声   岡田まさこ

◆過去の助動詞「し」の使い方
「し」は過去の助動詞「き」の連体形、
基本的には過去の意味になるため注意して使う必要がある。

■お気に入り
きょうという何も無き日のゆず湯かな   サワコの娘
月色の匂ひほのかに柚子湯かな   すずさん
家族とは面倒なもの柚子湯沁(し)む  たむらせつこ
大抵のことは赦(ゆる)そう柚子湯の夜   れんげ咲く
小さき湯に漲(みなぎ)る柚子の浮力なる   綾竹あんどれ
柚子風呂のしまい湯ゆらり今日生きた   小川さゆみ

NHK松山放送局様 ありがとうございました。
勉強になります。感謝を込めて…。

https://www.nhk.or.jp/matsuyama-blog/gyutto/haiku/

2021年12月12日日曜日

紅白俳句合戦 第2回戦

分担のゼロサムゲーム冬の星
冬茜ロダンなくして民藝なし
アドバンテージ持つ鉄道列車凍土
息白しモノをことを大切に
休耕田赤蕎麦の花寄り添わん(無季句)

夏井いつき俳句チャンネル
【紅白俳句合戦】第2回戦の結果発表!いつきさんの予想は白!

赤 鶏のゆかへ上りぬ秋のくれ   正岡子規
白 土間に人畳の上に羽抜鶏   岸本尚毅

赤は時間の流れを白は一瞬の時間を切り取っている。
白は情景が浮かぶ、赤はゆっくりとした秋の景が浮かぶ
白の一瞬の滑稽さを感じる。
秋のくれは他の季語で代用できるが羽抜鶏はできない。
白の「の上」がいる理由が解らない。
組長は「の上」は必要だと…。目線がフラットになるので…。
秋のくれ(映像のない時候の季語)を主役に押し上げている。
季語の「秋のくれ」で目線が鶏から外へ向き
秋の冷気や薄暗さが感じられる。
鶏という生き物の温かさを感じさせることで
秋の夕暮れの冷たさ寂しさが際立たせている。

やはり赤が優勢という結果になったそうです。

2021年12月11日土曜日

冬の信号待ちで一句

枯れた技術の水平思考寒昴
冬の景自然のままを生きて行く
エコに優れし鉄道小春日和
テスラの株価うなぎのぼりぞ冬北斗
茶道こそSDGs冬日向

プレバト纏め 2021年12月9日
冬の信号待ちで一句

永世名人富美男のお手本
梅沢富美男
冬ざれや交差点蹴る明け烏(からす)
(明け烏とは一夜の恋をした男女が朝方別れるさま。
 時間や情景が鮮明に描かれている。)

永世名人への道
藤本敏史
陸橋を渡れば熱を持つマスク
(マスク本来風邪の季語としてのリアリティーと
 現在のコロナ禍の扱われ方のリアリティーが詠まれていた。)

特待生昇格試験
皆藤愛子
オリオンと重機の湯気と土煙
(助詞「と」「の」「と」を選択したことで
 見事な映像化が出来ていた。
 オリオンという自然物と重機という人工物の対比。
 白い気体と土色の粒子との対比。
 言葉選びと語順が秀逸だった。)

1位 こがけん(おいでやすこが)
朝ロケの信号待ちに脱ぐコート
(きちんと配置されている。)

2位 YOU
口ずさむ歌もかじかむ赤信号
添削(「も」だと説明になっている。詠みてに想像を…。)
口ずさむ歌かじかむ赤信号

3位 ウルフアロン
信号待ち見えぬ相手に息白し
添削(中七に読者が想像できる言葉を…。「し」韻を踏んだ。)
試合近信号待ちの息白

4位 島崎遥香
交差点視線ぶつかり頬カイロ
添削(頬カイロでは季語としての力を発揮していない。弱い!)
交差点君の視線とぶつかる冬

次回のお題は「ヒートテック」

2021年12月10日金曜日

新渡戸稲造と中村天風の言葉

北颪梯子を外すパウエル氏
天狼やテクノロジーに期待せん
冬の靄ルール持たない日本人
冬潮や自分のルール持ちてこそ
己を持たず迎合す冬日没(い)る

新渡戸稲造 曰く
「いかに苦しいことがあっても
 ヤケになるのは短慮の極みである
 逆境にある人は常に
 『もう少しだ』と言って進むといい
 やがて必ず前途に光がさしてくる。」

中村天風 曰く
「なにか悲しいこと、辛いこと、
 そのほか消極的な出来事があったら、
 努めて『笑う』ようにしてごらん。
 どうだい、これならあなた方でもできるだろう?」

2021年12月9日木曜日

初氷

満ち足りた愛ゆえの孤独露凝る
しぐれ虹木喰仏(もくしきぶつ)と目が合わん
冷たし陶器流し釉(くすり)に身を任せ
独り生くダンスはふたり冬銀河
金融引き締めの相場へ冬ざれ

一分季語ウンチク「初氷」

その年に初めてはった氷のことを言います。
気象庁で観測を出していて
気象台で直径20センチの金属盥(たらい)の蒸発計の
中の水の凍結によって結氷を観測するのだそうです。
この結氷の時期は結氷を観測された日を「結氷初日」
春になって最後に氷の観測された日を「結氷終日」
といい結氷初日から結氷終日までが結氷期間と
いうことになるのだそうです。
気象庁のまとめたデータによると1961年から
1990年までの平均によると東京の結氷の平年日
12月2日だったものが最新のデータ
1991年から2020年のデータ この平均値を見ると
随分遅くなっています。
1991年から2020年の平年日は12月24日とのことです。
これも温暖化の影響ということでしょうか。

2021年12月8日水曜日

ヘッセ&アリストテレス&ニクソンの言葉

名状し難き声あぐ冬雲雀(ひばり)
残り鷺天空を舞う息遣い
20メートル満月銀杏色付きて
神山の満月銀杏はらはらと
焼芋や口の中にはねっとりと

ヘルマン・ヘッセ 曰く
「愛されることは幸福ではなく、愛することこそ幸福だ。」

アリストテレス 曰く
「欲望は満たされないことが自然であり、
 多くの者はそれを満たすためのみで生きる。」

リチャード・M・ニクソン 曰く
「人間は負けたら終わりなのではない。
 辞めたら終わりなのだ。」

2021年12月7日火曜日

題「団地・マンション・家」

いつの日か昔ばなしへ寒昴(すばる)
暮易し笑い話へいつの日か
冬苺元に戻らぬ恋も恋
冬日向失恋の傷深まりて
失ひて知る寂しさや冬紅葉

NHK短歌 題「団地・マンション・家」
選者 田村元 ゲスト 岡田結実 司会 星野真里
レギュラー カン・ハンナ

冒頭の短歌
ダンボールの剣が団地に落ちてをり手に取りてわれも振り回したり
田村元

■今回のお気に入り
公団の駐輪場でアキレス腱伸ばすついでに月を見ていた
宮城県石巻市 岩倉曰
ふと見やる向かいの棟に灯る窓同じテレビを見る他人(ひと)がいる
千葉県船橋市 小田川直子
ベランダを伝いひょこりと来たる猫抱けばふわりシャンプー香る
静岡県浜松市 河田琴栄

■熱血!短歌ノック!
死ぬかもと白い布団をにぎりしめた微熱の手のひら、1Kアパート
星野真里
(添削)
死ぬかもと布団をにぎりしめていた微熱の手のひら、1Kの部屋

この家の午後5時に注ぐ柔らかい日差しを最後にカーテン外す
カン・ハンナ
添削
この家の午後5時に注ぎあふれゆく日差しを最後にカーテン外す

水風呂とサウナがありて遠くからどちらも天国なのかと眺める
星野真里
添削(この添削は解釈が違っているのでは…?)
水風呂とサウナがありて湯舟からどちらも天国なのかと眺める

100度ほど熱い蒸気に包まれて汗も未練もさらっと流れる
カン・ハンナ
添削
100度ほど蒸気にひとり包まれて汗も未練もさらっと流

■選者の話「歌人、この一軒」
鰻好きの斎藤茂吉がよく行ったという店をご紹介くださいました。
銀座の「竹葉亭」

これまでに吾に食はれし鰻らは仏となりてかがよふらむか
斎藤茂吉

■短歌 あなたならどうする?
粒立ちのよき米、照りのよき鰻、□□

カン・ハンナ
粒立ちのよき米、照りのよき鰻、ソウルの母もよき日になれば

岡田結実
粒立ちのよき米、照りのよき鰻、ああ泳いでた泳げ鰻よ

星野真里
粒立ちのよき米、照りのよき鰻、とらえどころのない湯気が立つ

田村元
粒立ちのよき米、照りのよき鰻、腹に納めて五重丸なり

2021年12月6日月曜日

兼題「綿虫」

冬銀河抱き寄せられん厚き手で
寒落暉飛び降りるわよ受け止めて
冬の景言い出す勇気なくし散る
傷つけて傷つけられて冬夕焼
憧れた恋とは遠く冬の色

NHK俳句 兼題「綿虫」
選者 片山由美子 ゲスト 東直子 司会 武井壮

冒頭の句
綿虫の翅(はね)とはいへぬほどのもの   片山由美子

綿虫やつまさき立ちに見た未来   東直子

見直し「俳句の常識」動詞(の使い方)
一句に動詞はひとつが原則だが例外もある。
動詞はなくてもよい。

苺はや出しと妻いふうなづきぬ   森田峠
(3つの動詞が使われていて主語が全部違っている。)

この動詞〇or×?!
明日着(ちゃく)で林檎送ると知らせ来て
添削
明日着で林檎送るといふ知らせ

ビルは窓すべて灯(とも)して暦売る
添削(「暦売る」季語 その動詞が必要か否か)
暦売るすべて灯りてビルの窓

くるぶしを落葉に埋(うず)め山の道
添削(自然に埋まっている状況を詠んだ方が良い。
   他動詞、自動詞は明確に。)
くるぶしの落葉に埋まり山の道

今回のお気に入り
綿虫の飛びて日暮の早くなり   佐藤和子
綿虫や工事場にとぶ外国語   鈴木ひさみ
綿虫や庭の手入れはきりもなく   小嶋千代
指差してゐて見失ふ雪蛍   安藤美智代

「この動詞、成功してますか?」
傍(かたわら)に蝉の骸(むくろ)の凍(い)てにけり   武井壮
添削(場所を特定した方が良い。)
樹下(じゅか)になほ蝉の骸の凍(い)ててをり

2021年12月5日日曜日

アンリ・ベルクソンとエッカーマンの言葉

室の花ですが咲かせてくれますか
冬薔薇(そうび)弄ばれて捨てられて
「途上」を彷彿とする寒茜
失った恋鮮明に冬銀河
寒茜せめても夢で逢えたなら

アンリ・ベルクソン 曰く
「どこまで行けるか、確かめる方法は唯一つ。
 すぐにでも出発して、歩き始めることだ。」

エッカーマン 曰く
「人は青春の過ちを老年に持ち込んではならない。
 老年には老年自身の問題があるのだから。」

2021年12月4日土曜日

映画館で一句

震度4独り車中の冬の朝
冬天や昨日と違う色魅せん
感謝祭ターキー価格2割高
戸惑ひに満ちた初恋浅き冬
冬の靄ずっと脅され育まれ

プレバト纏め 2021年12月2日
映画館で一句

永世名人富美男のお手本
梅沢富美男
名画座のフィルムの傷の雪雑(まじ)り
添削
名画座のフィルムに雑(ま)ざる雪の傷

永世名人英夫のお手本
東国原英夫
この人が父ちゃん銀幕に雪烈(はげ)し
添削
父となる人と雪夜の映画館

特待生昇格試験
1位 向井慧
母の余命知る冬の日のレイトショー
(強いリアリティーがある。
 レイトショーで表情心理が伝わってくる。
 拍手喝采してしまいました!)

1位 嶋佐和也
冬の朝チュロスを食べに映画館
添削(切り口が素晴らしかった!)
冬の朝チュロス目当ての映画館

2位 黒崎レイナ
銀幕の涙色ある冬の星
添削(「涙色ある」は散文的。)
銀幕の涙の色の冬の星
添削(散文的とは詩的な情景に乏しいこと。)
映画館涙冬の星めきて あるいは 星みたい

3位 堀未央奈
冬霧や画面切り裂く「貞子」の手
添削(本歌取り 元の作品に手を加え別の作品にすること)
冬霧画面切り裂く貞子の手

4位 小手伸也
映える画にマスクも透かす君の笑み
添削
映画楽しマスクに透けて子の笑みは

次回のお題は「冬の信号待ち」

2021年12月3日金曜日

天風と藤尾聡充と孫の言葉

桐の水殿の点前や冬ぬくし
しぐれ虹種まく人へ祝福を
冬めくや孤独と不安道連れに
追悼も時代とともにからっ風
寒紅や窓に映して微笑まん

中村天風 曰く
「人生あまり難しく考えなさんな。
 暗かったら窓を開けろ、光がさしてくる。」

藤尾聡允 曰く
「人間の心は奥深いところに
 様々な感情が幾重にも沈殿しています。
 隠れた自身の想いに気づいてあげることが
 苦悩から解き放たれる糸口になります。」

孫正義 曰く 
「前向きに悩む事。それが成長の第一歩。」

2021年12月2日木曜日

金子兜太の句と「火事」

小さき声氷の溶けるごと変化
寒昴芯まで冷えた洗い髪
冴ゆる星キアラスクーロの明と暗
満ち足りたゆえの不安と孤独かな(無季句)
冬の靄(もや)主従関係ありありと

夏井いつき俳句チャンネル より
【人生相談】人間関係を長く続けられない…ほどほどの関係からみんな離れていく

二階に漱石一階に子規秋の蜂   金子兜太

居心地のいい空間を作ったらいい!と組長!
知らず知らず私は実行していたような…。
嬉しい…。

一分季語ウンチク 火事

冬になると火事が多くなると言われています。
空気が乾燥することや冬になって火を使う機会が増える
それも火事の原因になっているようです。
昔からある火事なのですが案外、季語としては
古い季語を言う訳ではないようです。
歳時記のよると一茶の作った句の中に季語と、
「蚤(のみ)」とが混在しているような句があったりします。
当時は火事はまだ季語ではなかったということです。
因みに冬に多い火事ですが歴史に残る大火、
町中が焼失してしまうような大火は
むしろ春の嵐に煽られることによって
引き起こされることが多いようです。
冬!火事が多くなる季節ですが
火事には気をつけてまいりましょう。

2021年12月1日水曜日

題「書店」

テロリストを美化する日本雪催(ゆきもよい)
現世を天国とする冬の月
涅槃があるみたく生きる冬の月
鐘氷る修道院のこうのとり
冬ぬくし心のメロディー五線譜へ

NHK短歌 題「書店」
選者 佐伯裕子 出演 小沢一敬 小島よしお

冒頭の短歌
籠(こ)もり居(い)に買い込みて来るミステリー北欧の地に凍る事件を 
佐伯裕子

今回のお気に入り
書店にて健康本を手に取るは健康そうな人しかいない
東京都武蔵野市 下田大樹

海の無い街の書店におさなごをのみ込むような図鑑の鯨
兵庫県新温泉町 田中佳

短歌の基礎を学ぶ、今回のポイントは「直喩」
直喩とは「~のような」「まるで~みたい」など
注意することは当たり前のことは表現しない。
空間を広く表現する。

例歌
ぐらぐらの乳歯を剥いでやるやうにビジネス本を手に取ってゐた 
伊豆みつ

正座してぐりとぐら読む兄弟を我が子のように眺める店長
小島よしお
添削(ありきたりな直喩は避ける。)
ぐりとぐら正座して読む兄弟を子を見るように眺める店長

窓 太宰 扉 文豪芥川 グリムのような本屋の家だ
小沢一敬
添削
窓 太宰 扉 文豪芥川 グリム童話のような本屋だ

平積みの目当ての本を買うときはジェンガのように中を抜きさる
小島よしお
平積みの新刊本を買うときはジェンガのように中を抜きとる

背伸びして美術本見ている僕は大人の男のようにふるまう 小沢一敬
添削
背伸びして美術の本をながめてる僕は大人の男のように

懸垂で背中に浮かび上がらせる鬼の顔のような筋肉
小島よしお
懸垂で背中に浮かび上がらせる怒った鬼のような筋肉

朝四時に枕でゴロゴロ唸ってる教師のように見つめる猫だ
小沢一敬
添削
朝四時に枕の上で唸りだし教師のように見とがめる

2021年11月30日火曜日

兼題「おでん」

(渡辺省亭)もふもふの筆致は薄く冬の犬  
省亭や杉にみみずく何を観る 
縁側の陽だまりを生く山眠る
芸術をもう愛でることなく凍(い)つく
手を見せん禿(かむろ)ちょこんと緋毛氈(ひもうせん) 

NHK俳句 兼題「おでん」
出演 櫂未知子先生 塚地武雅 田中要次

宿題
うどん屋に上着忘れし小春かな   塚地武雅
お奨めの品書き揺らす隙間風   塚地武雅
水しぶきあげて降り立つ鴨の群   塚地武雅
仰向けの猫をる小春日和かな   田中要次(添削)
日没の光滑らす枯野かな   田中要次
屋上台詞をかへす寒ざらひ   田中要次(添削)
鴨の陣いきいき順に潜りをり   いとうまい子
山茶花や肩にひとひら栞とす   いとうまい子
たっぷりと夕日に染まる干菜(ほしな)かな   いとうまい子(添削)

今回のお気に入り入選句
なお消えぬ指輪の痕やおでん煮る   松田蕾子
夕星(ゆうずつ)の光りおでんの匂ひけり   森本典子
(夕星とは金星の事、視覚と嗅覚に訴えている。)

俳句、二歩目へ「美味は幸せ」
例句
鯛焼は鯛焼同士ぬくめ合ふ   大牧広(櫂未知子先生の師匠)

食べ物の冬の季語
鯛焼き、餅、湯豆腐、寄鍋、雑炊、焼芋、熱燗

俳句ドリル「下五に山眠るを入れる。」
薪割りの心地よき音や山眠る   櫻井紗季
添削(「や」を入れる必要はない。
「音」は「ね」は大袈裟「おと」と詠んだ方が良い。)
薪割りの心地よき音(おと)山眠る 

雛々の指に色添え山眠る いとうまい子
(添削)動詞の季語を使った場合は動詞は使わない方がよい。
雛々の指のくれなゐ山眠る

ぴいぴいと薬罐(やかん)が鳴りて山眠る   塚地武雅
(添削)動詞の季語を使った場合は動詞は使わない方がよい。
ぴいぴいと笛吹きケトル山眠る

膝上に猫が丸まり山眠る 田中要次
(添削)動詞の季語を使った場合は動詞は使わない方がよい。
膝上に猫丸々と山眠る

革靴の硬きソールや山眠る   マネージャー

「山眠る」は手前の具体的なものを組み合わせると良い。
春 山笑ふ、夏 山滴る、秋 山装ふ、冬 山眠る
動詞を重ねない!

2021年11月29日月曜日

ヘレーネと岩田健太郎とニーチェの言葉

涅槃(ねはん)に見る座脱(ざだつ)立亡(りゅうぼう)大地凍(い)つ
冬紅葉寺の片隅けざやかに 
立ち枯れて薄雪纏い冬の月
書の素養持ちて描かん梟を
過疎の山香りまんまん木頭柚子

■ゴッホの世界最大の収集家 
ヘレーネ・クレラー=ミュラーが
夫のアントンからゴッホの絵画
《悲しむ老人(「永遠の門にて」) 
1890年5月  油彩、カンヴァス  
クレラー=ミュラー美術館所蔵》
がプレゼントされた時の言葉。
「驚いて気を失いそうになりました。
世界一高価な真珠のネックレスを貰ったとしても
これほど幸せではなかったでしょう。」

■岩田健太郎氏 曰く
「挑戦する人だけが失敗することができる。」

■ニーチェ  曰く
「何か新しいものを見つけることではなく、
 古いもの、古くから知られていたもの、
 あるいは誰の目にもふれていたが見逃されていたものを、
 新しいもののように観察することが、
 真に独創的な頭脳の証拠である。」

2021年11月28日日曜日

種田山頭火賞と杜父魚(かくぶつ)

冬ぬくしマルコリーニのチョコレート
消しゴムで消せない記憶霜夜かな
スコアに描く夢や期待やしぐれ虹
五線譜に載せきれぬ愛冬銀河
酢海鼠(すなまこ)や柚柑(ゆこう)の酸味まろやかに

夏井いつき俳句チャンネル より
【大賞受賞】夏井いつきが種田山頭火賞を受賞しました!

表彰状の中には…。
もりもり盛りあがる雲へあゆむ   種田山頭火
という句が書かれていたそうです。

種田山頭火賞
第1回 麿赤兒
第2回 伊藤比呂美
第3回 碓井俊樹

意思を持って行動している人に与えられる賞だそうです。
選定した方は嵐山光三郎氏と林望氏だそうです。

一分季語ウンチク 「杜父魚(かくぶつ)」
カジカ科の魚であり体長は30㎝ほど
暗い灰色の体に褐色の斑紋(はんもん)がはしっているそうです。
福井では「杜父魚」や「霰(あられ)がこ」などと呼ばれ
そして高知では「かまきり」と呼ばれる魚なのだそうです。
「かまきり」というのはこの魚の標準の和名だそうです。
九頭竜川(くずりゅうがわ)で11月から2月頃に
川を下ってくる魚だということです。
初冬に美味である。福井の霰がこ料理として有名。

2021年11月27日土曜日

秋の東京駅で一句

手仕事の国用の美消えて北の冬
冬苺スコアアートはどこまでも
五線譜に紡ぐ心や日向ぼこ
冬景色思いを込めて写生せん
(世界コンビニ)冬銀河過疎が世界に羽ばたかん

プレバト纏め 2021年11月26日
秋の東京駅で一句

永世名人富美男のお手本
梅沢富美男
ますかけの手にある我の木の葉髪
添削(木の葉髪は秋から冬髪が抜けることを
   木の葉が散るのに例えた語。
   ますかけは手相の一つ。配慮が足らない。)
ますかけの手相ぞ我に木の葉髪

永世名人への道
村上健志
銀杏のひかり肴に一口目
添削(「ひかり肴に一口目」の叙述が甘い。)
ぎんなんのひかり一粒まず一献

特待生昇格試験
千賀健永
凩や人吸い人吐くターミナル
添削(「木枯し」は冬木、「凩」は風のイメージが強い。)
人吸うて吐く凩のターミナル

1位 武尊(たける)
十円のもやしで晩餐春を待つ
添削(素材が良かった。リアリティー、
   オリジナリティーがあった。語順に問題があった。)
晩餐は十円もやし春を待つ

2位 野口健
木枯らしに駅名告げる声かすむ
添削(添削しても意味不明。詰め込み過ぎでは?)
木枯らしに千切れ駅名告げる声

3位 LiLiCo
夜長には都の駅ももみじ色
添削(「には」「は」は文章的。)
夜長なる都の駅舎もみじ色

4位 村上(マヂカルラブリ―)
行く秋と行かぬ駅の赤
添削
行く秋や赤々とある東京駅

次回のお題は「映画館」

2021年11月26日金曜日

アンソニー・ロビンズ&ゲーテの言葉

酒蔵で勢いつけん冬の風
冴る風祖谷を見下ろす桃源郷
桃源郷の茅葺屋根の厳か
凍てつきて祖谷の山里囲炉裏端
鬼門に棲みて幸多かれと願う冬

アンソニー・ロビンズ 曰く
「自分が怖いと思っているところに
 焦点をあててはいけない。
 自分が行きたいところに焦点を当てるんだ。」

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 曰く
「断るのにあれこれ多くのことを弁ずるのはむだなこと、
 相手の耳には拒否の一語しか聞こえていない。」

2021年11月25日木曜日

空海と山田貞一の言葉

痩せこけたカラスの姿声冴ゆる
青森の朝さもだし(ならたけ)の昆布のせ
さもだしと菊花合わせて交わす酒
冬空や開店前の駐車場
待ち合わせ時間違えて日向ぼこ

空海 曰く
「もし自分に適していることにその能力を使うなら、
 物事は極めてうまくゆく。
 しかし、自分に向いていない物事に、その能力を使うなら、
 労多く、益は少ないだろう。」

山田貞一 曰く
「人の心からどんなときでも
 楽しさを奪うことはできない。」

2021年11月24日水曜日

スナフキンと孫正義の言葉と大野林火の俳句

止まらないスタフグレーション水涸る
愛することがエゴイズム?露凍る
年賀状UCフォントでご挨拶
ボジョレヌーボー未成熟なる魅力
冬銀河カラスの声が琴線に

▪スナフキン 曰く
「何でも自分のものにして
 持って帰ろうとすると難しいものなんだよ。
 ぼくは見るだけにしてるんだ。
 そして立ち去るときにはそれを
 頭の中へしまっておくのさ。
 その方が鞄をうんうんいいながら運ぶより、
 ずっと快適だからね。」

▪孫正義 曰く
「今日出会う人物や景色は人生で二度無いと想うと
 全てを愛しみたくなる。」

▪夏井いつき俳句チャンネル
【人生相談】仕事以外に趣味も興味もありません。定年後が恐ろしい。

期すものに老後も初心水澄めり   大野林火(りんか)

老いというものを俳句にすることに興味を持っていて
老化を俳句の句材だなと思うと面白がっているところがあります。
あなたも面白がった方が実りがあります。
新しいスタートラインと思った方が良いのでは…?
老後も初心で楽しみませんか?
あなたこそ俳句をやるべきです!と夏井いつき先生。

私感
でも、俳句をやっておられる方は
マウントを取りたい方が多くて…。
批評、批判、酷評をしたりしているような…。
俳句を詠んで心に深い傷をおっている人が多いのでは…?

2021年11月23日火曜日

題「重」

己を知らない肉体や底冷え
まじまじと櫛にごっそり木の葉髪
札束で頬を張る人鎌鼬(かまいたち)
木守柿ついえた目にはぼんやりと
鎌鼬(かまいたち)我が子を脅し従わせ

NHK短歌 題「重」
選者 大森静佳 ゲスト 宇垣美里 司会 有森也実

冒頭の短歌
紫陽花の重さを知っているひとだこころのほかは何も見せない
大森静佳

宇垣美里さんの一番好きな一首
退屈をかくも素直に愛しゐし日々は還らずさよなら京都
栗木京子

宇垣美里さんの思い出のある場所京都御所を詠んだ短歌。
御所の砂利さりさり踏めば永遠と今のあわいに満月が照る
大森静佳

お気に入りの入選短歌
紙皿と重しにしていた割り箸がいっぺんに飛ぶ幸せですか 
宮城県石巻市 岩倉曰
重力にひとつ残らず従ってポップコーンが床へと向かう
埼玉県鴻巣市 一戸詩帆
月影に重機が首を垂れている居酒屋だった更地が蒼(あお)い
岐阜県可児市 前川泰信
うっすらと下描きの線の残るごと昨日の君がきみに重なる
大阪府大阪市 栗本悦子

今読みたい愛の短歌
思い出は増えるというより重なってどのドアもどの鍵でも開く
鈴木晴香(はるか)

大森先生のポイントで改作!スケッチを工夫しよう
元歌
亀に亀重なり合って日を浴びて三重塔(さんじゅうのとう)のように動かず

下七七をそれぞれが詠みました。
亀に亀重なり合って日を浴びて二世帯住宅のように動かず
有森也実
亀に亀重なり合って日を浴びてトーテムポールのように動かず
宇垣美里

改作ポイント➀空気感をスケッチしよう。
日を浴びて重なり合った亀たちの三重塔のようなしずけさ
(見えない空気や雰囲気を意識すると奥行きが生まれる。)

改作ポイント②細部を描いて臨場感を出そう。
□□□亀の三重塔は水面にうつる
ぬんと伸びゆく長い首おはよう亀の三重塔は水面にうつる
有森也実
神託を待つ巫女の目は澄み切って亀の三重塔は水面にうつる
宇垣美里
それぞれの甲羅のふちを光らせて亀の三重塔は水面にうつる
大森静佳
(スケッチを工夫するには、一回きりの出会いを大事にしよう。)

一部分をフォーカスすることでより深い部分が表現できる。
一回きりの出会いを描き、その時間を描くことで
言いたい事をより濃厚に表現することができる。

2021年11月22日月曜日

兼題「木枯」

吾の未来ハードル高し冬の月
初霜や錦織りなす渓谷美
冬畑ドローンの農薬散布
休め田を軽快な音(ロボット)草刈機
スマホでチェックロボットの冬作業

NHK俳句 兼題「木枯」
選者 岸本尚毅 ゲスト マツモトクラブ 司会 中田喜子

冒頭句
凩(こがらし)や水の面(おもて)をゆくは影   岸本尚毅

マツモトクラブさんからの質問
「川柳にたまたま季語が入っていたら俳句になるんですか?」
岸本尚毅先生
「川柳を詠んだのであれば季語が入っていても川柳です。」


百合みだら五つひらいてみなみだら   時実新子
「俳句として立派な俳句です。
 川柳のつもりで詠んだものは川柳です。」

俳句と想像力 擬人法と想像力
海に出て木枯帰るところなし   山口誓子

お気に入り入選句
木枯しは嬉しく辛し芋を干す 静岡県磐田市 大澄正子
木枯や誓子行方を見守りて 静岡県富士市 小泉博
繋がらぬ手には木枯いくじなし 大阪府河内長野市 若林瑠香

投稿句
木枯の夜の訃(ふ)笑顔を思ひ出す
添削
木枯の訃に思ひ出す笑顔かな
添削
木枯の訃にありし日の笑顔かな

木枯や天使の梯子けざやかに   中田喜子
添削(けざやかは聞き馴染みのない言葉ない。
目立ち過ぎ。まざまざも強すぎる。
ありふれた言葉の方が伝わり易い。)
木枯や天使の梯子ありありと

木枯しの遠き記憶に暖をとる   マツモトクラブ
添削(繋ぎ過ぎているので切れ字を入れ俳句らしくした。)
木枯しの遠き記憶暖をとる

2021年11月21日日曜日

文法と解釈「ぬ」

ドウダンツツジ今が見ごろと冬の朝
冬めくや痛みの記憶緩和せん
生き飽きた蟷螂(とうろう)枯るや死に支度
冬の色死は平等に公平に
元気という病を罹患枯芝

夏井いつき俳句チャンネル より
【文法と解釈】「サタン離れぬ」の様々な考察を紹介!

われにつきゐしサタン離れぬ曼殊沙華   杉田久女

解釈
「離れた」派 A 完了「ぬ」終止形

「離れない」派 B 打消「す」連体形「ぬ」
        B´口語 打消「ぬ」連体形
        C 口語 打消「ぬ」終止形

コメント 曼殊沙華という季語がポイント
曼殊沙華は魔除けの花である。
植物が持っている意味から考え「離れた」である。

コメント 久女の境遇から考えると「離れた」だと思う。
これは作家論的な解釈鑑賞。
俳句と作者を切り離して俳句だけを考える作品論。

考えるということが大切。
白黒つけてしまうのは損なことではないか?
それぞれの解釈があって良い。
また、それを誰も唯一の正解だとも思っていない。
俳句は違った価値観をお互いに持っているけれど
相手を否定せずに受け入れ合う文化。
「多様性」だと思います。
俳句を通してそういうこと学び合う機会になれば良い。

「つきゐし」はわざわざ字余りの過去の助動詞にしている。
「ぬ」だから、組長は「離れた」派。

コメント「ぬ」を変えれば「離れた」と言い切れる。
「サタン離れし」だったら解かり易いのに…。
「離れず」が1番解かり易いのでは?

正人さんは「離れない」派 C口語打消「ぬ」終止形
文法的な事ではなく経験則として考えていた。
皮肉的な逆説的な考えもできるのではないか?第三軸として…。
組長の思考は京都風。
「離れました」と言いながら「離れない」と、
いう意地悪な「離れない」派ではないか?
思考という名のラビリンスに入っていく。

コメント 文法上の問題はあるものの、どちらの
解釈も可能であるならば「離れない」を採りたいです。
「離れた」と思ったけれど「離れていない」
二重の意味を持たせたのではないか。
その方が人間の業を感じられてドラマがあるように思う。

杉田久女に対して申し訳ない推測ですが
自分としては「~できぬ」というつもりだったが
結果論としてAになったのでは?と、組長。

語り合うのは楽しい!こういう時に
「正解を言え!」というのは無粋!
議論することが楽しい…。

組長は田辺聖子「花衣ぬぐやまつわる」という表現です。
自分なりの考えを持つということが大切です。

私感
私はひとり思っていたいです。
俳句を好きな方にはディベートで相手を
凹ませることに生きがいを感じておられる方が多いですが
そうでない人間もいることを知って欲しいです。
ディベート大嫌い派です。

2021年11月20日土曜日

七味トウガラシで一句

渋柿や小鳥仲良くついばまん
字が主張する個性あり帰り花
山茶花や音を違えて落花せり
ペンの音消えた寂庵落葉時
急ぎ足陽射し背に受け枯芒

プレバト 2021年11月18日 
七味トウガラシで一句

永世名人富美男のお手本
梅沢富美男
黒七味蕎麦に振り込む義士祭
(義士祭は春の季語。「黒七味」は京都・祇園にある
「原了郭(はらりょうかく)が本家、
 赤穂義士の一人原惣右衛門の子孫だとか…。
 季語の取り合わせが良いと組長。)

名人への道
千原ジュニア
手袋のまま割る箸の乾いた音
(叙述が良い。季語を主役に押し出す配慮ができている。
 下五の「乾いた音」という言葉から来る冬の空気感が
 上五の「手袋」という季語をさらに効果足らしめた。)

特待生昇格試験
北山宏光
七味爆破夜鷹蕎麦へと沈む蓋
添削(「爆破」は大袈裟。夜鷹蕎麦は冬の季語。)
七味振れば夜鷹蕎麦へと沈む蓋

1位 かたせ梨乃
冬麗の太秦二時のかけうどん
(冬麗とは穏やかに晴れてうららかな冬の日。
 太秦という固有名詞が良かった。)

2位 みちょぱ
ステイホームなないろ散らし釜揚げうどん
添削(「なないろ」は七味唐辛子の別の言い方。
       唐辛子は秋の季語。
   「釜揚げうどん」(冬の季語)、略して「釜揚」)
釜揚げになないろ散らしステイホーム

3位 藤井隆
七味かけ白菜漬けが歌衣装
添削(歌衣装はつまらない擬人化。)
白菜漬けにかけて七味の華やかに

4位 歌広場淳
唇が熱いと離るる手の冷たく
添削(季語を描こうとしているのではなくムードを詠んでいる。
   俳句はリアリティーを追求して欲しい。
   わざと詠まないというのも俳句の大事なコツ。)
冷たき手と七味に熱き唇と

次回のお題は「秋の東京駅」もう冬なのに…?

2021年11月19日金曜日

芥川龍之介と「水初めて氷る」

冬北斗目覚めるたびに見つめ合い
冬の星強い光を放ちをり
冬の月苦しい時に種を蒔け
天狼(てんろう)や人を傷つけ逝くなんて
遣り尽くした人生終えん初冬

芥川龍之介が書いたエゴイズムという答えのない命題
文学史上最も「議論」を起こしたのは彼かもしれない
芥川龍之介とは|人間のエゴを描き「答えのない難題」を書いた作家
https://note.com/jusho/n/ne99cf404feea

▪プレミアムカフェ 選 芥川龍之介 より

ワタシワアナタヲ
愛シテ居リマス
コノ上愛セナイ位
愛シテ居リマス
ダカラ幸福デス
小鳥ノヤウニ幸福デス

正直な所時々
文子女史の事を考へる
此頃(吉田弥生)から
はなれる必要がある時は
特に意識して考へる
それは文子女史への事を
考へるときに子供の時から
知ってゐるせいか
清浄な無邪気な愛を
感じる事が出来るからだ

エゴイズムのない愛があるとすれば
人の一生ほど苦しいものはない

私感
芥川龍之介の愛は責任感なしの愛ではないでしょうか?
吐露した言動に関しては責任を取らないと…。

▪一分季語ウンチク「水始めて氷る」
「初氷」という季語も現象としては同じことです。
その年になって初めて水が氷ることなのですが
この長いタイプの季語には記憶が刺激されますか?
七十二候の一つです。
二十四節気でいう立冬の初候
それが「水初めて氷る」となります。
陽暦の11月7日から11日の頃にあたるとのことです。
年々その初氷、決勝が確認されるのが
徐々に遅くなっているという話もありました。
「水始めて氷る」七十二候の時期に
初氷が観測できない世界になっていくかもしれませんね。
気を付けて環境にも取り組んでいきたいところですね。

2021年11月18日木曜日

間違った知識と誤読

閉める店開ける店あり冬木立
肥えた鴨すいすい泳ぎすまし顔
湯豆腐の薬味楽しむ時期来たる
熱燗の匂ひに酔わん透かすドア
ナフタリン母の形見の冬羽織

夏井いつき俳句チャンネル より
【懺悔があります】11月の子規こぼれ話で紹介した句について...

行く秋の鐘つき料を取りに来る   正岡子規

鐘つき料の知識として間違っていたようです。
江戸時代には時計というものが普及してないですから
町で鳴らされる鐘によって人は何時かを知っていました。
鐘をついて時報を知らせる音を聞いた人に
時報お知らせ料としての鐘つき料と
いうものが存在していた。
組長の理解もあながち間違いではなく
京都とかの人気な寺社ですと鐘つきをさせていただく
除夜の鐘をつかせていただく権利として
予約とそしてお金を払ってつかせていただくことも…。

稲妻に道聞く女はだしかな   泉鏡花
この句を誤読することにより、
より一層怖さが増したとか…。

晩夏光(ばんかこう)バットの函(はこ)に詩を誌(しる)す   中村草田男
この句のバットはゴールデンバットという煙草だったのです。
時代によって受け取られやすさが変わってくる。
野球のバットか煙草のバットと受け取るかで
晩夏光の匂いが変わってくる。
書いてる詩の質が変わってくる。

確かに…。めっちゃ納得した回でした…。

2021年11月17日水曜日

題「痛い」

(平城京)色付きた黒米たわわ冬の畑
冬が来てボンネットバスラストラン
55年走ったバスと小春空
取り戻す笑顔を覆う冬の靄
日向ぼこカットハウスの不愛想

NHK短歌 題「痛い」
選者 佐佐木頼綱 ゲスト 村上佳菜子 司会 星野真里

▪冒頭句
腐りたる畳を運ぶ「川臭い」「重い」「痛い」を汚泥に踏み消す
佐佐木頼綱

▪今回のお気に入り
痛点を全部背中に集めおき別れ話の切り出しを待つ
千葉県千葉市 深海泰史

楕円球痛い思いを共有し仲間は今も同じ絵をみる
本橋正敏

かつてない痛みを椅子にすわらせて心あたりを漏らす問診
山口正剛

▪頼綱さんのテーマ「スポーツと日常」
足の甲しびれて巻いてるテーピング扇に向けて放てチッチャギ
太田渉子
(扇は今回のパラリンピックのメダルに入れられたモチーフ。
 チッチャギはテコンドーの後ろ蹴りのこと。
 アスリートの一瞬の抒情を描いている。)

▪頼綱さんの!短歌かかって来なさい!題「村上さん」
やがて歓声やがては笑顔しんしんと氷上を蹴る佳菜子の鼓動
佐々木頼綱
(心の痛みが入っていない。字余りが気になる。)

💮泣き切った次の日なれば「3回転ジャンプ」に光を差し出す氷
星野真里&カン・ハンナ
(因果関係が良い。感性の良さが出ている。
 解りやす過ぎる表現。「なれば」が説明的。)
添削
泣き切った次の日挑む「3回転ジャンプ」に氷は光差し出す

心に残った村上佳菜子さんの言葉
山田満知子コーチ曰く「人に愛されるスケーターになりなさい。」

2021年11月16日火曜日

兼題「木の葉髪」

唐突に祖谷山系に冬が来た
冬色に染まる祖谷にてすする蕎麦
コロナ禍にドローンで観る冬の色
冬陽射し背に受け紙へ模造筆
青き空父母がいた日の木守柿(きもりがき)

NHK俳句 兼題「木の葉髪」
選者 阪西敦子 ゲスト IKKO 司会 岸本葉子

冒頭の俳句
本閉ぢて降りたる人の木の葉髪   阪西敦子

テーマ「季題あるがまま」
今回は「木の葉髪」
木の葉髪とは木の葉のような落ちる髪のこと。

木の葉髪には二つの捉え方があります。

うつくしき言葉のひとつ木の葉髪   野澤節子
抜け毛を美しい言葉に変えた表現。

木の葉髪いそぎて捨つる誰か来る   山口波津女
「木の葉髪」を物として捉えることもある。

気を付けることはまずはこの季節の抜け毛のことを
こう表現するのだということに興味を持って
眺めていると表現に広がりが出てくる。

今週のお気に入り
図書室のひかり埃や木の葉髪   冨森笙子
音もせず離れてゆくよ木の葉髪   川角由美子
母一人帰る背中や木の葉髪   加藤悦子

地に触るるまでのかがよひ木の葉髪   阪西敦子
(「かがよひ」とは輝きのこと)

阪西敦子さん 曰く 「俳句は、日常の感覚を大切にしたい。」

2021年11月15日月曜日

中山庸子と小林正観の言葉と狐火

冬の夜パヴァロッティ―の歌声と
やはり好きパヴァロッティと冬銀河
育ち良き野蛮人北窓塞ぐ
衾(ふすま)開け歴史の匂い嗅ぎ分けん
熟柿のとろんと沈んだヨーグルト

中山庸子 曰く
「私たちは、いつだってやり直すことができます。
 もしうまくいったら、その時が本番です。

小林正観  曰く
「誰もが怒るようなとき
 イライラするようなときに
 ニコニコして穏やかでいられるか
 それがその人の
 本当の価値を決める。」

一分季語ウンチク 狐火
これは多少、幻想的な趣のある季語です。
冬になったら何処とも知れない所に
ぽっと不自然な火が灯る、
自然発火するものという季語なわけです。
やや空想的で「猿酒」もかなり空想的な季語として
俳人心を捉えて止まないのですが
この「狐火」も怪しさで
俳人を魅了する季語となっています。
一説には燐が発火しているのではないか、と
言われているようですが、いまだ正体は不明なようです。
因みに燐という物質は常温で
発火する性質を持っている危険物です。
危険物取り扱いの免状が必要な化学物質です。
自然にある燐が燃えているのかもしれない「狐火」
挑んでみたい季語の一つです。

2021年11月14日日曜日

兼題「秋遍路」

冬日向猫は目を閉じ腰掛けて
我が字に篆書(てんしょ)を見たり柿落葉
篆書描き直された日々冬ざるる
冬星座惹かれるのよね古代文字
(11月)グアテマラ死者を弔いカイト揚ぐ

ギュッと!四国 兼題「秋遍路」

選句のポイント
春の遍路との違いを表現する工夫

ギュッと!特選
湿りゆく木も土も吾(あ)も秋遍路   浦野紗知

秀作
杖を重く落暉の中を秋遍路   柴田花子
広げたる地図のはためく秋遍路   松山のとまと
足摺へ九十五キロ秋遍路   井上さち
老猫を伴に四度目の秋遍路   ぽー

佳作
ゆく雲としばし語らひ秋遍路   アクアマリン
秋遍路国道沿いの海と飯   桜華
足早に入り日を追ふや秋遍路   シェル翁
延びる影追う早足の秋遍路   裾野はな
松籟(しょうらい)や読経(どきょう)しずやか秋遍路   ココちゃん
枕辺(まくらべ)に札所地図よむ秋遍路   大浦ともこ

今回のお気に入りの秀作
夕暮れの見知らぬどうし秋遍路   ひでやん
帳の墨さらりと蒼し秋遍路   みやこわすれ
何かの実が落ちた音する秋遍路   花紋
手ぬぐいに祖母の名前や秋遍路   五月ふみ
吾(あ)の影を踏みゆく浜や秋遍路   小池令香
田に群れる鳩に目細め秋遍路   桃猫
宿坊へ月ほろほろと秋遍路   平本魚水

https://www.nhk.or.jp/matsuyama-blog/gyutto/haiku/ より

NHK松山さま ありがとうございました!
勉強になります…。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

2021年11月13日土曜日

組長の好きな子規の句

雪もよう清濁併せ吞もうとも
冬ざるる心のゆとり数寄にあり
冬ぬくし自然に敵うものはなし
湯冷めせん月を写したあなたの目
強き風大地に凛と枯芒

夏井いつき俳句チャンネル より
【11月の子規こぼれ話】組長が嫉妬する子規の句がこちらです
組長のお気に入りの句を紹介します!

正岡子規の句

行く秋の鐘つき料を取りに来る 

鐘つきはさびしがらせたあとさびし(無季句)

初冬の黒き皮剥くバナナかな
(川を見るバナナの皮は手より落ち 
 高浜虚子はこの句を詠んだ時に
 バナナを1回歳時記で季語としている。
 その後消え、最近出ている。)

ストーヴに濡れたる靴の裏をあぶる
(明治30年当時、上記の句ができたのが明治30年。
 国産石炭ストーブ第一号は明治初期に売り出された。
 粉塵があがる欠点もあり火鉢や炬燵が主役だった。)

片側は海はつとして寒さ哉

職業の分らぬ家や枇杷の花
(枇杷の花という季語は目立たないけど親和性が高い
 冬は枇杷の花、秋は草の花、どんなフレーズにも合う。)

2021年11月12日金曜日

菜根譚と文田聖二の言葉

数寄と言うゆとりを持ちて小春空
鎌鼬(かまいたち)心の隙間数寄で埋め
月氷る信念持ちて数寄をなす
数寄の道貫く日々よ暮易し
露凝るや数寄を極めて敵作り

菜根譚 曰く
「人が世の中を生きてゆく時には、
 自分から一歩を ゆずることが
 よりすぐれた道である。
 この一歩をゆずることが、それがそのまま
 一歩を進める根本となるのである。」

文田聖二 曰く
「好きなことや一緒にいたい人と
 できるだけ長い時間を過ごすことで
 自分を活かせる思考力や感覚が磨かれていく。
 やってみたいことや楽しめることを
 見付けて過ごした時間や物、
 場所や人たちは生涯の財産になる。」

2021年11月11日木曜日

年賀状に載せたい一句

冬ぬくしトロッコ列車が笑みを乗せ
日向ぼこトロッコ列車でつるぎ町
原生林の霧氷陽を受け大地へ
冬茜三嶺(みうね)へ続く縦走路
底冷えや老いて乗れない遊具あり

夏井いつき俳句チャンネル
【投句案内】組長が自画自賛するエッセイを読んで、
『年賀状に載せたい一句』を投句してみよう!
【筆ぐるめ俳句大賞 2022】
テーマ 年賀状に載せたい一句
9月より筆ぐるめのホームぺージにて
年賀状とかはがきとかに書く俳句の作り方が
作ったことのない人でも作れるっていう
エッセイを夏井いつき先生が書いてくれています。

あ~遂に紹介されていました。
挑戦中だったのに…。
これで激戦となり当選はまず無理となってしまいました。
でも作ったので送らねば…。
没覚悟で…。

2021年11月10日水曜日

題「時間」

冬夕焼不安定なる空間よ
冬の森虹を織る人ぎぢぎぢと
冬草やDNAは受け継がれ
粗探し楽しいですか?声冴ゆる
批判してマウントとりて北颪

NHK短歌 題「時間」
選者 田村元 ゲスト 松陰寺太勇 司会 星野真里

冒頭句
パソコンとわれと一日(ひとひ)を向き合ひてわれのみが礼をして帰りゆく 
田村 元

入選九句 お気に入り
髪の毛は時間の可視化ちりとりに僕と誰かの日々がからまる
東京都江戸川区 石川真琴
若き日は流しっぱなしにせし時間今は小皿に受けて味わう
大阪府池田市 宮脇典子
魚焼きグリルは9の点滅中ちゃちゃっと一品作るとするか
香川県高松市 二宮史佳
黄ばみたる「全国赤ちゃんコンクール」の賞状にわが名黒々とあり
宮崎県国富町 佐藤公子

熱血!短歌ノック!
十三時間分の私を語る間に夫は飲むように牛丼を食む 
星野真里 添削
十三時間分の私を聞きながら夫は飲むように牛丼を食む

大きさを恐れるほどの月が出て母に会えない時間が満ちる 
カン・ハンナ(添削)
夕空に恐いくらいの月が出て母に会えない時間が満ちる

松陰寺太勇さんからの題「息」
悪くない きれいに俺を捨ててゆく息がイぺーを揺らすのならば 
星野真里(添削)
悪くない 俺を見切って捨ててゆく息がイぺーを揺らすのならば

息を吸う息を吐くのを繰り返しそれでもたまに虹を見つける 
カン・ハンナ(添削)
息を吸吐くことをただ繰り返しそれでもたまに虹を見つける

選者の話 「歌人、この一軒」
寺山修司が40代の頃、足しげく通ったという
渋谷の台湾料理店「麗郷」を紹介くださいました。

暗室に閉じ込められしままついに現像されることのなき蝶 
寺山修司

短歌 あなたならどうする
腸詰のうすくれなゐを愛でながら□□

腸詰のうすくれなゐを愛でながら他国で他国の味を楽しむ 
カン・ハンナ
腸詰のうすくれなゐを愛でながら一口でいくいや二口でいく 
松陰寺太勇
腸詰のうすくれなゐを愛でながら色づく気配のない君の頬 
星野真里

(元歌)
腸詰のうすくれなゐを愛でながら友と語れり時を戻して

2021年11月9日火曜日

兼題「落葉」

木枯らしは電線伝いやってくる
管楽器貝殻めいた冬の音
冬の月浜辺で波とシンフォニー
冬の波ファンタジックへ誘ひます
夕闇へ消されてしまう冬茜

NHK俳句 兼題「落葉」
選者 片山由美子 ゲスト 川崎鷹也 司会 武井壮

冒頭句
この街に老いゆくつもり落葉踏む   片山由美子

見直し「俳句の常識」感情語
おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな   芭蕉
(鵜飼いではなく鵜舟というもので
止めたことで説得力が出た句。)

この感情語 ○or×?!
帰省して畳の匂ひなつかしき
添削
帰省して大の字となる畳かな

ひとつよりふたつはさびし返り花

楽しげに音立て落つる木の実かな
添削
石段を音立て落つる木の実かな

感情語を使う時のコツは絵を描くように言葉を選ぶ!でした。

入選9句のお気に入り
タクシーを追ひかけてゆく落葉かな   星揚子
落葉踏み犬に足音生れけり   渡辺貴子
先を行く犬の振り向く落葉道   髙木統
化野(あだしの)や落葉に埋もれゆくものも   尾崎八重子
裏表ひかり返して夕落葉   吉川せい子

この常識破り、成功してますか?!
添ひ寝にも悲しき類冬に入る   武井壮
添削(何を言っているのか解りにくい。類が原因。)
冬に入る悲しき添寝となることも
(一つにフォーカスする!確かに…。さすが!)

2021年11月8日月曜日

11月の子規

朝ドラの呟く台詞冬ざるる
冬桜温き方言「かんまんよ」
挨拶は俳句の心日向ぼこ
フィレーネとフィンセント冬ぬくし
冬の虹立ちてなきものあるが如し

夏井いつき俳句チャンネル より
【11月の子規】色彩をうまく使った子規の句を紹介します!

11月までやってきたらいろんな切り口
使い果たした感がありました。
子規さんは季重なりが多い。
子規さんの季重なりの中から色彩を
特徴的に使っている句を見つけたので紹介。

鶏頭の黒きにそそぐ時雨かな   正岡子規

鶏頭は赤のイメージが強いのですが
ここでは黒という色彩が使われている。
鶏頭の花がドッシリ一本立っていて
そこに時雨がそっと降り注いでいる。
この「黒」の読み方としては雨に濡れた感じの
色彩の変化と読んでもよいし
枯れかかってきていると読んでもよいし
太陽光線の関係での黒きと読んでもよい。
プラスのイメージかマイナスのイメージか
と言ったらマイナスのイメージ。
そういう季重なりとなります。

しぐるるやいつまで赤き烏瓜   正岡子規

烏瓜の赤って言っても秋(朱)色です。
いつこの烏瓜は滅ぶんだろう
予感としての「いつまで」としての赤なのかと…。
烏瓜に対して赤いって書いたらだいたい凡人の句になる。
「いつまで赤き」って書いたら描写の言葉になっている。
負のイメージが付きまとってくる。

「かな」に対しての「しぐるるや」は上五の詠嘆になっている。
そして植物同士であり、黒であり赤である。
鶏頭は黒じゃないのにあえて「黒き」と書いてある。
烏瓜が赤いのは当たり前なのだけれど
あえて「赤き」と書いてある。

黒キマデニ紫深キ葡萄カナ   正岡子規

冬ざれの厨(くりや)に赤き蕪かな   正岡子規

冬ざれと蕪の季重なり。 
昭和の感じのする厨。
冬ざれの寒い荒れた冬の手触りみたいなものがあるから
逆にこの赤き蕪の新鮮味っていうのが際立ってくる。

色でどのような方向でも表現できる。
色は工夫のし甲斐がある。
これから色彩を意識して物を見ると
いろんな色が見えてくるかもしれない。

2021年11月7日日曜日

重力波 575でカガク

松茸や六つに割いて利く薫り
松茸や先ずは二つを網に載せ
目が鼻が口が喜ぶ松茸よ
暖冬が齎す利益限りなく
短日や派手な色で身を包み

575でカガク!
2021年「重力波」特選句
選者 夏井いつき先生

日盛りや鏡の国の迷子の子   ちびつぶぶどう

星崩るさざなみ夜の桃熟るる   石浜西夏

榠櫨の実神は一人に飽きたんだ   シュリ

一空の歪みの溶くるアイスティー   ひでやん

さびしがる星ほど重しダリア咲く   古田秀

超新星爆発秋の蚊に揺らぎ   真井とうか

あめんぼや宇宙はいまだ揺れている   やのじ

狐火が飛べば重力の臭み   白プロキオン

あめんぼへ星を弔ふ波ひとつ 田中木江

柿実りゆっくり叩かれる地面   知野昴太

https://www.nhk.jp/p/575kagaku/ts/Q8KPRK7VWX/faqpage/ より

毎回、同じ人のお名前が…。

2021年11月6日土曜日

富士と紅葉で一句

ぷりぷりのマコモタケ食ぶ秋麗
秋高し村を元気にマコモタケ
秋季大会打てぬ守れぬコロナかな
ミキサーで子芋洗いて笑みと笑み
銀行に急かされ始めん冬支度

プレバト纏め 2021年11月4日
富士と紅葉で一句

持続可能な17音の趣味俳句
俳句は季語を通して環境を
観察したり考えたりSDGsな文芸

永世名人富美男のお手本
梅沢富美男
冷ややかや湖畔に肺の晒されて
(余韻が残されていて良い。皮膚の皮膚感が表現されている。)

永世名人への道
ミッツ・マングローブ
マニキュアの深き雨冷(あまびえ)の霊園
添削(雨冷とは秋雨が降り冷気を覚えること。)
マニキュアの深雨冷の霊園
マニキュア雨冷深き霊園

特待生昇格試験
岩永徹也
秋暁の富士へ遊覧飛行船
(「へ」は方向を示す助詞。
大きな空間・光景ができている。主語を主役に立てている。)

1位 瀧川鯉斗
アクセルを回し飛び込む秋の色
添削(複合動詞の使い方が巧い。)
アクセルを回し秋色へと飛び込む

2位 菊池桃子
照葉麗し画角には富士遺産
添削
照葉麗し画角に世界遺産富士

3位 津田篤宏
鏡富士悪戯するよ紅葉舟
添削(三段切れ。)
鏡富士ゆるがせ紅葉舟よぎる

4位 二階堂高嗣
テントから白い息出し長月や
添削(テントは夏、白い息は冬、長月は秋の季語。)
富士は夜(よ)やテントに秋の息白し

次回のお題は「七味唐辛子」楽しみにしています。
最近名人特待生が増えたので勉強になります。

2021年11月5日金曜日

良寛と小津安二郎と枯野の色

秋の暮錦に染まる原生林
好物のからすみ残し旅立たん
上板の渋柿や色鮮やかに
月光る秋薔薇の影くっきりと
三回目また指折りて秋の空

■良寛 曰く
「迷いだの悟りだのということは知らん。
 ましてや名声だの利欲などは問題ではない。
 すでに夜となり雨が降っているが、
 私はこうして二本の脚をゆったり伸ばして
 満ち足りている。」

■小津安二郎 曰く
「どうでもよいことは流行に従い、
 重大なことは道徳に従い、
 芸術のことは自分に従う。」

■【一分季語ウンチク】枯野の色
単に「枯野」というと冬の季語になります。
しかし枯野の「色」というのが入ると
秋の季語になってくるんですねぇ。
じゃあこの色とは何かと申しますと
もう完全に何も無くなった冬の枯野とは違って
まだ花だったり何かの草花たちの穂であったり
そういう完全な枯れた草とは違う
ほんの少しの色が残っている完全なる枯野に
向かっていく際中にまだ残っている色というのが
秋の季語「枯野の色」なのです。
移り変わっていく寂しさも内包した季語ですね。

2021年11月4日木曜日

藤平寂信の句と豊島圭三郎の言葉

共振が原動力へ添水(そうず)かな
初七日にからすみ分けて想起せん
死に支度まずは通帳整理から(無季句)
干藷(ほしいも)や風に揺られて甘くなり
落花生茹でて熱々頬張りて

■【人生相談】
勉強する意味も理由も見つからない...そんなあなたに一句
人生を長く広く見つめてみたらどうですか?
ということで一句…。

あいつより長生きしたし鵙の贄(にえ)   藤平寂信(ふじひらじゃくしん)

鵙の贄とは、鵙というのはスズメに似た
スズメくらいの大きさの鳥です。
賢そうな目の鋭いスズメがいるなあと
思っていたらそれが鵙だったんですけれど…。
鵙の贄っていうのは鵙が自分が狩りをして
捕ってきたちっちゃいカエルとかを
尖った枝にプシって刺して刺したまま
鵙が生贄として刺しているということで
「鵙の贄」っていう季語があります。
鵙は後で食べる為にそこに刺していりのですが
すぐ忘れてしまうらしいです。
人生生きているうちに
勉強するってこういうことなのかとか
勉強するって結構面白いとか
はたと行きあたることがあります。
長生きすればするほど学ぶことの楽しみとか
意義に気付く可能性が長くなってくる
なんでもいいから長生きしなさい。
今日から長生きするためには
どうしたらよいかを調べなさい。
そこからあなたの人生が動き出すかもしれません。

■豊島圭三郎(絵本作家)の言葉

どこをとっても自然は美しい
どんな時代が変わっても
生きていく人間にとって
何か大事なものを訴え続けていく
喜びに悲しみにみんなみんな生きているんだ
人生は限りなく美しくそして幸せ
それを生活の中で感ずる人間になって
幸せな人生を送って欲しい
それが私の願いです。

2021年11月3日水曜日

タンカツ 日本航空高校(後編)

秋風に背中押されてさようなら
秋の空罵り合戦終了す
自転車にクラブ縛りて秋の芝
秋の蚊やいつまで居つく逃げられた
秋の蚊に付きまとわれた十日間

NHK短歌 タンカツ 日本航空高校編(後編)
佐伯裕子 小沢一敬 カン・ハンナ ホリ

テーマ「叶える」
💮客室の狭い廊下を進みゆけカートが揺れても君は揺れない   カン・ハンナ

搭乗券受け取る手元ふるえても君のひとみはまっすぐだった   ホリ
添削
搭乗券受け取る手元ふるえても新人の君はまっすぐだった

飛行機のドアから送るハンドサイン那覇空港は今日も晴天   真志喜かな紗

席につきシートベルトをおしめください私福井がご案内します   福井奈々

シニヨンとスカーフ姿でいざ飛ばん私の職場は三万フィート   山口愛加
添削
シニヨンスカーフ結んでいざ飛ばん私の職場は三万フィート

幼な子と乗務員との約束は世界の空で今日も飛び立つ   小沢一敬

テーマ「寮生活」
両親の喜ぶ顔がみたいから三一一八帯締める夜   ホリ
添削(三一一八は大槻瑛士君の寮の部屋番号)
両親の喜ぶ顔がみたいから三一一八帯締める

女子寮の二段ベッドの趙洋が飛び立つ春を待っている妈妈(マーマ)   カン・ハンナ

💮日本の寮の窗(まど)から月見れば済南の湖(うみ)思い出す春   趙洋(しょうよう)

コロナ禍で出られなかったインターハイ部屋で仲間とシェアした悔しさ   大槻瑛士
添削
コロナ禍で出られなかったインターハイ部屋でシェアする悔しい思い

バレー部の練習終えて我走る風風呂満員待つ大行列 山本聖矢

三年間かけてピーマン克服し空手着を干す部屋は二十時   小沢一敬

テーマ「応援」
「かっ飛ばせ航空 !」君の掛け声で富士の山頂雲が消えゆく   カン・ハンナ

来年の応援太鼓は俺の音甲子園球場のアルプススタンド   星野絋太

何度でも太鼓の鼓動と地響きでコロナに決して負けないように   斎藤みなみ
添削
何度でも太鼓の鼓動と地響きでコロナに私たち決して負けない

ゆびのまめつぶれて泣いた練習をはげますはなえのフルートの音   山岡千夏
添削
ゆびのまめつぶれて泣いた練習をはげますフルートはなえの音だ

守り切れ!!アルプススタンドジャンプするポニーテールの大応援団   牧野莉々

💮届くかなマスクの下の応援歌雲越えていけ夏の白球   小沢一敬

日本航空高校の生徒さん素晴らしかった!
きっと人生の目標を持って生きていらっしゃるからでしょうね。
夢を叶えてくださいね。応援しています。

2021年11月2日火曜日

歳時記食堂 星野高士

ぴゅぅぴゅぅと竹の網代の秋の風
気延山ニホンカモシカいらっしゃい
生名(いくな)では見頃濃淡のコスモス
ウール100%洗濯機にて
大観の生々(せいせい)流転水に人(無季句)

NHK俳句 歳時記食堂「おいしい俳句いただきます」
主人 星野高士 若女将 戸田菜穂 
お客様 小坂大魔王 前田美波里

今回は秋の味覚のマツタケ、秋なす、桃をいただく。

■松茸の香りも人によりてこそ   高浜虚子

この句は昭和16年作。
比叡山のお座主さまから松茸が送られてきた
返礼に虚子が送った句だそうです。
星野高士先生は「俳句は挨拶」と言っておられました。

■秋茄子の今朝は四つと見せに来し   森田愛子

化粧して病みこもりをり春の雪   森田愛子

啄木鳥(きつつき)や山門までの杉襖(すぎぶすま)   森田愛子

虹立ちて忽(たちま)ち君の在る如し   高浜虚子

虹消えて忽ち君の無き如し   高浜虚子

虹消えてすでに無けれどある如し   森田愛子
(この句を詠んで三日後肺結核22歳で永眠。)

■桃食うて煙草を喫うて一人旅   星野立子

お土産
秋の虹逢いたい人に逢えること   戸田菜穂

歳時記食堂!やっぱりいいなぁ~。
今度は何時かしら?楽しみにしています…。

2021年11月1日月曜日

音便シリーズ ウ音便

航路図に秘めた未来や秋日和
秋の夜内発性を無視できず
超然を旨とし生きん蚯蚓鳴く
秋気澄む共振与え与えられ
秋興や変容重ね辿り着き

夏井いつき俳句チャンネル より

【音便シリーズ】ウ音便を使って
簡単に俳句の雰囲気を変えてみませんか?

音便とは動詞・形容詞・形容動詞の音が
他の言葉と合わさると変化する。

藤の花這ていみじき樹齢かな   阿波野青畝(せいほ)

「う」にう音便が発生している。
元々の動詞の形が何だったのか
そこから調べるとわかりよい
文語の歴史的仮名遣いで書くと「這ふ」です。
「這ふ」がこの動詞、終止形でもありますが…。
どういうふうに変化していくのか確認することで
う音便とは何かを覚えようとしている訳です。
「這ふ」というのが未然形(ず・ない)に
くっつく時に音がどう変化するか?

未然形 は
連用形 ひ
終止形 ふ
連用形 ふ
巳然形 へ
命令形 へ

音が変化していない部分が語幹 は
は行の活用形になる。
う音便はは行「ひ」から「う」に変わっている。
音便は連用形の部分に発生する。
本来は「這ひて」となるところを「這うて」となり
う音便が発生している。

阿波野青畝のこの句を見て、これ本当は
「ひ」じゃないかしら間違ってんじゃないか青畝!
いう人が時々いるのですが、
これは間違いではありません。
う音便を青畝は選んでこのように書いているのです。
では何で発生させる?
音便を発生させることによりニュアンスが
変わるというか相手に伝える雰囲気が
少し変わってきます。
「這うて」という言い方をした方が
柔らかい感じはするのではないかと…。
優美にもなる。
柔らかく時に優雅という効果を持つ。
う音便発生させないといけないのですか?
自分がう音便を使うか使わないか
自分で判断するわけです。
その時のポイントとしては
この句の内容にこういう効果、柔かい感じとか
優雅な感じとか効果があったらいいなと思って
う音便を選ぶ!と言うことです。
俳句は韻文ですから内容と音 ひびき・調べを
全部ひっくるめての作品ということになるのです。

2021年10月31日日曜日

孫正義と加藤央之の言葉と豺獣を祭る

カヌー漕ぎこうのとりを探す秋
秋冷や手間をマネーに変えられず
星月夜古書と楽譜は時空超え
蓄積がキャリアとならん秋北斗
悪ガキと呼ばれし男星流る

■孫正義 曰く
「雨と晴れは必ずやって来る。
 大切な事はその両方を幸運だと捉える心構えだ。」

■加藤央之 曰く
「自分の思ったことを率直に表現しよう。
 それができないのは自分に自信がないから。」

■一分季語ウンチク 豺獣を祭る(おおかみけものをまつる)

七十二候の一つだなと予測が
つくようになってきた人も
いらっしゃるかもしれませんね
「豺獣を祭る」は二十四節気の第一節
霜降(そうこう)にあたります。
十月二十三日から二十七日までの期間にあたります。
「豺」という字は普段目にする
「狼」の漢字とは違っていますね。
正確にはこれは「狼」ではなく
「山犬」を咲く漢字なのです。
大枠としては同じものとして捉えられているのですが
より残忍な獣というような意味にもなるようです。
獣を祭っている少し幻想的な趣もある七十二候ですね。

2021年10月30日土曜日

待ち合わせで一句

ふわっふわ秋に埋もれたエゾタヌキ
(2021年秋)ブレークスルー感染へそぞろ寒
イスラエル・インドの後追いか寒露
いずこも同じ菊人形「天を衝く」
執心の鬼滅や五輪菊人形

プレバト纏め 2021年10月28日
待ち合わせで一句

永世名人富美男のお手本
梅沢富美男
伝言板くせ字も愛し秋うらら
添削(少々雑。「も」も不可。季語もとってつけたような)
秋麗やくせ字愛しき伝言板

永世名人への道
藤本敏史
背にホルンケース秋寂(さ)ぶのハチ公前
(「秋寂ぶ」とは去りゆく秋を惜しむ思いの季語。
 作者の意図通りに言葉とリズムが整っている。
 「背に」の位置が良い判断。)

特待生昇格試験
千原ジュニア
夕月夜名の無き猫と君を待つ
添削(君は省いた方が良い。季語が効果的でない。)
まだ名前なき猫待つ夕月夜

1位 小倉優子
紅白帽脱いで焼きたて林檎パイ
(林檎パイの季語問題。栗の傍題にマロングラッセはある。
 「スポーツの秋、食欲の秋」というニュアンスが出ている。
 この句のどこが待ち合わせなのでしょうか?疑問!)

2位 神谷明采(あさ)
来ぬ君を金木犀の香に赦す
(季語の選択にそつがない。)

3位 薬丸裕英
待ち合わせカフェが満席初冬かな
添削(三段切れ、「が」は「は」に。「かな」が効いてない。)
待ち合わせのカフェ満席冬はじめ

4位 宮田俊哉
ハチ公を挟み会えずの冬隣
添削(「季が動く」という典型的例。説明的。)
ハチ公を挟み冬隣の苦笑
ハチ公を挟み冬隣の不覚

次回のお題「富士と紅葉」

2021年10月29日金曜日

俵万智と池田澄子の歌

貴船菊好み色々メルニコワ
風呂上り大きなくしゃみ夜寒(よさむ)かな
紅葉と霧氷織りなす剣山
干潟に生きる絶滅危惧種秋深む
園児の奇声十月の干潟より

俵万智 短歌
この国の未来のサイズ思うとき脱いだっていい1枚の空
制服は未来のサイズ入学のどの子どの子も未来着ている 
好きすぎてどこが好きかはわからない付箋だらけの歌集のように 

池田澄子 俳句
町内に鶯の居る濃い空気
飛ぶ花と英語のところどころかな
夏は嫌この珈琲がうすいから
葦咲いてわが命けっこう永し
逢うやこの秋たましいは体内に
ボジョレ・ヌーボーちがうこと思っているのね 
おはようと写真に言って夏に入る
また夏を賜る朝のおでこかな

天命を待ちくたびれて枯紫苑 塚本邦雄
山男紫苑の丈を眩しめる 石田郷子
紫苑揺るをりをり目にもとまらずに 京極杞陽
紫苑とは紫そつけなかりけり 後藤夜半
瀬戸内の紫苑日和のよかりけり 宮原青也
紫苑晴九月の空をおもふべし 宮原青也

宮原青也@nHVHYxHnb16oYfW より

2021年10月28日木曜日

タンカツ 日本航空高校編(前編)

義母の育てん紫式部たわわなり
忘却も時として幸秋深む
土方の夢と覚悟や色葉散る
恋愛のバブル崩壊そぞろ寒
恋愛もインフレ強し冬隣(とな)る

NHK短歌 「タンカツ 日本航空高校編(前編)」
選者 佐伯裕子 出演者 カン・ハンナ ホリ 司会 小沢一敬
テーマ「航空機」

空の下握ったパドルの一振りに人の命を思う少年
カン・ハンナ
添削
空の下黄色いパドルの一振りに人の命を思う少年

飛行機を前にゆっくりすすませる十八才の描く航路図
ホリ
添削
飛行機を前にゆっくりすすませる十八才の君の航路図

飛行機をパドルを使い誘導す パイロットとの呼吸を感じて
岡田嵐

山梨の轟音響く滑走路先輩の言葉帽子にのせて
池石翔太

飛行機の垂直尾翼と前輪が一体になる三十回目
早川夕月(一席)

ゆっくりと機体をプッシュバックする焦る事なくその進路「よし!」
小沢一敬
添削(プッシュバックとは車両と航空機を
連結棒でつなぎ誘導路まで押し出す)
ゆっくりと機体をプッシュバックする焦るな焦るなその進路「よし!」

■スポーツ強豪校女子バスケットボール部との短歌競演
テーマ「バスケットボール」

山梨にナイジェリアからやってきたルースをに走れバスケ部
ホリ (一席)

マスク付けジャンプシュートを放つ輪よ山梨の空を飛び立ってゆけ
カン・ハンナ

シュート前Wチームをはねのけて絶対に決める私が決める
荒井しおん


コロナ禍で出られなかったインターハイ切り替え放つジャンプシュートを
小林遥
添削
コロナ禍で出られなかったインターハイ思い切り放つジャンプシュートを

スピードでディフェンス抜きさりゴールまでみんなで行くぞベスト8へ
吉岡桜
添削
ディフェンスを素早く抜きさりゴールまでみんなで行くぞベスト8へ

キュッと鳴きダンッと弾んで走り出し仲間の声でゴールに届く
小沢一敬

入選歌 テーマ「ソファ」「リビング」でしたが…。
今週はお気に入りがなしでした…。残念…。

2021年10月27日水曜日

兼題「棉」

樹木は夜育みて背伸びせん(無季句)
星飛ぶや17歳のアントニオ(ポルトガルバレエダンサー)
十月や傷つけられてさようなら
朝熊(あさま)山の一輪のアサマリンドウ(無季句)
折句に秘めた心通じず露時雨

NHK俳句 兼題「棉(わた)」
顧問 櫂未知子 部長 塚地武雅 部員 いとうまい子

「棉」は植物の季語で秋。「綿」は生活の季語で冬。

行き止まり人の入れぬ花野かな   塚地武雅
添削(行き止まりをあくまでも、どこまでも)
新蕎麦を食べて下山の準備せり   塚地武雅
添削(新蕎麦やそろそろ下山すべきかと)
ガラス戸にうつる人影秋ともし   いとうまい子
添削(秋灯や玻僂璃戸(はりど)映る人の影)
キーボード乗る猫下ろし夜なべかな   いとうまい子
添削(キーボードに乗る猫下ろし夜なべかな)
かはたれに栗菓子求む客の列   田中要次
添削(かはたれや栗菓子求め客の列)

入選句 大賞おめでとうございます!
棉の実や遊子(ゆうし)愛(かな)しむ空の色
徳島県徳島市 鈴木マリ子
遊子とは旅人のこと
雲白く遊子愛(かな)しむという詩がある。

棉を摘むときをり遠(おち)に目を休め 東京都大田区 阿部千保子 
をちこちの意味は あちらこちら。
遠近(おちこち) 遠い所と近い所。あちらこちら。という意味。

俳句、二歩目へ 「や・かな・けり」
稲妻箒に残る母の癖   櫂未知子
をりとりてはらりとおもきすすきかな   飯田蛇笏
秋晴れの何処かに杖を忘れけり   松本たかし

注意点
① 「や」+「けり」「や」+「かな」に注意!
② 三音の季語+「かな」を試そう
③ 下五に「けり」は使おう

俳句ドリル
□□冬支度

靴下を厚手にするも冬支度   いとうまい子
添削(厚手にするを入れ替へたる)
信楽の土鍋選ぶも冬支度   塚地武雅
添削(土鍋を器)
ぽっちゃりと猫も我が身も冬支度   田中要次
添削(ぽっちゃりとをふつくらと)
透明な器仕舞ふ冬支度   マネージャー
(素晴らし過ぎるマネージャー)

2021年10月26日火曜日

紅白俳句合戦と立石大河亞の言葉

行く秋や残った癖の愛おしく
「ここを去ること遠からず」照紅葉
浄土は足下に紅葉かつ散る
農村で育った女秋を描く
慈愛満つ沈黙の中薄散る

【紅白俳句合戦】第二回 紅白俳句合戦
皆さんに審査員のジレンマを味わって欲しい

鶏のゆかへ上りぬ秋のくれ   正岡子規
土間に人畳の上に羽抜鶏(はぬけどり)   岸本尚毅

夏井いつき組長は岸本直樹先生の俳句に
僅差で旗を挙げると…。本に記してあるそうです。
しかし64歳になり読み返すと正岡子規の
俳句の良さをしみじみ嚙み締めておられるとか…。
状況としては似ていますが、季語及び
やろうとしていることが違っていて味わいも違う。
どっちも良いのですが、そのジレンマを
楽しんでいただき味わって欲しい。

私は正岡子規に一票です!
奥行きが感じられるからです。
写生から言葉では表現できない
何かがそこにあるからです。

■立石大河亞 曰く
「大人になるってことは一つのことを
 違った角度から見れることだと思うんです。
 でも、中々大人になれない。
 それを見るためのいろんな角度の鍵を
 持っていることが必要で
 僕らがやんなきゃいけないことは
 新しい鍵を作って見せてあげる
 という気がするんです。」

2021年10月25日月曜日

斎藤一人と無窓疎石の言葉

目に見えるものへの批判暮の秋
古酒飲まんあらゆる文字は美しく
火恋し常識的な視野持たず
制約が佳き結果へとまるめいら
制約の中の競ふ美菊合(あわせ)

斎藤一人  曰く
『神様は、「あなたが乗り越えられない問題」は
 絶対に出しません。
 だから、どんな問題も
 乗り越えられるようになっているんです。
 安心して、「乗り越える方法」を考えてください。
 すぐわかりますよ。
 もし、すぐ思い浮かばなかったら、
 ほっとけばいいんです。
 時間が勝手に解決してくれますから。
 結局、解決できない問題なんてないんですよね。』

無窓疎石(むそうそせき) 曰く
「山水に得失なし。
 得失は人心にあり。」
「石組には力量・人間性が全て出る。」

2021年10月24日日曜日

10月の子規

台風の風と一緒に(オキナワビロウド)セセリ来る
舞う(タイワンアオバ)セセリ蜜吸うセセリ息飲まん
温もりと使い勝手を知った秋
宗悦の字に韓を見んそぞろ寒
秋深む使って壊れ修理して

夏井いつき俳句チャンネル より
【10月の子規】漱石は小説に書き、子規は句を作った遊郭とは...

色里や十歩はなれて秋の風   正岡子規

この句がどこで作られたのかは
すごくハッキリと分かっています。
この句が作られたのは愛媛県松山市宝厳(ごん)寺
伊月庵の3軒隣にあります。歩くと20歩の所。
明治28年10月6日
愚陀仏庵に居候していた子規が
漱石と一緒に吟行に出かけて
宝厳寺へ上る坂の両側が元々妓楼だったのです。
愚陀仏庵とは夏目漱石が英語の先生として
松山中学に赴任していた時借りていた下宿。
そこに子規が帰省してきて転がり込むわけです。
妓楼すなわち遊郭だったのです。
「上人坂」の両サイドは遊郭がビッシリ並んでいました。
この事は夏目漱石の小説「坊っちゃん」の中で
書いている一説があります。
北へ登って町のはずれへ出ると
左に大きな門があって「宝厳寺」と
刻んだ大きな石碑があります。そこのことです。
「門の突き当りがお寺で左右が妓楼である。
山門のなかに遊郭があるなんて前代未聞の現象だ。」
と、記されています。
2人は散策をして後に、
漱石は「坊っちゃん」という小説に書き
子規はこの句を作りました。
宝厳寺駐車場は朝日楼という
一番大きな遊郭が建物として残っていました。
その建物がコの字型にあって中庭みたいなところに
大きな桜があって、その桜がそこに残っています。
(上人坂の)両サイドの家は間口に比べて奥行きが長い。
この敷地の取り方が遊郭の敷地の取り方で
その反対側の裏道に必ず小道がありました。
裏側の細い道はお客を逃がすための抜け道だったのです。
イタリアのアルベロベッロのあたりに同じような
作りの家が立ち並んでいたという話を正人さんが…。
(京都の町屋の事情が知りたくなりました。)
この句碑は宝厳寺の門を入ったところにあります。
帰りには「伊月庵」を覗いて貰ったら嬉しい。

2021年10月23日土曜日

一休和尚と正観の言葉 ランキング席で一句

秋の朝意の伝わらぬIH
空き家占領セイタカアワダチソウ
まばらです小さめの十月桜
参道や落ちた銀杏拾う人
朝靄よ棚田と薄包み込み

プレバト纏め 2021年10月21日
プレバトのランキング席で一句

東国原英夫
怖るるな最下位怖るるな夜長
添削(私はこの添削で全く意味が解らなくなりました。)
怖るるな詩を怖るるな長き夜を

立川志らく
歯車の音が聞こゆる秋の空
添削(これも私にとっては意味不明の添削でした。)
歯車や秋空軋むほど青し

河合郁人
デビュー曲一位行きつけの新蕎麦
(実感が一番。
 「一位」「行きつけ」の「い」の韻を踏んでいるのが良い。
 華々しい「一位」から地味な「行きつけ」への
 展開は落ち着きの味がある。)

次回のお題は「待ち合わせ」

一休和尚 曰く
「ナルヨウニナル シンパイスルナ」

小林正観 曰く
「あれが欲しい、
 こうしたい、
 こうなりたいという
 思いが強ければ強いほど
 『苦』は大きくなります。
 悩み苦しんでいる人ほど
 強い思いを
 抱いているものなのです。」

2021年10月22日金曜日

サン・テグジュペリとカールライスと囮

ディエゴのためのソロに見る秋北斗
秋夕焼トルソーに見る才気かな
人間の業の肯定天高し
秋あわれ老いの初心者足取らる
なめるなよ気概むなしく身に沁むや

サン・テグジュペリ 曰く
「愛することは、
 けっしてたがいに見つめ合うことではなく、
 いっしょにおなじ方向を見ることだ。」

カールライス 曰く
「健康な人は自分の健康に気がつかない。
 病人だけが健康を知っている。」

一分季語ウンチク「囮(おとり)」
警察のおとり捜査みたいな話は
よくドラマで目にしたりしますね。
この「囮」は秋の小鳥狩りの際に使われる
囮のことをさす秋の季語となっております。
一概に囮といっても色んな狩猟に用いられまして
小鳥狩りの際の声のよく鳴いて他の鳥たちを
呼び寄するためのものであったり
囮を入れた籠を木につっておく
その隣の枝に鳥もちを仕掛けておく
囮に呼び寄せられた鳥がその鳥もちに
くっついたのを捕獲するなど
色んな猟法があるようですね。
この囮にはよく鳴いて他の鳥を呼び寄せるように
訓練したものを使うそうです。

2021年10月21日木曜日

題「ペット」

形容詞多き反逆児は流星
天高しまだあの人の残光が 
秋の朝談志の藝に見る余韻
余剰エネルギーの放出残菊
笑いとは緊張と緩和清秋

NHK短歌 題「ペット」
選者 大森静佳 ゲスト 秋山寛貴 司会 有森也実

冒頭の短歌
クレオパトラの子孫のような猫がいた屋上に前髪をそよがせ 
大森静佳

秋山寛貴さんの短歌
「拳一つ」今も閉じられぬ夜のドアいまにも君が顔出しそうで
あの子ならこうしていたねと笑い合う今はなき猫なお福招く

秋山寛貴さんのために作った大森静佳さんの短歌
秋風がやさしい腕をまんべんなくひろげる場所できみは育った
あき や     ま     ひろ     き
このように名前を入れて詠んだ句を「折句(おりく)」と言うそうです。

今週のお気に入り
椋鳥に命名すれば西窓が鍵のかからぬ鳥籠となる
神奈川県川崎市 山口正剛

今、読みたい短歌
纖(ほそ)き月眸に宿りわが飼へる木菟(みみづく)は高貴なる計算をせり
葛原妙子

ポイントで改作
(元歌)夕焼けで長く伸びてるわが影の中で戯れる愛犬チョコ

改作ポイント①
犬のチョコ□夕焼けに長く伸びゆくわが影のなか
「戯れる」を別の動詞で表現するなら?
有森也実
犬のチョコロンド奏でる夕焼けに長く伸びゆくわが影のなか
秋山寛貴
犬のチョコ踊るステップ夕焼けに長く伸びゆくわが影のなか
大森静佳
犬のチョコ小さく跳ねる夕焼けに長く伸びゆくわが影のなか

改作ポイント②
気持ちを動詞で表現しよう(行動)
跳ねまわるチョコのからだを夕焼けに伸びてゆくわが影は□
有森也実
跳ねまわるチョコのからだと夕焼けに伸びてゆくわが影はとろける
秋山寛貴
跳ねまわるチョコのからだを夕焼けに伸びてゆくわが影は包み込む
大森静佳
跳ねまわるチョコのからだを夕焼けに伸びてゆくわが影は抱きしむ

ポイントはイメージに気持ちを託す
愛の「まなざし」を生かすには動詞に愛を込めよう。

さっぱり解りませぬ…。なんだかなぁ~。

2021年10月20日水曜日

兼題「秋の暮」

秋澄むや余韻とともに踊る人
秋の声そこに心はありますか
秋朝や睡眠負債また増やし
秋霞未練多くして生かさる
秋の夕焼無駄金は使わない

NHK俳句 兼題「秋の暮」
選者 岸本尚毅 ゲスト 紺野ぶるま 司会 中田喜子

冒頭の俳句
くつきりと黒々と皆秋の暮   岸本尚毅

「秋の暮」の例句。
日のくれと子供が言ひて秋の暮   高浜虚子

テーマは「俳句と想像力 人の心の中を想像する」でした。

今週のお気に入り
砂浴びのあとの窪みや秋の暮   神奈川県横浜市 前沢五郎
出漁のもはや見えぬ灯秋の暮   富山県富山市 中島平太
ホスピスの母へたこ焼秋の暮   兵庫県西宮市 奥村ほおずき

問題提起(夏井いつき先生は添削されたと思います。)
頬杖に水の雲見る秋の暮   福島県白河市 佐藤佳夫
滝に来てしぶき冷たき秋の暮   東京都北区 伊藤憲次

岸本教官の添削道場

しづまりて物の影より秋のくれ   投稿句
添削
しずかなる物の影より秋のくれ

鳥の背の小さき雨粒秋の暮   中田喜子
添削(夏井いつき先生だったらこうは添削しないのでは…?)
鳥の背に雨粒を見し秋の暮

寒いねと言いたいベンチ秋の暮   紺野ぶるま
添削ではなく案として…。
寒いねと思うベンチや秋の暮
寒いねとつぶやくベンチ秋の暮

2021年10月19日火曜日

アインシュタインとハーランと如月真菜

秋の星緩急をつけたエナジー
香り効きグラスに注ぐ今年酒
秋の川鳥飛び立ちており立ちて
トルソーの創るダンスや秋を跳ぶ
神の祝福受くダンサーよ秋麗

夏井いつき俳句チャンネル より
北窓開くおまえとは別れたい   如月真菜

アインシュタイン 曰く
「男は結婚するとき、女が変わらないことを望む。
 女は結婚するとき、男が変わることを望む。
 お互いに失望することは不可避だ。」

パトリック・ハーラン 曰く
「butでなくandを使おう。
 『友達と遊びたい。でも、宿題がある』でなく
 『友達と遊びたい。そして、宿題がある』にすると
 両立させる方法を考えるようになる。」

2021年10月18日月曜日

ジェームズ・アレンとマーフィーの言葉



書道特別展 文字の美 柳宗悦がみたもの
松井健(東京大学名誉教授)講演

藤袴サツマニシキの集まらん
阿南ではサツマニシキが群れて飛び
無駄な自己犠牲多過ぎて冬ざれ
行く秋や浮かんだ景色写生せん
心中へ秋には風が透き通る

ジェームズ・アレン 曰く
「能力の限界を感じているなら
 このことを知るといい。
 あなたの能力の限界は
 あなたの思考がもうけた境界線であり、
 あなたが自ら築いた壁である。」

マーフィー 曰く
「あなたの運命を決めるのは
 あなたの心に張られた帆であって
 
風ではありません。」

2021年10月17日日曜日

尻文字三角パス第2回

やや寒し汚れ落とさぬ洗濯機
ぼんやりとした不安の中冬隣
あるがまま見せてください星月夜
秋澄むや愛も知らずに召され逝く
蚯蚓鳴く根っこに多いとは真

夏井いつき俳句チャンネル より
【尻二字三角パス】ゲスト登場!夏井いつきの妹と尻二字三角パス!

今回のゲストはローゼン千津さん!

青梅をかきはじめなり菓物帖   夏井いつき
張といふ男とすする夜の無花果   夏井いつき
蝶々や過去帳開く和尚さん   ローゼン千津
ぢくぢくと残暑を抉(えぐ)る猫の爪   家藤正人
爪痕のありて桜の紅葉かな   ローゼン千津
かなしみの青なり露草の青は   夏井いつき
オハイオのトウモロコシとかナッツとか   家藤正人
とか言って又酒を吞む曼殊沙華   ローゼン千津
しゃげるとは尻に敷いたる花衣   夏井いつき
(悄気ている和尚に自然薯を下げて)
炉も雪も仕舞いの音になりにけり   家藤正人
ケリーバッグに一枚櫨紅葉   ローゼン千津
みじんこの水夏空のちりぢりに   夏井いつき
理に適うからががんぼはこはれます   家藤正人
鱒(ます)鮨の割箸小さし母の家   ローゼン千津

楽しかった!
意地悪をしないで良句にしてくれればもっと良いのに…。
「いえ」をリスナーにコメント欄で詠んで貰い
第3回【尻二字三角パス】の優秀句が尻文字になるとか…。
楽しみにしています!

2021年10月16日土曜日

弁当の店頭販売で一句

都合良く弄ばれて秋の声
秋日和自分本位に生きて逝く
分身はねずみバンクシーは稲妻
流星やマーケティングのバンクシー
行く秋や静止したままのパソコン

プレバト纏め 2021年10月14日
弁当の店頭販売で一句

永世名人英夫のお手本
東国原英夫
林檎のうさぎ雲梯を二段飛ばし
(私には前半と後半の繋がり、展開が解りません。)

特待生昇格試験
村上健志
ふりかけに詳しきナース黄落期
(上五中七は巧いと思いました。しかし、
 季語の取り合わせが私には解りません。)

馬場典子
居酒屋の定食鹹(から)く鰯雲
(ご自分の心情を巧く表現されていたと思います。
 「く」と「し」との違いを背景の目線で説明。納得!)

1位 星野真里
鯖雲と無人弁当販売所
(サブリナル効果の勝利。「と」を使った並立句。
 私は勉強になりました。)

2位 犬山紙子
朝寒や唐揚げ渡す火傷の手
(季語と内容が合っていた。)

3位 高島礼子
紅葉をお箸で彩るおべんとう
(内容を聞くまでの添削 箸を持て紅葉彩るお弁当)
添削
紅葉弁当わたくし色に詰め直す

4位 くっきー!
葉の隙間溢(こぼ)れ蟲(むし)くる歯の隙間
添削(「木漏れ日」が凡人ワードとは知りませんでした。)
木漏れ日やこぼるる飯にたかる虫

次回のお題は「ランキング席」

2021年10月15日金曜日

高橋泥舟&山本周五郎&小鳥狩

ありのまま生きて傷つき破芭蕉(やればせう)
秋暮る記憶辿りて指を折り
秋の池心静かを映し出し
秋の月波立てど心動かず
酔芙蓉朝から夕へ移ろわん

▪高橋泥舟 曰く
「欲深き人の心と降る雪は、
 積もるにつれて道を失う。」

▪山本周五郎 曰く
「この世で経験することは、
 なに一つ空しいものはない、
 歓びも悲しみも、みんな我々に
 よく生きることを教えてくれる。」

▪1分季語ウンチク 「小鳥狩」
この季語すでに絶滅寸前季語かもしれません。
現在はすでに禁じられた猟法だからなのです。
秋に遠くを旅して渡っていく小鳥をですね
山の高い木立に霞綱(かすみあみ)をはって
その下に囮(おとり)を置いておくのです。
その囮に呼び寄せられてやってきた小鳥たちを
一網打尽にその網でガバッと捕まえてしまうという
そういう猟法になるのですねぇ。
やや残酷な気もいたします。
この狩猟法 歳時記ではですね
もう2000年代ですでに
禁じられているということですので
ひょっとしたらもう完全なる
絶滅寸前季語かもしれません。

2021年10月14日木曜日

紅白俳句合戦

朝寒し我慢できないお年頃
秋の暮女は待つと思うなよ
もう二度としくじらないわ秋旱
秋寒し愛を知らずに生きてきて
死が繋ぐ命ありけり冬隣

夏井いつき俳句チャンネル より
【紅白俳句合戦】第一回紅白俳句合戦の結果発表をします

赤 あやまって林檎落としぬ海の上   正岡子規
白 川を見るバナナの皮は手より落ち   高浜虚子

赤は色彩の対比が綺麗である。
悔い、執着を含めて印象に残る。
「あやまって」二つの考察ができる。誤るか謝るか!
説明的あるいは状況把握に役立った。
林檎は子規自らの吐血をイメージしているかもしれない。

白はダジャレと思った人が多かった。
これは問題句。痴呆俳句と言われている。
禅の境地、無の境地という人もいるとか…。
道徳的な読みから皮を捨てるな!と言った人も…。
倒置法が効いている。
手に持っているものを落とすくらい何かに
驚いたと言うドラマであると言う解釈。
空虚!季語が作者の動作を受け止めている。

赤の方が大きい映像、白は焦点が定まっている。

結果 赤145票 白115票 子規が勝利!

白は写生の境地!と赤から白に移ったと家藤正人氏!
私は最初から白でした!(9月17日記載)

2021年10月13日水曜日

題「挑む」

秋の竹林10本のソライロタケ
秋の暮手暗がりとなる書簡
秋の風家賀(けか)集落で育つ藍
ソラと呼ぶ家賀(けか)集落の藍の花
空高しカヤを施用す棚田かな

NHK短歌 題「挑む」
選者 佐佐木頼綱 ゲスト 小池祐貴 司会 星野真里

冒頭句
出鱈目に光をゆらす樗(おおち)の葉を病に挑む君と見ている 
佐佐木賴綱
樗(おおち)は栴檀(せんだん)の古名。

今週のお気に入り
青空へぐるんと落ちてみたくなり十年ぶりに挑む鉄棒
青森県八戸市 夏野あゆね
ギリギリを攻めろと鏡の言うままに際の際まで引くアイライン
神奈川県横浜市 久藤さえ
(頼綱先生!誤読だと思います。お水の女性の感覚では?)
頂点に挑むすがたが次々と画面のなかに現れて立つ
兵庫県神戸市 杉村芳美

選者の話では「スポーツと日常」
迫る壁にペダルが重い我が脚と晴眼者(パイロット)の背に祈る我武者羅(がむしゃら)
葭原(よしはら)滋男

「頼綱さんの!短歌かかって来なさい !」
題「小池祐貴さん」

💮自らに挑むゆうきの胴体(トルソー)がフィニッシュフィンを白く染めあぐ 
佐々木頼綱

考える肉体となり走り抜け景色消えゆくOn Your Marks 
星野真里&カン・ハンナ組
(「on your mark(s)」は競技用語で「位置について !」という意味。)

SPORTSの挑戦とは他人と競うものではないと思います。
あくまで自らとの闘いではないでしょうか?
佐佐木頼綱さんは間違っていると思います。
番組中、ゲストも語られていたのですが…。
いい加減、気が付いて欲しいです。

2021年10月12日火曜日

兼題「新酒」

Y路地で方向違う秋意かな
交差する時間少なし秋の暮
キャンパスを痛みと共有秋麗
栗おこわ腱鞘炎となりにけり
秋暁や日々の努力は惜しまない

NHK俳句 兼題「新酒」
選者 阪西敦子 ゲスト 若林英司

冒頭の俳句
夕さりて雨に新酒の匂ひかな   阪西敦子

阪西敦子先生のテーマ「季題あるがまま」
「新酒」は元々は、秋の季題。近来は技術の
進歩により他の季節に造られるようになった。
特に酒造りには気温の低い冬が適している。

二三子(にさんし)の携(たずさ)へ来る新酒かな   高浜虚子(秋)
風花の高窓仰ぎ新酒唎く   中井余花朗(冬)

今週のお気に入り
ただ山と川ある暮らし今年酒   可笑式(おかしき)
この国のこの時代生き新走(あらばしり)   渡辺しゅういち
新酒抱きにやりにやりとチャイム押す   丸田征男
今年酒男励ます男たち   加藤ゆめこ
筋肉に随意不随意今年酒   板倉一光

「季題アップデート」は「新酒」
阪西敦子先生の即吟は…。
眺めては口へ運びて新酒かな   阪西敦子

阪西敦子先生の俳句は好きかも…?
ただ、今回は私は酒を嗜めないので…。
ちょっと理解できなかったのですが…。

2021年10月11日月曜日

兼題「鹿」

引き寄せられる事実は一つ秋の風
固きものぶつかり合って秋の暮
あるがまま流れのままに椋鳥死す
エモーショナルな空間を作り出す秋
秋気澄むいかに生きるか問うてみる

ギュッと!四国 2021年10月9日
https://www.nhk.or.jp/matsuyama-blog/gyutto/haiku/ より

兼題「鹿」
「鹿」の交尾期は8月から10月頃まで。
牡鹿(おじか)が、牝鹿(めじか)を「ピュー」と呼ぶ
高い声が哀切(あいせつ)で、「妻恋う鹿」という傍題もある。
花札でも紅葉と配されているが
牝鹿(めじか)を恋う声を愛でて「秋の季語」とされている。
季語「鹿」の傍題は、「牡鹿」「牝鹿」「鹿の声」
「鹿鳴く」「妻恋う鹿」「鹿の妻」
「夜の鹿」「しし」「かのしし」「神鹿」など。

選句ポイント
「鹿」らしい特徴を観察&描写

ギュッと!特選
群れ鹿の眼(まなこ)あまさず吾を見たり   深山むらさき
(鹿の群れを観察しての「一物仕立て」
鹿たちの様子を「眼あまさず」と描写した点が秀逸。)

放送でご紹介した「秀作」
ぽぷぷぷと糞する鹿と目が合(お)うて   いさな歌鈴
曉の霊気ふるはす神の鹿   佐川碧
せんべいをせがみし鹿の息荒し   たむらせつこ
ぐずぐずと鹿引き返す谷の淵(ふち)   吉野川

放送でご紹介した「佳作」
光る眼(め)を上下させつつ鹿寄り来(く)   じゅん
山道は渋滞鹿の仁王立ち  まるこ
曲がり角光る鹿の目クラクション   大薮ハナミズキ
宝殿に鹿の出迎え人まばら   ハナショウブ

私のお気に入り
倒木や薄き光を浴ぶる鹿   いたまきし
寺の影もあり鹿の影もあり   まるかじり
微熱めく鼻突き出して鹿の声   花紋
夕さりや神社の杜に鹿の鳴く   じょいふるとしちゃん
縄文より人は何代鹿の声   久留里61
後ろより近づいてくる鹿の息   紗千子

2021年10月10日日曜日

文法と解釈「ぬ」

降(くだ)り月強く握らん掌(たなごころ)
後ろから強く抱かれ星月夜
身に入むや何でもありの人生か
秋の声見て見ぬ振りな大人かな
ドーパミン多き人に振り回されて(無季句)

夏井いつき俳句チャンネル より
【文法と解釈】「サタン離れぬ」の解釈について考えましょう

われにつきゐしサタン離れぬ曼殊沙華   杉田久女
サタンが離れました?離れません?
どちらに受け取るかが「ぬ」を
どう解釈するかによって分かれてくるのです。
何をヒントに解釈したらよいのでしょうか?
「ぬ」がポイントになってきます。
パターンA:完了の助動詞「ぬ」の終止形
パターンB:打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」
次に名詞・体言が来る
パターンB´:口語の打消の連体形「ぬ」
文語で揃えるBは文語・口語が共存するB´

中七の部分が口語としてのつぶやき
パターンC:口語の打消の終止形「ぬ」
この弱点は「つきゐし」という文語の形との整合性
文語・口語が同居してしまう
「し」は過去の助動詞「き」の連体形

一句の中に文語と口語が混在するのは許容される範囲
歴史的仮名遣いと現代仮名遣いが混在するのは駄目。

ABCの3つの解釈の中、皆さんはどれを選びますか?
「離れました」「離れません」をまず考えましょう。

一応、私は「離れない」を選択しました。
しか~し、私には難し過ぎました。

2021年10月9日土曜日

猿酒とは

一針に百徳着物願い込め(無季句)
悦びの下ごしらえや秋高し
半切をまたぎ伸ばす背秋日和
レム睡眠めくパラドキシカルな秋 
謂れあり紅白競う彼岸花

1分季語ウンチク 猿酒(さるざけ)

この二文字で「ましら酒」と読むこともあります。
4音が使いやすいか?5音が使いやすいか?
それぞれの状況にあわせて使えます。
猿が木の実をとって木のうろや岩の窪みなどに溜め込む。
その溜め込んだ木の実たちが
雨や露を吸っていって発酵しお酒になっていく。
というそういったものが
「猿酒」になってくるんですねぇ。
やや、伝説的なというか浪漫に近いような
そんな季語でもありますね。
本当にこの季語をみたことが有る無しに関わらず
結構俳人的には人気の季語
作ってみたくなる一句、やってみたくなる、 
そんな季語でもありますねぇ。

2021年10月8日金曜日

セリエとアウグスティヌスの言葉

好物も目で味わいて秋の月
月渡る茶渋がくすみ味となる
欠けたら修理して掌(たなごころ)秋気
骨董は移ろいの中秋の川
百徳着物寺に預けん秋望む

ハンス・セリエ 曰く
「すべてのストレスは、
 私たちに傷跡を残していきます。
 でもそれは同じようなストレスに襲われた時に
 今度は私たちを守ってくれるのです。」

A・アウグスティヌス 曰く
「まもなく君は死んでしまう。
 それなのに君はまだ単純でもなく、平静でもなく、
 外的な事柄によって害を受けまいかという
 疑惑から解放されておらず、
 あらゆる人に対して善意をいだいているわけでもなく、
 知恵はただしい行動をなすことにありと
 考えることもしていないのだ。」

2021年10月7日木曜日

ヘッセとロスキンとローリングの言葉

見落とされ踏まれそうです秋の草
やり場なき心ぶつけん秋黴雨(あきついり)
豪奢(ごうしゃ)を生きる人と泡黄金菊(あわこがねぎく)
歳重ねるも傷痕深く秋の声
秋晴れや手にはお気に入りの茶碗

ヘルマン・ヘッセ 曰く
「人生に対抗する最善の武器は
 勇気とわがままと忍耐です。
 勇気はあなたを強くします。
 わがままは冗談を言わせます。
 忍耐は落ちつきを与えます。」

レオ・ロスキン 曰く
「弱き人こそ薄情である。
 本当の優しさは強き人にしか期待できない。」

J・K・ローリング  曰く
「どんな人かを知りたかったら、
 その人が下の立場にあたる人を
 どう扱うかを見れば分かる。」

2021年10月6日水曜日

正岡子規のこぼれ話

澄む秋や消えることなき蟠り
爽籟(そうらい)達観致したく候
人生は苦渋とみたり秋北斗
秋旱焦燥感に煽られて
さりげない仕草でみせる秋意かな

夏井いつき俳句チャンネル
【正岡子規こぼれ話】病床で子規が見たかったものとは?

正岡子規は明治35年9月19日に亡くなっています。
明治35年5月から「病牀六尺」という文章を書き始めました。

その中のエピソード
5月26日記述
「病に寐(ふし)てより既に六、七年車に載せられて
 一年に両三度出ることも一昨年以来全く出来なくなりて
 ずんずんと変って行く東京の有様は僅かに新聞で読み
 来る人に聞くばかりのことで何を見たいと思ふても
 最早我が力に及ばなくなった。そこで自分の見た事の
 ないものでちょっと見たいと思ふ物を挙げると…。」
と、言ってリストを作っています。

正岡子規の好奇心の強さが伺えます。
この文章は亡くなる1年3か月前に記されたものです。
活動写真・自転車の競争及び曲乗・動物園の獅子及び駝鳥・
浅草水族館・浅草花屋敷の狒(ひひ)及び獺(かわうそ)・
見付の取除け跡・丸の内の楠公の像・自働電話及び紅色郵便箱・
ビアホール・女剣舞及び洋式演劇・鰕(えび)茶袴の運動会

内藤鳴雪は子規の学校の寮の舎監さんで
当時学生だった子規の弟子になった人。

妄想で考えたからこそ楽しめたのかもしれないと塾長。
コロナ磨年の現在の状況に近いものがあると正人さん。
その通りだと頷きました。

2021年10月5日火曜日

題「仕事」

独りぼち秋の夕日を追いかけん
鷹匠の見つめる先や秋高し
偏りを投影させて月の暈
人生は神の意のまま星月夜
誤魔化すも分相応の老いの秋

NHK短歌 題「仕事」
選者 田村元 ゲスト 黒沢かずこ 司会 星野真里

冒頭句
サラリーマンは太鼓持ちではないけれどときをり持ちて叩くことあり 
田村元

今週のお気に入り
出張のホテルの風呂は目が暇でシャンプーボトルの裏を五度読む
千葉県千葉市 芍薬
部屋中に手作りの花咲きみだれ一輪五円の母の内職
岐阜県多治見市 野田孝夫
水出しのパックが容器の中で浮くまだ馴染めない九月のオフィス
大分県大分市 梅鶏

類想類句ばかりな気がしました。

熱血!短歌ノック!
何をして遊ぶ?2233日目の業務內容
星野真里
添削
何をして遊ぼうか?2233日目の業務內容

仕事するあなたの肩も夜なれば柔らかくなりそういえば秋
カン・ハンナ
添削
仕事するあなたの肩も夜気(やき)のなか柔らかくなりそういえば秋

黒沢かずこさんの出題「ラジオ」
今日もまだ寝込む体を基地として電波信号受けたる鼓膜
星野真里
添削(詰め込み過ぎ。)
今日もまだ微熱で横になりながら鼓膜で触れる電波信号

ラジオからささやく声が秋雨の夜に溶け込み眠りに落ちる
カン・ハンナ
添削(主語が変わっている。)
ラジオからささやく声が秋雨の夜に溶け込み眠りに誘う

選者の話「歌人、この一軒」
ひらがなでものを思ふは吾一人英語さんざめくバスに揺れゆく 
河野裕子

短歌 あなたならどうする?
つゆ少し付けてもり蕎麦啜るとき□□

つゆ少し付けてもり蕎麦啜るとき君を忘れる勢いがつく
カン・ハンナ

つゆ少し付けてもり蕎麦啜るとき残りの蕎麦を見ながら食べる 
黒沢かずこ

つゆ少し付けてもり蕎麦啜るときずるずるずると弾むひらがな
星野真里

つゆ少し付けてもり蕎麦啜るときずずつと師走が近づいてくる 
田村元

星野真里さんの短歌が大好きです。
背伸びせず等身大で経験を詠っておられるから…。

2021年10月4日月曜日

兼題「夜長」

通り雨めく恋に憧れ秋を舞う
信頼も覚悟もなしの夜長かな
やまじ風生暖かく頬に髪   
園児よりでっかくなったコスモスよ   
コスモスや園児隠してゆらゆらと   

NHK俳句 兼題「夜長」
選者 片山由美子 ゲスト 平田俊子 司会 武井壮

冒頭句
長き夜をひとりのために使ひけり   片山由美子

平田俊子女史の朗読
「音信不通」
何か怒ってるの ?
それとも病気
または旅行中
ひょっとして監獄
もしや手足を縛られている
電話が故障ということもある
のんびりお風呂に入っているか
眠りっぱなしということも
でなけりゃ
わたしのことなんて
とっくに忘れたのだろう
でも
そもそも誰かいたのだろうか
内緒でこの世に棲んでるわたしに
電話をかけてくる人が
いるとすればおかあさん
あるいは大家さん
もしくは探偵
ひょっとしていたずら
または何かのセールスの人
それとも
遠い日の自分

機織や古き旅館の乱れ箱   平田俊子
(機織=はたおり。キリギリスの別名。)

見直し「俳句の常識」今回のテーマは「助詞」
「も」の効果的な使い方
文月や六日常の夜には似ず   芭蕉

片岡由美子先生の説明
この句は七夕一夜前の日を詠んでいます。
本来は七夕の7月7日が特別な日です。
前日から普段とは違う気分になっているという句。
「六日は常の夜には似ず」であったら、
原句のような味わいは失われてしまっていた。
「も」が曲者。微妙な表現を醸し出している。

露草も露のちからの花ひらく   飯田龍太

片岡由美子先生の説明
この句は、「露草露のちからの花ひらく」と詠める。
「は」では表せないものを表現している。
「も」を使い曖昧にすることで
小さな露草の花でさえもと言ったものまで表現。
「は」では表し切れないものを「も」で表現した。

×店先の和菓子の色の春めきぬ
店先の和菓子の色春めきぬ

×長梅雨や櫛の通りもままならず
長梅雨や櫛の通りままならず

×秋天へ声の揃ひて木遣歌(きやりうた)
秋天へ声て木遣歌

今週のお気に入り
長き夜や目覚むる度に雨の音 福島県白河市 佐藤和子
百年の記憶をたどる夜長かな 静岡県富士宮市 後藤勝子(99歳)
亡き母を語れば長き夜となりぬ 兵庫県たつの市 田口早百合

武井壮さんの常識破りの句
黒葡萄黒き選(よ)りて掌に 武井壮
(「を」が効果的。画数の漢字が多くて
その重さが葡萄の重さをも表現している。)

選ばれた句は後藤勝子さん以外の句は
連想類句のように感じました。
あまり連想類句に目くじらは立てなくて良いのでは…。

2021年10月3日日曜日

無人駅の優秀句

秋の宙独り善がりのダンディズム
秋気迷惑危険なダンディズム
秋の風もてはやされるダンディズム
責任のない自由はない秋冷
真夜中の月自分を愛し歩む人

【大人の凡人あるある】
凡人を脱出した「無人駅」の優秀句を発表します
https://youtube.com/watch?v=dkO10NWK03s…

蜩を一時間半無人駅   映湖陶月
葛踏みてキセルのをとこ無人駅   A-no-hito
(季語が主役になっている。)
茸狩り終え百人の無人駅   石井一草
桜蘂降る世田谷に無人駅   多喰身デラックスa.k.a
夏蝶の糞干からびて無人駅   後藤佳子
門松のすくと立をり無人駅   平本漁水
煮大根の香が何処からか無人駅   おーちょー
蜩や出臍のごとく無人駅   あいちぷるうと
木の実落つ切符小箱へ無人駅   爽花
団栗とキツプを箱へ無人駅   Haruyo
万緑の小腸当たり無人駅   磐田小
猫じやらしじやらじやり砂利の無人駅   北藤詩旦

家藤正人さん一押し
野は焼けて阿蘇の余熱の無人駅   いさな歌鈴
塾長一押し
磯蟹を踏みたる朝の無人駅   染井つぐみ

2021年10月2日土曜日

秋のタイトル戦「金秋戦」

秋の川皿を持ち寄り食らわんか
骨董の美とはあわれと秋の声
使い込み日々成長とげる器かな(無季句)
山かぼちゃハイカラさんへ七変化
秋の声伊万里は鶴岡で探せ

プレバト纏め 2021年9月30日
秋のタイトル戦「金秋戦」
バッテリー切れ間近で一句

1位 北山宏光
スマホ死す画面に浮かぶ指紋と月
(おめでとう!あなたの等身大の俳句が大好きでした。
 楽しみにしています。頑張ってくださいね。)

2位 横尾渉
フリードリンク夜学子の電子辞書

3位 立川志らく
静かに文を破くふと秋蛍
提案(私はいっそ自由律を詠めばよいのにと思いました。)
静かに文を破く秋蛍ふっと
静かに文を破く秋蛍ほのと

4位 藤本敏史
まず雁の飛来を尋ね長電話
(最近、連想類句が多いような気がします。)

5位 村上健志
発電機運ぶ赤鬼村祭
(村上健志さんはお祭りがお好きみたい…。)

6位 梅沢富美男
龍淵に潜む充電切れスマホ
添削(「龍淵に潜む」は、中国の言葉「龍は春分に天に昇り、
   秋分に淵に潜む」に由来する秋の季語。)
真っ黒な液晶画面龍淵に

7位 東国原英夫
携带をタコ足充電夜学校
添削(今回の俳句にはがっかり…。発想を飛ばして欲しかった。)
タコ足充電夜学の携帯のとりどり

8位 中田喜子
秋雷や絶縁破壊長き闇
添削
秋雷や絶縁破壊の闇長し

9位 千原ジュニア
夜半の秋次子に授乳の妻ZZZ
添削
次子に乳あきの夜半なる妻ZZZ

10位 森口瑤子
秋蝉や仰向いてなほぎぎと鳴く
添削
仰向いてぎぎと鳴きけり秋の蝉

今回はちょっと期待外れでした…。
このお題では大きく詠めなかったのかも…。
発想を飛ばして欲しかった。

2021年10月1日金曜日

渡辺貞夫と山本寛斎の言葉

葛掘るや寡黙な背なでまた見つけ
スコップと鍬を担いで葛根掘る
手の中で変わる陶器よ夜長かな
移ろいを心に刻む秋の声
天晴れはもののあわれぞ秋高し

渡辺貞夫 曰く
「練習とは追究。そして、
 本番を楽しむための準備。」

山本寛斎 曰く
「すべての運命、
 すべての現実を受け入れること。
 そこから再び歩き出せばいい。」

2021年9月30日木曜日

おしあなと富士の初雪

秋の宙旨みとならん不純物
人工の水の不味さよ秋の声
父と子よ膝で石榴が割れるのか?
流れ星虐めを好きな人のをり
白き菊シャネルに今も寄り添わん

一分季語ウンチク 「おしあな」
これは「風」を意味する季語
主に日本、長崎県で使われている
古い呼び方になるそうです。
この「おし」には「反対」とか「押し返す」
というような意味がありまして
もともと「あなじ」という季語があります。
これ、冬の北西の風になるんですけども
それを反対から押し返す風ということで
「おしあな」は南東から吹く風となっています。
海難事故などもおこすような強い風のようです。

一分季語ウンチク 「富士の初雪」
日本一の山、富士山の雪をあつかった
秋の季語になります。
富士山は夏でも雪が降るのですが
では「初雪」ってどういう意味なの?と考えた時に
2つ実はこの季語には解釈があります。
1つは富士の測候所 気象観測所から見上げて
富士の山頂に雪が積もっている
冠雪しているなぁ、というのが1つ目。
そして2つ目はやや流動的な「初雪」です。
その日が富士の中で一番平均気温が高かった日だなぁ
というのを過ぎてから、ああ雪が降りました
暑さを過ぎた、これが富士の初雪ですって思った
それが富士の初雪なのだそうです。
ですが、その後さらにまた暑い日がきたりすると
先日のあれは富士の初雪ではありませんでしたね
そこの暑い日を超えてさらにこの次が
富士の初雪ですと気温によっては条件が
移り変わってゆくものだそうです。
分かりにくいですね。

2021年9月29日水曜日

題「車(タクシーなど)」

百二十歳長き道のり菊日和
北斎の繊細な筆致紅き菊
色褪せず歌い継がれて草の花
終わり支度始めませんか秋声
螻蛄(けら)鳴くやポニーテールに嫁ぐ姫

NHK短歌 題「車(タクシーなど)」
選者 佐伯裕子 司会 小沢敬一 ゲスト 井戸田潤

冒頭の短歌
疲れやすき心は走る246号線ふるさとの街を縦に切りつつ
佐伯裕子

今週のお気に入り
ワイパーを止めれば世界は滝になりただ瀑声を聞く駐車場
和歌山県和歌山市 千代田環
こだわりのカレーとナンを出す店を車に載せて郊外を行く
岐阜県本巣市 イトウカンタ

短歌の基礎
今日のテーマは「擬人化」
(人間以外のものを人間に見立てて表す。)
「木々が揺れる」→「木々がささやく」
「雨が降る」→「空が泣いている」
「ペンを転がす」→「ペンが目を回す」「寝転がるペン」「ペンが逃げる」
「イスが軋む」→「イスが年老う」「イスが嫌がる」など。
(意思を持たせると良い。)

高速路さらに加速し走るべく路面をつかめフロントタイヤ
春日井建

トレーニング
赤とんぼかかしの肩にひと休み夕陽で染まる照れてるほっぺ
小島よしお
(一首の中でありきたりな2つの擬人化は失敗する場合が多い。)

春休み所在なさげに朝礼台が出番はまだかと四月を待ってる
小沢敬一
添削(過剰な表現。ありきたりな表現や多用は避ける。)
春休み所在なさげに錆びついた朝礼台が四月を待ってる

帰り道渋滞続くアクアラインブレーキランプは真っ赤に怒る
井戸田潤
添削(語順)
帰り道アクアラインの渋滞にブレーキランプは真っ赤に怒る

歯ぎしりがうるさい今日のウィンカー仲直りしたい夜のドライブ
小沢一敬
(擬人化が上手くいっている)

夕立を走り抜けてく軽トラはものすごい汗をワイパーが拭く
小沢一敬
添削(語順)
夕立を走り抜けてく軽トラのワイパーが拭くものすごい汗

5秒前震える指でレを押さえギザギザハートをアルトで歌う
井戸田潤
添削(サックスと言わないと勘違いされる。
「の」で繋げることで擬人化が巧くいく。)
5秒前震える指でレを押さえギザギザハートのサックスを吹く

扇風機前で伸びする我が子猫夏に疲れたあの日の父だ
小沢一敬
添削(「あの日の父」は比喩で擬人化ではない。
扇風機があるので夏は不要。)
扇風機の前で伸びする我が子猫疲れたなあとあの日の父だ

巧く使えば擬人化は温かみや滑稽さがでる。

2021年9月28日火曜日

兼題「瓢(ふくべ・ひさご・瓢箪)」

秋の夜エースを持ったいかさまし
秋の声老いてなお花となる
自分のことができない人と空高し
秋彼岸誰を護らん星となり
秋半ば余分なものは取り除き

NHK俳句 兼題「瓢」
選者は櫂未知子 司会は塚地武雅 

瓢(ふくべ・ひさご・瓢箪)
青い瓢箪のこと。成熟した実の中身を腐らせて
中を空にして酒などを入れる器にする。)

宿題のお気に入り
鮮やかな服仕舞ひたり冬隣   塚地武雅
実石榴やとぼとぼ向かふ習ひごと   伊藤まい子
夜食とるそこはかとなき同志感   田中要次
奥祖谷は人より案山子多きけり   田中要次

今週のお気に入り
何か棲む瓢の中に小さきこゑ   板井すみ江
瓢箪のするりと風をかはしをり   南タミ子
青瓢神の遊びのかたちして   寺川育世

俳句、二歩目へ
めでたい季語、めでたくない季語
瓢は昔から子孫繁栄、末広がりと
人から言われめでたい季語とされてきた。
対照的な季語の紹介…。
うすき闇あれば必ず曼殊沙華   櫂未知子
曼殊沙華という季語は彼岸に咲くので彼岸花、死人花、
幽霊花、捨て子花など縁起の悪い呼び名がついています。
季語は満遍なく使った方が俳句に奥行きが出る。

俳句ドリル
□ □や 秋の暮
古本を捲(めく)る匂ひや秋の暮   櫻井紗季
(本と秋の関係が近い)

前脚のぐらつく椅子や秋の暮   塚地武雅
添削(椅子に脚はないと、櫂未知子先生。
脚はあります。専門用語でもありません。) 
脚少しぐらつく椅子や秋の暮

裏木戸にそぼ降る雨や秋の暮   いとうまい子
(裏木戸と秋の暮では寂し過ぎる。)

助手席に母の遺影や秋の暮   田中要次◎
添削(動詞が全くないのが良い。)

兄よりも先行く吾子や秋の暮   マネージャー
添削(作者の兄と吾子では?櫂未知子先生の誤読では?)
兄よりも弟先や秋の暮

2021年9月27日月曜日

俳句甲子園二〇二一

山粧ふや静けさの独り占め
なにげない幸せ持ちて秋の朝
見捨てられる無名の人々秋気
星月夜真実こそが美しい
覗き穴から見た世界秋旱

それでも詠む、青春の17音
俳句甲子園二〇二一 より

冒頭句
後朝(きぬぎぬ)のごとく空蝉剥がしをり 
信楽や一縷の春満月を練る

予選の兼題 片陰(かたかげ) 清水 空蝉(うつせみ) 茄子
松山東高等学校
清水いま古城の堀に流れ着く   山根大知
丸那須(なすび)句点の抜けたやうな日々   山根大知
特選句
清水いま清水を接ぎて久遠なる   野村隆志
後朝(きぬぎぬ)のごとく空蝉剥がしをり   野村隆志
夕清水いつかの雨とすれ違ふ   山根大知

長野清泉女学院高等学校
なんとなく泣きたい夜や麦茶煮る   小林蓮(れん)
好きだよと言えず飲み込む清水かな   大日向愛良
彗星の落ちて地上の茄子の花   大日向愛良
空蝉の蝉になる夢持っており   小林蓮

これだけ詠った松山東高等学校、
長野清泉高等学校は決勝には残れませんでした…。
レベル高し!

海城高等学校
太陽に近き嘴(くちばし)蚯蚓を垂れ   田村龍太郎(最優秀賞受賞)

決勝に進出したのは海城高等学校、開成高等学校A、
開成高等学校B、洛南高等学校 でした。

準決勝、決勝の兼題は菊、夜食、鰯雲

大菊や語る言葉も惜しければ   田村龍太郎
鰯雲一匹忘れられてゆく   田村龍太郎
艶めくや籬(まがき)の菊に雨しきり   田村龍太郎

洛南高等学校
土曜日は父の手づくりなる夜食   伊藤栞奈

開成高等学校
空蝉に傷一閃やアンタレス   垂水文弥
この街は汽水の匂ひ夜食とる
いわしぐもかかねば紙は光なり
徹底的に片陰をゆく女優
星空を歩いて茄子の無尽蔵

決勝は洛南高等学校と開成高等学校B
兼題は夜食
数本の花の明るき夜食かな   開成高等学校B
段ボール卓傾いてゐる夜食   洛南高等学校

優勝は開成高等学校B
2位は洛南高等学校
3位は開成高等学校Aとなりました。

個人的にディペートは超苦手なので
決勝・準決勝はやはり辟易しました。
俳句甲子園は主催者が
ディペートを競わせているのですね。
建設的な討論にするため、
提案形式にしてはいかがでしょうか?
例えば季語がおかしいと思えば
自分ならこの季語にするといった提案です。
悪い点を指摘するだけではなく、改案を示すべきでは…?
野党の国会議員を彷彿としてしまいました。
あのような人間を育てたいのでしょうか?

2021年9月26日日曜日

凡人ワードを使って凡人パーツへ

秋晴る川の流れに寝転がり
砂浜に立ったサウナや秋の晴
岩本寺サウナの外を秋の風
白秋やありふれた日常を生く
犬の背や秋夕映えに浮かびたる

夏井いつき俳句チャンネル より
【大人あるある】シリーズ
みなさんの「無人駅」の句を紹介します。

無人駅、秘密基地、観覧車、水琴窟は凡人パーツ

五音の季語+中七+無人駅 募集!
大人の凡人あるある「無人駅」編発表会
「ダム湖に沈む」も凡人パーツ
凡人の落とし穴とか沼をどうやってよけていくか?
「孫」「廃屋」「墓前や仏前に何かを備える」も危険。
一句の中の凡人ワードが悪いのではなく
凡人になりがちの凡人ワードを使って
凡人パーツを作ってしまう!
こうなったら手の施しにくいものになる。
凡人パーツにしないように
凡人ワードを活かさなくてはならない。

2021年9月25日土曜日

秋の夕日で一句

葡萄狩り谷より移住する獣(きつね)
過疎の町へと獣の移住秋麗
身に入むやコロナ長期化支援拡充
秋霖や時の流れは氾濫へ
澄む秋や緑の陽射しと水の音

プレバト纏め 2021年9月23日
秋の夕日で一句

永世名人東国原のお手本
東国原英夫
ラフレシアも秋夕焼も人を食うか
(ラフレシアとは世界最大の花で死肉に似た色彩や質感、
汲み取り便所の臭いに喩えられる腐臭を発する花。)

特待生昇格試験
千原ジュニア
公園の漫才師黙(もだ)秋夕焼
添削(語順が違う)
漫才師の黙公園の秋夕焼

河合郁人
初MCのエゴサ車窓は秋夕焼
添削(「MC」は、マスター・オブ・セレモニーの略称。
   「エゴサ」は、エゴサーチ(egosearching)の略。
   自分の名前などをインターネットで
   検索してその評価などを確認すること。)
初MC終えて車窓は秋夕焼
エゴサーチやさし車窓は秋夕焼
エゴサーチ苦し車窓は秋夕焼

1位 堀未央奈
独立の夜やゴッホの星月夜

2位 武尊(たけたける)
切れかけのグローブ眺めし秋夕焼
添削(過去にを現在にする。季語の充足感、悲壮感も受け止めてくれる。)
切れかけのグローブ眺む秋夕焼

3位 浅野ゆう子
選局はルーティン今日は土瓶蒸し
添削
選局はニュース今宵は土瓶蒸し

4位 水川かたまり
109夕日にうつされ0になり
添削
秋夕日に熔けゆく渋谷109

来週は3時間スペシャル 秋のタイトル戦金秋戦
バッテリー切れ間近で一句

2021年9月24日金曜日

ホーランドとジイドの言葉

秋の声吾の物差しの不確かさ
欲張らず水のごと生く秋麗
身の丈に合った人生風爽か(さやか)
秋雲へ向かいてがなる烏かな
秋渇き訳あり果実たらふくに

J.G.ホーランド 曰く
「『自分こそ正しい』という考えが、
 あらゆる進歩の過程で最も頑強な障害となる。
 これほどばかげていて根拠のない考えはない。」

ジイド 曰く
「幸福になる秘訣は、快楽を得ようと
 ひたすらに努力することではなく
 努力そのもののうちに
 快楽を見出すことである。」

2021年9月23日木曜日

中村健也と阿川佐和子の言葉

殊の外不運の小鳥ずぶぬれに
土砂崩れ浸水に遭う秋彼岸
参道に雨水溢れ秋遍路
一つ家仏壇二つ秋彼岸
まめやかに生きてきました雨月かな

中村健也 曰く
「開発は先の見えない夜行列車。
 度胸を持って走り続けなさい。」

阿川佐和子女史 曰く
「例えば、官僚や政治家を
 批判するのは簡単です。
 でも、いざ会ってみると
 みんなすごい。
 世論にコテンパンにされている
 あの人やあの人にも、
 人を惚れさせるオーラがある。」

2021年9月22日水曜日

令和相聞歌と静夜思

真夜中の月わたしへのおもてなし?
仏掌薯(つくねいも)箸を舐めてもまた明日
秋高し金なき世界相互互助
銀色の波打つ芒悠然と
青き空穂波かきわけ田に立ちて

■日曜美術館 アートシーン より
静夜思 とは
李白が月の光を詠んだ詩からつけられたそうです。

牀前(しょうぜん)月光を看る
疑ふらくは是れ
地上の霜かも
頭を挙げ山月を望み
頭を垂れて故郷を思ふ

■夏井いつき俳句チャンネル
【投句案内】令和相聞歌のご案内
テーマは「恋」

たとえば愛は白桃におく指の痕   夏井いつき
黄落やなぜわたしではないのです   夏井いつき

応募の規則は80文字以内の短文作品!
俳句、短歌、詩でも良い。

第2回最優秀賞
始まりは初雪の日の滑り台   GONZA

令和相聞歌
締め切り 11月11日
自作の未発表の作品で一人3作まで

第2回優秀賞
友達にもどる春夜の
口紅をこんなきれいに
ぬってしまって   夜行

毒りんごのような君の指に
触れじわじわ恋を
腐らせていく   鈴屋

令和相聞歌 https://www.reiwasoumonka.com/

第1回最優秀賞
君の名を 試し書きした 文具店   ピコタン
第12回最優秀賞
しゅわしゅわと 弾けるラムネ 盗み見る ビー玉ごしの 澄んだ横顔
そらたま
第11回最優秀賞
片恋のピアス海色春疾風   クラウド坂上
第10回最優秀賞
地下鉄の 出口で恋と ぶつかった   石関恵子

2021年9月21日火曜日

題「友」

締めきって秋陽遠ざけ灯をともし
秋冷やケアの甲斐なく日々シミが
白秋やシミが増殖手に腕に
高野山月を楽しむための家
薬王寺湯へ身を沈め秋遍路 

NHK短歌 題「友」
選者 大森静佳 ゲスト 佐藤文香
冒頭句
友のノートにマグダラのマリア〈M・M〉と略され夜はしずもりてゆく
大森静佳
木犀やくづれてぜんぶ君の本   佐藤文香

全身できみを抱き寄せ夜だったきみが木ならばわたしだって木だ
大森静佳
俳句化
抱きて夜の君は新樹かならば我も   佐藤文香

お気に入りの短歌
百杯は飲みたいと笑う友は明日画数多い名字に戻る
千葉県いすみ市 上野博子

君の住む海辺の町の地図見れば自転車を漕ぐ影の走れる
東京都あきる野市 みよ

ごめんねを言わず言われず赦しあうニホンオオカミだったね僕ら
神奈川県相模原市 髙田祥聖
狼の俳句を佐藤文香さんが紹介
絶滅のかの狼を連れ歩く   三橋敏雄

釣り友は一足先に還りたり撒き餌のような中のあの星
長崎県時津町 馬場実

今読みたい愛の歌
悪友がくれたオレンジ色のガム一生分噛みホームで捨てる
榊原紘

大森静佳のポイントで改作!
テーマ 気持ちを言わずに表現しよう

元歌
動物園につきあひくるる友のある幸せ思ふ秋の一日

改作ポイント①幸せを「気持ちよさ」で描こう
動物園につきあひくるる友のゐて秋の一日を光があらふ

改作ポイント②幸せな気分で見た情景を持ち描こう
この友が我にあること柵越しのボス陽だまりへのそりと移動
有森也実
この友が我にあること柵越しのラマの鼻息かかる秋の日
佐藤文香
この友がわれにあること柵越しのキリンの瞼あかるき秋を
大森静佳

俳句化
秋風やラマを一緒に見てくれて   佐藤文香

元歌を俳句化
友連れて動物園や初紅葉   佐藤文香

大森静佳先生の今日のメッセージ
気持を言わずに表現するには情景をスクリーンにしよう

この試みは最高でした!
また、違う選者でもやって欲しいと思いました。
NHKさま!ご検討宜しくお願い致します。

2021年9月20日月曜日

兼題「秋」と「名月」

カシオペア個でできぬこと屯(たむろ)して
テレワーク家族を密に小鳥来る
リーダーの腕に挟まれ秋の薔薇
おしあなが吹きて自粛の体をなす
白秋や機微の通じぬ夫(つま)となり

NHK俳句 兼題「秋」
選者 岸本尚毅 ゲスト 春風亭昇吉 司会 中田喜子

冒頭句
音もなく歩くお方や城の秋   岸本尚毅

目黒の秋刀魚の落語の説明を聞いて…。
岸本尚毅先生がご紹介くださった句!
まひるまの秋刀魚の長く焼かれあり   波多野爽波

今週のお気に入り
粛々と記憶の消ゆる老の秋 茨城県 中原如伽
空映す暗き廊下や秋の寺 栃木県高根沢町 大塚好雄
九十の身を白帝に委ねけり 千葉県成田市 神郡一成
波止の秋もつれしチェーン錆ぶるまま 兵庫県加古川市 渡辺しま子

岸本教官の俳句道場
母の香も譲りうけたる秋袷   中田喜子
添削
母の香や譲りうけたる秋袷

チアガール翔べ秋天を高く抱き   春風亭昇吉
添削
高く翔んで秋天を抱けチアガール

手拍子の施設の母や窓の秋   投稿句
手拍子す施設の母の窓に秋   春風亭昇吉の添削
添削
手拍子の母を施設に窓の秋

今回の岸本直樹先生の添削はおかしい…。
作者に全く寄り添っていない気がしました。
春風亭昇吉さんの添削の方がよっぽど良いと思いました。
今回選ばれていた句は類想類句が多かったのでは?残念です。

春風亭昇吉さんは多作多捨だそうです。
俳句は多読多億が上達の道と岸本直樹先生。
作句は人生のアルバムになっていると昇吉さん。
大ファンです。益々楽しませてくださいね。

◆一分季語ウンチク 名月
「月」は三秋の間使えますが「名月」は
仲秋だけに使われる季語として
歳時記に収録されています。
陰暦8月15日の月を指しています。
名月の「名」は1年で一番美しい月を
愛でる心と言うのがこの季語の肝となってきます。
わざわざ使うのでしたら賛美の心が
入った一句を作りたいものです。

2021年9月19日日曜日

助動詞「けり」

台風の直撃受ける午前二時
許せないこともあるのよ秋湿り
人を傷つけあっけらかんと秋の虹
昨夜(よべ)の雨心の中の水たまり
仲秋やルールは破る為のもの?

◆夏井いつき俳句チャンネル より
九月の子規 助動詞「けり」
過去の助動詞が切れ字になった歴史!
「けり」は「三大切れ字」と言われているものとして
「や」「かな」「けり」と言われています。

大仏に二百十日もなかりけり   正岡子規
二百十日とは立春(2月4日頃)から数えて
210日目の日で毎年9月1日頃にあたり厄日ともいう。
台風の特異日でもある。
農家にとっては警戒すべき厄日である。
「けり」の元々の意味は前からずっと
そこにあったのだけれど、ある日
自分がふと気づくというニュアンスである。
元々は過去の助動詞でした。
詠嘆として使われ出して
切れ字の働きをするようになった。
共感して貰いたいと言う気持ちが込められている。

秋の蝶動物園をたどりけり   正岡子規

淋しさの三羽減りけり鴫(しぎ)の秋   正岡子規

▪子規の弟子の長塚節(たかし)から
「鴫三羽小包ニテ」
百舌(もず)も鳴き出し候 
椋どりもわたり申候
蕎麦の花もそろそろ咲入れ候 
田の出来は申し分なく
秋蚕も珍しき当たりに候

▪そのお返しの子規の言葉
田舎の趣見ルガ如シ
一寸往テ見タイ。

松に身をすつて鳴けり雨の鹿   正岡子規
(完了の助動詞「り」が接続した形。
「なきけりと」読まそうとしている。)

2021年9月18日土曜日

金秋戦予選

しきたえの枕の涙長夜かな
潤んだ目挙動不審の赤蜻蛉
鶏頭や子規の句真似て数数え
観音寺道間違えた秋遍路
(2021年)競技会相次ぐ中止秋さびし

プレバト纏め 2021年9月16日
秋のタイトル戦「金秋戦」予選
Cブロック 読書の秋で一句

1位 北山宏光
秋声や台詞をなぞる蛍光ペン

2位 ミッツ・マングローブ
爽籟(そうらい)を追う老眼鏡の上目
添削(爽籟【秋の季語】秋風の爽やかに吹く響きのこと
  「籟」は笛と言う意味。)
老眼鏡上目遣いに追う爽籟

3位 松岡充
流星や馴染みの書肆(しょし)も‟閉店す„
添削(もが散文的。‟„は要らない。
書物を出版したり、また、売ったりする店。)
馴染みなる書肆の閉店星流る

4位 千賀健永
白鯨の引き波はこの台風や
添削(小説(ハーマン・メルヴィルの『白鯨』)の
悪魔の意思を持つ巨大白鯨を詠いたかったようです。)
台風のこの引き波は白鯨か

5位 馬場典子
虚栗書架の威を借るウェブ会議
添削(「虚栗」みなしくりとは中身のない栗。
   小林一茶の門下生が作った俳階集の名称でもある。)
書架を背に虚栗めくWEB会議

決勝進出は森口瑤子さんと立川志らくさんに決定!
ミッツ・マングローブさんの句は
連想類句が多いからという理由で落とされました。

Aブロック
座り込むアンカーの目に秋夕焼   森口瑤子
Bブロック
《首吊りの家》には林檎は無いのか   立川志らく
Cブロック
爽籟を追う老眼鏡の上目   ミッツ・マングローブ

来週はいよいよ「金秋戦」決勝です。
題は「バッテリー切れ間近」。

2021年9月17日金曜日

千住博と紅白俳句合戦

盆の家座り続ける無垢の人
秋気澄む好みの茶碗の二服点て
丸石をごろり転がせ秋高し
秋ともし他人を不快にさせる人
期せずして運の極みよ白秋よ

■夏井いつき俳句チャンネル
【紅白俳句合戦】皆さんの投票で決まります!

紅 あやまって林檎落としぬ海の上   正岡子規
白 川を見るバナナの皮は手より落ち   高浜虚子

コメント欄に理由を記し投票!
https://www.youtube.com/watch?v=MrOY7UlI6Ak

私は白!

■新美の巨人たち より

千住博 曰く
「画面に向かった時にはもう勝負がついていて
 日頃の生き方、日頃の見識、日頃の態度の固め方、
 日頃の腹の括り方というのか全部絵に出ている。
 絵を描くプロセス自体が僕の人生の縮図。」

2021年9月16日木曜日

題「負ける」

淡々と仕事は暮らし秋を生く
盆の家居の真ん中に横座据え
朝焼けに向かいて鳴かん秋の鳥
秋の空振り子時計の鳴り響く
作者など価値に非ず秋麗

NHK短歌 題「負ける」
冒頭句
止まらない鼻血と涙、震える手、リングライトに照らされている
佐佐木頼綱
選者 佐佐木頼綱 ゲスト 大林素子

今週のお気に入り
負け知らずだった僕らの夏空を切り裂くように飛ぶホームラン
木村民人
出ることが勝つことだったベンチにて二つの負けを受け止めた夏
堂本明代
負けるのが怖くてサーブが打てなくてあの日あなたを失っていた
だいだい
負けた子の目から我らは落ちてゆく汚れた袖に吸い込まれてゆく
友常甘酢

スポーツの日常
次こそと覚悟を決める暗闇に異国の歌だけ鳴る表彰台
河井純一

頼綱さんの!短歌かかって来なさい!
膝の傷コートに軋ませ国ひとつ背負いゆく見よモトコスペシャル
佐佐木頼綱
「ボールはね落としたら死ぬ」ニッポンのエース色無きコートを背に
星野真里&カン・ハンナ

2021年9月15日水曜日

兼題「石榴」

(2021年秋)投票率6割で株価上昇(無季句)
台風は制御ができるものとなる
用の美へ足踏みいれし葉月かな
普段使いの河井邸(旧河井寛次郎邸)へ秋風
午前五時耳を澄ませて秋の虫

NHK俳句 兼題「石榴(ざくろ)」
冒頭句
つきしろに聞え今のがこゑなのか   鴇田智哉
選者 鴇田智哉 ゲスト 毛利衛

この番組が放送された9月12日は毛利衛氏が
始めて宇宙に行った日だったそうです。

「句のひとみ」になって読む 宇宙に行った「句のひとみ」
火星の画像を見て
目や灼けて惑星の名をそらんじる   鴇田智哉

今週のお気に入り
太陽の寿命石榴の割れ具合   ハードエッジ
実石榴や心はやはり胸のこと   北入はるか
魅入られて石榴は紅くなりにけり   野添まゆ子

鴇田智哉氏の俳句は難し過ぎて理解できなかったのですが
やっと、先週あたりから好きになりはじめたら 今回が最終回でした…。
無念でなりません…。

2021年9月14日火曜日

兼題「栗」

吊り床やひらめき降りて小鳥来る
玄鳥帰るデフォルトモード進行中
黍嵐(きびあらし)拘り持ちて諦めず
南京やカメムシ被害多発せり
信頼と努力結実稲穂かな

ギュッと!四国 夏井いつきの俳句道場
兼題「栗」
さまざまな傍題があるのが季語「栗」の特徴。
毬(いが)に入っている状態の「毬栗(いがぐり)」、
中身がからっぽの「虚栗(みなしぐり)」
熟して毬が開いている栗を意味する「笑栗(えみぐり)」、
産地の名を冠した「丹波栗」「中山栗」など。
さらに地理情報を含む「栗山」「栗林」、
調理して「焼栗」「茹栗」「栗飯」、
菓子として「栗羊羹(くりようかん)」
「栗饅頭(くりまんじゅう)」「栗鹿の子」
「栗きんとん」「マロングラッセ」など、
産地から加工されたものまで幅広い季語をもつ。

▼選句ポイント
季語「栗」が動かない
俳句の世界では「季語が動く」という評言がある。
他の季語に替えても一句が成立してしまう時に使う言葉だ。
特に「栗」のような季語は、
「梨」でも「柿」でもいいじゃないかという具合になりがち。
今回は、季語「栗」でなければ成立しない句を選んだ。

ギュッと!特選
原始よりをんなは栗を拾ひけり   伊奈川富真乃

秀作
栗むくやナイフの跡は多角形   じょいふるとしちゃん
摑(つか)み取る栗一キロの手の形   友健
柴栗の弾(はじ)ける墓や父母の墓   こぼれ花
毬(いが)栗や昨日幹太は父になり   南側
栗の毬触らぬように触れる嘘   あたなごっち
縄文は熾火(おきび)の栗の爆(は)ぜ合(お)うて   亀山酔田
栗の皮剥指先に黒き香(かざ)   水晶文旦
栗茹でる悲しきことのありし宵   西村小市
怠惰なる兄悶々と栗を剥く   染井つぐみ
栗落ちて昔話の終りけり   聞岳
結願の寺へ道々ひろう栗   夏草はむ

佳作
栗という大きな種を茹(ゆ)でて食う   れんげ畑
お仏飯(ぶっぱん)の栗小さめに切ったよ   織部なつめ

解説
似たような発想を「類想」、似たような句を「類句」という。
俳句でよく使ってしまいがちな「~の味」
「思い出」「想う」は、要注意の「凡人ワード」。
「凡人ワード」に頼ると、類想類句の句になりやすい。

NHK松山放送局さま 今回も纏めてくださり感謝!感謝です!
ありがとうございました。
https://www.nhk.or.jp/matsuyama-blog/gyutto/haiku/

2021年9月13日月曜日

音便シリーズ イ音便

秋の月老いたあなたを見たかった
穴惑ひ厚労省かミズホかな
秋霖や畑の蕾落しけり
澄む秋やグリア細胞起きんかい
天高し処方すべきかDセリン

夏井いつきの俳句チャンネル
【音便シリーズ】難しくない!イ音便について学びましょう
音便というのは動詞、形容詞、形容動詞の音が
他の言葉と合わさると変化すること。
困るのは動詞の音便。今回はこの音便について解説。
音便は4種類ある。

蟇(ひき)ないて唐招提寺春いづこ   水原秋桜子
    上が音便 特に「い」
鳴くと言う動詞が変化している。
基本の形  鳴く
語幹 単語のうち活用しない部分 「鳴く」の「な」が語幹にあたる
未然 未然形は「ず」口語だと「ない」鳴かない 鳴かず 「か」
連用 「たり」とか「て」鳴きたり 鳴きて 「き」
終止 。「く」
連帯 「こと」とか「とき」にくっつく。鳴くこと 鳴くとき 「く」
巳然 「ども」「ば」鳴けども 鳴けば 「け」
命令 ! 鳴け!「け」

かきくくけけ 文語で言うと四段活用

「て」が連用形に入っている。
「なきて」これが活用表通りの音になる。
言いやすいように言い換えている。
これがイ音便。カ行キ ガ行ギ⇨イ
イ音便はカ行の活用の中の「キ」の音が「イ」になる。
これがイ音便。

「書く」は「書いて」になる。
「研ぐ」は「研いで」となる。
イ音便によっては下の濁り 濁音がくることもある。

2021年9月12日日曜日

金秋戦予選

海亀も自粛でしょうか?すでに秋
センセイがさんと呼ばれて吾亦紅
レプチンが働いたのね馬肥ゆる
17%の体脂肪つく菊日和
歳重ね増える青あざ散る柳

プレバト纏め 2021年9月9日
秋の俳句タイトル戦「金秋戦」予選
Aブロック スポーツの秋で一句
1位 中田喜子
しぶき上げ復活の秋ひとりじめ

2位 森口瑤子
座り込むアンカーの目に秋夕焼
添削 座り込むアンカー秋夕焼くずる
添削 くずおれるアンカー秋夕焼赫(あか)し

3位 岩永徹也
軸足のギプスの寄せ書き山笑ふ
添削 軸足のギプスに金秋の寄せ書き

4位 春風亭昇吉
負けても勝っても母秋刀魚焼く
添削 試合如何に子の好物の秋刀魚焼く

5位 パックン
天高しアーチ描くホットドック
添削 天高し売り子の放るホットドック

Bブロック 食欲の秋で一句
1位 藤本敏史
魚群探知機朝寒のがなり声

2位 立川志らく
《首つりの家》には林檎は無いのか
(素晴らしい一行詩。
 セザンヌを知っていても知らなくても作品として成功している。)

3位 三遊亭円楽
病院の脂の抜けた蒸し秋刀魚
添削 病院や脂の抜けた蒸し秋刀魚

4位 筒井真理子
中心に記憶の螺旋黒葡萄
添削 黒葡萄に種吾に記憶の螺旋

5位 向井慧
秋刀魚の目勧める母の目に力
添削 秋刀魚の目勧める母の目の静か

期待していた人たちが不発に終わりがっかり…。
今回は立川志らくさんの句に魅了されました。

2021年9月11日土曜日

兼題「秋彼岸」

錦鶏菊(きんけいぎく)よ自生地を見つけたり
海陽町の錦鶏菊よ脈々と
錦鶏菊こっそり子孫育まん
錦鶏菊仲間と競い陽に向かい
風と呼応錦鶏菊のダンスかな

NHK俳句 兼題「秋彼岸」
選者 片山由美子 ゲスト 齋藤孝 司会 武井壮

冒頭句
飛ぶ鳥の影くつきりと秋彼岸   片山由美子

齋藤孝さんの思い出の俳句
秋刀魚焼く匂の底へ日は落ちぬ   加藤楸邨

見直し俳句の常識
切れのない句
昼寝するつもりがケーキ焼くことに   稲畑汀子

この切れのない句〇or×
×一本のたうもろこしを分け合いひて
(緩急がない 一本のたうもろこしを分け合ひぬ)

〇ひと雨のあとの残暑のことのほか   
(片山由美子さんの句、残暑の不快感を「ことのほか」で表現。)

×新涼の床をかがやくまで磨き
(新涼や床をかがやくまで磨き)

新涼図書館の灯は影生まず   片山由美子

良い句そうでない句の見分け方は…。
体に定型五七五が染みついてなくてはいけない。
すると瞬時に考えなくても判断ができる。

今回のお気に入り
蕎麦すすり波郷の墓へ秋彼岸   七木田清助
(石田波郷の墓は調布市の蕎麦で有名な深大寺にあるので…。)
人影の濃くなりにけり秋彼岸   松久茂嘉
潮先のぐんと寄せくる秋彼岸   清水道彌
妻に問ふ亡母の好み秋彼岸   岡田安弘

切れのない俳句に挑戦
×汁も実も香も色すらも甘き桃   武井壮
(切れていない。桃を最後にしない方がよい。)