恒例の木箱の梨が届きけり
天候不順今年の秋果味如何に
父の香が脳裏をよぎる秋の宵
亡き父がいつも残した唐辛子
月暈やぬるめの燗を時間かけ
■NHK俳句 兼題「霧」
選者:堀田季何 レギュラー:庄司浩平 司会:柴田英嗣
年間テーマ「もっと俳句のコリをほぐします」
・コリのお悩み 見慣れない句がある
読み方のコツで見慣れない句がわかってくる
詩的飛躍
①
ポストまで歩けば二分走れば春 鎌倉佐弓
詩心を感じられる言葉を入れて当たり前から飛躍する
直覚造型
②
銀行員等朝より螢光(けいこう)す烏賊のごとく 金子兜太
烏賊:夏の季語 螢烏賊:春の季語 作者も元銀行員だった 昭和の情景
常識を超えて「ハッ」と思い至ったものを句にする
象徴
③
冬木の枝しだいに細し終(つい)に無し 正木浩一
自分の残り少ない命を思って象徴的に詠んだ
「象徴」抽象的なものを具体的なものに置き換える
ずらし
④
国家より透明であり虫の闇 高野ムツオ
虫の闇:秋の季語
「透明」「国家」 「透明」「虫の闇」を合わせている
「虫の闇」の透明は秋の澄んだ心地 闇だが透明感がかなりある
「透明」の意味をずらして合わせた
1つの言葉を使って異なる世界を重ね合わせることで
読者の中に新しい視点を生む
掛詞
⑤
しをるるは何かあんずの花の色 貞徳
あんずには杏と案ずるの意味を重ね持たせた掛詞(かけことば)である
ツボポイント
パターンを知ってどんどん読もう
・実践 「詩的飛躍」に挑戦!
ポストまで歩けば二分走れば春 鎌倉佐弓
サイネリア待つといふこときらきらす 鎌倉佐弓
葡萄食べ紫色に染まる指 柴田英嗣 ▼
葡萄食べ異国の風に染まる指
葡萄食べチュニスに染まる指 堀田季何 添削
秋の朝仕事終わって何しよう 庄司浩平
秋の朝仕事終わればビッグバン
まとめ:幅広く読み 幅広く詠む
・今週の兼題「霧」特選六句発表
霞:春の季語 霧:秋の季語
凍結の卵子の匂い霧時雨 猪俣ま悠(まゆ)
霧深く濃くパンゲアを縫合す 翡翠(かわせみ)工房
霧ぶすま蕎麦汁(そばつゆ)黒き嫁ぎ先 堀雄貴(ゆたか)
(霧ぶさめ:秋の季語)
合図待つ兵の嚏(くさめ)や霧の原 刈田陽子
(嚏:くしゃみの事)
霧霧霧震源霧霧霧霧霧 夏風かをる
火のやうな放馬は霧へそれつきり 播磨陽子
柴田 庄司の歩み
柴田英嗣 常識は捨てちゃおう
庄司浩平 食わず嫌いは止めよう
次回のNHK俳句 兼題「秋の暮」
選者:星野高士 レギュラー 松井玲奈 司会 柴田英嗣
■NHK短歌 テーマ「食卓」
選者:横山未来子 レギュラー:菊池銀河、横田真子 司会:ヒコロヒー
年間テーマ「三十一音、次の扉へ」
今回のテーマ「結句のおさめ方」
枇杷の花みればふれたくなる指を揃へてゐたり手袋の内に
横山未来子「とく来りませ」
倒置法:言葉の順序を普通とは逆にする表現方法
倒置でおさめた結句には最後の言葉を印象づけるような効果がある
結晶に指すべらせてふるさとに雨を降らせる気象予報士
木下龍也「つむじ風、ここにあります」
体言止め:名詞などで結句をおさめる
体言止めには結句の言葉にクローズアップするような効果がある
私の胸を温めてゐた光去り六畳間には夕暮れがくる
澤村斉美
結句が動詞の終止形
ほの暗くなってきた感じや時間の推移が伝わる
夕暮れを擬人化した感じも伝わって動きが出る
私の胸を温めてゐた光去り六畳間へと来たる夕暮れ
結句のおさめかたによって一首全体のイメージが変わる
結句を考えることは一首にとって大事
・入選六首 テーマ「食卓」
一席 私 二十年吾(わ)とともにあり汝(な)が入れし食卓塩の中の米粒
三上昇
どこまでも小さく切って茹でるうどんきみが覚えていてもいなくても
小松百合華
手巻き寿司してるときだけちゃんとした家族みたいだったねわたしたち
富尾大地
私 あさかげがごはんの粒を光らせる今朝もいのちがどこかで消える
村神秀夫(あさかげ:あさの光のこと)
鳥のやうに落葉のやうに時は過ぎあなたのゐない秋の食卓
川口泰英
この魚なんて名だっけ猫に聞く妻は答える猫に向かって
可笑式(おかしき)
・歌人への道 「食卓」をテーマに詠む!
つつき合う崩れぬように大切に君と一つのチョコレートパフェ
菊池銀河 添削
崩れないよう大切につつき合う君と一つのチョコレートパフェ
上の句の語順を入れ替えて流れを自然とした
崩れないようで句またがりを使うのも一案
珍しく腕を振るったサプライズ後片付けをしてるのは母
横田真子 添削
サプライズでわれの作ったオムライス後片付けをしてるのは母
「腕を振るう」が慣用句なので自分で作った言葉で表現したほうがよい
珍しくとサプライズが似た言葉 具体的な料理名が入るとイメージが膨らむ
・名歌鑑賞
秋彼岸すぎて今日ふる寒き雨直(すぐ)なる雨は芝生に沈む
佐藤佐太郎「地表」
雨が沈むという表現が特徴的
動詞の終止形から雨がまっすぐに芝生に落ちている様子が見えてくる
次回のNHK短歌のテーマは「読書」選者:千葉聡 司会:ヒコロヒー
出演:佐藤多佳子(作家)
・いちご摘み 一語つむ
背泳の腕に重たくみづ分けて触れ得ぬものを未来と呼べり
上川涼子(好きな歌人 大手拓次)
⇩
君がため春の野に出でて若菜つむ我が衣手に雪は降りつつ
新上(しんじょう)達也(好きな歌人 平岡直子)
ぬいぐるみはきみとちぎれて駅前のたくさんの靴たちとたたかう
いなくなったぬいぐるみもあなたの知らないどこかで
自分なりに戦って生きていくんだというメッセージに置き換えた
この体はすごいあなたのいる駅に三時間かければ行けること
「あなたを待っていない公園」左右社より
私が一つの作品をつくる時は地図を作っているような感覚
歌の読み方は一通りではない いろんな読み筋を与えたりするのも魅力