夏の海厄介者の黒鮪
忠臣蔵は戸板の表溽暑
戸板の裏へ四谷怪談南風(みなみ)
楠や前触れもなく夏に枯死(こし)
夏の夕あっという間に枯れゆかん(楠)
■NHK俳句 兼題「薔薇」
選者:高野ムツオ ゲスト:小坂大魔王 かわにしあつき
今井聖 大高翔 司会:柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」
日本の場合は野ばらといって小さな白い薔薇が万葉集の時から
詠まれる素材として続いてきた 明治あたりになってから
今の西洋薔薇が主流になった 梅雨の花といえば紫陽花ですけど
梅雨のちょっと前 華やかな薔薇ということで
①
武装解く薔薇一本と引き換えに 今井聖
(大高 小さくて美しものそれと全く逆の「武装解く」というスケールの
大きい恐ろしいもの この句は武装解くから始まっていることによって
薔薇一本との対比が凄く鮮やか)
②
薔薇全部貪り食いたいほど孤独 高野ムツオ
(大高 薔薇は孤高の存在だったり触れてはいけないとか壊してはいけないとか
そういう存在なので「貪り食いたいほど」とのギャップでもう持っていかれた)
③
色あせてなお咲くままの薔薇の記憶 かわにしあつき
(大高「記憶」が曖昧なのがもったいなかった 色あせてなお咲くままの
でも私にとって大事な薔薇なんだというので「薔薇のある」「薔薇のあり」とか
みんなが薔薇と思ってなくても薔薇としてあるんだみたいな あえてここで
「薔薇のある」ということで花屋の薔薇じゃない薔薇が強く印象付けられる
高野 添削「色あせてなお咲くままに薔薇のあり」
「色あせてなお咲くまま 薔薇の記憶」一字開けて対比する手もあった
今井「色あせてなお崩れざる薔薇の記憶」)
④
薔薇に雨言い訳だけ止む気配無く 小坂大魔王
(今井聖 添削 「薔薇に雨我が言い訳の延々と」
高野ムツオ「言い訳はやむ気配がなく」とか「やむ気配なく」とか
薔薇だけでも美しいが雨が当たってよりみずみずしく生命力が増していって
それに対して「言い訳」という俗っぽい日常のあんまりいい面じゃないところを
持ってきた取り合わせが面白い 終わり方がちょっと気になった 薔薇に雨って
凄く決まっている 上五のフレーズが それに対比させるよう
「言い訳だけはやまぬ気配」とか下の方も名詞で止まる方が対比が鮮やかになる)
⑤
かなしみは糧薔薇の白あふれしむ 大高翔
(今井聖 添削「悲しみは糧ならず薔薇の白あふる」
大高 「し」の音を重ねようと思って悲しみ 薔薇の白 あふれしむ
それもあって薔薇の白を選んだ)
・特選三席発表 兼題「薔薇」
一席 薔薇一輪九尺二間(くしゃくにけん)を明るうす 森井敏行
二席 描くことの元始は祈り薔薇描けり 古関聰(あきら)
三席 曲がつてもまがつても薔薇園の中 工藤陽子
兼題「薔薇」特選
人去れば妖精のもの薔薇園 萩原豊彦
バスを待ちをり薔薇の雨聞いてをり 円堂実花
薔薇に棘吾に口あり恐ろしい 古俣友里
薔薇咲いて一疵(いっし)も無きはなかりけり 川本泰助
ケンメリの磨かれてあり薔薇の門 長谷川水素
ばらの香よ海の向こうの戦禍まで 金野喜久枝
今回の俳句、最高に良かった。
添削をしていただくとより理解が深まりました。
私にとっては神回でした。
■NHK短歌 テーマ「雲」
選者:土岐友浩 ゲスト:石川直樹 司会:尾崎世界観
年間テーマ「わたしの宮沢賢治」
「なめとこ山の熊」
熊は繊細な部分もありながら獣としての野生も持ちあわせている
宮沢賢治は九百首くらいの短歌を残している
「雲」に関しては百首くらい詠んでいる
賢治は雲を見ながら何を考えていたのだろうと思い今回のテーマにした
雲はいまネオ夏型にひかりして桐の花桐の花やまひ癒えたり
宮沢賢治(17歳)
17歳の時の宮沢賢治は入院生活を送っていた
鼻の手術 原因不明の熱の為
体が治るかどうかは運命みたいなものに委ねられている
長い闘病生活を終えて自分の体が治ったという万感の思いを詠んだ
・入選九首 テーマ「雲」
たぶんあれ雨雲だから帰ろうよそれが最後の滑り台だよ
栗原梨乃
一席 私 雲を追う人のまぶたが閉ざされてわたくしが追うそののちの雲
大津穂波
二席 パイプ椅子片付けたあと三月の体育館は雲を見る箱
久藤さえ
雲だらけになって地球はふわふわの白い惑星と見なされた
友常甘酢
触ったら世界を変えてしまうから知らぬふりした五合目の雲
坂本真衣子
三席 縁石につまずき骨にひび入り雲につながる我はパペット
髙瀬浩子(パペット:操り人形)
事務員の日々は流れる雲のよう蛍光ペンでたまに色づく
殿内佳丸
飛行機が鰯の腹を裂いていく天でも同じ食べ方の父
政宗史子
春の雲 吾も居眠りの遺伝子を受け継いでいる うけついでいる
吉行直人
・わたしの宮沢賢治
「春と修羅」の中に雲平線(うんぴょうせん)という言葉が出てくる
「春と修羅」東岩手火山
この石標は下向の道と書いてあるにさうゐない
火口のなかから提灯が出て来た 宮沢の声もきこえる
雲の海のはてはだんだん平らになる
それは一つの雲平線をつくるのだ
雲平線をつくるのだといふのは 月のひかりのひだりから
みぎへすばやく擦過した 一つの夜の幻覚だ
土岐
雲平線は実際に見ていないにも関わらず見えた
命の際を超えて生まれた表現ではないか
「線」という言葉がお話を聞いて気になってきた
賢治も山に行って帰ってを繰り返して言葉を研ぎ澄ませていった所がある
石川
日常と非日常の線
下界とは違う場所に来たという境界線みたいな意味合い
「山を征服したぞ」という気持ちに全くならない
土岐
雲とは思うようにならないもの 自分 人間かも…。
人間の運命
短歌における「雲」の表現
●そら高くしろがねの月かゝれるをわが目かなしき雲を見るかな
宮沢賢治
●あをじろきひかりのそらにうかびたつ切り抜き紳士二きれの雲
宮沢賢治
保坂嘉内(かない)
詩人 宮沢賢治の親友で盛岡髙等農林学校時代に
同人誌活動を共にした文学仲間でもある
返歌
雲をつかむような話のなかにある電話帳、電話ボックス、電話
土岐友浩
賢治の時代は電話や電話ボックスが街に並び始めてばかり
おそらく地方ではメジャーでない 今の時代はスマホが普及て
電話ボックスを使うことは減ってきている
時代と時代の間に電話ボックスがあった
石川
詠まれた時代も考えていくと面白い
賢治が詠んだ短歌や童話を考えると深い理解ができる
短歌は写真的だなと思った
・いちご摘み
夕闇に木々は果実をゆるめゆきその音楽に翼はふるふ
金田光世
⇩
眼はつづく 体育館の式典の翼を模した黒い楽器へ
瀬口真司(好きな歌人 塚本邦雄)
洗った顔を見ている僕の眼が見えたみんなのリーダーは僕だから撃て
歌集「BEAM」瀬口真司(書肆侃侃房)より
何のこと言っているかわからないけど リズムがいいなって覚えてもらう
その過程で僕の考えていることが隠されたまま送受信されていく
バトンを渡された短歌について
さらに別の要素が繋がってある種の過剰さが面白いと思いました
何が翼に見えるかを考えた時にグランドピアノ 図案化された翼
グランドピアノがあるシーンで一番面白いのは体育館
あれってめっちゃ変ですよね
現実の方がシュルレアリスム的になってしまっている
つんだのは翼 音の響きもつながっていく