耳元の品なき言葉秋黴雨(ついり)
誤った言葉遣い秋曇
秋の海生きる悲しみ深き青
秋の蝿料理に屯(たむろ)してござる
秋高し綢繆未雨(ちゅうびゅうみう)を旨として
■あの本、読みました?
大ヒット「ファイア・ドーム」解剖~作者を変えた3大スター
辻村深月 諏訪部順一 まちもとせろ里 鈴木保奈美 山本倖千恵
2026年を代表する1冊 7年の歳月をかけて執筆
噂に翻弄された人間模様を描いた現代ミステリー
「ファイア・ドーム」の執筆秘話
編集者の無理難題とは? 傍らに何か謎を作ってください
この本はミステリーの新しいものになる
辻村深月に影響を与えた2人の作家と国民的キャラクターとは?
上下巻合わせて約900ページにもなる大作「ファイア・ドーム」(小学館)
しかし一気読みしてしまう
「かがみの孤城」辻村深月著/ポプラ社
「傲慢と善良」辻村深月著/朝日文庫
「ファイア・ドーム」執筆のきっかけ 小説家と編集者の関係から
「ファイア・ドーム」の一文 辻村深月著/小学館
バカバカしい話は、誰も真剣にはもう話さない。
だけど、「こういう説もあるらしいね」
「当時、こういう考え方もあったらしいね」と
人々の口を通じて、軽薄に語り継がれた。
25年が経過。被害に遭った新沼家が再び事件に巻き込まれる。
25年前の現代が交錯する展開 構成について
タイトルを「ファイア・ドーム」にした理由
スノードームの雪が火の粉だったら 閉ざされた山間の町に広がる噂を
舞い上がる火の粉に例え「ファイア・ドーム」
噂が蔓延するシーン
「ファイア・ドーム」の一文 辻村深月著/小学館
つきあいの長い美冬を心配する気持ちは、おそらく本心だ。
だけど、それでも、仲間内でしゃべってしまう。
あの事件の関係者が自分の知り合いで、親しい、
ということを平気でしゃべってしまう。
自分は、知っている、という その優越感を隠しておけない。
あのね、私のところのお客さん、今起きてるあの事件の関係者でー。
あまりに想像がついてしまう。
だってこれまで似たようなことは美冬もたくさん、聞いたから。
事実と違う「噂」が広まる原因
作中の新聞記事について 新聞記事は事実しか書けない
二人の勇気によって面会が叶った⇨感想が入っている
面会が持たれた。忠治さんさんは言う。向こうも勇気がいったと思う⇨事実
下巻に記された真相を伝える桜木透真の記事
心打たれたシーンを読む テーマは❝噂❞「ファイア・ドーム」グッときた一文。
「ファイア・ドーム」の一文 辻村深月著/小学館
噂が広まるその過程には明確な「悪意」と呼べるものがない。
だからこそ、質(たち)が悪い。
透真の父が週刊誌を買ってきたのはなぜなのか。
自分でたまたま記事を見つけたとは思えない。
友人か職場の誰かに聞いたに違いない。
あの噂について被害者の父親のインタビューが出ているらしい。
そして、自分もその噂を言い立てていた。一人だという自覚もなく、
ああ、噂はデマだったのか、と記事を読んで、ただおしまいになる。
噂を広めた責任を取ることも、最悪観を持つこともなく。悪意ではない。
そこにはただ、信じられないほどの軽薄さがあるだけだ。
「ファイア・ドーム」の一文 辻村深月著/小学館
新沼紗英が職場を後にした時のことを、ある人は「楽しそうだった」と言い、
ある人は「不安そうだった」と言う。「期待に満ちた目でうきうきしていた」と
言う人もいれば、「心細そうで、どうして上司は彼女を一人で
行かせるのだろうと思った」と言った人もいる。
作家・辻村深月に影響を与えた2人の作家と国民的キャラクター
●宮部みやこの作品の魅力を語る 「模倣犯」
「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」辻村深月著/講談社文庫
胸に突き刺さった宮部みゆきの言葉
「ソロモンの偽証-第1部 事件-上巻」宮部みゆき著/新潮文庫
●「ドラえもん1」藤子・F・不二雄著/小学館
「かがみの孤城」辻村深月著/ポプラ社
脚本を担当した「映画ドラえもん のび太の月面探査機」
ドラえもんから学んだこと 不思議なことにもリアリティーがある
ドラえもん愛に満ちた小説
「凍りのくじら」辻村深月著/講談社文庫 ドラえもんへのラブレター
●辻村深月 名前の由来にもなった 綾辻行人から受けた影響とは
新本格派ミステリー 綾辻行人
大学院在学中の執筆したデビュー作「十角館の殺人」
小説でしかできない魅力を熱弁
「アナザー Another」綾辻行人著
「十角館の殺人」から「アナザー Another」へNo.1を更新
■あの人に会いたい 岡野弘彦(歌人)
1924-2026(令和8)年 101歳没
歌というものは まず祈りの言葉の凝縮した形であり
動揺しやすい魂の鎮(しず)めの言葉でもあった
「若水を谷川で汲みに行くように」と言われるわけですね
母親が(水を汲む時に)唱える言葉を教えてくれましてね
「今朝汲む水は 福汲む 水汲む 宝汲む 命長くの 水を汲むかな」
これを三遍唱えましてね 日常会話の言葉とは 次元の違う言葉
源氏の研究の入門書のような「むらさき」という雑誌があり
折口信夫 ペンネーム 釈迢空の短歌や俳句 詩が載っている
そういうのを見て「この先生の学問と文学に深く触れてみたい」と
中学の4年5年の頃から思いはじめましてね
国文学者 歌人 折口信夫(釈迢空)1887-1953
「短歌 ことばのちから」(2011年)
花盛りの桜が熱風で枝もしなって虐げられているわけですね
満開の桜がだんだん熱気が上がっていってパッと炎に包まれる
それはすさまじい光景でした
人間の黒焦げになっていく状態と同じように
桜も花の咲いたまま炎に包まれていくんだ
ほろびゆく炎中(ほなか)の桜見てしより、われの心の修羅しづまらず
「一生桜を美しいと思うまい」「思わないだろう」と そのとき思った
時々 私がこのシイの木に登って枝を下ろしましてね
2時間ぐらい枝を下ろしていますとね
2階の窓から先生が菓子を袋に入れましてね
「もう降りておいでよ もう休みなさいよ」と言うんですよね
私が苦しんでいるのを見て「万葉集の東歌を全部暗記してごらん」
「古代の人の自然な心がいちばんにじみ出ているのが東歌だよ」
防人 恋の歌
わが妻はいたく恋ひらし飲む水に影さへ見えて世に忘られず
万葉集 若倭部身麻呂
飲む水に家に残してきた自分のことをひたすら安泰を願ってくれる
妻の面影が幻に見えるわけです
彼らは都の人たち 都の教養のある知識人と違いますからね
一字も読めなかった 一字も書けなかった しかし 美しい
力ある古代大和言葉は こんなふうに豊かに持っていた
昭和28年 折口信夫 逝去
昭和29年 洋子さんと結婚
昭和42年 歌集「冬の家族」出版 43歳
翌年 現代歌人協会賞 受賞
昭和六十二年 「歌会始」歌稿
「わが国のたちなほり来し年々にあけぼのすぎの木はのびにけり」
これは敗戦まもなく アメリカの植物学者が陛下に差し上げて
宮中に植えられたメタセコイヤを年々ご覧になりお歌いになっている
代表作「バクダッド燃ゆ」岡野弘彦歌集
特攻機つらねゆきたるわが友のまぼろし見ゆる。天(あめ)のたづむら(鶴群)
古代から、戦によって生じる不幸な未完成霊の鎮めを歌った
和歌の伝統が、私の胸の中で作品となって燃えあがりました。
詩歌文学館賞 受賞のことば より
私の体験してきたあの長いむごい戦 その記憶がいつまでもやっぱり
死者たちへの魂の鎮めの歌を詠まないではいられない
それがイラク戦争の上にダブってくる
2011年東日本大震災の時に詠んだ歌 101歳
美しくかなしき日本。さが胸のほむら鎮めて雪降りしきる
人間が長く とにかく いろんな体験を経て 生きなければならない
深い喜びや悲しみを耐えて生きなきゃならない
本当の深い自分の心の支えになるものが 欲しいと思うときがある
僕の場合はそれを短歌によって表現し
短歌によって追及していこうとすることなんですね