日の出直後のビーナスライン照葉(てりは)
風景が伝えてくれた秋心
絵師、彫り師、刷り師に繋ぐ秋の業
曲げられた松の枝から見る秋よ
鷹渡る空は版画の共通語
■NHK俳句 兼題「冬銀河」
選者:堀田季何 レギュラー:庄司浩平 司会:柴田英嗣
年間テーマ「もっと俳句のコリをほぐします」
コリのお悩み 季語が無くてもいいの?季語がない無季俳句
季語は絶対ではない
①
戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡辺白泉
1939年作 日本が第二次世界大戦に参加する2年前
日常の中に戦争が侵入してくる不気味な恐怖
季語を入れてみると
戦争が廊下の奥に立つ残暑
戦争が桜の奥に立つてゐた
「季語」の情緒と「戦争」が喧嘩する 季語の話になってしまう
この句は普遍的 季語の情緒が邪魔しない
「戦争」という言葉が季語以上のインパクトがある
無季俳句は何百年も前からあった
②
歩行(かち)ならば杖つき坂を落馬哉(かな) 松尾芭蕉
最初の挨拶の句に季節の言葉が入りやすかった
恋や旅 離別などのビッグマークの時は
四季の情緒ではなくて無季の句でも良い 芭蕉も言っていた
杖つき坂:旧東海道の三重県四日市市にある坂
本当に坂の名前をおもしろく活用している
地名が季語並みの効果を発揮している
季語並みの言葉があり季節の情緒がいらない時は季語を入れなくてもいい
③
見えぬ眼の方の眼鏡の玉も拭く 日野草城
季語を入れると
見えぬ眼の方の眼鏡の玉に汗
④
黄の青の赤の雨傘誰から死ぬ 林田紀音夫
傘だけ見て人生の心理をついてくる 死の句は無季俳句が多い
季節の情緒を超える 時を選ばない
ツボのポイント
季語に負けないキーワード
⑤
肉体は砂に記憶は言の葉に 堀田季何
アラブ首長国連邦に1か月近く滞在してひたすら句を作った
土でなく砂 文化施設を訪れた際に思いついた句
回外に行った時 日本の季節感で表現しきれないことが多い
季語を入れた句と同じく似たイメージの言葉を複数使わない
・実践 無季の句を作る
A兵隊がゆくはつ冬の汽車に乗り
兵隊がゆくまつ黒い汽車に乗り 西東三鬼
B木にのぼりあざやかあざやか麦秋など
木にのぼりあざやかあざやかアフリカなど 阿部完市
C長寿の母鹿の子のようにわれを産みぬ
長寿の母うんこのようにわれを産みぬ 金子兜太
まとめ 無季俳句にも挑戦しよう!
・特選六句発表 兼題「冬銀河」
モルヒネにたまはる眠り冬銀河 賀山亜紀子
助手席の寝息冬銀河の吐息 家守(いえもり)らびすけ
セロ弾きの捨てた祖国の冬銀河 柿彦
冬銀河非正規だけの送別会 むさし野まさこ
冬銀河きみに尻尾がなくて怖い 里山子
冬銀河五万八千のドッグタグ 秋緒みを
・柴田 庄司の歩み
季語がない時は名句かも(笑) 柴田英嗣
季語を超えるインパクト‼ 庄司浩平
次回は兼題「短日」
選者:星野高士 レギュラー:松井玲奈 司会:柴田英嗣
■NHK短歌 テーマ「手紙」
選者:横山未来子 レギュラー:菊池銀河 横田真子 司会:ヒコロヒー
年間テーマ「三十一音、次の扉へ」
・表現の引き算
人のうしろに爪立ちてみるいちまいの画布の港に雪つもり居り
齋藤史
この歌で省略されているのは美術館という言葉
美術館という言葉を省略して「爪立ちてみる」というような
具体的な表現によってこの場面を鮮やかに描いている
大根を探しにゆけば大根は夜の電柱に立てかけてあり
花山多佳子「木香薔薇」
この歌で「落とした」ことは省略されている⇩落としたことを入れる
落としたる大根を探しにゆけば夜の電柱に立てかけてあり
大根を落としたことを省略したことで大根が自分で
行方をくらましたような不思議な感じも出ている
省略によって謎を残して読み手が想像する余地を残している
省略によって音数に余裕ができると表現を工夫することができる
・乾きたる落葉のにほい冷えゆきておもふ秋あらむこれからのちも
横山未来子「とく来りませ」
秋に何があったのかということは省略している
その代わりに匂いを細かく表現している
読み手も落ち葉の匂いを感じてそれぞれ想像する秋があると思うので
それに思いを馳せていただければいい
短歌は言いたいことをすべて言ってしまわないと
読み手の想像を残すくらいの余地をとどめておく
・入選六首 テーマ「手紙」
特選 いつだってあなたの文字は駆け足で罫線という草原をゆく
青木日向子
生まれしは弟(おと)は妹(いも)かとわれに問う戦場からの父の手紙が
奥田貞人(さだひと)
レターセットの封筒ばかりを余らせて遠くの友と今を繋いだ
古橋紗弓(ふるはしさゆみ)
シャーペンで下書きされた跡がある君の手紙を指でも味わう
けもの
君からの手紙は外で読みたくて綺麗になった公園へ行く
落合かぐや
スカートも帽子も靴も見せられない代わりに選ぶ便箋、切手
鷹野しずか
・菊池銀河・横田真子 歌人への道
「か」の角が丸くカーブを描いてる名前が無くても君だとわかる
菊池銀河
今はまだ何処かに眠っているだろう二十歳のわたし待っている文
横田真子
・名歌鑑賞
読みゆきて会話が君の声となる本をとざしつ臥す胸の上
相良(さがら)宏「相良宏歌集」
次回はテーマ「遠くへ行きたい」
選者:千葉聡 ゲスト:矢野利裕 司会:ヒコロヒー
・いちご摘み 一語つみ
まだ今日を昨日にしたくないきみのだんだんあたたかくなるかかと
馬場めぐみ(好きな歌人 平岡直子)
⇩
やっぱりやめておこうと思う体重をかかとに気持ち乗せて待つバス
佐クマサトシ(好きな歌人 桝野浩一)
摘んだのは「かかと」ためらいを乗せたバスの行く先は?
早稲田大学短歌界出身
3年前に第一歌集出版「標準時」佐くまさとし著/左右社
クリスマスソングが好きだクリスマスソングが好きだというのは嘘だ
「標準時」左右社より
短歌の形になった時に 初めて届く領域みたいなものがあると思っていて
最後の最後でそこから一歩踏み出すというか 自分でも解釈しきれないし
これからどうなるか分からない これが本当にいいのか分からないみたいな
歌ができた時が多分自分にとって一番いい歌
レールとかを走るわけじゃなくて 自分についている足がそのまんま
走っている道であるみたいな