2026年3月11日水曜日

あの本、読みました? 金原ひとみ

丁寧に老い受け入れて春うらら

知性ある体・筋肉春の空

風光る体感じて冴える勘

春光やいくつでも増す可動域

春の夜や心の声に耳澄ませ

 

■あの本、読みました?金原ひとみ大特集!

朝井リョウ&村田沙耶香が語った魅力&素顔

金原ひとみ 朝井リョウ 村田沙耶香 鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

 

朝井リョウ

金原さんの魅力は文体、1行読んだだけで「金原ひとみ印」頭の中の流れた

速度そのままで書いている ドライブ感が唯一無二

村田沙耶香

言葉が音楽性がある 本当に凄いな 

 

直木賞朝井リョウ 芥川賞村田沙耶香が作品性を絶賛

朝井と村田が特に気に入っている作品は

「アンソーシャル ディスタンス」金原ひとみ著/新潮文庫

 

金原ひとみ

人は小説から自分に何が起こっているのか 消化したがる生き物

だからこそずっと書き続けている

 

村田沙耶香

「アンソーシャル ディスタンス」のインパクトが強い

その中の「ストロングゼロ」

朝井リョウ

最後の終わり方も含めてかっこよ~

 

金原

コロナ禍のの問題が大きくなったら世界も変わるし人間も変わって

本なんか読めなくなっちゃうかもしれない 

その過渡期を絶対に書き逃したくない

 

綿矢りさ(当時19) 金原ひとみ(当時20)

2004年芥川賞受賞

あれから20年現在はどんな心境に?

いま自分を支配しているものについて書かないとこの支配から逃れられない

 

「デクリネゾン」金原ひとみ著/集英社文庫

仕事、家庭、恋愛のすべてが欲しい女たちを描いた長編小説

 

YABUNONAKA-ヤブノナカ」20254月出版 金原ひとみ著/文藝春秋

出版界のハラスメントを描いた作品

出版界を舞台にした理由

複数の登場人物の視点で描かれている

小説家・長岡友梨奈と恋人・一哉の会話

 

YABUNONAKA-ヤブノナカ」の一文 金原ひとみ著/文藝春秋

「え、マッチョって、本当にそんなマッチョな感じなの?」

「まあさすがにゴリマッチョって感じじゃないけど。

夫婦別姓とか、現代の働く女性が担わされている責任の重さ問題語って、

時代摑んでますよ感出そうとして自らの愚かさを露呈して自爆って感じ。

味噌汁の出汁なんてとる必要ないんだみたいなこと言って、専業主婦

侍らせた家事一切できないゆとりオヤジがなんかみつをみたいなこと

言い始めたよって馬鹿にされてた」

「みつを?」「だしの素使ってもいいじゃない、人間だもの。的な」

一哉は箸を止めて声をあらげて笑った。私は豚バラをタレにつけ、

やっぱ黒酢にごま油が一番美味しいな、食べてみこれ、と小皿を差し出す。

「まあ彼の場合ルサンチマンも悪意もないナチュラルボーンな愚かさ、

って感じだけど。でも現代日本の抱える病は無自覚な愚かさが

招いてきたからとも言えるから、十年くらい前までには許容されてたかも

しれないけど、これからは淘汰されていくだろうね」

 

みつをは相田みつを 

ルサンチマンは「恨み・妬み・憎悪」など感情を内面に抱く状態を指す哲学用語

 

喋りが止まらない長岡友梨奈

芥川龍之介の「藪の中」は意識したのか?

小説家・長岡友梨奈の娘・伽耶が資本主義に対して疑問を述べている

 

YABUNONAKA-ヤブノナカ」の一文 金原ひとみ著/文藝春秋

二十から六十歳くらいまでの ほとんどの人類が平日の起きている

時間の半分以上を労働に費やさなければ社会が回らないような状況に、

本当にこの世は陥っているんだろうか。

だとしたら、設計ミスがすぎないだろうか。エッセンシャルワーカーは

給与以外も超好待遇、働きたい人は趣味で働いて大金を稼ぎ、

働きたくない人はベーシックインカムで衣食住エンタメに過不足内

生活、出産した人は養育費教育費無償、もうこの世界いいやと

なった人は安楽死、そんなもんでバランスは取れないものだろうか。

労働ホリックな人たちは「いやこの仕事がなければ云々かんぬん!」

と憤るだろうけど、私はイケる気がする。

 

フランス移住が転機に?

絶望を全てぶつけた

プロットの立て方は?

 

「デクリネゾン」の一文 金原ひとみ著/集英社文庫

老害予備軍の中肉中背中年男性編集者を面白おかしく

露悪的に描いた短編すら発表したけれど、

 

20257月出版

「マザーアウトロウ」

作品を描いたキッカケ

名前は呪いでもある

破天荒な義母を描いた作品

 

「マザーアウトロウ」の一文 金原ひとみ著/U-NEXT

だってもし波那が子供を産んだとしても、その子と私が

フィーリンググッドかどうかは分からないじゃない。

波那とその子供もそうよ。そもそも子供を作るとか作らないとか、

そういうの傲慢だと思うわよ。第一に身体は機械じゃないから、

作ろうと思って作れるもんでもない。さっきの合理性の話じゃないけど、

個人的には人間のそういう不確実なところこそ、尊ぶべきだと思うわ。

それに子供って一言に言ったって色々あるでしょ。

育てやすいにくい、合う合わない、男か女かも分からないし。

子供作ろうかどうしようかって 悩んでも、実際に生まれてくるものは、

自分の想定してる子供でないってこともあり得るわけよ。なんか子供って

ふわふわ、かわいい、ギャン泣きする?子育て大変かも、

くらいのイメージでしょ?でも出てきてみたら妖怪かもしれない、

エイリアンかもしれない、ゾンビかもしれない。

 

出産が転機に

その二人にしか作れない関係性を築いていくのが母娘のベターな関係

結果論としての母子関係があっても良いのではないか

 

高校3年生の長女に6年間お弁当作ったんですけど、

この間が最後のお弁当だったんです。

最後だしとメッセージカードつけておいたら、

お昼に78人の女の子たちが机を囲んで

「ママ、6年間お弁当ありがとう」って

一斉に言っている動画が返ってきました。

カードに動画で、しかもみんなで一気に返すっていうのも

面白かったし、今の時代でも誰もお父さんは作ってないのかな、

などといろんな思いが一瞬にしてわき上がりました。

「朝日新聞デジタル202618日付」

 

202410月 出版

「ナチュラルボーンチキン」

作品を描いたキッカケ ちきってる(ちきんやろう)

ルーティーン生活を送る45歳の浜野とパリピ気質な20代平木の会話

 

「ナチュラルボーンチキン」の一文 金原ひとみ著/河出書房新社

「楽しいことがない、楽しいことを求めようとしない人って、面白いですね。

それって、幸せじゃない、幸せを求めないってこととは違うんですか?」

「そうですね。幸せじゃないってことでは、ないです。もちろんそれは、

幸せである、ということとも違うんでしょうけどね。

そもそも皆多かれ少なかれ、三十代後半くらいになってくると

楽しいことがちょっと重くなってくるんだと思いますよ。

霜降り牛みたいに、少々過剰すぎますねって感じで。心が動かない

平穏な状態を求めている人は少なくないはずです」

「心が動かない、揺らがない、のがいいんですか?

それってなんか、ゾンビ的な、ってことですか?」

「例えばクラブで馬鹿騒ぎとかしたら、翌日の疲労とか、二日酔いも

すごいだろうし、そもそも馬鹿騒ぎしてる間もどこかで

俯瞰しちゃってるだろうし、まあそもそも馬鹿騒ぎが自分にできるのか

不明だし、周りからしたって、クラブで四十女が踊り狂っていたら、

ちょっと怖いですよね?」

(中略)

「あ、すみませんなんか。私そういうの、私の祖父母世代とかで

終わったのかと思ってました」

「え、そういうのって、どういうのですか?」

「年齢とか、人にどう見えるのかとか気にして、

小さいところに収まる感じです」

 

202036歳 コロナ禍 大きな転換点だった

大きな過渡期を書き逃したくなかった 

ので急遽書きだした「アンソーシャル ディスタンス」

スピード感・ライブ感が満載の作品

2026年3月10日火曜日

夏井いつきのよみ旅!in石巻

言の葉に宿る記憶や春の雲

仲春や明らかになる政(まつりごと)

春空を鳴門海峡渦開き

春の市(いち)鳴門わかめ詰め放題

春の(動物)17歳でピューマ逝く

 

■夏井いつきのよみ旅!in石巻

石巻編 東日本大震災15年 ❝刻まれた記憶❞と今を生きる

宮城県石巻市 日和山

石巻市震災遺構 門脇(かどのわき)小学校:

津波と津波火災の被害状況を全国で唯一残している

 

・髙橋輝良良(きらら)

その日の記憶は1年生として過ごした中でもいちばん濃く覚えています

地震発生時はお墓の階段を上って家に帰る途中だった

自信があまりにも怖くて校庭に引き返した時に

校舎から子どもたちと先生が出てきてくれて 一緒に日和山に避難しました

 

実は7人の子どもたちが津波の犠牲になってしまった

そのうちの一人が私の友人で凄く仲良くしてくれていたんですけれど

その子の使っていたものなんです

私が小学校の先生になりたいんだよねって話した時に 

私もだよ一緒になろうって言ってくれた 

ここにきて写真を見て友人が生きていたんだなって 思うと同時に

でもいないんだなっていう気持ちもある

 

輝良良さんは4月から小学校の先生に

 

春の虹光集めて消えぬまま   髙橋輝良良

 

門脇小学校で過ごした思い出だったり 友人と将来の約束をした記憶は

私にとってすごく幼くはかない記憶かも知れないけれど 

思い出すたびに優しい気持ちになるし これからも消えないよ

ずっとあるよって伝えたかった

 

・夏井いつき

“伝える”って難しいけれど“言葉の力“で伝えるしかない

私たちは”言葉“で伝えられる大人になりましょう

 

1/5 

十五年今年も忘れず山笑う   佐々木幸子

私の家は(北上川)河口から3キロぐらい入った所ですが

牧山と言う里山が連なっています あのとき すごい津波が押し寄せてきて

家は天井近くまで水没したんです 家の一階も冷蔵庫は倒れて 全て水没

したので使えない状態だった 毎日片づけに追われました 1週間くらいたって

やっと外に出ました ふと顔を上げてみたら山笑うって言葉は

知っていたんでるけれど 牧山全体が笑いかけているように感じました

山全体が「頑張っているね」って 言ってくれている感じを句にしてみました

佐々木さんMEMO

義母の介護をきっかけに地域の福祉交流施設を設立 

(震災で)やめようかとも思ったんですけれど 一緒にやっている人たちが

また一緒にやりたいっていうのもあったので 私たちもここで切って

しまったならなって 思いがあったので

夏井いつき 施設では地域の人たちがいまも交流を続けている

(季語の)”山笑う“を思い出して 今年もまたそういう季節になるなと思う

夏井いつき これから毎年山笑うを満喫してくださいね

 

2/5

ひと昔半となりたる初桜   齊藤明彦

震災から15年 10年ひと昔って言うなって思ったんです 15年だと

その計算だとひと昔半だなと ひと昔半たった時に改めて桜に思いを託す

という句

齊藤さんMEMO

震災当時単身赴任で山形県に 携帯電話に何回もかけるんですが 全く

妻につながらないので やきもきして3日ぐらい過ごしました

ガソリンスタンドの長蛇の列に並んで「満タン」って言ったら

「一人10リットルまで」と言われたので 「石巻に救出に行くんだ

なんとかならないか」と言ったんですが「一律10リットルです」って

妻・純子さん 夫の顔を見てすごくホッとしました 体調も

崩していた時だったので 顔見ただけで安心しました

「桜が届いたよ ありがとう」って連絡が来たんです

それが310日の夜だったんです (妻が)早速ガラスの花瓶に立てかけたんです

次の日午後に震災が起きまして 妻は(震災)当日は勤務先に泊まり込んだんですが

戻ってみると花瓶よりも背丈の高い桜が倒れずに持ちこたえて立っていたって

純子さん 無事にしっかり立っていました

夏井いつき ご夫婦にとって桜がますます象徴的な季語になりますね

 

・俳句咲く咲く!一分咲き 三分咲き 五分咲き 七分咲き 満開!

添削で上達のコツ伝授!

 

   俳句は今回が初めて! 

重ね着しふえるかばんの設計書   阿部千歳美

生命保険の営業の仕事をしている 提案書を作り訪問するようにと上司から指導

思い通りにいかず鞄の中は増える一方

添削(上達ポイント ポイントは「重ね着し」の部分 季語を詠嘆して引き締める)

重ね着るかばんに提案

評価は五分咲き

 

   空に舞う六機のブルー春の朝   本田まき

東松島市 航空自衛隊の基地がありブルーインパルスも所属

三分咲き

添削(俳句上達ポイント 飛ぶものに対し空に舞う言葉はもったいない!

   ブルーインパルスを最後に持ってきて爆音や白い雲の映像を残す!)

春の朝六機のブルーインパルス

 

   俳句歴7年目

目覚めればてふ舞う夢の10億円   小野雄希

添削(語順を変えて 季語「蝶の昼」を立たせる!)

10億円より目覚め蝶の

一分咲き

 

   花の冷(ひえ)しっぽで撫でるギブスの手   工藤文代

俳句歴3年半

7分咲き

添削(細部の所も映像が見えてくる 語順を変えて 映像をアップ⇨広い景色へ)

ギブスの手撫でるしっぽ花の冷

 

   木蓮の白咲き誇り父想う   三浦信子

俳句初挑戦

添削(思うって言葉父って書いた瞬間に想っているから父って書いた

   想うという言葉が必要な時ってそんなにない 

   上達ポイント 「木蓮の白は」余韻を持たせて父の姿を表現)

父のごと清(すが)しや木蓮の白

三分咲き

 

ROLAND 俳句お悩み相談室

地元で頑張るみなさんを訪ね俳句を詠んだお悩みをROLANDが解決!

 

鈴木真悟

鈴木さんMEMO

銀鮭養殖3代目 震災を機に家業を継ぐ

当時養殖は祖父がやっていたんですけれど 震災でガレキだらけの中でも

また絶対養殖再開するって言っていたんで そういうのを聞いて

地元に戻って一緒にやろうかなっていうので 気持ちがもう動いていたんで

若手漁師集団 フィッシャーマンジャパン

ROLAND 未来の担い手 見るからにフレッシュ

秋田県出身 赤貝漁師見習 渡部更夢

更夢(さらむ)さんMEMO

フィッシャーマンジャパンで働きながら赤貝漁師の修行中

朝に仕事をして体を動かして しかもおいしい食べ物も取って充実しています

 

簡単!お悩み俳句の作り方

俳句のタネとなる“お悩み”を書き出していく

17音のうち5音分くらいはあとで季語にとられちゃうから

12音くらいをこの中から引っ張り出せば一瞬にして俳句ができる

悩みを12音にまとめ”気分“を表現する5音の季語を付ける

 

山形県出身 かき漁師 冨樫翔

 

春の暮あのことをまだ言えてない   熊沢怜奈

お悩み:漁協からもらったわかめの苗を枯らしてしまった

でもまた育てたいので木村さんまたください

 

ROLAND:プレゼントってあげるとき そうだと思うんですけど

あげる人のこと考えている時間って楽しい時間じゃないですか

実はあげる側も幸せにしている もらってあげることによって

だから枯らそうが枯らすまいが受け取ってあげた時点で相手を

幸せにしている そこまで責任感を背負い過ぎず強気なマインドでいけばいい

夏井いつき:木村さんを幸せにしてあげたんだ

 

春の夜若い世代への関わり   鈴木真悟

団体の活動を始めた時は自分が最年少だったんですけど 若い世代が増えてきて

どう接していったらいいのか最近気になって

 

ROLAND:日々アップデートするというか 諦めた瞬間に若年層の話題は

入っていけないと思う 

鈴木:最近ちょっと諦めも入ってきていたんで 

ROLAND:諦めたら離される一方なんで じゃあみんなでTikTok

 

3/5

春の星保護者と並ぶ野外風呂   木村菜智

震災直後の4月に石巻市の中学校に新任の教師として赴任しまして

自衛隊の支援でお風呂に入れる野外風呂に入れるという事で

赴任して直後でまだ始業式とかも始まっていないころ 保護者の方とも

まだ面識がない中で お風呂がはじめましてっていうのは大学を

卒業したばかりでまだ若かったので どうもなんか気恥ずかしいというか

何かこう複雑な気持ちで一緒にこれからお風呂に入るんだみたいな

私自身 高校生の時に中学生の弟を交通事故で亡くした経験があって

被災地に自分なんかが行っていいのかなって思いはあったが

でも そういうつらい身近な人を亡くしたことのある 経験を持った

自分だからこそ何かできることがあるかもしれない 何か行く意味が

自分が行く意味がもしかしたらあるのかもしれない 被災地で

教員をやっていくぞっていう覚悟が決まったかなって思います

地域の為に自分たちができることは何だろうかって 考える

子どもたちだったので そう言ったことを一生懸命子どもたちにも

救われながら 生徒の結婚式とか成人式とか 成長した姿とか

大人になった姿を見るとああよかったなって 

夫とも(石巻で)出会って 夫・太郎さん 娘・果椰ちゃん

同僚だった男性と結婚

15年経って あの時 あの学校に行かなければ 自衛隊のお風呂に

入ることもなかったでしょうし 全てのことに意味はあったんだな

自分にとって大切な場所になったと思います

2026年3月9日月曜日

100分de名著 佐野洋子「100万回生きたねこ」

春の日やまるで死人(しにびと)如く寝る

春眠し白昼の月誘いて

潮風の吹きて真鰯増す風味

天日干し一串十尾春鰯

干し棚で三日寝かせた真鰯を

 

100de名著 絵本スペシャル① 佐野洋子「100万回生きたねこ」

輪廻する「とらねこ」が解放されるまで

宮崎哲弥 伊集院光 阿部みちこ

 

佐野洋子「100万回生きたねこ」(1977)

これまで100回以上重版された 

過去には英語など11か国語に翻訳された実績がある

 

主人公 100万かい輪廻する「とらねこ」

あらすじ 1001回目の生で一匹のメス猫と出会い深く愛し合う

結末 「とらねこ」は息絶えたが二度と輪廻しなかった

 

大人になって読んでみると難しさを持っている絵本

100万回生と死を繰り返す⇨異常な設定

「なぜ輪廻しているのか」という説明がない

テレビのチャンネルを変えるように次の生に移ってしまう

「これは一体どういう意味があるのだろう」と考えてしまう

非常にやっかいな設定が謎を呼び起こす

 

100万年も しなない ねこが いました。

100万回も しんで、 100万回も 生きたのです。

りっぱな とらねこでした。

ある日、 ねこは とんできた やに あたって、

しんでしまいました。

王さまは、 たたかいの まっさいちゅうに、

ねこを だいて なきました。(中略)

そして、 おしろの にわに ねこを うめました。

ある日、 ぬこは、 女の子の せなかで、

おぶいひもが 首に まきついて、 しんでしまいました。

ぐらぐらの頭に なってしまった ねこを だいて、

女の子は 一日じゅう なきました。

そして、 ねこを にわの 木の下に うめました。

ねこは しぬのなんか へいきだったのです。

 

6つの生

王さま ねこ           矢に当たって死ぬ

船のり ねこ           船から落ちて死ぬ

サーカス 手品つかい ねこ   まっぷたつになって死ぬ

どろぼう ねこ          犬に噛まれて死ぬ(悲惨な死に方)

ひとりぼっち おばあさん ねこ 年をとって死ぬ

小さな 女の子 ねこ       おぶいひもが首に巻きつき死ぬ

 

エゴイスティックな愛の押しつけ 宮崎

「とらねこ」の方から求めたものは何もない 伊集院

愛の押しつけになってしまった場合の怖さ 宮崎

あなたたちに足りていない何かを反省せずに泣いているでしょ 伊集院

」という助詞は所有者を表す

飼い主に所有されている限り自由なんかない

結局自分は所有物でしかなかった 宮崎

 

ねこは しぬのなんか へいきだったのです。

真の意味で生きてないから死ぬのも平気 

この状況そのものが不条理 宮崎

 

あるとき、 ねこは だれの ねこでも ありませんでした。

のらねこだったのです。

ねこは はじめて じぶんのねこに なりました。

ねこは じぶんが だいすきでした。

「おれは、 100万回も しんだんだぜ!」 と いいました。

しろいねこは、 「そう。」 と いったきりでした。

ねこは、 すこし はらをたてました。

なにしろ、 自分が だいすきでしたからね。

「おれは、 100万回も…。」 と いいかけて、 ねこは、

「そばに いても いいかい」 と、 白いねこに たずねました。」

白いねこは、 「ええ。」 と いいました。

ねこは、 白いねこの そばに、 いつまでも いました。

 

自己所有の感覚というものを「とらねこ」は持った 

世界の歴史の中で「自分の自分だ」と言えることは珍しかった

みんな誰かの所有物 宮崎

奴隷制度 徴兵制 

1970年頃やっとしがらみとか絆とか言ったものから自由になれた

自分と同じ価値観で言い寄ってくる者は真の愛の対象者ではない

自分に対して外側から影響を与える者こそが愛すべきもの

「そう。」というたった1つの言葉 真の愛に繋がった

 

やがて、 子ねこたちは 大きくなって、

それぞれ どこかへ いきました。(中略)

白いねこは、 すこし おばあさんに なっていました。

ねこは、 いっそう やさしく、 グルグルと のどを ならしました。

ねこは、 白いねこと いっしょに、

いつまでも 生きて いたいと 思いました。

 

このねこは ただ一回だけ生きた。

誰だって 何百回も生きられない。

「どんな人でも一回しか生きないという

非常に平凡なことが大事だ」ということを私は言いたかった。

「人間はただ一回生きて、人を愛して死んでいけばそれだけでよい」

という非常に簡単なメッセージだったと思うんですけども。

ラジオ音源「白作を語る」19875月放送より 佐野洋子の声

 

「ただ一回の真の生」というものを描くために

100万回の生き死に」を設定せざるを得なかった

「唯一一回」というものが浮かび上がってくる

輝いてくる 宮崎

 

人を愛すると生にも執着が芽生えていつまでも生きたいと思う 安部

自己から他者へ愛の対象が拡大した 宮崎

 

本物の愛と本当に生きたにも関わらず 

結局終わりがきてしまう事を悟る 

この世界に対する執着が消え去る

この世界の中に溶け込んでしまうような 存在形態に変わっていった 宮崎

 

最後のページの絵

空気そのもの 地球そのものになったという解釈がこの絵には合う 

調和というか悟りというか 伊集院

 

イヌタデ・オミナエシ・エノコログサ・クサネムのような

夏から秋にかけて見られる草原の風景が描かれている 宮崎

 

やっとこの輪廻の繰り返しから解放された 寂寥感も感じるけれど

「とらねこ」のことを考えると「さわやか」だな…。 宮崎

 

空気感が残る いろいろな余白が持てる 伊集院

白いねこは輪廻をしたと思う 伊集院

恋愛とは勘違いなのか❓ この余白がおもしろい 伊集院

そこまで残酷な事は考えなくて良いけど…。余白は考えさせられる。 伊集院

 

私感 

実は私も白いねこは輪廻していたと、初めて読んだ時から考えていました。

2026年3月8日日曜日

春を詠う&「ものの芽」&「古巣」

春の景割れたガラスにくっきりと

朧めくキリコの神秘と憂鬱と

春かなし共産党を脱党す

蛇穴を出づ熱のない火の世界

春想うこの世の終わり(マックス・)エルンスト

 

■一分季語ウンチク「ものの芽」

夏井いつきのおウチde俳句

 

「ものの芽」というのは春に出てくる色んな植物の芽の事をいうんですね

単純に「芽」といった場合も この「ものの芽」の傍題として扱われます

春にはそれこそ他にも「草の芽」だとか 「木の芽」といったものも

季語になっているのですが 「ものの芽」といった場合は

草とも木とも指定せず 春になって芽吹いていく あらゆる芽の事を

「ものの芽」というわけですね

この季語を使った時には自分が表現したいのは

「草の芽」系のものなのか それとも「木の芽」系のものなのか

他の言葉をどんなものを組み合わせるかによって どちらのことが

言いたいかって言う事を明確にする あるいは

種々雑多の中わーっと出ているっていう事を表現する

他の言葉との組み合わせが大事になってくる季語です

 

■一分季語ウンチク「古巣」

夏井いつきのおウチde俳句

 

読んで字の如く古巣なわけですねぇ

一体なぜこれが季語なのかというと 春にいろんな鳥たちが

巣の中に卵を産んで子を育てる そしてその雛たちが巣立って行った後に

残された巣のこと これが「古巣」になるわけですねぇ

慣用句として「古巣」といった時に 人間が元いた場所

なんかを指す時にも 「古巣」という言葉を使ったりはしますが

これも立派な季語になっている ちゃんと動物のジャンルの季語だと

いうところに注意をしたいですね 鳥には色んな生態のものが

ありますので この「古巣」というのも 例えば木の上に残される

タイプの「古巣」もあれば いろんな草の茂みの中にひっそりと

残されている「古巣」もあります 鳥の多くはこの「古巣」は

そのまま捨ててしまうことが多いようです

 

■春を詠う

啓蟄や日はふりそゝぐ矢のごとく   高浜虚子

春風や闘志いだきて丘に立つ   高浜虚子

鰯引く声のして目覚めけり   福田甲子雄

2026年3月7日土曜日

あの本、読みました?真藤順丈&木内昇

寺山(修司)の嫌う表現春の鳩

宙に浮くピネレの城や春の謎

(寺山修司氏)春の風山高帽に別れ告ぐ

マグリットの洗礼受ける風光る

春怨や叫び続けた低い声

寺山の言葉は俳句いぬふぐり

 

■あの本、読みました?20251113日放送

真藤順丈 木内昇 鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

 

・累計発行部数200万部突破

「国宝青春篇」吉田修一著/朝日文庫

物語の始まりは東京五輪開催の昭和39

 

池谷真吾

昭和の暗くて深い闇を背負うような部分は

確かに今の価値感からすれば信じがたいが

この小説を読んだ時に心を動かされることには理由があって

 

昭和を描いた小説 さまざまな顔を持つ昭和を描いた小説

戦後編

   「青い壷」有吉佐和子著/文春文庫

昭和100年激動の時代を描いた小説

 

   「国宝青春篇」吉田修一著/朝日文庫

物語の始まりは東京五輪開催の昭和39

池谷真吾

「国宝 下 花道篇」の一文 吉田修一著/朝日文庫

「…なんや、あんたのこと気に入ったわ。あんたの忠義心か親心か知らんけど、

それに免じて、あの娘のことは諦めたる。指つめて帰ったらええ」

組長の口からさらっと出た言葉にざわついたのは組員たちのほうで、

当の徳次はといえば「子故に捨つる親心」と口にしながら、すでに覚悟が

できていたような心持ち。もしかすると、事務所に連れて行ってくれ、

と頼んだときから、いや、ヤクザと関わりのある暴走族から綾乃を

連れ戻すと決めたときすでに、その覚悟はできていたのかもしれません。

その後、徳次のまえに用意されましたのは、白木のまな板と

良く磨かれた鑿(のみ)でございます。

袖をまくり、酒を口に含み、淡々と準備を進める徳次に、

「あんた、役者の付き人にしとくの惜しいわ」とは組長で、

「兄弟の盃交わしたんが、あいにくの色男。しゃーないですわ」

答えながら、小指の関節に鋭いを鑿を置きました徳次は、

その小さな鑿の上に自分の体をのせたのでございます。

 

昭和を描いた小説 戦後編

   「オリンピックの身代金()()」奥田英朗(ひでお)/講談社文庫

東京五輪前夜 

 

   「デモクラシーのいろは」森絵都(えと)/KADOKAWA

 

   「罪の声」塩田武士(たけし)/講談社文庫

モチーフ グリコ・森永事件 

 

   「宝島()()」真藤順丈著/講談社文庫

直木賞受賞作 返還前の沖縄が舞台 見逃されてきた真実にスポット

戦後日本の中でのヘビー時代なんで読み物として見せるときに

ウチナーンチュ(沖縄人)の受けてきた悲劇だけではない陽性の

逞しさとか

 

戦後の沖縄を描いた理由

オンちゃん(孤児)のモデル 孤児がどう生きていくか❓ 孤児=英雄

戦果アギヤー:米軍基地から物資を盗み出して人々に分け与える若者のこと。

物語でオンちゃん、グスク、レイは戦果アギヤーとして登場。

昭和100年の今年にスポットをあてる理由

刑務所でのレイとグスクの会話 

レイは仲間と脱走するため暴動を企んでいる

 

「宝島()()」の一文 真藤順丈著/講談社文庫

「おまえは来ないのか、相棒(グー)。ここには兄貴(ヤッチー)はいないぞ」

「玉砕しない。死んだらオンちゃんも捜せなくなる」

「だろうな、おまえは来ない。おれは行くからさ」

「待たんね、おまえは自分の言葉(ドゥー・ヌ・クトゥバ)を見つけたのかよ」

「ああ、なんだって?」

「お前が言ったことやさ、どんなやつが英雄なのかって」

「ああそれな、そうだねえ」レイは少し間を置いて、

「虐げられた人たちを解放できるのが英雄さぁね。そのために戦える“力”を

そなえるのが英雄さぁね。

おれたちが追いかけてきたのは そういう男だったさ、おまえも知ってるよな」

ああ、そうだな。コザでいちばんの戦果アギヤーはそういう男だった。

だけどおれはこう思う。グスクはようやく見つけた自分の言葉

(ワー・ヌ・クトゥバ)を口にしたのさ。

「この世界には、いったん転がりはじめたら止められないものがあるのさ。

貧乏とか病気とか、暴動とか戦争とかさ。そういうだれにも

止められないものに、待ったをかけるのが英雄よ。

この世の法則にあらがえるのが英雄よ」

 

❝英雄の不在❞があぶり出すもの

沖縄の方言を多用した意図

 

「畦(あぜ)と銃」真藤順丈著/講談社文庫

真藤順丈の描くもの 骨格の書ける人 天性を持った人 

中上健次もそう 最初っから「この人凄い」と思っていた 木内昇

 

最新作「英雄の輪」真藤順丈著/講談社

 

昭和を描いた小説 戦前・戦中編

   「地図と拳()()」小川哲(さとし)/集英社文庫

直木賞受賞作 山田風太郎賞受賞作

石本とは東横線の代官山駅で待ち合わせた。

(中略)

四辺を坂道で区切られた区画のちょうど中心に目的のアパートがあった。

同潤会が設計したという重ね建て四戸は、鉄筋コンクリート造りで、

下階は東西が出入り口となっており、上階には北側の階段から

上るようである。大震災の後に建てられたことは間違いないようだが、

モダンというよりは紋切り型の建築だった。

二階の手前が中川の部屋だった。

(中略)

明男はあわてて立ち上がった。尻の下にはフランス語の論文が置かれていた。

「ル・コルビュジェ」石本がそう口にした。

中川が「知ってるのか?」と聞き返した。

 

   「かたばみ」木内昇著/KADOKAWA

戦争を描くときも「戦争の中に人生がある」というよりは

「人生の中に戦争があった」という視線で描きたい

生き抜く人たちの日常を描いた家族小説

 

執筆のきっかけ

激動の時代昭和を描いた小説特集

《読む朝ドラ》戦時下の日常を描いた「かたばみ」

ステップファミリー:血縁のない家族関係 が書きたかった

戦死した球児たちを描きたかった 美化してはいけない リアルに

神代神:出征した早稲田大学野球部のエース 神代清一のニックネーム

執筆する上で気をつけたこと 逞しい感じを描きたかった

生き抜く人を描きたかった

 

「かたばみ」の一文 木内昇著/KADOKAWA

「この校庭のどこでもいいですから、

みなさん好きな場所に寝っ転がってください。

そうして、よくよく空を見てください」

雲間から太陽が少し覗いている。わたる風が頬や首筋を励ますように

さすっていく。生徒たちは梯子の言葉に顔を見合わせている。

「さ、早く寝転んで。しばらく空を眺めたら、ご自身が戦争が

終わってあとにやりたいことを大きな声で言ってみましょう。

寝転んだままでいいですからね」

(中略)

ことに今は戦時下で、子供たちは我慢を強いられている。

思考まで統制されている。思ったことを思ったままに

口にすることさえ、慣れていないのだ。

(中略)

しばらく静かな時間が流れた。やがて、最初に寝転がった幸子が、

「髪飾りをつけて、赤いスカートをはいて、銀座の街にお買い物に行きたい」

と、小さな声で発した。そこから、「父さんと海釣りに出掛けたい」

「とびきり甘い飴を三十個なめる」控えめながら声が連なっていく。

「もっと大きな声で。空に届きませんよ」悌子は明るくうながした。

「父さんと母さんとまた一緒に住む」

「兄ちゃんと腹一杯文字焼きを食べる」大声で叫ぶうちおかしく

なってきたのか、生徒たちは空を向いたままケラケラ笑いはじめた。

 

時代の空気感を描くために参考にしたもの

 

権蔵:悌子の下宿先の家主の義兄 六助:権蔵の仕事仲間

「かたばみ」の一文 木内昇著/KADOKAWA

「六さんは、生きてて楽しいですか?」思わず訊くと、急になんだね、

と六助は眉をひそめたが、やがて揚々と答えた。

「楽しいもなにも、生まれてきたんだから生きるんだよ。

それが生命っていうもんだよ。あのね、よくあるだろ、

「人はなぜ生きるのか」ってな問答が。不毛だよー、ありゃ。

ごちゃごちゃ考えてねぇで、どんどん生きりゃいいんだよ。七面倒くせぇ」

 

戦争の中に人生がある。のではなく、人生の中に戦争があった。という視点。

 

   「普天を我が手に 第一部」奥田英朗/講談社 担当編集者 伊藤蓮矢

昭和元年に生まれた4人の人生を描く

「普天を我が手に 第二部」奥田英朗/講談社

「普天を我が手に 第三部」1217日発売予定

 

奥田英朗がこだわった点

竹田耕三:日米開戦に反対する陸軍の少佐

清濁併せ持つ時代 

紡績工場で起こったストライキ。

矢野一家の親分 矢野辰一がストライキをたき付けた男女を監禁する。

「誰だ、貴様たちは!大方湯川紡績に金で雇われたやくざだろう!

早く解放しろ!自分のやってることがわかってるのか!」

男は大声で言い返した。ただし膝が震えているので虚勢だろう。

「女はどや。二度とせんと言うなら、勘弁したってもええけどな」

「誰が勘弁してくれって言った。わたしは最後まで闘うぞ!」

女も降参しなかった。

辰一はいくつか組合潰しをするうちに、彼らの扱いがわかってきた。

みなが揃って同じような決め口上を言うのは、何かに洗脳されている

からである。従って手打ちはない。「そうか。ほなら覚悟せえ」

辰一はそう言うと、貞夫から日本刀を受け取り、抜いた。顎で子分たちに

指示を出す。子分たちは男の縄をほどき、左腕を真横に伸ばした。

二の腕にさらしを巻いてきつく縛り、二人がかりで抑え込んだ。

「な、何をするか」男が動揺した声を発する。

「おのれ、右利きか」「そうだ」「ならええ」

次の瞬間、辰一は日本刀を力一杯振り下ろした。

男の左腕が、肘から切断された。ポトリと土間に落ちる。

「うわーっ!うわーっ」男は数回絶叫したのち、気を失った。

 

昭和初期の空気感

 

福澤徹三:ホラー 怪談実話 クライムノベル 警察小説など

幅広いジャンルの作品を手掛ける小説家

 

今回取り上げた作品を読むと

 

竹田志郎:軍人・竹田耕三の息子 アメリカの捕虜となり

帰国後は日本の捕虜収容所の通訳に