2026年8月28日金曜日

こころの時代 宮沢賢治③

堺雅人かトム・ハンクスか秋高し

ご近所に救急車来し残暑かな

酷暑日を忙(せわ)しく駆ける救急車

頭痛と眠気足が攣る熱中症?

熱中症❓まさか私が❓そのまさか❓

 

■こころの時代 宮沢賢治③「ほんたうのたべもの」としての童話

「注文の多い料理店 序」

これらのわたくしのおはなしは、

みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。

ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、

十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、

もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。

ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、

わたくしはそのとおり書いたまでです。」

 

「わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、

おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、

どんなにねがふかわかりません。」

 

「兄のトランク」宮澤清六

中学生の私が、花巻駅に迎いに出たとき、まず兄の元気な顔に安心し、

それからそのトランクの大きなことに驚いた。

その年の正月にあには、念仏とお題目のことについて、

父と激しく話し合った後で、いきなり東京へ逃げたのだ。

童話もうんと書いたと言う。

一カ月に三千枚も書いたときには、原稿用紙から字が飛び出して、

そこらあたりを飛び回ったもんだと話したこともある程だから、

七カ月もそんなことをしている中には、原稿も随分増えたに相違ない。

「童児こさえる代りに書いたのだもや」などと言いながら、

兄はそれをみんなに読んでくれたのだった。

蜘蛛やなめくじ、狸やねずみ、山男や風の又三郎の話は、私共を

喜ばせたし、なんという不思議なことばかりする兄だと思ったのだ。

 

「注文の多い料理店 序」

「わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、

きれいにすきとほつた風をたべ、

桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。

またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、

いちばんすばらしいびろうどや羅紗らしやや、宝石いりのきものに、

かはつてゐるのをたびたび見ました。

わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。

これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、

虹にじや月あかりからもらつてきたのです。

ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、

十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、

もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。

ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうで

しかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。

ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、

ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、

そのみわけがよくつきません。

なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、

そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。

けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、

おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、

どんなにねがふかわかりません。

大正十二年十二月二十日 宮沢賢治

 

どんぐりと山猫

こんなのです。字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらゐでした。

けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。

はがきをそつと学校のかばんにしまつて、うちぢゆうとんだりはねたりしました。

一郎は、足もとでパチパチ塩のはぜるやうな、音をきゝました。

びっくりして屈んで見ますと、草のなかに、あつちにもこつちにも、

黄金いろの円いものが、ぴかぴかひかつてゐるのでした。

よくみると、もんなそれは赤いずぼんをはいたどんぐりで、

もうその数ときたら、三百も利かないやうでした。

わあわあわあわあみんななにか云つてゐるのです。

「裁判ももう今日で三日目だぞ、いゝ加減になかなほりをしたらどうだ。」

山ねこがすこし心配さうに、それでもむりに威張って言ひますと、

どんぐりどもは口々に叫びました。

「いえいえ、だめです、なんといつたつて頭のとがつているのがいちばん

えらいんです。そしてわたしがいちばんとがつています。」

「いゝえ、ちがひます。まるいのがえらいのです。

いちばんまるいのはわたしです。」

「大きなことだよ。大きなのがいちばんえらいんだよ。

わたしがいちばんおおきいからわたしがえらいんだよ。」

「さうでないよ。わたしのはうがよほど大きいと、

きのふも判事さんがおつしやつたぢやないか。」

「だめだい、そんなこと。せいの高いのだよ。せいの高いことなんだよ。」

「押しつこのえらいひとだよ。押しつこをしてきめるんだよ。」

もうみんな、がやがやがやがや言つて、なにがなんだか、まるで蜂の巣を

つゝついたやうで、わけがわからなくなりました。

そこでやまねこがさけびました。

「やかましい。こゝをなんとこゝろえる。しづまれ、しづまれ。」

どんぐりはみんなしづまりました。山猫が一郎にそつと申しました。

「このとほりです。どうしたらいゝでせう。」

一郎はわらつてこたへました。

「そんなら、かう言ひわたしたらいゝでせう。このなかでいちばんばかで、

めちやくちうやで、まるでなつていないやうなのが、いちばんえらいとね。

ぼくお説教できいたんです。」

山猫はなるほどといふふうにうなづいて、それからいかにも気取つて、

繻子のきものの胸を開いて、黄いろの陣羽織をちよつと出しで

どんぐりどもに申しわたしました。

「よろしい。しづかにしろ。申しわたしだ。このなかで、いちばん

えらくなくて、ばかで、めちやくちやで、てんでなつてゐなくて、

あたまのつぶれたやうなやつが、いちばんえらいのだ。」

どんぐりは、しいんとしてしまひました。それはそれはしいんとして、

堅まつてしまひました。

 

「よだか」

よだかは、実にみにくい鳥です。

顔は、ところどころ、味噌をつけたようにまだらで、

くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。

足は、まるでよぼよぼで、一間とも歩けません。

ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、

いやになってしまうという工合でした。

「まあ、あのざまをごらん。ほんとうに、鳥の仲間のつらよごしだよ。」

「ね、まあ、あのくちのおおきいことさ。きっと、かえるの親類か何かなんだよ。」

こんな調子です。よだかは、じつと目をつぶって考へました。

(一たい僕は、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。

僕の顔は、味噌をつけたようで、口は裂けてるからなあ。

それだって、僕は今まで、なんにも悪いことをしたことがない。

赤ん坊のめじろが巣から落ちていたときは、助けて巣へ連れて行ってやった。

そしたらめじろは、赤ん坊をまるでぬす人からでも

とりかえすように僕からひきはなしたんだなあ。それからひどく僕を笑ったっけ。)

よだかは口を大きくひらいて、はねをまっすぐに張って、

まるで矢のようにそらをよこぎりました。

小さな羽虫が幾匹も幾匹もその咽喉にはいりました。

また一疋の甲虫が、夜だかののどに、はいりました。

そしてまるでよだかの咽喉をひっかいてばたばたしました。

よだかはそれを無理にのみこんでしまいましたが、その時、

急に胸がどきっとして、夜だかは大声をあげて泣き出しました。

泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。

(ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。

そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。

それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。

僕はもう虫をたべないで餓うえて死のう。

いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。

いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向うに行ってしまおう。)

よだかはもうすっかり力を落してしまって、はねを閉ぢて、地に落ちて行きました。

そしてもう一尺で地面にその弱い足がつくというとき、

よだかは俄にのろしのようにそらへとびあがりました。

それからキシキシキシキシキシッと高く高く叫びました。

夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。

寒さや霜がまるで剣のようによだかを刺しました。

よだかははねがすっかりしびれてしまいました。

そしてなみだぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを見ました。

さうです。これがよだかの最後でした。

もうよだかは落ちてゐるのか、のぼってゐるのか、さかさになってゐるのか、

上を向いてゐるのかも、わかりませんでした。

ただこゝろもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、

横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居りました。

それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。

そして自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、

しずかに燃えているのを見ました。

そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。

今でもまだ燃えています。

 

「兄のトランク」宮澤清六

賢治は童話や詩を子供たちによんできかせるのが好きであった。

私がまだ小学校に入らないころにも、兄は自分で絵をかきながら、

昔話などを聞かせてくれたものだ。

私は兄から童話「蜘蛛となめくぢと狸」と「双子の星」を読んで

聞かせられたことをその口調までもはっきりおぼえている。

処女作の童話を、まっさきに私ども家族に読んできかせた得意さは

去っするに余りあるもので、赤黒く日焼けした顔を輝かし、

目をきらきらさせながら、これからの人生にどんな素晴らしいことが

待っているかを予期していたような当時の兄が見えるようである。

 

2026年8月27日木曜日

村雨さんと日本庭園たしなみ巡り 山本亭

人生という映画の主役花火

人生を終えなお輝かん解夏(げげ)

秋あわれ日本語なのに伝わらず

秋の汗所かまわずぽったぽた

他人は他人自分は自分秋渇き

 

■村雨さんと日本庭園たしなみ巡り 山本亭

村雨辰剛

葛飾区登録有形文化財 山本亭

2024年度 米国日本庭園専門誌 日本庭園ランキング3

日本全国約1000か所から選出

1位は島根 足立美術館

2位は京都 桂離宮

 

庭園に隠されたマジック

広く見せるための視覚効果がいろいろなところに配されている

 

庭園面積 890

大正12(1923)関東大震災 山本榮之助

歴史学博士 歴史研究家 谷口榮

長屋門 ランプ ステンドガラス 長屋門東袖部屋

大正~昭和初期 山本亭 完成

伝統的な「和」をベースに新しい「洋」を加えた

母屋までの道をカーブさせ奥の全貌を隠し期待感をあおる

旧玄関脇には西洋風の応接間

当時では珍しい2世帯住宅

 

花菖蒲:葛飾区の花 鳳凰の間 大理石のマントルピース(暖炉を模した飾り棚)

ビューポイント=視点場

雪見灯籠 多重塔 庭の中で一番距離がとれる視点場

 

たしなみポイント

遠近法を駆使して最大限の奥行を見せる!

 

常緑樹 秋や冬になって葉が落ちてしまうと透けて見えて狭さ

が目立ってしまう

常緑樹ではなく葉が落ちてしまったら周りの建物が見えて遠近法が崩れてしまう

 

たしなみポイント

常緑樹で囲い狭さを目立たせない

池の端を隠し大きく見せる

 

池の端が見えないように工夫してある

石を左右非対称に配置=自然を表現

 

たしなみポイント

見えない滝で期待感をあおる!

 

書院造:奥へ行くほど座敷の格が上がる

一番格式の高い間 花の間

滝の右には雪見灯籠 左には春日灯籠を配置 一つの絵にしてある 

山本亭の作庭家の名前が残っていない

月の間の正面から滝が見える 最高の視点場となっている

 

たしなみポイント

滝の視点場 建物のさんと松の枝と支柱で「二重の額縁」

始めから狙って演出をしていると思う 谷口

江戸時代の浮世絵を模している

これは京都の對龍(たいりゅう)山荘にも使われていた技法

 

手前に大きなものを配置⇨奥の景色を際立たせる

歌川広重 上野山内月のまつ

近代和風建築なのでガラス戸

冬は暖かい部屋で雪見 初夏は躑躅の花見 パノラマビューで楽しめた

 

山本家

初代 山本榮之助 2代目 山本榮蔵

 

池泉回遊式庭園

2枚の板石の橋:移動距離を長くして少しでも広さを感じさせる

一番格式の高い「花の間」格式の高い座敷を見せる庭木や石の配置

滝の左右には溶岩を配置 黒ぼく石(溶岩)

滝を包み込むように配置されている 音をためて出している

 

たしなみポイント

滝周りの石組みは音響装置!

 

日本の方に日本庭園の見た目だけではなく 

庭園の持っている文化を理解してもらいたい

その窓口として山本亭を使って欲しい 谷口 

2026年8月26日水曜日

100分de名著 ブルトン❝シュルレアリスム宣言❞②

ひび割れた秋茄子なのにまた値上げ

異常気象茄子や胡瓜巨大化す

規格外の秋野菜肥料となる

秋野菜価格下がらず廃棄かな

消費者と生産者睨み合う秋

 

100de名著 ブルトン❝シュルレアリスム宣言❞②超現実とは何か

伊東順二 松尾スズキ 伊集院光 阿部みちこ

 

シュルレアリスム。男性名詞。

心の純粋な自動現象(オートマテイスム)()理性によって行使される

どんな統制もなく、美学上ないし道徳上のどんな気づかいからも

はなれた思考の書きとり。

 

超現実とは「現実を超えた現実」

無意識や夢を手がかりにする

 

私は、夢と現実と言う、外見はいかにもあいいれない二つの状態が、

一種の絶対的現実、いってよければ一種の超現実のなかへと、

いつか将来、解消されてゆくことを信じている。

それの征服こそは私の目指す所だ。

 

夢に代表される無意識がある 「夢」今までの現実と認識されていなかった

もう一つの現実と今の現実が別々と捉えられていたものが 溶け合って

一つの現実になる 

 

眼は野生の状態で存在する

「シュルレアリスムと絵画」

 

目だけじゃなく感性 赤ちゃんや子供の完成を知ろう

いろんな常識や既成概念から離れて自由に様々なものを認識する

目の背後には自分の認識が常に存在しているから大人になったら

知識を頼りに見ているのかもしれない

 

超現実を体験する方法 その1 夢の活用

「シュルレアリスム宣言」巌谷國士訳

日ましに高まってゆく意識の一段階から期待している以上のものを、

夢を手がかりとして期待することができないものだろうか?

夢もまた、人生の根本的な諸問題の解決に適用されうるのではないか?

 

「アンダルシアの犬」(1929年公開)

監督 ルイス・ブリュエル

脚本 ルイス・ブリュエル サルバドール・ダリ

 

想像力はおそらく、いまこそ、みずからの権利をとりもどそうとしている。

いとしい想像力よ、私がおまえのなかでなによりも愛しているものは、

おまえが容赦しないということなのだ。

 

目をナイフで切り裂くシーン 

あのシーンがあって初めて映画を肉体的に感じる

スクリーンと自分が一体化する経験

向こうの現実とこちらの現実を一体化して同じ痛みを共有している

 

さまざまな映画監督がこの映画に影響を受けたのは とにかく

頭の中の想像力が刺激されればいいということ 

 

自分がすっかり自分のものになるかどうかは、つまり、

日ごとにおそろしさをます自分の欲望のむれを 

無政府状態に保てるかどうかは、ひとえに人間しだいである。

詩がそのことを人間に教える。

 

全ての決まり事を廃するような感性を持ち続けていたい

 

超現実を体験するためのヒント②自動記述Automatisme

自由連想法:患者をリラックスした状態にして思い浮かんだことを

      そのまま語ってもらう精神分析の方法

 

半分は寝ている状態 半分は覚醒している状態

覚醒している部分が寝ている状態のことを客観的に見て記録する

 

超現実を体験する方法 その2 自動記述

シュルレアリスム魔術の秘訣

シュルレアリスム作文、または下書きにして仕上げ

一人で自動記述

 

あらかじめ主題など考えずに、記憶にとどめたり読みかえしたくなったり

できないほどすばやく書きたまえ。最初の文句は一人でやってくるだろう。

好きなだけ続けたまえ。()なんでもいいから一文字、()

そしてこの文字をつぎの単語の頭文字として押しとおすことによって、

もとの気ままさをとりもどしたまえ。

 

二人で自動記述

シュルレアリスム言語の諸形態がいちばんよく適合するのは、

やはり対話である。

そこでは二つの思考がぶつかりあい、一方が心をうちあけているあいだ、

他方はそれにかかずらわる。

 

医者と精神病患者の会話

「何歳ですか、あなたは?」「あなたです。」(反響性言語模倣症)

「あなたのお名前は?」「四十五件の家です。」

(ガンゼル朦朧症 またはちぐはぐな応答の症状)

 

これはつまり、このばあいには患者の思考のほうが強いということだろうか?

たぶん、そうだ。彼はもはや

自分の年齢や名前などを重んじることから自由なのである。

 

超現実を体験する方法②自動記述

自動記述

   できるだけ早く書く

   即興で思いつくままに書く

   読みかえさず突き進む

 

二人で話すと相手を説得しようとする 相手を自分の考えで征服しようとする

お互いをリスペクトし合う もしくは リスペクトを持ち合える人とやる

生成AIを相手に自動記述を試してみた

 

元々「シュルレアリスム宣言」は「溶ける魚」の序文だった

「溶ける魚」巖谷國士訳

私の墓は、墓地が閉門されたあと、海をつきすすむ一隻の舟のかたちになる。

ときおり夜のブラインドを通して、両手を上にあげたひとりの女が、

空をゆく私の夢の船首像かなにかのように あらわれるものをのぞけば、

この船のなかにはだれもいない。

 

溶ける魚とは自分のことだとブルトンは記しています

 

「シュルレアリスム宣言」巌谷國士訳

げんに私は〈双魚宮〉の星のもとに生まれているし、

人間は自分の思考の中で溶けるものなのだ!

 

「溶ける魚」巖谷國士訳

私の墓は、墓地が閉門されたあと、海をつきすすむ一隻の舟のかたちになる。

ときおり夜のブラインドを通して、両手を上にあげた一人の女が、

空をゆく私の夢の船首像かなにかのように あらわれるものをのぞけば、

この船のなかにはだれもいない。かつて火は、このあやしげな舟から

はなれて、色のある指環たちに魔法をかけようとしたことなどなかった。

海上の捜査はお香の波間でつづけられている。そのとき人間の意志が

生まれたとしても、それはもちろん不意の出来事だとあなたに誓おう。

 

闇は夢の宝庫

 

虚空のなかへひとっとび

一頭の鹿

まずは愛

万事は上々におさまるだろう

パリは大きな村である

 

上記はパピエ・コレ

新聞紙などの紙片をキャンバスに貼り付けて作品を作る

言語も一つのツールでしかない

2026年8月25日火曜日

わたしの日々が言葉になるまで 西加奈子 高橋久美子

秋の日や強き生きざま見せられて

ボリュームをいくら上げても残る蝉

ストーカー?遠慮知らない秋の蝿

秋の月心通じぬ人のをり

「阿片(あへん)」を隠し「龍掛香(りゅうかっこう)」は夜長

 

■わたしの日々が、言葉になるまで 

オノマトペ知ってあなたの言語化アップ!

西加奈子 高橋久美子 莉子 劇団ひとり 桐山照史

 

その数4500以上

意味と音の橋渡ししてくれているので頼っている 高橋

 

オノマトペ研究の第一人者 明治大学 小野正弘教授によると

・具体的な手触り感

・その場に立ち会っているかのような臨場感を表現できる

「古事記」にも「こをろこをろ」という表現ですでに載っており

その頃から日本語の表現を支えてきた

「をろこをろ」塩(海水)をかき鳴らす音。

今で言う「カラカラ」というニュアンス。

 

オノマトペを究めて表現力を上げよう!

 

「キュン」「ドキドキ」だけじゃないオノマトペで表す恋心

恋愛のオノマトペ キュン ドキドキ 

人の数だけ気持ちの形がある! 

マジ ぎゅんぎゅんぎゅん 好きすぎて滅!

-MLK「好きすぎて滅!」

 

君のことを想う度 胸チュンちょっと痛くなる

-LOVE「ラブソングに襲われる」

 

わたしのハートはチュクチュクしちゃうの

-クロードQ「キューティーハニー」

 

恋に落ちた胸の高まりを「ドキドキ」以外で表したこんな表現も!

「彼が触れてくれた時、ことんって鍵が外れたような感じがしたわ。」

-小川洋子「冷めない紅茶」「完璧な病室」所収

 

胸がごっとんごっとんと高鳴るのを、どうしたら押し殺せるか、

そのことばかりに気を取られていた。

-井伏鱒二「かきつばた・無心状」

 

恋心を超えた愛情が伝わるこんなオノマトペも

ふわりとした重み からだのあちらこちらに刻されるあなたのしるし

-茨木のり子「歳月」

 

恋⇨心の鍵⇨ことん

ごっとんごっとん 一瞬のことより重さがあった 西加奈子

ごおとかどうの方が思い浮かぶ 西加奈子 井伏鱒二

ふわりとした重み 組み合わせは自由でいい! 高橋久美子 莉子 茨後のり子

 

「日々のあわあわ」寺井奈緒美著

オノマトペに寄せて日常と短歌を綴ったエッセイ集

もちゃもちゃ:もやもやとぐちゃぐちゃの合体

恋って楽しい瞬間だけじゃない なんかもちゃもちゃするんだよね

 

小野正弘教授

ランダムな言葉のかけ合わせに見えるオノマトペも実は一定の法則がある

代表的なパターンは4

ドキッ:その瞬間を表現

ドキン:余韻を表現

ドキリ:落ち着きを表現

ドキドキ:今まさに続いている

 

西加奈子がつづる 小説世界でのオノマトペ

「漁港の肉子ちゃん」西加奈子著

宙ぶらりんだ。何にもふわふわとうなずく、私の状態が、そうだった。

 

そんな生活が、2年も続くと、自分の体のどこかが、

ふるふると麻痺して、決してその麻痺は、決して引かなくなった。

 

二宮が尖った舌をしまうと、私のほっぺたは、しくしくと冷たかった。

(恋?信頼?友情?キクコの気持ちが解らないので、

 急になめられてびっくりしている)

 

オノマトペ 言語化のヒント

「ドキッ」など既存の表現以外を使う

主人公だったらどう思うだろう?その人の気持ちに寄り添って言葉を作る

実際に足を運びリアルな音を聞いて固定概念にとらわれないよう確認する

既存の言葉を疑う

 

オノマトペは普遍的ではないどんどん変化する

 

「こくとう ぴょ~」高橋久美子著

こくとう うまい! ぴょ~!

 

【ぱ行】明るいニュアンス

ぴょんぴょん

ぱたぱた

ぷかぷか

ペコペコ

ぽこぽこ

ぺろり

【な行】なめらか ねっとり系?

にょきにょき ぬるぬる

なみなみ ねとねと

のびのび ねちねち

【さ行】軽やかさ

サクサク スッキリ

【が・だ行】重量感

がりがり ごしごし ガサゴソ ギラギラ どんより ドカン

 

マンガの世界を演出する独自のオノマトペ

 

シーンは手塚治虫が取り入れた

ウオオオオ ドタッ ドン キャーッ 

臨場感リアリティの日本漫画界の礎を築いた

マンガはオノマトペの宝庫

ゴキッ ボン バン ボキッ ザッ グシャァ 

作品の世界を盛り上げる独特のオノマトペを生み出す

 

「カイジ」福本伸行著 ざわ…ざわ 張り詰める瞬間の心理描写

作品を知らない人にも認知される言葉に!

 

「北斗の拳」原作・武論尊 原画・原哲夫

おおおえ ベキ ベキメキ あわびゅ 

独特過ぎる敵の断末魔 ボッ バッ ひっ 

ひでぶっ!=いてえ!=ひで+デブ 本当に痛い時は痛いとは言わない

あべし たわば オリジナル断末魔を創り出した

 

外国でもオノマトペが理解され始めている

 

北斗の拳 漫画の原哲夫先生は「あべし!」:「アーッ!」+「ベシッ!」

「たわば!」:「たすけてくれ」+「バーッ」

 

「あべし!」は憧れの最期に言いたい言葉 ひとり

 

宮沢賢治が表現する不思議なオノマトペの世界

かぷかぷ グララアガア、グララアガア、 

こぼんこぼん ケホン、ケホン、すぱすぱ

「宮沢賢治特集」約300ページ中に1600ものオノマトペが

超・個性的な賢治流オノマトペはどんな風に考えられている?

 

「オツベルと象」宮沢賢治・作

稲こき器械の六台もすえつけて、のんのんのんのんのんのんと、

大そろしない音をたててやっている。

 

賢治流オノマトペのポイント①

「のんのん」は東北の方言で「重く上下にゆれるさま」

岩手生まれの賢治は方言をオノマトペに活用した

 

「貝の火」宮沢賢治・作

風が来たので鈴蘭は、葉や花を互いにぶっつけて、

しゃりんしゃりんと鳴りました。

 

賢治流オノマトペのポイント②

「鈴蘭」の「鈴」という言葉と見た目からあえて音で表現する

 

「風の又三郎」宮沢賢治の代表作

どっどど どどうど どどうど どどう、

青いくるみを吹きとばせ 

すっぱいかりんもふきとばせ

どっどど どどうど どどうど どどう

 

風の音を表現 音楽を愛し 作曲もしていた

 

賢治流オノマトペのポイント③

音楽的感性を活かし オノマトペにリズムを取り入れた

 

その土地ならではの音が存在する 体感したからこそかけた音 高橋

 

新しいオノマトペを作るには現象をしっかり観察する

 

「せろひきのゴーシュ」クラシック音楽を愛した賢治は

チェロを親しみ自ら作詞作曲を行っていた

イギリス海岸の歌 月夜のでんしんばしらの軍歌

星めぐりの歌 剣舞の歌

 

見つめて観察して分析して そこから音を取り入れて

それが音楽になった 高橋

リズムが良くないと読み継がれない

リズムは句読点になる 西

 

小野正弘教授

PositiveなオノマトペはNegativeなオノマトペより数が少ない

 

桐山照史 ふにゃにーふにゃにー (重力を感じない)

莉子 ぐいんぐいん⤴⤴

高橋 るっきら もっきら るっきら もっきら(作業が上手くいっている時)

西 ふぬふぬふぬふぬ…(猫ちゃんに顔をうずめる)

ひとり ほぬす(靴下がとれた程度の達成感)

2026年8月24日月曜日

兼題「今朝の秋」&テーマ「舌」

ガラパゴスを詠む

秋の海命を繋ぐ技を持ち

秋の島人とアシカの軋轢よ

秋の波(アシカ)内臓だけを食べにけり

秋の潮アシカの狙う鮪かな

秋の空地球の変化速過ぎる

 

NHK俳句 兼題「今朝の秋」

選者:高野ムツオ 司会 柴田英嗣

ゲスト 古坂大魔王 関取花 関灯之介(とものすけ) 原雅子 

年間テーマ「語ろう!俳句」

今朝の秋:立秋の子季語という形で載っていることが多い

 

   風は君ただ会いたくて今朝の秋   関取花

三段切れに近くなっている 

五七五の分かれ目でみんな切れてしまうとダメ 高野

「会いたくて」も「めぐり逢う」の方か迷った 関取

「会う」が良かった 「逢う」だと恋人になってしまう 高野

   今朝の秋なにか忘れてゐるやうな   原雅子

五七五でない方がもっとかっこいいなと思った 

「今朝の秋何か忘れてゐるやうな」という

一個(のまとまり)でもいい 古坂

俳句を形にする時に「物で抑えなさい」と言われた

気分だけで終わってしまっていいのかな 原

「春愁や何か忘れてゐさうな日 稲畑汀子」灯之介

   青信号まだ青である今朝の秋   古坂大魔王

青であることが安心ではない 高野

青信号と最初に言うことでその信号が青の状態で映像として見える 

これのおかげでその色が移ろっていく部分にも

想像が及ぶやすくなる 灯之介

   水中の河馬(かば)の眼(まなこ)も今朝の秋   高野ムツオ

今朝の秋は昔から使われている 歴史性のある言葉なので

過去の今朝の秋の質感や情感みたいなものが

その眼にどんどん堆積していってそれを見つめているような感じがする 

「眼も」の「も」が上手い 灯之介

「河馬の眼も」の「も」が説明的 高野

   そしてまた生き延び今朝の秋に逢ふ   関灯之介

秋という時間に会うのか 秋に誰かと会うのかがあいまい

 「生き延び今朝の秋」で十分じゃないかと思った

 「今朝の秋」に出会えたという意味であれば

 「に逢ふ」というのはどこまで効果があるか気になった 高野

 関灯之介「人と会う」つもりで詠んでいる

 立秋の爽やかになった日に誰か大切な人と逢う

 人で初めて「に逢ふ」が生きる 高野

 

関灯之介さんは21歳 東京大学4年生 大ファンになってしまいました。

才能の塊に圧倒されました。

 

・特選三席発表 兼題「今朝の秋」

一席 爆弾の止()まぬ地球に今朝の秋   濱岡学

二席 めざめよしそらよしかぜよし今朝の秋   原芳夫

三席 窓開けて空ごと吸うや今朝の秋   リコピン

 

・特選 兼題「今朝の秋」

吸ふ息も吐く息もまた今朝の秋   須田真弓

日めくりの俳句を声に今朝の秋   竹内白熊

天窓に雲の訪()ひ来る今朝の秋   関久美子

筑波嶺の二峰寄りそう今朝の秋   矢部重夫

剣道着大股で来る今朝の秋   翠簾屋信子

川風を包む投網や今朝の秋   臼井重之

 

NHK短歌 テーマ「舌」

選者:平岡直子 ゲスト:魚乃目三太 司会:尾崎世界観

年間テーマ「私の宮沢賢治」

 

宮沢賢治の作品には身体感覚に独自なものがある

目や舌などの部位のナイーブさが印象的

口の中で普段しまわれているけど ちょっと別の生き物みたい

 

この坂は霧のなかよりおほいなる舌のごとくにあらはれにけり

宮沢賢治

 

この歌に出てくる舌は奇妙な神聖さが感じられる 平岡

賢さんが過ごした花巻はちょっとした坂がぽつぽつとある 魚乃目

坂に自分が食べられているみたいなイメージがある 平岡

 

・入選九首 テーマ「舌」

口蓋(こうがい)の骨のない場所探る舌やさしいよこれから起きること

ニイナ

ツルツルとザラザラがいてああこれは犬の方だと思いつつ寝る

葉月ままこ

千人の政治家集う議会には二千の舌が在ると思しき

極北(きょくほく)のヤマダ

岬まで23㎞ にんげんの舌なら苦みを感じるところ

岩下葛(かずま)

一度だけ力士の舌を見たことがあるのに肘をピザと言っちゃう

岸寅(とら)太郎

一席 手術後の父を見舞えば舌鮃みたいに薄く横たわりおり

弓立悦(ゆみたてえつ)

二席 蛇の舌みたいに裂けたY字路に私の髪を切る理髪店

稲葉ゆい

ビジュアルを気にして舌は悲しんで舌の舌を噛み切って死ぬだろう

中村雨

三席 白い服着て白っぽいことを言う舌の置き場に決まりがあると

大岩摩利

 

・私の宮沢賢治

景色や風景に生々しい身体性を感じている作家

 

雲ひくき峠越ゆれば(いもうとのつめたきなきがほ)丘と野原と

宮沢賢治

風景の中に妹の泣き顔が発見されている

妹の顔が景色とオーバーラップした歌 平岡

賢さんは妹のトシさんのことが大好きなお兄ちゃん

亡くなったあとの歌なのか 魚乃目

まだトシが生きている時に作られた歌 字面的に亡骸感がある 

一段階 抽象的になってしまった存在 平岡

 

うしろより にらむものあり うしろより われをにらむ 青きものあり

宮沢賢治

後ろに何者かがいるが正体がわからない 

およそ人間らしからぬ色彩をした存在がいる

この一首だけ読むとちょっと怖い ホラーみたいな歌

青きものというのは

具体的な情報を削ぎ落すことで強い普遍性を獲得した歌

湖だということがわかっても歌の怖さが減らない

 

ちゃんとわたし顔を見ながらねじこんでアインシュタインの舌の複製

平岡直子

私たちはみんなコピペされた存在である

舌というモチーフに新たなニュアンスを吐く加えた舌

 

・いちご摘み

うまれかわってなお揺りもどる藤の花咲き揃(そろ)うことのない追想へ

湯島はじめ(好きな歌人 杉﨑恒夫)

ドア引けばはずみに揺れるカーテンの、その一瞬をかたき布地は

福山ろか(好きな歌人 薮内亮輔)

 

東京大学Q短歌会に参加

短歌道場in郡山2025 優勝

 

イヤホンは真っ白に垂れ青年の鎖骨からしばらくをなぞった

物語からは抜け落ちてしまうような一瞬とか日常のかけがえのなさ

 

普段やわらかいものであるカーテンがかたい別の表情を見せた

この一首にしようとなっていかかったら 見過ごしてしまっていた

 

摘んだのは「揺れる」日常の中の静かな揺らぎ