秋の暮空は心を表さん(広重)
秋麗広重の愛受け取らん
秋の風空に託した想いあり
打ちつけるしなる竹林秋の雨
満月の放つ光や秋の宵
■NHK俳句 兼題「飛ぶ・跳ぶ」
選者:高野ムツオ ゲスト 今橋眞理子 曽根毅
ゲスト 古坂大魔王 関取花 司会:柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」
①
石ころも空飛びたきや秋日和 高野ムツオ
「飛びたきや」⇨「飛びたかり」「空飛んだ後の石ころ秋日和」
秋のとても爽やかで気分のいい日を「秋うらら」と言う
「秋うらら」は体感的な感じで「秋日和」はそういう一日があった
そういう日を自分は迎えたという気持ちが日和という言葉にある
そこの微妙にニュアンスが違う だんだん寒くなって冬に
なってしまうけれども 今はとても充実した日だという意味合いが
「秋日和」に入っている
②
鳥や飛ぶ風鈴水面へ音落す 古坂大魔王
風鈴の音は普通は横に広がるが この句では水面に音が落ちる
普通だったら「鳥飛べり」や「鳥飛ぶや」とするのを「鳥や飛ぶ」
と五七五の頭の五音の真ん中に「や」の切れ字を入れて ここで
感動を強めて さらに風鈴へ展開するという 作り方もとても
気に入りました
「水面へ」で方向を示しているから「落とす」という方向を
示す言葉はいらなかった 「風鈴の音は水面へ」とやって
ひっくり返して下五に「鳥飛べり」という言い方もある
「風鈴の音は水面へ鳥飛べり」アングルが2つはっきりしてくる
③
星飛んで夜間飛行の遠ざかる 今橋眞理子
星飛ぶ:秋の季語 流星の子季語
④
風力よ太陽光よ飛蝗(ばった)跳ぶ 曽根毅
本来は太陽光だけじゃダメで太陽光発電とか熟語にしなければ
いけないが そのうち言葉がひとり歩きして「太陽光」と
言うことで太陽のエネルギーを感じさせる だから言葉として
ちゃんと使えている これによってその言葉が普及する可能性が
俳句の世界であると思う 飛蝗飛ぶという最後の力強さによって
バッタくん風力にも太陽にも負けずずっと生き続けるんだ!っていう
バッタに対する応援歌にもなっている
⑤
飛び出した鼻毛も愛す覚悟なし 関取花
無季の俳句 飛び出した鼻毛を愛して貰えるのか もらえないのかが大事
ここで愛してくれるっていうのは いいなと思ったのですけど
俳句的には「飛び出した鼻毛も愛す」で一回切れるので その次に
「覚悟なし」まで飛ぶのが少し無理がある 「鼻毛愛する覚悟なし」
とつながったらよかった 俗なもの みんなが嫌うようなもの
そこにポエジーを見つけるというのは俳句の一番大事な精神
「秋日和鼻毛愛する覚悟なし」これだけでもね
・特選三席発表 兼題「飛ぶ・跳ぶ」
一席 朝採れの飛び跳ねそうな茄子(なすび)かな 米山カローリング
二席 運動会先生跳んで転がりて 城内幸江(きのうちゆきえ)
三席 長城も長江も越え飛蝗(ばった)飛ぶ 島﨑有造(ゆうぞう)
特選 兼題「飛ぶ・跳ぶ」
SLの飛べさうな音野分晴(のわきばれ) 慈雨
飛べ車そんな時代の案山子かな 小﨑光洋
秋晴れや洗濯鋏の飛ぶ力 阿部勉
小鹿跳ぶ生まれ出るを誇るごと 森毬子
朝顔に飛ぶ棟梁の鉋屑(かんなくず) 赤尾てるぐ
ましら酒呑めば大空飛べるなり 加藤草児
次回の兼題「冬銀河」
選者:堀田季何 司会:柴田英嗣 レギュラー:庄司浩平
■NHK短歌 テーマ「踊り」
選者:梶原さい子 ゲスト:勅使川原三郎 司会:尾崎世界観
年間テーマ「私の宮沢賢治」
原体剣舞連
(mental sketch modified)
dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah
こんや異装〔いさう〕のげん月のした
鶏〔とり〕の黒尾を頭巾〔づきん〕にかざり
片刃〔かたは〕の太刀をひらめかす
原体〔はらたい〕村の舞手〔おどりこ〕たちよ
鴇〔とき〕いろのはるの樹液〔じゅえき〕を
アルペン農の辛酸〔しんさん〕に投げ
生〔せい〕しののめの草いろの火を
高原の風とひかりにさゝげ
菩提樹〔まだ〕皮〔かわ〕と縄とをまとふ
気圏の戦士わが朋〔とも〕たちよ
青らみわたるこう気をふかみ
楢と掬〔ぶな〕とのうれひをあつめ
蛇紋山地〔じゃもんさんち〕に篝〔かゞり〕をかかげ
ひのきの髪をうちゆすり
まるめろの匂のそらに
あたらしい星雲を燃せ
dah-dah-sko-dah-dah
肌膚〔きふ〕を腐植と土にけづらせ
筋骨はつめたい炭酸に粗〔あら〕び
月月〔つきづき〕に日光と風とを焦慮し
敬虔に年を累〔かさ〕ねた師父〔しふ〕たちよ
こんや銀河と森とのまつり
准〔じゅん〕平原の天末線〔てんまつせん〕に
さらにも強く鼓を鳴らし
うす月の雲をどよませ
Ho!Ho!Ho!
むかし達谷〔たった〕の悪路王〔あくろわう〕
まっくらくらの二里の洞
わたるは夢と黒夜神〔こくやじん〕
首は刻まれ漬けられ
アンドロメダもかゞりにゆすれ
青い仮面〔めん〕このこけおどし
太刀を浴びてはいっぷかぷ
夜風の底の蜘蛛〔くも〕おどり
胃袋はいてぎったぎた
dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah
さらにただしく刃〔やいば〕を合〔あ〕わせ
霹靂〔へきれき〕の青火をくだし
四方〔しほう〕の夜〔よる〕の鬼神〔きじん〕をまねき
樹液〔じゅえき〕もふるふこの夜〔よ〕さひとよ
赤ひたたれを地にひるがへし
雹雲〔ひゃううん〕と風とをまつれ
dah-dah-dah-dahh
夜風〔よかぜ〕とどろきひのきはみだれ
月は射〔ゐ〕そそぐ銀の矢並
打つも果〔は〕てるも火花のいのち
太刀の軋〔きし〕りの消えぬひま
dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah
太刀は稲妻〔いなづま〕萱穂〔かやほ〕のさやぎ
獅子の星座〔せいざ〕に散る火の雨の
消えてあとない天〔あま〕のがはら
打つも果てるもひとつのいのち
dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E4%BD%93%E5%89%A3%E8%88%9E%E9%80%A3
今から35年以上前の舞台の記録
様々な宮沢賢治の作品を題材にして作ってきた
dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah という音を
どのような響きとして受け取り作品に落とし込んだのか?梶原
身体の動き あるいは自然界の動きを一番感じた
賢治は踊りのようすを描いた短歌がある
岩手の伝統的な踊りである剣舞を見た時に感動して詠んだ
剣舞(けんまい)の赤ひたたれはきらめきてうす月しめる地にひるがへる
宮沢賢治
賢治が盛岡高等農林学校の3年生の時に地質調査で岩手県の江刺地方に行った
その時に踊りを目にして大変感激した 「赤ひたたれ」は赤い衣装
その夢のような情景が脳裏に焼きついたのではないか 梶原
私はまさにこの江刺市に出向いて1980年代に取材に行ったことがある
剣舞をその当時の12歳の少年に踊っていただいて その踊りが事実に見事
亡くなってしまった命に対して手向ける踊り 踊り自体に力強さと
得も言われぬ魂みたいなものを感じる この世非ざるを私も感じた 勅使河原
・入選九首 テーマ「踊り」
三席 ラーメンに卵を落とす 徳島の夜に踊りの渦がうまれる
野分のわ
ため息をつく人しずかに包みこむ入り江のような午後の踊り場
葉月ままこ
私 スポットが当たらなくても吾子は舞う踊り子Bとしての指先
竹内秀吉
よさこいを終えた人らの上気して光り輝く向かいのホーム
三月とあ
二席 私 逆再生ボタンを押せばダンサーの目に還りゆくひと粒の水
富尾大地
スーパーの狭い道路で譲り合うカート2台の無言のワルツ
浅野愛佳(あいか)
踊り子草しゃがめば母の膝ほどの高さに風の劇場がある
Sizuku
一席 流星のひかる軌道よわたしたち速く短い踊りのさなか
石川真琴
鰯雲ぐっと頭上に集いおりソーラン節の綱を引くたび
佐藤研哉
私感
勅使河原先生の解釈最高に素敵でした。
・わたしの宮沢賢治
うす月にかがやきいでし踊り子の異形(いぎょう)を見ればこゝろ泣かゆも
宮沢賢治
この時踊り子は人間でありながら人間ではないような存在になっている
死者の魂を供養するための踊り
この世とあの世の間にあるような世界を この時 賢治は感じたと思う
「異形」ということは必ずしも踊り手本人だけではない
その時に幻影のように見える影の動きとか それも含めた「異形」 勅使河原
踊っている側の気持ちも気になってきました 尾崎
踊っている側は何の感情も入れていない それが踊り
踊っている人が涙することは考えられない つまり無心 だから美しい
だから空気と溶け合うことができる 純粋さが見ている人の心を打つ 勅使河原
賢治にも突然踊り出したくなったっていう時があった
詩を作る時には身体のリズムの感覚が必要なので その訓練にもなる
賢治にとって踊とは 自然や音楽と一体になって 自分の内側から
湧き上がる感動を身体で解き放ったもの そこで得たリズムが
賢治の詩のリズムにもつながっていったのではないか 梶原
自分の中だけで収めきれないこと 自然に対して身を投げ出す 心を捧げる
激しい戦いのような精神 勅使河原
見やう見まねで踊りについてゆく子らのいつしか草のやうに息づく
梶原さい子
最初は見られていることが恥ずかしいというイメージがある 尾崎
恥ずかしくていいんじゃないですか
踊りを感じるということがあれば十分 勅使河原
文字に書かれたことによって宮沢賢治を知ったと思うのはよくない
私は離さなくてもいい むしろ踊る方がいい じっくり身体で受け取って
それで身体で返す もう少しやろうかなと思っています 勅使河原
・いちご摘み 一語つみ
昨日食べたカルボナーラがもう恋しい星月夜 そんな日記をつける
長谷川麟(好きな歌人 石川啄木)
⇩
まだ今日を昨日にしたくないきみのだんだんあたたかくなるかかと
馬場めぐみ(好きな歌人 平岡直子)
詩のボクシングに出演していました
第54回短歌研究新人賞
他者から見られるっていう意識を自分の中で受け止めていくのに
かなり時間がかかりました
浴槽は海に繋がっていませんだけどいちばん夜明けに近い
「無数を振り切っていけ」短歌研究社より
きっかけ
絶対この子のことは私の言葉で残しておきたい
私自身の短歌の光にもなった
摘んだのは「昨日」明日も君の歌を…。
次回はテーマ「手紙」選者:横山未来子 司会 ヒコロヒー
出演:菊池銀河 横田真子
