2021年9月29日水曜日

題「車(タクシーなど)」

百二十歳長き道のり菊日和
北斎の繊細な筆致紅き菊
色褪せず歌い継がれて草の花
終わり支度始めませんか秋声
螻蛄(けら)鳴くやポニーテールに嫁ぐ姫

NHK短歌 題「車(タクシーなど)」
選者 佐伯裕子 司会 小沢敬一 ゲスト 井戸田潤

冒頭の短歌
疲れやすき心は走る246号線ふるさとの街を縦に切りつつ
佐伯裕子

今週のお気に入り
ワイパーを止めれば世界は滝になりただ瀑声を聞く駐車場
和歌山県和歌山市 千代田環
こだわりのカレーとナンを出す店を車に載せて郊外を行く
岐阜県本巣市 イトウカンタ

短歌の基礎
今日のテーマは「擬人化」
(人間以外のものを人間に見立てて表す。)
「木々が揺れる」→「木々がささやく」
「雨が降る」→「空が泣いている」
「ペンを転がす」→「ペンが目を回す」「寝転がるペン」「ペンが逃げる」
「イスが軋む」→「イスが年老う」「イスが嫌がる」など。
(意思を持たせると良い。)

高速路さらに加速し走るべく路面をつかめフロントタイヤ
春日井建

トレーニング
赤とんぼかかしの肩にひと休み夕陽で染まる照れてるほっぺ
小島よしお
(一首の中でありきたりな2つの擬人化は失敗する場合が多い。)

春休み所在なさげに朝礼台が出番はまだかと四月を待ってる
小沢敬一
添削(過剰な表現。ありきたりな表現や多用は避ける。)
春休み所在なさげに錆びついた朝礼台が四月を待ってる

帰り道渋滞続くアクアラインブレーキランプは真っ赤に怒る
井戸田潤
添削(語順)
帰り道アクアラインの渋滞にブレーキランプは真っ赤に怒る

歯ぎしりがうるさい今日のウィンカー仲直りしたい夜のドライブ
小沢一敬
(擬人化が上手くいっている)

夕立を走り抜けてく軽トラはものすごい汗をワイパーが拭く
小沢一敬
添削(語順)
夕立を走り抜けてく軽トラのワイパーが拭くものすごい汗

5秒前震える指でレを押さえギザギザハートをアルトで歌う
井戸田潤
添削(サックスと言わないと勘違いされる。
「の」で繋げることで擬人化が巧くいく。)
5秒前震える指でレを押さえギザギザハートのサックスを吹く

扇風機前で伸びする我が子猫夏に疲れたあの日の父だ
小沢一敬
添削(「あの日の父」は比喩で擬人化ではない。
扇風機があるので夏は不要。)
扇風機の前で伸びする我が子猫疲れたなあとあの日の父だ

巧く使えば擬人化は温かみや滑稽さがでる。

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