2025年3月4日火曜日

あの本、読みました?吉本ばなな&小原晩

満月に凛と向かわん梅ふふむ
客を待つほのかな香り夜の梅
値上げのために消える商品今何処
亀鳴くや値上げ直前モノ隠す
春の夜や未だシナモン止められず

■ あの本、読みました?吉本ばなな&小原晩…生き方のヒント【エッセイ】特集
鈴木保奈美 角谷暁子 小原晩 篠原康子 吉本ばなな 林祐輔P
「獅子座、A型、丙午」鈴木保奈美著/中央公論新社
日常を温かく見つめた保奈美さんの本音・本気が綴られたエッセイ

・自費出版❝唐揚げ本❞が異例のヒット 注目の若手作家・小原晩 篠原康子
無職から作家へ シンデレラストーリーとは?
200部くらい刷って5万円で作れた 5万円なら貯金があった
異例のヒット!自費出版で1万部
唐揚げ本とは?

「無職、川、ブックオフ」の一文 マンスーン著/素粒子社
売るでなく買うでもなくより
寝ることにも飽きて。起きることにも飽きて。
インターネットにも飽きたら他にやることがない。
そうなったら向かう場所は一つだけだった。
実家よりも落ち着く。ブックオフ。
ブックオフに行く理由はそれぞれあると思う。
探してる本を買いに行く。本を売りに行く。
時間を潰しに行く。でも僕はそのどれでもなかった。
ブックオフを感じに行く。ただそれだけだった。
(中略)
最近は実家に帰ると父の本棚を眺めている。父を眺めている。
恥ずかしいから気づかれないように。いつだったか、父の本棚に
「働かない息子を持つ父親」みたいなタイトルの本を見つけた。
早く、ブックオフで売ってほしい。

「終の棲Ⅴ幸せの循環型ホーム」の一文 
北沢美代著/幻冬舎メディアコンサルティング
人生100年時代より
まず私が思っていた老年学は顕微鏡で
「老年」を拡大して見ることだと思っていた。
納得できたことは「人生100年時代」を考えると「老年」だけに
焦点を当てるのではなくそれを支えていく若者、
国の問題でもあるということだ。
当たり前と言えばそれまでのことだが、人生50年時代から
100年時代に移行してきた時は「余生」ではなく「セカンドライフ」
なのだと知った時、私は下の世代の後輩たちが「老人ホーム」を
すでに自身のライフプランとして位置づけており、
それをまさに「セカンドライフ」だった。

月間売り上げ1位 「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」

「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」の一文
小原晩著/実業の日本社
社会人一年目の夏。仕事に慣れてきた私はサボることを覚えた。
先輩にバレないルートでファミリーマートまで行って、唐揚げ弁当を買い、
建物と建物の隙間に入って唐揚げ弁当をむさぼり食う。
(中略)
ある日、唐揚げ弁当を持って、いつもの場所へ行くと、
「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」と、書かれた
紙が張り出されていた。私は驚いた。バレていた。
青山というお洒落な街の建物と建物の隙間でファミマの
唐揚げ弁当を食べている人間が存在するということがバレていたのだ。

エッセイを描くきっかけは❓

代々木公園と元気を出して より
「アゝ!アゝ!」鳴いた。と思うが早いか、すごい量のカラスが
色んな木から飛び出してきて、ついさっきまで私が座っていた
水辺に集まった、あんバターサンドを囲んで。
そうだ。私はあんバターサンドを置き去りにしてしまった。
カラスたちはあんバターサンドをカツカツ突いて食べていく。
あんこの糖分で頭が冴えわたるカラス、
バターの脂肪分で毛の艶を増していくカラス、
パンを咀嚼することによって顎が発達するカラス。
めきめきめきめき進化するカラスたちの迫力たるや。
その光景をぶるぶる震えて見つめる私のまぬけさたるや。
ほとぼりのさめた頃、カラスたちが残したゴミを拾って帰った。
こうして自分のまぬけさを肌で感じてみると、
全ての失敗がやむを得なくおもえた。
「私は途方もない馬鹿なのだから、開き直ってしまおう」などと
考えているとむやみやたらと元気が出てきた。
そういえば死んだ父もよく言っていた。
可愛いお馬鹿になりなさい、と。

無職から作家へ シンデレラストーリーとは?

兄はガニ股より
父が亡くなってから、
しばらくの間は週に一度実家に帰っていた。
母の心労は、父が亡くなったことだけではなく、
最近発覚した兄の借金のことだった。
兄は少し前に離婚し、勝手に住民票を実家に移していたようで、
借金関係の書類が実家に届くようになっていた。
(中略)
逆切れしている相手に、言葉は要らない。「あ?」で充分。
議論の価値はない。兄だって自分が悪いことぐらい
百も承知だ。だからこそ逆にキレるんだ。
果てしなく広いローソンに兄と妹の「あ?」「あ?」「あ?」「あ?」が
響き渡る。「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」
果てしなく広いローソンが「あ」で埋め尽くされた頃、
兄も落ち着いてきたのか、「公園行って話すか…」と言い始めた。
それからは穏やかに、現状とこれからについて話しあった。
話が終わると、「駅まで送るよ」と言って、そのすぐあとに
「妹を駅まで送るなんていいお兄ちゃんだろ」と言った。

エッセイを通して伝えたいこと

・小説家が描くエッセイの魅力とは
吉本ばななが語るエッセイの魅力とは?
エッセイは得意じゃない 豆腐を作るときに”おから“が出る
エッセイは”おから“ その考えは一体どこから

「パイナップルヘッド」吉本ばなな著/幻冬舎文庫1998年発売
ばななさんの愛・感動・生き抜く秘訣を書きの記した一冊
が、鈴木保奈美さんの本棚から

「パイナップルヘッド」の一文 吉本ばなな著/幻冬舎文庫
保奈美夢より
私は「鈴木保奈美」は天才だと思う。天才はみんなそうだが、
会うと普通の人のふりをしている。
そして自分の持ち場に行くと、突然恐ろしい能力を破発揮するのだ。

吉本ばななにとってエッセイとは?

「骨が折れた日々 どくだみちゃんとふしばな11」の一文
吉本ばなな著/幻冬舎文庫
飽きより
杖をついてて、スタスタ歩けないって言ってんのに、
わざと遠くに止めて動かないタクシーの運転手さん。
でもあわてないでゆっくり歩いて乗る。
こんなことで転んだらバカを見る。
「反対側から乗らずにここから乗るとずいぶんと遠回りに
なっちゃいますけど、ご了承いただけますか」とか言ってる。
意地悪い。だから歩けないから道を渡れないんだって言ってんのに。
家について「ここでけっこうです」と言っても、
聞こえないふりして30メートルくらい先まで走っちゃう。
すみません、たくさん歩けないのでバックしてもらえますか?
と言うと、1メートル下がって「はい!」と止まる。
「もう少し下がってもらえますか?」と言うと、
また、1メートル下がって止まる。「あの電柱あたりまで」
と言うと、何回もいやらしくブレーキをかけながら止まる。
こういう意地悪ってなんのためにあるんだろう?
本人はすっきりするってわけ?コロナでうっぷんがたまってるから?
最後は一応笑顔で別れたけど、
きっとモテないし気の毒な人生なんだろうな。

理由と余裕より
言うことを聞かないともっと面倒なことになりそうだな、まあいいか、
今時間があるし、人に会いたいし、嫌いでもないし、と思って、
たまにそういう強引な人とごはんなど食べる。するとものすごい
目力でずっと存在しているから、ごはんがまずくなる。
そして必ずなにか提案してくる。双方にとっていいという感じの提案で、
お金がからんでいたりいなかったりするが、最終的に
その人の方がちょっと得をするような案件である。
人生って、自分の方がちょっと多めにやってこそなんとか
回っていくものだ。自分が言い出したんだから、ちょっと多めに取る、
それは違うと思う。一見いいようだが、長い目で見たらマイナスになる。
そんな簡単なことがなぜわからない。これは哲学でもなんでもなく
ちょっと多めに取る人の周りからは、だんだん人がいなくなる。

エッセイは”おから“
酷い目に遭ったら絶対元を取ってやる

治癒より
猫がゆっくり歩いてくる。知っている猫なので「久しぶり、
元気だった?」と声をかけたら、「にゃにゃにゃーん、
にゃにゃにゃーん、にゃんにゃん、にゃんごろにゃん」と
返事が返ってくる。こんなに会話が成り立つなんて!

アジアの風(電鍋考)より
それから、似たようなシステムで、熱々のまま入れておいたから
長い間加熱しながら保温してくれる鍋もあるとき人からいただいて、
お味噌汁をずっとそれで作っていました。
そのときかっていた猫が、なんと土鍋やル・クルーゼの蓋も
開ける強者だった(ふと見ると土鍋やあの重いル・クルーゼの
鍋の蓋がずれていて、肉だけがなくなっている。そして猫の手が
しっとり濡れている)のですが、その鍋の蓋だけは構造上
猫の手では開けられないしくみだったからです。

猫は大切な存在
SNSを通して描く理由

「パイナツプリン」の一文 吉本ばなな著/角川文庫
ばななさんの心・恋・死・友情・作家についてつづられた一冊

あの日の工藤静香より
生の歌番組の良いところは、アイドルの人達のゆれをそのまま
映し出してしまうところで、その日の気分によって同じ歌も
表情も一回きりしかないところだ。
「アイドルのあの人にとっても、私にとっても、今日という日は
二度とないんだ、この人がこんな顔でこの歌を歌うことも。」
と思えた瞬間のときめきはたとえビデオにとっておいても
決して再現できない。
(中略)
たしかその日は新曲の「抱いてくれたらいいのに」とかいう曲が
初めてベストテン入りしたんだと思う。
彼女のあの勢いといい、パンチといい、歌といい、本気だなと思わせた。

「幸せへのセンサー」の一文 吉本ばなな著/幻冬舎
人に言われた評価とは関係なく、「自分のここはいいところだと思うな」
とか「自分のこういうところは本当にひどいな」とか、
自分だけで思っていること。自分だけで思っていることとか、
自分だけが知っていることって、実はものすごく大切。
だけど、今ってSNSとかですぐつぶやいたりして、みなさんすぐ
手放しちゃうじゃないですか。私もSNSはやっているけれど、
誰にも言わないでどこかに行って、それをどこにも載せないし、
書かないなんてことは、いっぱいあります。
そういう自分しか知らないことっていうのがすごく大切で、それが
全てだし、それだけが自分を豊かにするコツだと言っても過言ではない。

幸せになるためには…
作家とライターの関係性
雑誌で対談!綿矢りさ
綿矢りさ オススメのエッセイは?
「精選女性随筆集 宇野千代 大庭みな子」小池真理子選/文春文庫
小池真理子・川上弘美が選者となり
近現代の女性作家による随筆を編んだ珠玉のシリーズ

『「違うこと」をしないこと』吉本ばなな著/角川文庫

吉本ばなな女史 お薦めの一冊
「女二人のニューギニア」有吉佐和子著/河出文庫
現地の民族や文化を観察した記録
ハプニングの連続に抱腹絶倒の一冊

吉本ばなな女史!尊敬の念は深まり益々好きになっちゃいました。
吉本ばなな女史をお教えくださった糸井重里氏にはまたまた感謝、感謝です。
今回は本当に素敵な企画をありがとうございました。

0 件のコメント:

コメントを投稿