2026年6月1日月曜日

あの本、読みました?羽田圭介

鰻石積んで待つこと2週間

田植え終え鰻の遡上待ち受けん

海亀の湯治場となる海の底

海亀や埋まり温む海の岩

されし事思い出す日々竹落葉

 

■あの本、読みました?

実は読みやすい&短い!?谷崎潤一郎作品を羽田圭介が熱弁解説

羽田圭介 鈴木保奈美 山本倖千恵 石井千湖

 

短くて読みやすい谷崎作品4冊厳選

勉強のためとか経緯を感じながらじゃなくて面白いから読んでる 羽田

文章は芸術 書いていることはゴシップ 石井

SNS時代の今一番読みやすい 日本の文化人って暗いイメージ 羽田

谷崎は明るい 谷崎と川端康成は人生楽しんでる 羽田

毎日刺激がほしい方 読書生活に刺激がほしい方におすすめ 石井

令和の時代に読むのと昭和当時の人が読んだ感想はあまり変わらない 羽田

 

谷崎潤一郎

1886年東京日本橋生まれ 東京帝国大学(現在の東京大学)国文科を中退

代表作は「細雪」「痴人の愛」「蓼喰う虫」

男女の歪んだ愛を美しく描き出すことで有名

イメージを覆す一面も

 

文豪・谷崎潤一郎の印象

エロティック 食いしん坊 石井

 

谷崎作品を読んだきっかけ 

兄への増悪を滾(たぎ)らせる弟 弟を監視し支配しようとする兄

兄弟間の歪んだ闘争を描いたデビュー作

「黒冷水」羽田圭介著/河出文庫

互いに秘密を抱えるカップルの心理戦

疑念と嘘が積み重なり関係は静かに崩れていく

「隠し事」羽田圭介著/河出文庫

上記を読んだ人から下記作品に類似していると指摘される

「鉤」谷崎潤一郎著

日記に本音を綴り合う夫婦の官能と駆け引き

読まれることを前提とした秘密が欲望を掻き立てる

それまで読んでいなかった谷崎作品に嵌っていった

 

文豪・谷崎潤一郎の印象 羽田圭介

古典を読むんじゃなくて谷崎を読む

谷崎作品はたまたま古典だった

 

谷崎と他の文豪の違い

「陰翳礼讃」

かつて漱石先生は「草枕」の中で羊羹の色を讃美しておられたことがあったが、

「青春物語」

私のこういう風な態度は、文壇の風潮を白眼に視て超然としている

漱石先生などを真似ているようにも思えたのであろう。

 

「眠れる美女」川端康成著/新潮文庫刊(変態作品)

薬で眠らされた若い女と添い寝する老人たちの秘密の館

触れることを禁じられた美に老いた男の孤独と官能が交差する

 

ガブリエル・ガルシア=マルケス

魔術的リアリズムで世界を魅了したコロンビアのノーベル賞作家

川端康成にも触発され日本文学に共感した

 

「細雪〔上〕」の一文 谷崎潤一郎著/新潮文庫刊

「あの時隣に腰掛けてたら、中姉ちゃんが息するとその袋帯が

 お腹のところでキュウ、キュウ、云うて鳴るねんが」

 

代表作「細雪」は上・中・下巻に別れる長編小説

羽田さんおすすめの作品を紹介 短くて読みやすい谷崎潤一郎

1冊目

1956年発表「鍵」瘋癲(ふうてん)老人日記

老いを自覚する初老の夫とその妻が書く日記という形式の小説

お互い相手に読まれることを知りながら筆を進め続ける

 

「鍵」(「鍵・瘋癲老人日記」所収)の一文 谷崎潤一郎著/新潮文庫刊

今後ハ僕ハ、彼女ガコレヲ実際ニ盗ミ読ミシテイルト否トニ拘ワラズ、

シテイルモノト考エテ、関節ニ彼女ニ話シカケル気持デ コノ日記ヲツケル

 

夫の日記より

先日、七日ノ晩ニ僕ハ既ニ 木村ニ対シ淡イ嫉妬

(淡クモナカッタカモ知れない)ヲ感ジツツアッタノニ、

―イヤソウデハナイ、ソレハ去年ノ暮アタリカラダッタ、

―ソノ半面、僕ハソノ嫉妬ヲ密カニ享楽シツツアッタ、

 

「鍵」全168ページ

 

2冊目

1924年発表

「痴人の愛」谷崎潤一郎著/新潮文庫刊

サラリーマンの河合譲治は若く美しい少女・ナオミを自分好みの

「洗練された西洋風の女性」へ育て上げようとする

しかし、飼いならしていたはずの少女に いつしか支配されていく

嫉妬恋愛小説

 

「痴人の愛」の一文 谷崎潤一郎著/新潮文庫刊

「どう?あたしの恐ろしいことが分かった?」

「分った、分かり過ぎるほど分ったよ」

 

私は自分を間抜けものにして、欺された体を装ってやる。

私にとっては浅はかな彼女の嘘を発(あば)くよりか、

寧ろ彼女を得意がらせ、そうして彼女のよろこぶ顔を見てやった方が、

自分もどんなにうれしいか知れない。

 

つまりこの鼻は、―この、女の顔のまん中に附着している

小さな肉の塊は、まるで私の体の一部も同じことで、決して

他人の物のようには思えません。

が、そう云う感じを以て見ると、一層それが憎らしく

汚らわしくなって来るのでした。

 

よく、腹が減った時なぞに まずい物を夢中でムシャムシャ喰うことがある、

だんだん腹が膨れて来るに随って、急に今まで詰め込んが物の

まずさ加減に気がつくや否や、一度に胸がムカムカし出して吐きそうになる、

―まあ云って見れば、それに似通った心地でしょうが、

 

つまり私とナオミでたわいのないままごとをする。「世帯を持つ」と云うような

シチ面倒くさい意味でなしに、呑気なシンプル・ライフを送る。

―これが私の望みでした。

 

この本は恋愛中の方にはお勧めできない 石井

倦怠期を迎えている人、刺激のほしい人 意識的に物の見方を変える 羽田

 

ナオミのモデルとなった妻の妹(義妹)

自身が脚本を書いた映画「アマチュア俱楽部」で女優としてデビューさせた

 

3冊目

谷崎潤一郎が分かる一作 1911年発表「秘密」

倦怠を覚えた男が夜の町で出会った女と

お互いの秘密を通じた欲望の中で溺れていく

 

「秘密」(「刺青・秘密」所収)の一文 谷崎潤一郎著/新潮文庫刊

賑かな世間から不意に韜晦(とうかい)して行動を唯徒(いたず)らに

秘密にして見るだけでも、すでに一種のミステリアスな、

ロマンティックな色彩を自分の生活に賦与(ふよ)することができると思った。

 

もう場内の視線は、一つも私の方に注がれていなかった。

愚かにも、私は自分の人気を奪い去った

その女の美貌に対して、嫉妬と憤怒を感じ始めた。

 

谷崎潤一郎は退屈が耐えられなかったタイプ 羽田

昔の文化人って暗いイメージがあるが谷崎はそうではなかった 羽田

よく知っているものを違う見方をする 羽田

 

4冊目

谷崎の執着が現れた一作「陰翳礼讃(いんえいらいさん)1933年発表

日本建築・料理・能・女性の美などあらゆる日本の美は

光ではなく影から生まれると説くエッセイ

光と影を通して人間を見ている

 

「陰翳礼讃」(「陰翳礼讃・文章読本」所収)の一文 谷崎潤一郎著/新潮文庫刊

われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ら生ずる陰翳の世界に、

いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。

 

(羊羹について)

玉のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光を吸い取って

夢見る如きほの明るさを啣(ふく)んでいる感じ、あの色あいの深さ、複雑さは、

西洋の菓子には絶対に見られない。

クリームなどはあれに比べると何と云う浅はかさ、単純さであろう。

 

「刺青(しせい)1910年発表

刺青師が生涯をかけて求めた「傑作」とその完成の瞬間を描く 

谷崎の処女作

谷崎がこだわった女性の肌描写

執着しているものについて書かれた箇所は面白い

 

「陰翳礼讃」(「陰翳礼讃・文章読本」所収)の一文 谷崎潤一郎著/新潮文庫刊

肌の白さが最高の女性美に欠くべからざる条件であるなら、

われわれとしてはそうするより仕方がないのだし、

それで差支えのない訳である。

 

ちょっと見た時は歌舞伎の方がエロティックでもあり、

綺麗でもあるのに論はないが、(中略)

西洋流の照明を使うようになった今日の舞台では、

あの派手な色彩がややともすると俗悪に陥り、見飽きがする。

 

白人の白さは、透明な、分り切った、有りふれた白さだが、

それは一種人間離れのした白さだ。

 

主な映画化作品

「痴人の愛」「春琴抄」「細雪」「刺青」「鍵」

「瘋癲老人日記」「富美子の足」「悪魔」「神と人との間」など

 

・谷崎作品から学ぶ人生の楽しみ方

知ってた物の見方を変えると全然知らないものに見える

わりやすい楽しさじゃなくても人生は退屈じゃなくなる 羽田

 

谷崎は❝刺激❞が欲しい人におすすめ 石井