2025年3月17日月曜日

兼題「田楽」&テーマ「書く」

青き空めじろきょろきょろ寒桜
鴬や藪に隠れて声ばかり
春鳥や雨に向かって飛行せり
残る鴨家族とともに田宮川
春まけて穴あく前の手ぬぐいよ

■NHK俳句 兼題「田楽」
選者:木暮陶句郎 ゲスト:柳原尚之 司会:柴田英嗣
年間テーマ「季語を器に盛る」

「楽しくなければ俳句じゃない」
をモットーに33年間俳句を続けてきました 
NHK俳句の選者になっていました 俳句との出会いに感謝
木暮陶句郎

「田楽」は春の季語 木の芽田楽 「木の芽」は山椒の若い葉のこと
それを練り込んだ味噌 春の香り 
田楽の名句
田楽のみそにくつゝく桜かな   小林一茶
(落花 色彩が豊か映像も見えてくる 江戸時代の花見の風景が広がる
200年前の現実が目の前にあるように見える

花見しながら田楽を焼いている浮世絵がある
花見ではよく田楽を食べていた 柳原

「田楽」には五穀豊穣の願いが込められている
籾殻(もみがら)と一緒に燻(いぶし)焼にする陶芸手法
備前焼 田んぼの底の土を使っている 日本の米文化にリスペクト

江戸料理で「桜」と付く料理は「タコ料理」
タコで「桜」を表現し句に合わせた 柳原

・特選六句発表 兼題「田楽」
田楽の店のテレビの古いこと   伊部一郎
田楽を縦に出されて横に食ふ   大岩真理
(田楽箱)
でこぼこのすりこぎ長し田楽屋   須加信子
(山椒には殺菌作用がある すりこぎはちびるので長いのを調達する)
田楽や母子ぐらしの子に白髪   橋田敬子
(ドラマが想像できる一句)
田楽のまづ湯気を食ふ朝市場   中山真希
田楽の味噌に火の香の残りたる   すずきなずな

・特選三席
一席 還暦の看板むすめ田楽屋   蜘蛛野澄香
二席 田楽のただただ黒き秘伝味噌   堀邦翔
(歴史の美味しさ)
三席 母許(ははがり)のピリリと辛し味噌田楽   守口幸子

・俳句やろうぜ 若手俳人探査隊長 黒岩徳将
塩谷人秀(29) 俳句歴10年 水産庁勤務
俳句同人誌「KENOBI」クロイワとはじめる
「KENOBI」とは蹴伸び 手足をまっすぐ伸ばして進む水泳方法
メンバーは小川楓子 寺沢かの 塩谷人秀 黒岩徳将
「紙冊子」&「Webサイト」で活動
同人誌の内容
小田原漁港 句を詠む
散財や魳(かます)一本刺しヒヒヒ   塩谷人秀

クロイワ推しの一句
考へろ繋がりさうな蔦と蔦   塩谷人秀

・味噌焼けてけむり舞うなり田楽火   柳原尚之
添削(焦点がずれていっている 映像が見えてくるようにする)
味噌田楽炙(あぶ)ればけむり舞ひにけり

・木暮陶句郎 返句ではなく挨拶句
水温む美味研鑽の包丁に   陶句郎
けんさん焼き おにぎりの上にしょうが味噌や甘味噌などを
ぬって焼いた新潟県の郷土料理

・柴田の学び
3月 食べたら歳時記みてみよう

■NHK短歌 テーマ「書く」
選者:大森静佳 ゲスト:小川洋子 司会:尾崎世界観
年間テーマ「❝ものがたり❞の深みへ」

歌に❝ものがたり❞あり

・入選九首 テーマ「書く」
一席 惑星って「或る日心が生まれる」と書くんじゃないかなまたまごとく
亀田巧
筆圧を知りたい きみが金曜の夜にいきなりくれたメールの
伊藤すみこ
二席 一生にいくつ君の名書けるだろう花のおはじきいっぱいに咲く
小林ほなみ
三席 本心が書けなくなった「し」と打てばだいたい予測されるおかげで
宮本魁(かい)
ライオンの筆圧だった友だちが世界を巡る医師になるまで
鳥原さみ
 風のやうに時間がわれを追ひ越して「敬老の日」に図書券届く
中門和子
何回も消すたび霧は濃くなって飛び立つことのできない手紙
広木登一(とういち)
書けなかったものがふうわり糸くずとなりて浮遊す朝日の部屋に
小野寺寿子(ひさこ)
読めるけれど書けない文字のようだったきみと見ていた夕焼けの色
真島朱火(しゅか)

・ものがたりの深みへ
アンネの日記
戦時下の不安や家族との関係 成長する少女の心情

わたしは書きたいんです。いいえ、それだけじゃなく、
心の底に埋もれているものを、洗いざらいさらけだしたいんです。

小川洋子
物を書き始める原点 言葉で何か書くと
いうことは人間を自由にしてくれる

アンネ・フランクの記憶 小川洋子著
戦争・歴史の「記録」としてではなく「文学」の作品として読む
アンネ自身が戦後に発表することを念頭において推敲していた
文学として読まれることはアンネ自身の希望でもあった

小川洋子女史の思い出のエピソード
ユーモアたっぷりの日記
1942年11月9日 豆事件
その音のすさまじさたるや 死人も生きかえるほど。
(中略)
とりわけ滑稽だったのは、階段の下にいたわたしが、
豆の海の中の小島のように見えたことですって。
(中略)
あいにく豆は小さいうえに、つるつるしているので、あっちの隅、
こっちのくぼみにころげこんで、なかなか拾いきれません。
いまでも、だれかが階上へ行くたびに、一度か二度は腰をかがめ、
拾い残した豆を手のひらに集めていっては、ファン・ダーンの
おばさんに渡します。
深町眞理子訳

根本的には悲劇のものを可愛らしい喜劇に変換している
自分を肯定する力があるからこそ ユーモアを持って描ける 小川
悲劇を喜劇にするときに一切自虐がないところが強い 尾崎
客観的に観察する力は作家にとって大事 特別な能力の持ち主 
父親と娘を結ぶ絆となった日記 小川

ひとつぶの豆が言葉がこの星にアンネの瞳に巻きもどします
大森静佳
言葉は何かを巻き戻せる 大森
死者たちが未来と結びつく 小川

小川さんにとって「書く」とは
その人の生きた証を物語として残せるのではないか
化石になるまで残って欲しいと願いながら文字として刻む
書くことでしか表現できなかった人がいた 尾崎

菜の花の地上歩めり書くことはわたしがわたしに身を投げること
大森静佳
書くことは自分が自分の中に身を投げていくようなこと
エネルギーの噴出を感じました 小川

・言葉のバトン
墓石がにやり「あんじょうやりや」
大西里枝(扇子店四代目)

「あい、わかりました」と払う大きな手
池上規公子(きくこ 葉ね文庫)
終わったとみんな言うけどおしまいがあるってことは素敵なことだ
枡野浩一
譜面と音僕はゆっくり理解してそのあとひとことも話さない
青松輝

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