2025年3月25日火曜日

兼題「スリッパ」&テーマ「さようなら/おげんきで」

東風受けてふてぶてしさを全面に
生きる牛啄む烏春の空
東祖谷おいでなしてと福寿草
颯爽と最先端を創造す(小池一子 無季句)
鮮やかに生き行く女(ひと)よ山笑う

■NHK俳句 兼題「スリッパ」
選者:高野ムツオ レギュラー:中西アルノ 司会:柴田英嗣
ゲスト:庄司浩平 今井肖子 今西亮太 
年間テーマ「語ろう!俳句」

今回の兼題「スリッパ」春の季語・雰囲気と合わせる

もふもふのスリッパ脱いで野に遊ぶ   今井肖子
(荒るゝ海来しこと忘れ野に遊ぶ 稲畑汀子)
涅槃西風(ねはんにし)スリッパ齧(かじ)る赤子かな   庄司浩平
スリッパに鶯餅の風が吹く   中西アルノ
(鶯餅の風 作者なりの発見・物の見方がある
鶯餅はやわらかい半円 春の山に似ている 
春の山を越えて吹いてきた風とも想像できる)
足振ってスリッパ脱ぎし涅槃かな   今西亮太
(「涅槃」が「涅槃会」「涅槃図」あるいは
「入滅を心に思っていたのか」あいまい 仏の力に肖ろうとはご本人)
スリッパは羽のない鳥牡丹雪   高野ムツオ
(上五、中七は比喩 スリッパは歩かない 羽のない鳥を連想した
牡丹雪はふわふわ降ってくる この三つはぴったりし過ぎた)

涅槃(春の季語)
釈迦が入滅した日(旧暦2月15日)悟りの境地に入ること

・特選三席発表 兼題「スリッパ」
一席 弟のスリッパ正す雛の客   小栗しずゑ
二席 スリッパの夢はげんげの野を駈くる   𠮷川せい子
三席 スリッパを齧る音する春の闇   冬野(とうの)志奈

・特選六句発表
龍天に昇る我らはスリッパ脱ぐ   乃咲カヌレ
スリッパの値札をはづす春夕焼   尾﨑光洋
下駄唄いスリッパ踊り亀鳴けり   高野光司
スリッパの母の手を取り窓の梅   市川卯月
スリッパにしばしとどまる石鹸玉   西村小市
スリッパで霞む巷を高みより   川口泰英

参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/pRYqvY56AR/

■NHK短歌 テーマ「さようなら/おげんきで」
選者:枡野浩一 ゲスト/松尾スズキ 司会/尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙/かなたへの手紙」

さようならさようならまた会いましょうまた別れたらまた会いましょう
枡野浩一

松尾スズキ 談
「許す」という人間の持っている機能が働いている
未練がここまでエンタメに昇華できる 未練職人

・31音の手紙
入選九首 テーマ「さようなら/おげんきで」
二席 元気でね、ときみに言われるきみがいてくれたら元気になれるんだけど
奥村真帆
健康を祈っています。その上で僕の中では死んでください。
松下怜平
一席 空を拭くように手を振るさよならの向うが晴れでありますように
桃園ユキチ
おはようの力強さで玄関に響き渡っているさようなら
浅寝むい
もう一生会いたくないし会わないし勝手に食べてよく眠ってね
江藤芳恵
さようならでっかい犬を見るたびに連絡してくるとこが好きだった
つきこ
三席 私 生きているきみと別れることになりほんとよかった死別じゃなくて
なかた浜(半ぐれの純愛 脅し文句)
 本文に書かれていないさよならを読み取れるくらい国語が得意
野田鮎子
 さよならを言わないうちに死んだから縁側はまだじっちゃんの場所
水須ゆき子(墓は気持ちを修める場所)

・改悪添削
もう一生会いたくないし会わないし勝手に食べてよく眠ってね
江藤芳恵
前半では決別を伝えていて後編で相手を慮っている
矛盾した気持ちが両方描かれている

もう一生会いたくないし会わないし食欲なくせ眠れなくなれ
キレイに別れられそう 松尾
短歌はスッパリしないでモヤモヤしている状態がいい 枡野
自分という人間から相手に向けての手紙を
書くことで距離を測って橋を架ける 
第三者の目を意識することが大事
橋が他人から見た時に面白くあるように
という意識を持たないと良い短歌にならない 枡野

・松尾スズキさんの短歌「さようなら/おげんきで」
ばいばいの倍のばいばいその倍ばい母にばいばい果てしなき倍
松尾スズキ
ばいばいとばいばいが つなばって「果てしなき倍」
この短歌には方言のばいも含まれている 松尾

枡野
沢山の言葉で作られた戯曲だけれど
キーワードとして心に残る言葉がいっぱいある
いろんなジャンルを横断して活動する喜びと苦しみとは❓
どれも均等にふざけている
松尾
芥川賞落ちているのも絶対そこだと思っている
枡野
松尾さんの作品を絶賛している人がいます。
でもその人が表で褒めているのを聞いたことがありません。
嫉妬心かもしれません。
松尾
後でこっそり教えて下さい

私感
松尾スズキ氏の解釈!最高でした。的外れだなんてとんでもないです。
あらゆる角度からの視点を教えていただいたように感じました。

枡野
もう一度短歌入門の本が書きたくなった

・言葉のバトン
「あい、わかりました」と払う大きな手
池上規公子(葉ね文庫)

あるけばはなびらも踏むだろう
なべとびすこ(歌人)
咲く前もさくらだったよ背景になって暮らせる才能もある
(クランクアップ なべとびすこ歌集)

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