2025年3月9日日曜日

10min.ボックス 古文・漢詩&現代文・坊ちゃん

ゆりかもめ躰寄せ合い羽休め
おこぼれの魚求めてゆりかもめ
餌をまた鷺に横取りゆりかもめ
春の空ペリット吐かんジョウビタキ
王様になったトランプ春嵐

■10min.ボックス古文・漢文 漢文(2)漢詩
春暁 孟浩然
春眠暁を覚えず 処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声 花落つること知る多少

春暁の原文 孟浩然
春眠不覚暁 処処聞啼鳥
夜来風雨声 花落知多少

漢詩の黄金期 押韻(おういん) 同じ発音を含んでいるao

李白(酒と月をこよなく愛した詩人) 長江で詠んだ詩
黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る 李白
故人西のかた黄鶴楼を辞し
煙花三月揚州に下る
孤帆の遠影碧空に尽き
唯見る長江の天際に流るるを

故人西ノカタ辞㆓シ黄鶴楼㆒ヲ
煙花三月下㆓ル揚州㆒ニ
孤帆ノ遠影碧空ニ尽キ
惟ダ見ル長江ノ天際ニ流ルルヲ

春望 杜甫
国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火三月に連なり
家書万金に抵たる
白頭掻けば更に短く
渾べて簪に勝へざらんと欲す

国 破 山 河 在
城 春 草 木 深
感 時 花 濺 涙
恨 別 鳥 驚 心
烽 火 連 三 月
家 書 抵 万 金
白 頭 掻 更 短
渾 欲 不 勝 簪

漢詩の影響は松尾芭蕉は
「おくのほそ道」の中で杜甫の詩を引用しています

国破れて山河あり 城春にして草青みたりと
笠打敷て時のうつるまで なみだを落し待(はべ)りぬ。

■10min.ボックス現代文 坊ちゃん(夏目漱石)
親ゆずりの無鉄砲で子供のときから損ばかりしている。
小学校にいる時分、学校の二階から飛び降りて、
一週間ほど腰を抜かしたことがある。
なぜそんなむやみをした、ときく人があるかもしれぬ。
べつだん深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、
同級生の一人が冗談に、いくらいばっても、そこから飛び
降りることはできまい、弱虫やーい、とはやしたからである。
人におぶさって帰ってきたとき、おやじが大きな目をして、
二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かすやつがあるか
と言ったから、この次は抜かさずに飛んでみせますと答えた。

四国松山
二時間目に白墨を持って控所を出た時には何だか敵地へ
乗り込むような気がした。教場を出ると今度の組は前より
大きな奴ばかりである。おれは江戸っ子で華奢に小作りに
出来ているから、どうも高い所へ上がっても押しが利かない。
喧嘩なら相撲取とでもやって見せるが、こんな大僧を四十人も
前へ並べて、ただ一枚の舌をたたいて恐縮させる手際はない。
しかしこんな田舎者に弱身を見せると癖になると思ったから、
なるべく大きな声をして少々巻き舌で講釈してやった。

新人教師VS生徒たち
「なんでバッタなんか、おれの床の中に入れた」「バッタた何ぞな」
と真先の一人がいった。やに落ち付いていやがる。この学校じゃ
校長ばかりじゃない、生徒まで曲りくねった言葉を使うんだろう。
おれはバッタの一つを生徒に見せて「バッタたこれだ、大きな
ずう体をして、バッタを知らないた、何の事だ」というと、
一番左の方にいた丸い奴が「そりゃ、イナゴぞな、もし」
と生意気におれを遣り込めた。

夏目漱石(1867―1916)

教頭のなにがしというのがいた。これは文学士だそうだ。
この暑いのにフランネルのシャツを着ている。
文学士だけにご苦労千万な服装(なり)をしたもんだ。
しかもそれが赤シャツだから人を馬鹿にしている。
おれと同じ数学の教師に堀田というのがいた。これは逞しい
毬栗坊主で、叡山の悪僧というべき面構えである。
やあ君が新任の人か、ちと遊びに来給えアハハハといった。
何がアハハハだ。この坊主に山嵐という渾名をつけてやった。
画学の教師は全く芸人風だ。べらべらした透綾の羽織を着て、
扇子をぱちつかせて、御国はどちらでげす、え?東京?
そりゃ嬉しい、お仲間が出来て…。こんなのが江戸っ子なら
江戸には生まれたくないもんだと心中に考えた。

おれはいきなり袂へ手を入れて、玉子を二つ取り出して、
やっといいながら、野だの面へたたき付けた。
玉子がぐちゃりと割れて鼻の先から黄味がだらだら流れだした。
野だはよっぽど仰天した者と見えて、わっと言いながら、
尻持をついて、助けてくれといった。
「だまれ」と山嵐は拳骨を食らわした。赤シャツはよろよろしたが
「これは乱暴だ、狼藉である。理非を弁じないで腕力に訴えるのは
無法だ」「無法は沢山だ」とまたぽかりと撲る。「貴様のような
奸物はなぐられなくちゃ答えないんだ。とぽかぽかなぐる。

船が岸を去れば去るほど いい心持ちがした。
神戸から東京まで直行で新橋へ着いた時は、
暫く娑婆へ出たような気がした。
山嵐とはすぐ分かれたきり今日まで逢う機会がない。

2025年3月8日土曜日

こころの時代 山折哲雄

春を飛ぶ余白際立つジャケットよ
春を飲むマッカーサーはマニラ産
春香る吉田(茂)愛飲ハバナ産
春の空愛なきものへ馬鹿野郎
百五十億円使い切る秋夜

■こころの時代 こう生きた どう生きる 山折哲雄 現在を問う
宗教学者 山折哲雄

あのね もう今 93歳になりました 明け方2時から3時 目が覚める
頭がスーッとして 本当の夜明けの静謐の時間が来る
これがいちばん頭が冴えるんですよ 冴える中でやってるのは何か
「妄想」ですよ いろんな「妄想」が出てくる 真か偽かわからない
「妄想」っていうのは…。

歴史学者 哲学者 服部之総 1901-1956
呪はれたる宗門の子 親鸞はひたすら農民とともに
浄土真宗 本願寺派 専念寺(山折哲雄の実家)
専念寺住職 山折時信(11歳年下の弟)
兄貴っていうよりも親代わりみたいなもんだったですね
学校はいる時だったかな「尊敬している人なんて書いたらいい?」
って言ったら「そう言われたら親鸞聖人って書け」
って言われたんですよ いちばん危なげねえのは「両親」って
書けばいいのに 父親じゃなくて「親鸞聖人って書け」
っていうことを言われた覚えがありました (兄は)大学の時なんか
休みで戻ってくるわけです そうしてサンスクリット語
ここの部屋で勉強してるんですよ
親鸞(1173-1262) 親鸞筆「教行信証」顕浄土真実教行証文類
和讃 人々と仏の教えを讃嘆しようと親鸞が詠んだ歌
自然法爾 無常 
祇園精舎の鐘の音 諸行無常の響きありー平家物語
宮沢賢治「雨ニモマケズ」手帳 
イエス・キリストの人生は30年 ブッダの人生は80年
キリスト教は青春の思想をベースにしている 老いが抜けている
ブッダ 四十期(学生期 家住期 林住期 遊行期)
サヌヤーシン 遊行者 
Religion 
空海は初心 最澄は道心 法然は信心 
親鸞は深心 道元は身心脱落 日蓮は観心 
楕円構造 政治的権力と宗教的権威の両立 多元構造
小国寡民「小さな国土に少数の民」老子が理想とした国家像
柵封体制 中国と周辺諸国との主従体制
二重構造で共存している

親鸞「愚禿悲歎述懐」山折哲雄筆
浄土真宗に帰すれども真実の心はありがたし
虚仮不実のわが身にて清浄の心もさらになし
悪性さらにやめがたし こころは駝截蝎のごとくなり
修善も雑毒なるゆえに 虚仮の行とぞ名づけたる

非僧非俗
松尾芭蕉(1644-1694) 
僧に似て塵有 俗にゝて髪なし
(僧侶に似て俗塵があり 俗人に似て剃髪の身)

良寛(1758-1831)
俗にあらず沙(しゃ)門にあらず
(俗人ではなく僧侶でもない)

世間虚仮 唯仏是真
親鸞の一番大切にした言葉

旅に病んで夢は枯野をかけ廻る   芭蕉 辞世句
上記は仏教の根本的思想

自分は何者か?自分は何者でもない!
ジャンル別に問題を見る
世界を変えるのは人間 無空幻 それくらいの覚悟で生きていく

良寛の遊び方に感銘を受けた
良寛は醜い子(貧しい)を普通(平安)の子にするために遊び続けた
ここで本来の金太郎の話と結びついた

夜明けの静寂は天下絶品の時間

私は山折哲雄氏と同じことを日々繰り返していました
今日も午前1時45分に目覚めスケジュールを熟しました。
何かお仲間がいて物凄く嬉しくなりました。

2025年3月7日金曜日

跡形なし添削&第10回尻文字三角パス③&「春の闇」

遊ぶ音木が吸い込みて春愉し
うららけしできないことを楽しまん
内は青黄柳纏い春の街
ふうふうと息吹きかけん余寒かな
黄色華やかオンシジウムの武相荘

■プレバト纏め 2025年3月6日
永世名人 俳句抜き打ちテスト
梅沢富美男 藤本敏史 横尾渉

▪豪華添削スペシャル 跡形なし添削
冬の朝我慢しきれずはしご芋 勝俣州和
添削
ドライブスルー冬のポテトをはしごして

食の秋ケータリングで2キロ増え 熊谷真実
添削(散文 詩がないのは致命的)
楽屋への差し入れ多し食の秋

ゆれすすきいつかはフェスと夢見る日 山口智充
添削
いつか我が歌を大観衆へ秋

前の人頼む!頼むな!ラス苺 小藪千豊
添削
ケーキ残り一つの列にゐる

盆休み久々の足の指の敵 かまいたち・山内
添削
またをぶつける柱の家

幼子を守る隙間に青田風 Hey!Say!JUMP・藪
添削
が潰れそう満員の冷房車

開運を願う初春にメモ外す YOU
添削
「冷蔵庫のメモせ」と初みくじ

■夏井いつき俳句チャンネル
【第10回尻二字三角パス③】次のパスは何?!【「かな」】

キル・ビルとレザボアドッグスの溽暑   家藤正人
書架のすき間に眼のひそむ時鳥   ローゼン千津
擬するとは日照雨人売り落とし文   夏井いつき
部見てってと土肥研の大西瓜   家藤正人

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「春の闇」

「春の闇」というと文字通りこの春の夜
しかも月の出ていない夜のこのとろ~っとした
夜の暗さのことを「春の闇」というわけですね
「春の闇」というこの季語から結構色めいた
艶ごとめいた連想をする句というのは かなり
見かけるんですけど 実は歳時記によると
そういう方向だけではない奥行きのある季語のようです
この春の夜の中で展開されていく草木の匂い立つような
要素でありますとか ちょっと湿った潤んだこの夜の
空気でありますとか そういった事も歳時記には
しっかりと解説されています いろんな角度からの
「春の闇」描き方に挑戦してみたいところですね

2025年3月6日木曜日

あの人に会いたい 山藤章二

一枚の葉から生まれし(神話)春の夢
反逆のカリスマ尾崎風光る
春興や7メートルをダイブせり
飛び降りる壁から尾崎春の風
春まけて時代の壁を飛び越えん

■あの人に会いたい 山藤章二(イラストレーター)
1937-2024(令和6)年 87歳没

似顔絵というのは もうちょっと 風刺であると
風刺であったり 記録であったり 批判であっていいと
そういう立場で かなり絵描き側の主体性を出す絵を
描こうとスタンスを決めたわけです

らっしゃい‼
昭和51年、三木さんからはじまって25年とちょっと、
「腕はあやしいけど、ネタは新鮮」というので
やってきました 回転寿司です。

「談志は元気」(1997年)
「銀行にブスリ」(2000年)慎太郎さん銀行に突き立てる

学校新聞の中で新聞部員が先生のインタビューをする
コーナーがあったんです そこに写真じゃつまらないから
似顔絵カットを欲しいというので 山藤は得意だから
描いてくれっていうんで注文を受けて印刷されたという
今の原点ですね きちょうめんな方で融通のきかない先生でした

美術部に入りまして 絵を始めたら わりと向いていたんですね
絵がどんどん面白くなって うまくなって そこから今度は
先輩に教えられて藝大(東京藝術大学)を受けてみないかと
図案科というところがあるぞと そこへ行けば いわゆる
アーティストじゃなくて 職業に結び付く道があるということで
(受験に3度失敗)
そういう挫折とかネガティブなものを拾い集めてね
反骨精神みたいなものに結び付いていったんじゃないかな
そういうことを振り返ったときに 藝大へ行っていたら
当然今の道じゃないですよね (武蔵野美術大学へ進学)

ベン・シャーンというアメリカの画家がいたんですよ
それまでの宮廷に着飾った貴婦人がいる絵だとか生活と
隔絶した世界を描くことがアートだというようなヨーロッパ的な
美術感があったときにこういう街なかへ出ていって駅の貨車の
今でいえば国鉄民営化反対の元国鉄マンを描くとか そういう
非常にドキュメンタルな目で描いたペインターっていなかったんです
それはまさしくイラストレーターの目なんですよ

大手の企業のデザインばっかりやらされまして 当時生意気盛りで
この先 例えば 8年も10年も企業の宣伝ばっかりやって
俺はどうしちゃうんだろうという気になるわけですよ
ある日突然「辞めます」と言って辞めちゃったんです
当時もうすでに結婚して子どもが1人いたんですけど
えらいもので何も言わないんですよ「辞めたよ」と言ったら
「そうですか」ってね 

フリーになって5年チャンスが訪れます
野坂昭如さんのエッセイの挿絵を頼まれたのです
普通挿絵というのは文章の邪魔をしないことが大原則なんですけど
僕はここで邪魔してやろうと 作家の似顔絵を道化にして
描いてみたり 作家を裸にしたり いろんなことをして
それをやりましたところ 編集者とか読者の方に「大変面白い」と
「文章で面白くて絵で面白い」っていうんでね 当時ちょっと
話題になりました それで僕の「山藤スタイル」みたいなものが
固まったんです

昭和51年 週刊朝日で連載が始まりました
「山藤章二のブラックアングル」

暴言か正論かのポスト 郵政民営化を唱えた小泉発言に
大揺れの政府を描いたパロディーでした

時間をかければかけるほど傑作かというと
必ずしもそうでないところが面白いです
僕のウエイトのかけ方としては半分以上文章というか字ですね
いい的確な言葉とか 決まり言葉が浮かんだ瞬間に
おそらく7~8割できたという感じですね
僕の中の一つに風刺精神と言えば 新聞的に1面が政治 
2面が外交 3面経済 とかいうような 縦序列じゃなくてね
僕にとっては等距離で あらゆる人物とか出来事を見るという
だから偉い人にとっては並列化されることは
けしからんと思うかも分かりません
それがだから風刺の原点かも分からないですね

熱烈なタイガースファン 吉田監督 虎のマーク合わせて
今世紀最後かもわからない この時以来笑顔がない
ジャイアンツが僕ら髙橋選手が阪神に入ってほしいと思ってたから
そういう私怨を込めてやっぱりお金持ちにはかなわないな
金物は磁石で吸いつけちゃうなって
これは大平さんリアルですね 岸田劉生という人の娘さんを
描いた絵が何百とありますけど 「麗子微笑」

奥さまが入院された時は
ほとんど病室のベットに付き添ってやったんですけど
病院という器の 壁一重の内と外で価値観が全く違うと
病院の中というのは「生か死か」とか それから 
「手足が元どおり動くようになるかならないか」ということ
みんな祈りの世界なんですよ 外へ出るとまあ実に通俗下品極まる
「損か得か」とか「もうかるとか もうからないとか」
行ったり来たりしているうちに ある達観をしちゃったんですよ
宗教家のようになっちゃったんです 今度はユーモアが
出てこなくなっちゃった それが僕にはとてもピンチでしたね

60歳を過ぎると世間とのずれを感じ始める
日本人がどんどんヘンテコになっているんでね
ボヤかないことにはいられない 
誇りとか 気骨とか 品格とかね 謙譲とか 
日本人が誇るべき美徳がどんどんどんどん
なくなってきていますよね とんでもない日本人
今までの日本人にはいなかったような 日本人が
どんどん出ているんでね これをとても憂えている
日本人はまだまだいらっしゃると思うんですよ
僕の役目はまだあるなと思いまして 
山藤章二のずれずれ草「世間がヘン」山藤章二著 2000年講談社刊
僕のズレもね 世間が間違っていると思いながら 
まだ60、70ぐらいの人が大勢いるし これからどんどん増えますからね
多分 世間をいぶかしいと思っている世代が大勢いると思うんですよ
ある種の「時代の戦友」みたいなものです

「日常最上 山藤章二」
怒ったり もめたり いざこざしながら飯を食ったり
日常の何でもないことが 実は とっても大事な最上の瞬間である
日々のこと 茶飯のことは とても幸せなことであると
幸福感を持てば その日その日が幸せに暮らせるんじゃないか



2025年3月5日水曜日

夏井いつきのよみ旅!in神奈川 前後編&「堅雪」

おおらかにストイックにと歩む春
(黒田辰秋が)吹き込んだ命の呼応風光る
生きる人時に委ねん半仙戯
花菫自然に生まれ育まれ
存分にお気の向くまま石鹸玉

■夏井いつきのよみ旅!in神奈川 前編
ブラフ18番館 大正時代オーストラリアの貿易商が住んでいた洋館
初代 打木彦太郎氏がイギリスで修業しパン作りを始めた
それから136年 製パン店5代目 打木豊さん
(発酵に)時間をかけて焼いているのできめが細かい
打木さんの食パン 明治時代から変わらないホップ由来の酵母を使用
ホップを使っているので香ばしい

イギリスを縛って北風の朝(あした)   廣瀬玲子
廣瀬さんMEMO 2002~2005年 フランス生活が実現
         淳さんが再就職し再びフランス生活が!

校了や深呼吸して柚子の風呂   井手之上麻理子
井手之上さんMEMO 
公務員時代に音訳ボランティアに出会い3年前から活動
60歳を超えると日々衰えていくことばかり、その中で
音訳者をやっていると自分の成長を感じることができる

もう居ない影を追いかけ春の霜   俳号 曖昧模糊

俳句ひとくちMAMO
春節は春の季語 中国の旧正月 盛大にお祝い

春の空家族で祝う赤提灯   鶴見香奈子 太鼓担当
赤提灯は幸福を願う象徴

春節は獅子舞い踊るこれからも   岳中愛奈 獅子担当

春を呼ぶ獅子と歓喜と若人と   夏井いつき

冬の朝ホットサンドを喰(は)む愛娘(むすめ)   鈴木由香里

待合に翁と古稀と風邪の子と   石井治彦
風邪:冬の季語
奥さまへお礼の句
三十年苦楽ともにし亀ぞ鳴く   石井治彦
亀鳴く:春の季語 
本来はない亀の鳴き声を春の情緒として表現する

いつきセレクト
中古車に若葉マークを貼り小春   沼野大統領
探梅のベビーカー吾子の指先   手塚詩織
音訳志望ランドマーク冷たし   樋口実千代

■夏井いつきのよみ旅!in神奈川 後編
東海道の宿場町として栄えた箱根の麓にある小田原です!

かまぼこ博物館職員 森川高弘
宿場町に泊まった大名や旅人がかまぼこを召し上がって
そのおいしさが東海道を通じて全国に広がった

かまぼこ博物館 
かまぼこの歴史や製法おいしさの秘密が学べる施設
ひとつめが地下水 箱根連山でゆっくりろ過された水
その水を使うことでおいしく白くてぷりぷりなすり身にできる
水産練り製品製造技能士
魚肉練り製品の国家資格 1級の取得には約10年も!

山笑うその頃君も初笑い   為谷(ためたに)鈴子
(山笑う…春の季語)

初雛や親子三代チアダンサー   久保祐子

義母愛でし水仙新築の庭へ   牧田貴子
(水仙…冬の季語)
一月の行事 元旦:賀詞交換 2日:お年始 3日:三日とろろ
6日:六日越しそば 7日:七草がゆ 11日:鏡開き 15日:小正月
20日:えびす講
季語の宝庫みたいなおうち
後悔がずっと残っちゃって焼き付いている 母が元気がなかったり
食欲がない時 好きなものを出したらきっと食べてくれるだろうと
思ったんですけど 母の好きな食べ物を知らないことに気が付いて
考えてみたら好きな花 好きな歌 お気に入りの服 何も知らない
「私 何をしてたんだろう」って悲しくなってしまって
どうでもいい話をもっとすれば良かったと それが後悔
母がいつも私にニコニコ接してくれたので どんなに大変でも
“いつも笑顔で”と思ってニコニコしました 無理してでも笑顔になると
つらさが半減する やれそうな気がして「やっていけるぞ」って気がして
介護を楽しもうと思って
ROLAND 
自分の死後に「介護が楽しかった」って
言われていると思うときっと幸せでしょうね

寄木細工職人 篠田英治
得意は極小寄木細工
木で作る六花の如き美しさ   篠田英治
俳句ひとくちMEMO
六花:冬の季語 雪の別称 結晶の六角形が由来

寄木細工を活性化しようと6人の若い男が集まった「雑木囃子」
ライバルはもっとオシャレ イマドキな寄木細工を作っている
せめて寄木の技術だけは磨こうと 技術を磨いていくうちに
(模様が)細かいとキレイだし「どこまで細かくできるかやってみよう」
極小寄木を作ったら評判が良くてこれで行こうと落ち着いた
みんなからは「変態寄木」だと言われています
“箱根のおみやげ品”で終わらないでもっと広めたい
日本の文化を紹介するイベントで海外に呼ばれることもあって
世界で「日本の寄木すごいぞ」世界に広げていきたい!

初雪や小函(こばこ)にすこやかな野望   夏井いつき

一度きりの個展自画像冴え返る   平池真理
(冴え返る…春の季語 春になったのに寒さがぶり返すこと)

桜見る命日に浮く笑顔かな   池谷宏之
私は思い出話をするということは“そのとき(彼は)生きている”
と思っています 今回こういう機会をいただいたので 
中学高校の同窓会 また警察官仲間に
「ああ、臼井はまだ元気でいるんだな」思い出してもらったら
とても幸せかなと思っています

いつきセレクト
先生とお別れ子犬の春愁   武居裕美
古セーター千のけんかと千の愛   鍵和田博子
犬連れて歩く10キロ冬ぬくし   若村京子

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「堅雪(かたゆき)」

「雪」というと堂々たる冬の季語になるんですけれど
この雪にまつわる色んな他の派生した季語が
存在しているんですね
そしてそれは季節をまたいで春になっても残っている雪
そんなものとしてこの「堅雪」は春の季語になっているわけです
まだ春の浅い時期 この雪が残っている雪が日中暖気で
溶けてきてでも夜になると厳しく冷え込んでくる 
そうすると一度溶けたものがどんどん堅くしまっていくんですね
その上に更に新しい雪も積もっていくと 
そんな状態の雪のことを「堅雪」といいます
僕は生まれてこの方 ずっと愛媛住まいですが
北国の人にとってはこの「堅雪」っていうのも
非常に生活に根ざした季語として
実感の強いものかもしれませんね

2025年3月4日火曜日

あの本、読みました?吉本ばなな&小原晩

満月に凛と向かわん梅ふふむ
客を待つほのかな香り夜の梅
値上げのために消える商品今何処
亀鳴くや値上げ直前モノ隠す
春の夜や未だシナモン止められず

■ あの本、読みました?吉本ばなな&小原晩…生き方のヒント【エッセイ】特集
鈴木保奈美 角谷暁子 小原晩 篠原康子 吉本ばなな 林祐輔P
「獅子座、A型、丙午」鈴木保奈美著/中央公論新社
日常を温かく見つめた保奈美さんの本音・本気が綴られたエッセイ

・自費出版❝唐揚げ本❞が異例のヒット 注目の若手作家・小原晩 篠原康子
無職から作家へ シンデレラストーリーとは?
200部くらい刷って5万円で作れた 5万円なら貯金があった
異例のヒット!自費出版で1万部
唐揚げ本とは?

「無職、川、ブックオフ」の一文 マンスーン著/素粒子社
売るでなく買うでもなくより
寝ることにも飽きて。起きることにも飽きて。
インターネットにも飽きたら他にやることがない。
そうなったら向かう場所は一つだけだった。
実家よりも落ち着く。ブックオフ。
ブックオフに行く理由はそれぞれあると思う。
探してる本を買いに行く。本を売りに行く。
時間を潰しに行く。でも僕はそのどれでもなかった。
ブックオフを感じに行く。ただそれだけだった。
(中略)
最近は実家に帰ると父の本棚を眺めている。父を眺めている。
恥ずかしいから気づかれないように。いつだったか、父の本棚に
「働かない息子を持つ父親」みたいなタイトルの本を見つけた。
早く、ブックオフで売ってほしい。

「終の棲Ⅴ幸せの循環型ホーム」の一文 
北沢美代著/幻冬舎メディアコンサルティング
人生100年時代より
まず私が思っていた老年学は顕微鏡で
「老年」を拡大して見ることだと思っていた。
納得できたことは「人生100年時代」を考えると「老年」だけに
焦点を当てるのではなくそれを支えていく若者、
国の問題でもあるということだ。
当たり前と言えばそれまでのことだが、人生50年時代から
100年時代に移行してきた時は「余生」ではなく「セカンドライフ」
なのだと知った時、私は下の世代の後輩たちが「老人ホーム」を
すでに自身のライフプランとして位置づけており、
それをまさに「セカンドライフ」だった。

月間売り上げ1位 「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」

「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」の一文
小原晩著/実業の日本社
社会人一年目の夏。仕事に慣れてきた私はサボることを覚えた。
先輩にバレないルートでファミリーマートまで行って、唐揚げ弁当を買い、
建物と建物の隙間に入って唐揚げ弁当をむさぼり食う。
(中略)
ある日、唐揚げ弁当を持って、いつもの場所へ行くと、
「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」と、書かれた
紙が張り出されていた。私は驚いた。バレていた。
青山というお洒落な街の建物と建物の隙間でファミマの
唐揚げ弁当を食べている人間が存在するということがバレていたのだ。

エッセイを描くきっかけは❓

代々木公園と元気を出して より
「アゝ!アゝ!」鳴いた。と思うが早いか、すごい量のカラスが
色んな木から飛び出してきて、ついさっきまで私が座っていた
水辺に集まった、あんバターサンドを囲んで。
そうだ。私はあんバターサンドを置き去りにしてしまった。
カラスたちはあんバターサンドをカツカツ突いて食べていく。
あんこの糖分で頭が冴えわたるカラス、
バターの脂肪分で毛の艶を増していくカラス、
パンを咀嚼することによって顎が発達するカラス。
めきめきめきめき進化するカラスたちの迫力たるや。
その光景をぶるぶる震えて見つめる私のまぬけさたるや。
ほとぼりのさめた頃、カラスたちが残したゴミを拾って帰った。
こうして自分のまぬけさを肌で感じてみると、
全ての失敗がやむを得なくおもえた。
「私は途方もない馬鹿なのだから、開き直ってしまおう」などと
考えているとむやみやたらと元気が出てきた。
そういえば死んだ父もよく言っていた。
可愛いお馬鹿になりなさい、と。

無職から作家へ シンデレラストーリーとは?

兄はガニ股より
父が亡くなってから、
しばらくの間は週に一度実家に帰っていた。
母の心労は、父が亡くなったことだけではなく、
最近発覚した兄の借金のことだった。
兄は少し前に離婚し、勝手に住民票を実家に移していたようで、
借金関係の書類が実家に届くようになっていた。
(中略)
逆切れしている相手に、言葉は要らない。「あ?」で充分。
議論の価値はない。兄だって自分が悪いことぐらい
百も承知だ。だからこそ逆にキレるんだ。
果てしなく広いローソンに兄と妹の「あ?」「あ?」「あ?」「あ?」が
響き渡る。「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」「あ」
果てしなく広いローソンが「あ」で埋め尽くされた頃、
兄も落ち着いてきたのか、「公園行って話すか…」と言い始めた。
それからは穏やかに、現状とこれからについて話しあった。
話が終わると、「駅まで送るよ」と言って、そのすぐあとに
「妹を駅まで送るなんていいお兄ちゃんだろ」と言った。

エッセイを通して伝えたいこと

・小説家が描くエッセイの魅力とは
吉本ばななが語るエッセイの魅力とは?
エッセイは得意じゃない 豆腐を作るときに”おから“が出る
エッセイは”おから“ その考えは一体どこから

「パイナップルヘッド」吉本ばなな著/幻冬舎文庫1998年発売
ばななさんの愛・感動・生き抜く秘訣を書きの記した一冊
が、鈴木保奈美さんの本棚から

「パイナップルヘッド」の一文 吉本ばなな著/幻冬舎文庫
保奈美夢より
私は「鈴木保奈美」は天才だと思う。天才はみんなそうだが、
会うと普通の人のふりをしている。
そして自分の持ち場に行くと、突然恐ろしい能力を破発揮するのだ。

吉本ばななにとってエッセイとは?

「骨が折れた日々 どくだみちゃんとふしばな11」の一文
吉本ばなな著/幻冬舎文庫
飽きより
杖をついてて、スタスタ歩けないって言ってんのに、
わざと遠くに止めて動かないタクシーの運転手さん。
でもあわてないでゆっくり歩いて乗る。
こんなことで転んだらバカを見る。
「反対側から乗らずにここから乗るとずいぶんと遠回りに
なっちゃいますけど、ご了承いただけますか」とか言ってる。
意地悪い。だから歩けないから道を渡れないんだって言ってんのに。
家について「ここでけっこうです」と言っても、
聞こえないふりして30メートルくらい先まで走っちゃう。
すみません、たくさん歩けないのでバックしてもらえますか?
と言うと、1メートル下がって「はい!」と止まる。
「もう少し下がってもらえますか?」と言うと、
また、1メートル下がって止まる。「あの電柱あたりまで」
と言うと、何回もいやらしくブレーキをかけながら止まる。
こういう意地悪ってなんのためにあるんだろう?
本人はすっきりするってわけ?コロナでうっぷんがたまってるから?
最後は一応笑顔で別れたけど、
きっとモテないし気の毒な人生なんだろうな。

理由と余裕より
言うことを聞かないともっと面倒なことになりそうだな、まあいいか、
今時間があるし、人に会いたいし、嫌いでもないし、と思って、
たまにそういう強引な人とごはんなど食べる。するとものすごい
目力でずっと存在しているから、ごはんがまずくなる。
そして必ずなにか提案してくる。双方にとっていいという感じの提案で、
お金がからんでいたりいなかったりするが、最終的に
その人の方がちょっと得をするような案件である。
人生って、自分の方がちょっと多めにやってこそなんとか
回っていくものだ。自分が言い出したんだから、ちょっと多めに取る、
それは違うと思う。一見いいようだが、長い目で見たらマイナスになる。
そんな簡単なことがなぜわからない。これは哲学でもなんでもなく
ちょっと多めに取る人の周りからは、だんだん人がいなくなる。

エッセイは”おから“
酷い目に遭ったら絶対元を取ってやる

治癒より
猫がゆっくり歩いてくる。知っている猫なので「久しぶり、
元気だった?」と声をかけたら、「にゃにゃにゃーん、
にゃにゃにゃーん、にゃんにゃん、にゃんごろにゃん」と
返事が返ってくる。こんなに会話が成り立つなんて!

アジアの風(電鍋考)より
それから、似たようなシステムで、熱々のまま入れておいたから
長い間加熱しながら保温してくれる鍋もあるとき人からいただいて、
お味噌汁をずっとそれで作っていました。
そのときかっていた猫が、なんと土鍋やル・クルーゼの蓋も
開ける強者だった(ふと見ると土鍋やあの重いル・クルーゼの
鍋の蓋がずれていて、肉だけがなくなっている。そして猫の手が
しっとり濡れている)のですが、その鍋の蓋だけは構造上
猫の手では開けられないしくみだったからです。

猫は大切な存在
SNSを通して描く理由

「パイナツプリン」の一文 吉本ばなな著/角川文庫
ばななさんの心・恋・死・友情・作家についてつづられた一冊

あの日の工藤静香より
生の歌番組の良いところは、アイドルの人達のゆれをそのまま
映し出してしまうところで、その日の気分によって同じ歌も
表情も一回きりしかないところだ。
「アイドルのあの人にとっても、私にとっても、今日という日は
二度とないんだ、この人がこんな顔でこの歌を歌うことも。」
と思えた瞬間のときめきはたとえビデオにとっておいても
決して再現できない。
(中略)
たしかその日は新曲の「抱いてくれたらいいのに」とかいう曲が
初めてベストテン入りしたんだと思う。
彼女のあの勢いといい、パンチといい、歌といい、本気だなと思わせた。

「幸せへのセンサー」の一文 吉本ばなな著/幻冬舎
人に言われた評価とは関係なく、「自分のここはいいところだと思うな」
とか「自分のこういうところは本当にひどいな」とか、
自分だけで思っていること。自分だけで思っていることとか、
自分だけが知っていることって、実はものすごく大切。
だけど、今ってSNSとかですぐつぶやいたりして、みなさんすぐ
手放しちゃうじゃないですか。私もSNSはやっているけれど、
誰にも言わないでどこかに行って、それをどこにも載せないし、
書かないなんてことは、いっぱいあります。
そういう自分しか知らないことっていうのがすごく大切で、それが
全てだし、それだけが自分を豊かにするコツだと言っても過言ではない。

幸せになるためには…
作家とライターの関係性
雑誌で対談!綿矢りさ
綿矢りさ オススメのエッセイは?
「精選女性随筆集 宇野千代 大庭みな子」小池真理子選/文春文庫
小池真理子・川上弘美が選者となり
近現代の女性作家による随筆を編んだ珠玉のシリーズ

『「違うこと」をしないこと』吉本ばなな著/角川文庫

吉本ばなな女史 お薦めの一冊
「女二人のニューギニア」有吉佐和子著/河出文庫
現地の民族や文化を観察した記録
ハプニングの連続に抱腹絶倒の一冊

吉本ばなな女史!尊敬の念は深まり益々好きになっちゃいました。
吉本ばなな女史をお教えくださった糸井重里氏にはまたまた感謝、感謝です。
今回は本当に素敵な企画をありがとうございました。

2025年3月3日月曜日

兼題「囀(さえずり)」&題「青空」

終わりなき溢れる悩み石鹸玉
己から己離すな半仙戯
思いきり甘やかす春の夕焼
春光やその時こそは立ちあがる
老い重ね独りで生きん風光る

■NHK俳句 兼題「囀(さえずり)」
選者:堀田季何 レギュラー:庄司浩平 司会:柴田英嗣
年間テーマ「俳句の凝りをほぐします」

・今週のテーマ 切字「けり」
けりつけるように語りきる
古文で教わる「けり」は「した・してきた・したそうだ」など
過去や過去から繋がっている話 
俳句で使う場合ちょっと違う
今目の前で起きたことの事実 
今認識したばかりの事実にグサッとくる

くろがねの秋の風鈴鳴りにけり   飯田蛇笏
俳句は今この瞬間を詠む 「けり」を使う時も目の前の事実に
「おっ」と思っていることが重要 

注意すべき凝りポイントは❓
凝りポイント①
A帚木(ははきぎ)に影といふものありにけり   高浜虚子
B帚木影といふものありにけり
ほかに強い切れがある 焦点がブレる 
ほかの強い切れと一緒に使わない

凝りポイント②
「けり」を変化させている
ほかの切字「や」「かな」は変化しない
「けり」は活用できる「ける」「けれ」など
だけど切字「けり」として使う時は「けり」
終止形で「けり」じゃないと強く切れない
「ける」だと繋がる「けり」と「ける」だと意味合いが変わる?
Aことごとく未踏なりけり冬の星   髙柳克弘 終止形
Bことごとく未踏なりける冬の星   冬の星に繋がる
意味は一緒だがニュアンスが違っている
ツボポイント②
切字「けり」は終止形で言い切ろう

凝りポイント③
切字「けり」ではない
Aかたかごの風に頷きつつ咲けり   伊藤伊那男
B門前に野菊咲きけり長建寺   大島梅屋
A切字「けり」だと強過ぎるB事実の強烈さに驚きがある
ツボポイント③
切字「けり」と助動詞「り」の違いを理解しよう
いろんな「けり」を使った句を読めば感覚的に分かるようになる

切字「や」「かな」にはない利点
多彩な使い方
① ことごとく未踏なりけり冬の星   髙柳克弘
② しら梅に明(あく)る夜ばかりとなりにけり   与謝蕪村
③ 馬迄も萌黄の蚊帳に寝たりけり   小林一茶
④ 人の輪の外にをりけり卒業子   山田佳乃

音数調整ができる
②五音 ①四音「未踏なり」でも通じる「けり」を入れて強める
②「なりけり」「なりにけり」ニュアンスもほとんど変わらない
俳句的には音数(調整)で使い方が決まる
③寝る寝たり寝にけり五音なので寝たりけりとした
事実に驚いたとき「けり」を入れたい
⑤ 「をり」でも通じる
切字「けり」の魅力 
音数やニュアンスに合わせて多彩な使い方ができる
あとは慣れることしかない 慣れ親しむ
たくさん良い句を読んで自分でも作る

・特選六句 兼題「囀(さえずり)」
春における鳥類の鳴き声 繁殖期を迎えて恋の歌を歌う鳴き声

縮毛矯正四時間を囀りぬ   蜘蛛野澄香
酸性だらう東京の囀りは   樹海ソース
囀の止まなくて別れられない   里山子
 囀の東雲(しののめ)色の聞こえけり   池田宏陸(ひろむ)
(色を聞く 色聴 共感覚)
 囀りやアフロヘアーの哲学者   嶋村純
(「同じ情景」でありながら「二物衝撃」)
 人工の森を百年囀りぬ   牧野冴

・柴田の歩み あと何周もしたい
 庄司の歩み 切字、をりにけり To be continued…。

■NHK短歌 題「青空」
選者:川野里子 レギュラー:内藤秀一郎 深尾あむ 司会:ヒコロヒー
年間テーマ「“私”に出会おう~2年目の飛躍~」

・飛躍の扉”私“に出会おう
向きを変えた磁石たがいにすがりつくわたしの嘘がわたしにばれる
山階基(やましなもとい)「夜に着こなせたなら」
自分に噓をついていたことを磁石を見ることで気がつく

伊能図と呼ばるる巨大智地図を見て昏倒したりわがたましひ
高野公彦「水の自画像」
自分の小ささに出会ってしまった 世界や社会やいろんな
日常的な小さなものにしっかり向き合って出会い直す 
そのことによって自分が変化する 
出会いを重ねていくということが“私”に出会うということ

・入選六首 題「青空」
爆撃の照準精度があがるほど傷ひとつなく澄みたる青空
村松建彦
 青空も暗い雨天も変わりなく正確無比の白い杖行く
小久保英二
一席 私 誰かから見ればわたしも運がいいカーブミラーに映る青空
小金森(こがねもり)まき
青空の向うからくる汽船には錆びたコンテナ明日葉を載せ
赤城条治
青空に雪の立山気がつくと西行みたいに立ちつくしていた
海野(かいの)佳子
青空はモナ・リザだった泣きそうな私を嘲笑するような青
武田生吹(いぶき)

懐かしいふと思い出す蜜の味一人で咥えた秘密のツツジ
内藤秀一郎
どれだけの出会いと別れ知ってるのボート漕ぎつつ見る渡月橋
深尾あむ
輝きたい思い続ける今の僕鋭い眼光相手を見据えて
内藤秀一郎
あの音はそうか最後のスターマイン夏に背を向け一歩踏み出す
深尾あむ

あむあむと経験を食べて羽ばたいてしゅういちくらいで思い出してね
ヒコロヒー

・言葉のバトン
あらたな道へ心機一転
八木冨美子(江北氷川神社名誉宮司)

掛けなおすボタン緋(ひ)色の春が立つ
小川優子(店主)
重きめまひに閉ぢしまぶたを刺すごとき残像ひとつ路上の果実
歌人清水房雄の結社「アララギ」に入会

2025年3月2日日曜日

こころの時代 宮沢賢治(5)

尾崎豊氏へ
萌ゆる芝体も顔も埋めけり
アルバムは石をフォーカス俯かん(無季句)
ジャケットを飛び出す尾崎風光る
一枚の葉っぱと共に春を逝く
吾のために生きた人生春の雪

■こころの時代 宮沢賢治 
久遠の宇宙に生きる(5) 理想郷「イーハトーブ」の創造

来春はわたくしも教師をやめて本統の百姓になって働らきます

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する
われらは世界のまことの幸福を索ねよう求道すでに道である

造化の秘密を看破するを得、一礫一岩塊と雖も深々たる意味を
有するを了解し、尽き難きの興味を感ずるは生等の親しく
経験したる所とす、
「盛岡付近地質調査報文」

花巻農学校における宮澤先生は実にすばらしい先生だった。
きわめて明晰な講義をされ、また実習も先生のときは
苦しい作業を忘れるくらい楽しかつた。
授業中レコードをかけたり、絵を見せたり、演劇をやつたり、
大勢の生徒を連れて岩手登山をしたりすることは、公立学校の
教員としては普通は出来ないことである。
教え子・小原忠の回想

日ハ君臨シ カガヤキハ 白金ノアメ ソソギタリ
ワレラハ黒キ ツチニ俯シ マコトノクサノ タネマケリ
日ハ君臨シ カガヤキノ 太陽系ハ マヒルナリ
ケハシキタビノ ナカニシテ ワレラヒカリノ ミチヲフム
宮沢賢治「花巻農学校精神歌(農学校歌)」

農業実習には私達の誰よりも多く土を耕し厩肥を土にまぶし、
私達の嫌ふ肥料を手にこねて!およそ尽すといふこと真心と
いふことは、さうしたことを言ふ言葉ぢやなかつたらうか。
教え子・松田奎介の回想

来春はわたくしも教師をやめて本統の百姓になって働らきます
いろいろな辛酸の中から青い蔬菜の毬やドロの木の閃きや
何かを予期します わたくしも盛岡の頃とはずうゐぶん
変わつてゐます あのころはすきとほる冷たい水精のやうな
水の流ればかり考へてゐましたのに いまは苗代や草の生えた
堰のうすら濁った温かなたくさんの微生物のたのしく流れる
そんな水に足をひたしたり腕をひたして水口を繕ったり
することをねがひます
宮沢賢治「保坂嘉内宛の手紙」1925年

智目行足到清涼地

早魃に悩まされつゞけた田植えもやつと終わつた六月の末頃と記憶する
玄関の側には大きな黒板が掲げられ、内は森として静まり返つてゐた。
ふとふり返ると、素処には窓越しに机に凭れてゐる先生の姿を認めた。
更にガラスに近寄れば、机によつてぐつすり眠つてをられたのだつた。
陽にやけた顔とあみ襯衣を透してあらわにみえる黒い肩、
蚊に刺されて無数の黒点いっぱいな腕、破れたかゞとの穴を
反対に上にして穿いている靴下のその穴からみえるのは、多分鍬ででも
あらう大きな切傷に沃丁が塗られ、私は思はずも驚かざるを得なかつた。
教え子・菊池信一の回想

羅須地人協会

希望の方もありますので、まづ次のことをやってみます。
「われわれはどんな方法で われわれに必要な科学を
われわれのものにできるか」一時間
「われわれに必須な化学の骨組み」二時間
働いてゐる人ならば、誰でも教へてよこしてください。
宮沢賢治「集会案内」

おれたちはみな農民である ずゐぶん忙しく仕事もつらい
もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい
われらの古い師父たちの中にはさういふ人も応々あった
近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直感の一致に於て論じたい
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する
この方向は古い聖者の踏みまた教へた道ではないか
新たな時代は世界が一の意識となり生物となる方向にある
正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識して
これに応じていくことである
われらは世界のまことの幸福を索ねよう求道すでに道である
宮沢賢治「農民芸術概論綱要」序論

おお朋だちよ いっしょに正しい力を併せわれらのすべての田園と
われらのすべての生活を一つの巨きな
第四次元の芸術に作り上げようではないか
まづもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無法の空にちらばろう
しかもわれらは各々感じ各別各異に生きてゐる
ここは銀河の空間の太陽日本陸中国の野原である
青い松並 萱の花 古いみちのくの断片を保て
「つめくさ灯とすも宵のひろば 互いのラルゴをうたひかわし
雲をもどよもし夜風にわすれてとりいれまぢかに歳よ熟れぬ」
詞は詩であり 動作は舞踏 音は天楽 四方はかがやく風景画
われらに理解ある観衆がありわれらにひとりの恋人がある
巨きな人生劇場は時間の軸を移動して不滅の四次の芸術をなす
おお朋だちよ 君は行くべく やがてはすべて行くであらう
宮沢賢治「農民芸術概論綱要」農民芸術の綜合

行往坐臥 歩くこと 止まること 座ること 寝ること
三千大千世界 久遠仏 一念三千 

一しんに畔を走ってきて青田の中に汗拭くその子
燐酸がまだ残っていない?みんな使った?
それではもしもこの天候が これから五日続いたら
あの枝垂れ葉をねえ 斯ういふ風な枝垂れ葉をねえ 
むしってとってしまふんだ
せわしくうなづき汗拭くその子
冬講習に来たときは 一年はたらいたあととは云へ
まだかがやかな苹果のわらひをもってゐた
いまはもう日と汗に焼け 幾夜の不眠にやつれてゐる
しっかりやるんだよ これからの本統の勉強はねえ
テニスをしながら商売の先生から義理で教はることでないんだ
きみのやうにさ 吹雪やわづかの仕事のひまで 泣きながら
からだに刻んで行く勉強がまもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ 
ではさようなら 雲からも風からも
透明な力が そのこどもに うつれ
宮沢賢治 詩「あすこの田はねえ」

もうはたらくな レーキを投げろ この半月の曇天と
今朝のはげしい雷雨のために おれが肥料を設計し
責任のあるみんなの稲が 次から次と倒れたのだ
稲が次々倒れたのだ 働くことの卑怯なときが
工場ばかりにあるのでない ことにむちゃくちゃはたらいて
不安をまぎらかさうとする、卑しいことだ
さあ一ぺん帰って 測候所へ電話をかけ
すっかりぬれる支度をし 頭を堅く縛って出て
青ざめてこはばったたくさんの顔に 一人づつぶっつかって
火のついたやうにはげまして行け どんな手段を用ゐても
弁償すると答へてあるけ 
宮沢賢治 詩「もうはたらくな」

2025年3月1日土曜日

NHKアカデミア 吉本ばなな 前後編

ロジカルに考え抜かん風光る
春光やイノベーションが起こる時
土匂う過去の遺産を糧とせり
亀鳴くや答えはいつも吾の中に
春の夢想像力は無限大

■NHKアカデミア 
“救いの物語”はどのように生まれるのか 吉本ばなな(前編)
自分を救いたかった
生きにくい自分自身をどうやったら救えるのか
焼く40年数多くの救いの物語を生み出してきた
この世から消えてなくなりたいと思っている人に
生きている時間を長くできたらそれをいつも願っています
読者に寄り添い励まし続ける吉本ばななワールド
その物語世界はどのようにして生まれるのか❓
日本を代表するベストセラー作家の創作の秘密に迫る
生きるヒントがここに
120冊以上の本を出版
小説家 吉本ばななが生まれるまで 1964年東京千駄木で生まれた
父親は戦後を代表する思想家で詩人の吉本隆明
町全体が一つの家のよう 小説を書き始めたのは小学校入学前
初めて書いたのは怖い話 書きかけが20個あるよりも
1個終わったものがある方が勉強になった 
1987年「キッチン」海燕新人文学賞受賞 
愛する人を失った主人公の成長と回復の物語

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。
どこのでも、どんなのでも、それが台所であれば
食事を作る場所であれば私はつらくない。

こんなに世界がぐんと広くて、闇はこんなにも暗くて、
その果てしない面白さと淋しさに私は最近はじめて
この手でこの目で触れたのだ。
「キッチン」

その後も繊細な文体と独自の世界観で多くの読者を魅了してきた
2003年39歳で出産 2012年に両親を相次いで亡くす
人生の経験は作品に大きな影響を与えてきた
子どもが生まれて絶対を経験 
自分の小ささを知ったことが作品の幅を広げた
本当に声は聞けないんだ それを実感したのはとても大きかった
作品の規模が せこくなったけど深みは出た
最新長編「下町サイキック」2024年
東京の下町を舞台に人と違う能力を持った少女が成長していく物語

「友おじさん、どうして人は色とかお金とかに
目がくらむの?だって、今までの暮らしが普通に幸せだったら、
それ以上つけたすべきものはないはずじゃない?(略)
私にわかるようなそんな簡単なことが、
大人になるとどうしてわからなくなるの?」
「下町サイキック」

下町の物語に込めた思いは下町の文化を書き残しておきたかった
主人公キヨカは人には見えないものが見える能力を持つ
ひとりひとりのなかには力が潜んでいる
読者の救いや癒しを意識しているのか?
読んでいる間すべてを忘れて貰いたい
生きている時間を長くできたらと願っている

吉本ばななに聞く創作の秘訣
結論やテーマの答えを自分なりに持っている 見切り発信はしない
エッセーや日記の分量を書く トピックを一人称で書く
強いことだけ濃く書く 弱いところははしょる
とにかく続けること 週に一回何かのトリートメントを受ける
自己投資をする コツコツ型で行く 10年続けたら必ず何かになる
自分をケアする 体が長持ちする
絶対読者に恥じることのないものであろう 
アーサー・コナン・ドイル著「シャーロック・ホームズの冒険」
トルーマン・カポーティ「遠い声 遠い部屋」
フランソワーズ・サガン「悲しみよこんにちは」三冊を薦める

■NHKアカデミア 
ベストセラー作家が語る❝生きる知恵❞ 吉本ばなな(後編)
40年近く小説を執筆 
独自の感性から生まれた人生観が多くの読者を魅了している
価値観が多様化する現代 吉本ばなな流”生きる知恵“
小説の副産物としての”生きる知恵“
テーマが磁石みたいに寄ってくる
吉本のエッセーには独自の”生きるヒント”が記されてきた
昨年出版したエッセーのテーマは幸せの見つけ方

そういう自分のことを自覚して、もう一度、本来の生き物としての
センサーを取り戻していくのが、生きるってことじゃないか。
軸足を自分に戻すことからしか、自分の幸せは始まらないと思うのです。
「幸せへのセンサー」

自分らしさを見つけていくのが人生 大事なのは実験
他人が言ってくる自分らしさと自分の自分らしさをミックスしたものが自分
自分らしさの実験をまめにできるのが幸せになる道

お悩み相談
直感を磨く方法 直感を磨くより違和感に気づく

落ち込んだ時の対処法 時間と空間を変える 
昔のスケジュール帳を見てみる

10年経つと大体なくなっている 意外なことが起こることを仕込んでみる
予想がつかないことが入ると生きる本能が蘇る

人と比べず自分の道を歩むには❓この世全体を一つの体と思う 
全員がいないと成り立たない 自分から自分を離さない方がいい
安全だと思うのが一番大事 不安の反対は安全

子育てや看取りなどさまざまな経験を経てきた吉本
ここからは人生の節目で直面する悩みについて

子離れの時期をどう乗り越えるか❓めちゃめちゃ甘やかしている
相手を大人扱いしながら唯一絶対の親である そのバランスが大切

大切な人を失うのが怖い 死ぬ直前まで生きているじゃん

還暦後の人生をどう生きるか❓引きこもっていきたい
若い人になるべく譲っていきたい と言いつつ
いざ何かが起きたら立ちあがれる状態を作る

多くの参加者から寄せられた悩み
人間関係で悩まないために 徹底的に自分は一人だと自覚する
人間関係で苦しむのは期待するから 本当に一人と思えたら
他人のせいにしなくなる 人と人って今会えていることの方が奇跡的

最後に今一番伝えたいこと
実験してみること 好奇心を持って実験してみる
自分から自分が離れないようにする
自分自身がいる場所を物理的に確認する
そうやって人生を楽しみましょう