2024年10月7日月曜日

兼題「夜食」&題「触れる」

演説の流行すたりや秋の声
夜明け前ようやく秋がやってきた
秋の風いきなり譜面飛ばしをり
花水木赤く色づけられし秋
期限なき隠忍自重星月夜

■NHK俳句 兼題「夜食」
選者 堀田季何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣
年間テーマは「俳句の凝りをほぐします」

今回テーマは「類想から抜け出す」
類想から考えて半ボン・脱ボンできる方法を伝授!
漠然としている
景色が見えない パッとしない そのまんま 映像が浮かんでこない

八月の平和祈れり恋人と
ナイターの試合白熱汗握る

梅雨じめりいつも躰の重きこと
(堀田)ある俳人の句を「改悪」した
梅雨じめり二の腕いよよ重きこと   宇多喜代子
(いよよ=いよいよ)具体的=漠然を逃れる
類想の句をまず作ってみてそこをちょっと変えてみる

類想句から脱ボンする実験!
具体的に掘り下げる!
秋の季語 松茸 酢橘

① 松茸や一番小さいものを買う
② 松茸や薄く切って皆で分け
③ 松茸や昔実家の裏山に
④ 松茸や香り楽しみ歩み去る

具体的にして脱ボンする!
②松茸や薄く切って皆で分け
松茸やひとつを薄く皆で分け   柴田英嗣
①松茸や一番小さいものを買う
松茸やしめじの様なものを買う   柴田英嗣

④松茸や香り楽しみ歩み去る
松茸や山の香りをスーパーで   庄司浩平
②松茸や薄く切って皆で分け
松茸や友と手で割き持ち帰り   庄司浩平

ツボポイント②
「視点を少し変える」

島中の熊蝉(くまぜみ)鳴けり朝(あした)より
すべて熊蝉領や朝より   小澤實
島が全部「熊蝉の領土のようと(視点を変えた)

一斉に片手の上がる踊かな
のんびりと片手の上がる踊かな   西村麒麟

類想から抜け出すポイント
① よく見て具体的にする
② よく見て視点を少し変えてみる

・特選六句発表 兼題「夜食」
夜食にす宇宙ステーション過ぐる頃   冨田裕明
AIの粋な提案夜食抜く   細見俊雄
それぞれの机は孤島夜食とる   北村浩子
学徒動員工場夜食高粱飯(こうりゃんめし)   松長朔風(さくふう)
(高粱飯 戦前戦中日本や満州でもよく食べられていた
物が少ない時代の背景が見えてくる)
スパゲッティコードうにやうにや夜食とる   大黒富々
信長にメガネ描き入れ夜食待つ   山口良子

・柴田の歩み よく見る
庄司の歩み 夜食パクパク俳筋力ゲット

■NHK短歌 題「触れる」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「❝私❞に出会おう~2年目の飛躍~」
今回のテーマは「雪月花のパワー」

「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる ことも なしと思へば」
満月のように我が世自分も一族も欠けたところがない
千年ほど前に藤原道長は作ったもの
月 雪 花 昔から詠われてきた題材が今も最先端で使われている

雪月花は万葉の時代 それから平安時代ずっと通して 
長い時間 歌の言葉として磨かれてきた

月光を挽くのこぎりの刃はむかし図工の部屋の冬の窓辺に
鈴木加成太(かなた)「うすがみの銀河」

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐのことかよ
穂村弘「シンジケート」

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これはの可能性が大きい
笹井宏之「ひとさらい」
ピンポイントの景色だけではなく過去にたくさん
歌われてきた桜の歌や桜満開の景色に繋がっていく
非常に小さな風景が大きな時間を超えた風景につながる
色んな想像力を呼び込むことができる 現代短歌の中に
流れ込んでとても大きな飛躍力を生む言葉になっている

・入選六首 題「触れる」
百均のプラスチックの聴診器こんな場所にも心臓がある
横縞
鍾乳石に両手で触れる夏休みたった五万年前の冷たさ
弘中典子
触れないでぼくの過去には触れないで静止画みたいに教室を出る
荒川優斗(まさと)
春風がぬるいふれあい公園で一方的にうさぎを撫でる
高原すいか
一席 夕方の顎に触れれば生きていた証の髭がざらざらとして
八号坂唯一(はちごうざかただひと)
まだ父の温かいとこあるはずと看護師(ナース)は探し吾に触れさす
間(あいだ)由美

・みつけたキラリポイント
秀一郎「たった」 あむ「静止画みたいに」

・秀一郎あむの飛躍のカギ
君と見た雪の結晶手に残る冷たさだけがまだ温かい
深尾あむ 添削
君と見た雪の結晶の白い森冷たさだけがまだ温かい
君と見た雪の結晶ぎざぎざの冷たさだけがまだ温かい
君と見た雪の結晶はシンデレラ城冷たさだけがまだ温かい

ドクンという心の音が怖い時夜空の月がほほ笑んでいる
内藤秀一郎 添削
ドクンという心の音が怖い時うるさい月がほほ笑んでいる
ドクンという心の音が怖い時うさぎの月がほほ笑んでいる
ドクンという心の音が怖い時やさしい月がほほ笑んでいる
慣用的ないつもくっついてるような言葉ではなく
ちょっとだけ外した言葉を工夫してみると
色んなイメージが広がる
ドクンという心の音が怖い時大きい月がほほ笑んでいる
雪月花はとっても跳ねた表現 飛躍のある表現
アクロバティックな表現を支えてくれる
でも雪月花に頼ってはいけない
戦う気持ちで用いると支えてくれる

・言葉のバトン
〈アリア〉というハンドルネームの友だちは
ベテランち こと 青松輝(あきら)(歌人)

うしろ髪を照れてさわったのは僕で、終わってからが思春期だから。
青松輝「4」ナナロク社
短歌は漫画とか小説と比べて読者の側に力があるというか
読者がどう思うかの裁量が大きいからフラットな関係性で
読者と作者がいるのが好きで
普段の自分だったらこういう上句で考えるよなみたいなのを
自分で設定する短歌が最近結構好きで

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