2024年10月15日火曜日

100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(1)

(三縄地区漆川線)ボンネットバス秘境の秋をラストラン
秋の三縄乗り合いタクシー始まれり
顔隠す姫様カット秋の声
秋渇き幾度も器舐める犬
星明り心静かに定まれり

■100分de名著 
ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(1)ドリトル先生のフェアネス
ヒュー・ロフティング(1886~1947)
福岡伸一(生物学者) 伊集院光 阿部みちこ

いよいよ、私がこの目で見て、偉大なるドリトル先生と
ともに経験したことを記すときがやってきました。
(中略)
もちろん、今、私はずいぶん歳を取ったので、
若いときほど記憶は定かではありません。
けれど、おや、あれは どうだったかな?と
よく思いだせないときには かならず、
オウムのポリネシアに尋ねることにしています。
(中略)
まあ、それはともかく、そろそろ始めましょう。

ドリトル先生の異常なる持ち味
普遍性を持っている。
個別性 その人だけのために書かれた物語のように読める。 

水辺の町 パドリビー
「その人は獣医なの?」
「いいや」と貝取り名人のジョーは答えました。
「獣医じゃないぞ。ドリトル先生はハクブツ学者だ」
「ハクブツ学者?」
「ハクブツ学者とはな」
ジョーが眼鏡をはずして、パイプに煙草を詰めながら言いました。
「動物のことも、蝶のことも、植物のことも、
鉱物のことも、なんだって知っている 学者さんだ。(中略)」

私は大差のお屋敷を探しあてて、玄関のベルを鳴らしました。
大佐がドアを開けて、真っ赤な顔を突きだしたと思ったら
「配達人のぶんざいで表から訪ねてくるとは何事だ。
裏口へまわれ!」と言ってドアをピシャリと閉めました。
「ご、ごめんなさい」と私は言いました。
「下を向いてたから、あなたが来るのが見えなかったんです」
驚いたことに、小柄な男の人はぶつかった私を
怒鳴りつけるのではなく笑いだしました。(中略)
「いや、きみも不注意だったが、わたしも不注意だった。
 わたしも下を向いていたんだよ。(中略)
 ひとまずわたしの家に来て、体や服を乾かしなさい。
 こんな大雨はそう長くは続かないはずだからね」
それがドリトル先生でした。

ドリトル先生との出会い
舞台は19世紀前半のイギリス(パドルビーは架空の町)
登場人物 ドリトル先生 スタビング マシュー・マグ ジョー
ドリトル先生 ジェントリ(ジェントルマンの語源) 中流階級の上
人間の医師だったが現在はやめて 小太りで脱力系の人と思われているが
貧富の差というものを意に介さず生きとし生けるものすべてに公平に
眼差しを向けているフェアネスを具現化している人物として登場する
ジョー ドリトル先生は博物学者だ
マシュー・マグ ドリトル先生は動物の言葉を話す

ダブダブ(真っ白なアヒル) この家の家政婦

「航海へ持っていったのは その鞄だけですか❓」
「そうだよ」
ドリトル先生が紐をほどきながら言いました。
「旅のたくさんの荷物など本当は必要ない。
 そんなものはかえって邪魔になるだけだよ。人の一生は短い。
 荷物なんかにわずらわされているひまなどない。
 いや、実際、人生に荷物など必要ないんだよ、スタビンズくん。
 はて、あのソーセージはどこにしまったかな?」
「さあ、行こう」とドリトル先生は言いました。
「雨もやんだようだ」
外に出るとあたりはふたたび明るくなって、
暮れゆく空が夕日で真っ赤に染まっていました。

ガブガブ(豚) ジップ(犬)

ごくごく普通にソーセージ食べるのすごくないですか?
食というのは「命と命のつながり」
「好きなものは好き」と生きることを肯定的に扱っているのが
ドリトル先生のフェアネス

ドリトル先生のフェアネス
「スタビンズくん」と名字で呼ぶ
対等で子ども扱いしない
ドリトル先生の階級の人が靴屋さんの家にあがったり
交流したりすることは 当時の階級社会ではあり得なかった
ドリトル先生はまったく躊躇なくフルートの共演をして
分け隔てなく付き合う

ポリネシア(オウム)

「(中略)あなたは注意深い方ですか❓つまり、
 いろいろなことによく気がつくかってことです。
 そう、たとえば、リンゴの木に二羽の雄のムクドリが
 とまっていたとして、それを一度よく見ただけで、
 次の日、またその二羽を見たら、どっちがどっちかいえますか?(中略)
 それが観察力っていうものですよ。
 鳥や動物の些細な特徴に気づくかどうか。(中略)
 わかってると思うけど、動物は舌を使って話すだけじゃないのです。
 舌の代わりに、息や、尻尾や、脚なんかも使うのです。(中略)」

「いや、それはどうかな。たしかに、読み書きができるのは便利だ。
 といっても博物学者ならみんなできるとは限らない。
 たしかに、今、世間の注目を浴びている若い学者の
 チャールズ・ダーウィンは、
 ケンブリッジ大学を出て読み書きは達者だ。(中略)
 そう言った者がいるいっぽうで、この世で最も偉大な
 博物学者は自分の名前の書き方も、アルファベッドの
 読み方も知らないんだよ」
「それは誰ですか?」と私は尋ねました。
「(中略)その名はロング・アロー、(中略)それはともかく、
 もう一度確かめさせてくれ、スタビンズくん、
 きみはほんとうに博物学者になりたいんだね?」
「はい」と私は答えました。
「もう決めています」

「a good noticer」注意深い観察者になれ
自然というのは隠れることを好む
まず自分の動きを止めて目を凝らしたり耳をすませたり
「a good noticer」にならないと自然が語っていることがわからない

ハクブツ学者とはナチュラリスト 自然界のあらゆる生命に
耳を傾けて ありのままに自然の多様性を寿(ことほ)ぐ人
生物学者の理想形がここには描かれている

「斜めの関係」の大人
垂直の関係 抑圧的なもの ドリトル先生は命じたり禁じたりしない
学校社会でも家庭でもないところにいる 何かを教えてくれる大人

黒沢良彦(1921-2001)
日本の昆虫学者 国立科学博物館の昆虫標本資料の基礎を築いた
福岡伸一少年は新種の動物だと思い国立科学博物館へ持ち込んだ。
結果新種の夢は潰えましたが生物学者の存在を知ることができた。
その後、福岡伸一氏は生物学者となられました。

自分の斜めにところに理想の大人がいて
違う世界が開かれるかもしれない

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