2024年10月20日日曜日

100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(2)

丸すぎる林檎手に取り星の降る
紅玉や色には意味があると言う
螻蛄(けら)鳴くや酢橘(すだち)の皮に栄養が
手に力酢橘絞りて聞く香り
酢橘狩り山では恥の採り残し

■100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(2)「道のり」を楽しむ
福岡伸一 伊集院光 阿部みちこ

動物の言葉が話せるドリトル先生と
助手のトミー・スタビングは航海に出ることを決意します

シュー・マグ ジョー 犬ジップ アヒルダブダブ 
豚ガブガブ オウムポリネシア と同居
第一作目「ドリトル先生アフリカゆき」の
登場人物たちがドリトル先生家に結集
猿チーチー バンポ
航海に出るには船乗りが必要 
船員を探す2人はある人物を訪ねることにー
世捨て人のリカ

「よろしい。では、私が昨日の夕食に何を食べたか、
この犬に訊いていただきましょう。この犬は食事中、
最初から最後まで私と一緒にいて、
主人のことをしっかり見ていたのです」
ドリトル先生は身ぶりや声で、裁判長の犬に話しかけました。
そうして、そのまま、ずいぶん長いこと話をしていました。
やがてドリトル先生がクスクス笑いだしました。(中略)
「まだ終わらないのかね?」裁判長がドリトル先生に尋ねました。
「私が夕食に何を食べたか訊くだけなら、
こんなに時間がかかるはずがない」
「ああ、いや、閣下」とドリトル先生は言いました。
「食事については、だいぶまえに聞きました。(中略)
あばら付きの羊肉とベークド・ポテトをふたつ、
クルミのピクルスひとかけに、エール酒を一杯と言っています」
ユーステス・ポーシャン・コンクリー裁判長は
唇まで真っ青になりました。(中略)
「それに、夕食のあとに」とドリトル先生が続けました。
「懸賞獲得試合を見にいって、その後、真夜中までカード賭博に
興じてから、鼻歌をうたいながら家に帰りました。(中略)」
「もうよろしい」裁判長がドリトル先生のことばを遮りました。

「法廷劇」が語るもの
立場の逆転 裁判長の鼻を明かした
無罪放免になったルカは妻と暮らせるように
なったので船員にすることを諦めた
「seek and find(探して見つける)」の定型になっていない
そこまでに行くまでの色々なエピソードが物語のコアになっている
本来の物語の豊かさがここにある
「何も起こらなかった日に意味がない」ということではない
ゴールではなくプロセス

残る船員問題… ムラサキゴクラクチョウ ミランダ がやってくる
偉大なる博物学者ロング・アローがブラジル沖あたりに浮かぶ
クサモル島での目撃を最後に消息を絶った
ベン・ブッチャー 自分を売り込んできた人
マシュー・マグ 行きたがるがリューマチ持ちで諦めた

ドリトル先生とスタビンズくんと犬のジップとオウムのポリネシアと
猿のチーチーとバンポが選ばれる

出航はしたものの密航者が現れる 
マシューマグ 旅への誘惑に勝てず船に乗り込む 
リューマチが悪化し発見される

新天地を求めて乗り込んだルカと船酔いの妻が
寝台の下から発見される

イギリスの南西部のペンザンスで降ろして全財産を渡す
でも もうひとり一番ひどい密航者がいたんです ベン・ブッチャー
積んでおいた塩漬けの肉のほとんどを食べ尽くしてしまっていた
予期せぬ密航者たち
お金を渡していたのは泥とる先生の少年性の現れ
世間の面倒なことから自由でいられるというのが少年のよいところ
お金に無頓着で身軽な生き方
子供時代が持っている一番良いところを大人になっても体現できる人
ペンザンスで彼らを下ろしている
パドルビーは架空だがペンザンスは実在する町
ブリストルから出発
福岡先生も「航海記」をしていた。
ブリストルには王女橋(Princess Bridge)
パドルビーには大様橋(Kingsbridge)

本を読み終えた時はゴールではなく そこから新たな旅が始まっている

カパブランカ諸島
偶然、ドン・エンリケと出会う
「もちろん、明日は闘牛を見にいかれるんでしょうな」
ドン・エンリケはにこやかにドリトル先生に尋ねました。
「とんでもない」とドリトル先生はきっぱり言いました。
「闘牛なんて大嫌いです。
残酷で卑劣極まりない見世物ですからね(中略)
牛が疲れ果てて、ふらふらになってようやく、あなたがたの
勇敢なマタドールは牛を殺しに出てくるのですから」
頭から湯気が出そうなほど怒っている。ドン・エンリケは、
今にもドリトル先生に殴りかかりそうでした。(中略)
「もしわたしが(中略)怒り狂った牛を巧みに操ったら、
カパブランカ諸島では、二度と闘牛を行なわないと約束して
ください。あなたの目の黒いうちは闘牛を廃止すると。(中略)
(中略)「いいとも」とドン・エンリケは言いました。
客席で女の人がパニックを起こして、(中略)叫びました。
「やめさせて!牛を止めて!こんなに勇敢な人を死なせないで。
あのイギリス人はこの世で一番りっぱなマタドールよ。(中略)」
ところが、次の瞬間には、ドリトル先生は獰猛(どうもう)な
牛たちから逃れていました。五頭を次々に捕まえては、
首をぐいとひねって地面に投げつけます。(中略)
ドリトル先生は客席の女の人たちに最後にもう一度
お辞儀をして、ポケットから葉巻を取り出すと、
それに火をつけて、のんびりと闘牛場を後にしました。

前代未聞の闘牛

ポリネシアたちはドン・エンリケらに賭けを提案し
食料調達のための大金を稼ぐことに成功した

1991年 スペイン領・カナリア諸島で禁止
2012年 カタルーニャ自治州で闘牛を禁止する条例を可決

ドリトル先生の価値観に時代が追い付いてきた
食べるという行為については命が連続していくために仕方がないが
闘牛のような娯楽のためだけに牛が殺められることは反対
命に対する温かいまなざし
人間のために酷使されることに対して批判的な面を持っていて
それをこの物語におもしろく入れ込んだ
「ドリトル先生」シリーズ挿絵はロフティング自身が描いたもの
動物たち一つ一つは弱い力だが相補的に
より合わさって大きな屋根がかかる
徹底的にオールマイティーなキャラクターが出てこない
ダメダメなところもあるがどこかで役に立つ
多様性があると言える 古くても現代的な問いかけ・読みどころがある

現在「ドリトル先生」シリーズは欧米ではほとんど読まれていない
0.5倍速で読む
この物語は差別意識があって記述されたものではない。
この時代の背景を知って読むことが大切。
この物語と確り付き合い復権すべきだと思う。と福岡伸一先生。

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