無我の手が作る世界や天高し
カシオペア力づくでも破る自我
圧倒的白と黒白粉花(おしろいばな)
枯れゆく体沸き立つ命野分
ゴッホめく志功の写生秋晴れる
■ワルイコあつまれ(102) 稚児俳句
高柳克弘 石原良純 松尾葉翔
今回の稚児 レベチ「レベルがちがう」の略
レベチはすごく現代的な言葉
俳句は古い言葉づかいとどう折り合いをつけるかがむずかしい
模試レベチ色なき風の中帰る 髙柳克弘
(色なき風は秋の季語 秋に吹く風のこと
さびしさや憂いの感情がこめられた季語
色なき風は古い季語 レベチは現代的な季語
この事を俳句では「二物衝撃」と言う
二物衝撃とは異質な言葉の組み合わせ
そこから生まれる味わいを楽しみテクニック)
松茸を大人買いする俺レベチ 石原良純
(松茸は秋の季語 個性が出ている 豪快な人柄
全体的にわかりやすすぎる 添削ポイント
読者が想像できる余白をつくる)
添削 松茸をレベチに積みしカートかな
(間接的に表現 松茸をたくさん買える俺はすごい)
松茸を天ぷらにする俺レベチ 石原良純
すきっ腹渋柿甘柿レベチ柿 松尾葉翔
(柿が秋の季語 季語を3つ入れるのはやりすぎ
添削ポイント 同じ季語は入れても2つまで)
柿日和ひとつレベチの甘さなり
(柿日和は秋の季語 柿がたくさん実るころの晴れた日
ポイント 原因と結果をはっきりさせずに余白を残す)
今回の最後を松尾葉翔先生に五七五でしめて貰いました
松茸を今年は食べるぜ本気だよ 松尾葉翔
■10min.ボックス 現代文
・戦争と平和の詩 茨木のり子
わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った
・「わたしが一番きれいだったとき」
わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった
わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈物を捧げてはくれなかった
男たちは拳手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残し皆発っていった
わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った
わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた
わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった
わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
私はとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった
だから決めたできれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのようにね
・戦争と平和の詩 原民喜(たみき)
アノ日 トツゼン
空ニ マヒアガツタ
竜巻ノナカノ火箭(カセン)
ミドリイロノ空ニ樹はトビチツタ
・原爆小景
彼にとって、一つの生涯は既に終わったといつてよかつた。
妻の臨終を見た彼には自分の臨終をも同時に
見とどけたやうなものだつた。
小説「美しき死の岸に」より
・「コレガ人間ナノデス」
コレガ人間ナノデス
原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ
肉体ガ恐ロシク膨張シ
男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル
コレガ コレガ人間ナノデス
人間ノ顔ナノデス
・「焼ケタ樹木ハ」
焼ケタ樹木ハ マダ
マダ痙攣ノアトヲトドメ
空ヲ ヒツカカウトシテヰル
アノ日 トツゼン
空ニ マヒアガツタ
竜巻ノナカノ火箭(カセン)
ミドリイロノ空ニ樹ハトビチツタ
・「鎮魂歌」より
自分のために生きるな、
死んだ人たちの嘆きの
ためにだけ生きよ
・「永遠のみどり」
ヒロシマのデルタに
若葉うづまけ
死と焔(ほのほ)の記憶に
よき祈よ こもれ
とはのみどりを
とはのみどりを
ヒロシマのデルタに
青葉したたれ
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