かけがえのない音を紡ぎて秋思
音楽に正座で向かう星月夜
華やかな言葉遣いや秋麗
型にはめるな赴くままに花野
蚯蚓(みみず)鳴く時を超えたる音そこに
■NHK俳句 兼題「栗」
年間テーマ「季語を器に盛る」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 夢枕獏 司会 柴田英嗣
おおかみに螢(ほたる)が一つ付いていた 金子兜太
この俳句に感銘を受けて夢枕獏氏は俳句をはじめられた
俳句ってアニミズム(自然界の全ての事物には霊が宿るという信仰)
かな?ということに気付かれやってみたいと思われたとか…。
ファンタジーとかSFを五・七・五の世界に
季語ありで落とし込もうとしたことが今やっていることなんです
夏井いつきさんはボクが釣りの師匠 夏井さんがボクの俳句の師匠
夏井さんが選者をやっている雑誌の俳句コーナーがあって
自分の名前を隠して投句 拾って貰ったら世間に「俳句やっている」と
言ってもいいかな❓と思っていた
1年かかったけれど選んでいただきました その時の句は
湯豆腐を虚数のような顔で食う 夢枕獏
虚数ってi=√-1 かけてもかけてもマイナスになる ということ
陶句郎先生
有るようで無いようで有るのが虚数
湯豆腐も味が「有るようで無いようで有る」
この句は面白いと思った 虚数を持ってきたか!
さすがに素晴らしい
・器に季語を盛る 兼題「栗」
栗は縄文時代から植林されていた 食料として栗を食べていた
古くから愛されてきた食べ物 材料
栗にはたくさんの傍題(子季語)がある
栗の傍題(子季語) 山栗、柴栗、丹波栗、毬栗、落栗、焼栗、
ゆで栗、栗山、栗林、栗拾、一つ栗、三つ栗、柴栗、ささ栗、虚栗など。
「笑栗(ゑみぐり)」は、毬が開いた状態を微笑みになぞらえた言い方。
「虚栗(みなしぐり)」は皮ばかりで中に実のない栗。
栗の俳句
栗山に在れば落日慌(あわただ)し 高浜虚子
(自分の心が慌ただしい 「慌」ただしい「忄」は「心」
「栗山」ですから暗くなると毬栗(いがぐり)の位置が見えない
足に刺さっちゃうかも 陽が落ちてきて「帰らなきゃ」
栗山にいるので心細さもある のではないか?)
・今回の陶句郎先生の作品
木の葉皿 木の葉のモチーフが「栗の葉」
色合いも美しい
器は料理に魔法をかける道具
いい魔法がかかっていると夢枕獏氏
・特選六句発表 兼題「栗」
毬栗や父のすべてに抗ひて 白神公(しらがたかし)
(二物配合(取り合わせ)記憶を引き出した季語 心に響く句)
「俺なんて」なんて言うなよ虚(みなし)栗
(自己否定のかっこ書き 虚栗が絶妙な空間を与えている
虚栗は大樹になる可能性も秘めている)
長ぐつの色のにぎやか栗ひろい 荒田苔石(たいせき)
(中七が効いた句 長靴で栗を剥くことを教えてくれている
長靴だと安全だから 栗拾い体験に出かける前に
色とりどりの長靴に履き変えて栗拾い体験をした)
拾ふたび見せに来る子や栗拾ひ 塚本治彦
(中七の切れ字「や」が効いている
最後の季語で詠み手の景色が広がる
その微笑ましさがこの句の良さ)
艶やかに落ちたる栗や草の中 田中スミ
(客観写生の句 物をしっかり見てその儘を表現している
「 艶やかに」風を感じる 「や」で映像を切り替えている
草に落ちた栗の音が聞こえる 格調があって映像が見える句)
サッカー部辞めて毬栗蹴っている 星子恵巳(ほしこめぐみ)
(何らかの事情で辞めたサッカー部 落ちていた毬栗でドリブルをしている
まだサッカーのことが忘れられないんだという母親目線 情のある一句)
・特選三席
一席 虚栗誰もが褒めてもらいたい 神谷車林(かみやしゃりん)
(虚栗も種子です いつか大きくなる可能性がある
内容と虚栗の響き合いが飛躍している
書いた本人が一番褒めてもらいたいのでは?)
二席 笑栗や絵手紙に塗る風の色 山田由美子
(季重なり 風の色は色なき風の傍題 木についている笑栗も
いつか落ちるだろうなぁと思いつつ風にあたりながら絵具をといている
「これが風の色か」と連想を掻き立てる一句)
三席 笑栗(えみぐり)や縄文人の歯と歯茎 前島康樹(こうき)
(栗を食べ出した頃より虫歯が出てきた 栗と歯の見た目が似ている
縄文人は奥歯が強い 現代人よりも顎の骨格もしっかりしている
生の栗を歯で剥いて食べたのではないか?縄文人へ思いを馳せて読める)
・俳句やろうぜ 若手俳人探査隊長 黒岩徳将
中矢温(のどか)さん(25歳)
ポルトガル語が公用語のブラジル留学
ブラジルの俳句
儚いプレアデス マンゴーの高い木に眠る 大食の蝙蝠(こうもり)が
⇩
プレアデス蝙蝠高い木に登る(訳 中矢温)
クロイワ 推しの一句
はろーわーるど白木蓮なるほど 中矢温
(ことば遊びの俳句)
・夢枕獏の一句
なまいきな重さ手にあり栗拾う 夢枕獏
柴栗の重さを「なまいきな重さ」と捉えた そこが面白い
俳句は省略の文学 余分な言葉もある
手に持っているから栗は手にある「手にあり」がいらない
添削
拾いたる栗なまいきな重さかな
・柴田の歩み
褒めてもらおう
■NHK短歌 テーマ「迷い」
年間テーマ 「❝ものがたり❞の深みへ」
選者 大森静佳 ゲスト 川上未映子 司会 尾崎世界観
表現の機微と結びつくテーマ
大といふ字を百あまり/砂に書き/死ぬことをやめて帰り来(きた)れり
石川啄木
・歌に❝ものがたり❞あり
入選九首 テーマ「迷い」
もう好きじゃないって言えない口の中鋭くなってゆくパインアメ
毛糸
三席 私 迷ってもぼくのなかには祖母がいるイチゴ大福食べれば平気
佐々木泰三
迷ったら亡き妻の手を誘い出し指さす方へよーしわかった
青木安生(やすお)
好物をそれしか知らぬゆえ父に迷わず供えるカルピスソーダ
小野小乃々(おののこのの)
私 新しい街に越したら新しい道できちんと迷子になれる
青山祐己(ゆうき)
二席 踏み外したい踏み外したいと丁寧に下りていくときの正しい感じ
植垣颯季(そうき)
「ごめんね」と「ごめん」で迷う一ヶ月笑ったままの君のスタンプ
黒川かおる
一席 今だけはどれにしようか迷う側リクスーのままドーナツを買う
梅木袱紗(ふくさ)
(常に選ばれる側にいたと思っていたけど選ぶ側の時もあったと気づいた時の詩)
迷ったら自然な模様になるようにマークシートの答えを選ぶ
長澤ひかる
・ものがたりの深みへ
夏物語 川上未映子著(2019年刊行)
夏子 38歳 独身 「自分の子どもに会いたい」
逢沢潤 精子提供によって生を受ける
善百合子 逢沢潤の恋人 「出産は親の身勝手な賭け」
父と卵 川上未映子著 の続編
大森静佳の好きなシーン
夏子が逢沢と観覧車に乗るシーン
細やかな情景描写の積み上げ
静かに夏子の心が波打っているのが解かる
特に好きな一文⇩
「よくみると窓の表面には細やかな白い傷が無数についていて、
それでかすかに靄がかかっているようにみえた。」
簡単に視界が晴れるわけではなく ずっと靄がかかっている
窓の描写を通じて夏子の心の中が表現されている
大森静佳
川上未映子さんの文には体幹が刺激される
「夏の薄暮を押しあげてゆくように」
「何艘かの船が海面に指でなぞるような小さな白い跡をつけながら」
読んでいるこちらの身体感覚が刺激されて
夏子と一緒にゴンドラに乗って眺めているような感覚がしてくる
川上未映子
世界の側にあるものを比喩で一番近い側を取って
ここでしかできない形で記録するということを当時考えていた
言葉にするって祈りみたいなところがある
私たちが触れることができるのは比喩 だからかもしれない
全部比喩の交換 音も色も文字も全部比喩
いろんな比喩で何かに近づこうとしている
尾崎世界観
分からないから安心して行ける ぶつかれる 本気出せる
生きて死ぬこの漂流のひとときをゴンドラの底に溜まりゆく影
大森静佳
(誰もが悩みや迷いを漂流しているということを表現した
影が底に溜まっている 底に時間が溜まっているImage)
川上未映子
生きているということを歌にしたらこの歌になるだろう
大森静佳
動詞に気をつけている この歌だと「溜まりゆく」
流れている時間とかリアリティを出せるのは動詞や形容動詞
・言葉のバトン
大気の奏でる曲のような娘
青森県立八戸西高等学校 奥銀次郎
⇩
詩奏(うたかなで)行く先々に幸せを
秋田県立大曲農業高校 太田分校 山方萌佳
本当に言いたい言葉分からずに言いたいことを待ち続けている
山方萌佳
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