2024年10月31日木曜日

あの本、読みました?名著に美食あり

塩田千春展を詠む
転げ落ちまたよじ登る秋の空
吾見つめ葛藤描く暮れの秋
故郷とは心ある場所星月夜
身に入(し)むや不在の中の存在よ
晩秋や墓の中から父の息
天高し自然と宇宙繋がれり

■あの本、読みました?
名著に美食あり…小説に出てくる料理&レシピ本ランキング

小説で描かれてきた食 物語に与える彩りとは?
「ランチ酒」「古本食堂」の著者 原田ひ香が創作の裏側を語る

第8回未来屋小説大賞にノミネート 話題の小説「カフネ」
著者阿部暁子が印象的な料理で描いた世界とは?

名著に美食あり
鈴木保奈美 角谷暁子
原田ひ香
食にまつわる作品が多い理由
「ランチ酒」創作のきっかけ
ランチでお酒 その意味合いは?
街と食の関係性
神保町を舞台にした理由
神保町という街の魅力
「感に堪えぬようにつぶやいた」池波正太郎
文豪が愛した味でつながる昔と今

話題小説「カフネ」阿部暁子が描く料理と「生」の物語
河北壮平 講談社
印象に残る料理
レシピ冊子が付いている
料理が鍵となる物語を書くきっかけ
「豊かな旨味」
料理の描写でのこだわり

鈴夏
「栄養とか摂っても意味なくない?異常気象だし、少子高齢化だし、
物価高だし、電気代どんどん上がってるし、うち貧困家庭だし、
もう未来終ってるじゃん。いいことなんか何もないよ。
だったら生きてく意味ないじゃん」
(中略)
せつな
「かなり未来って暗いじゃないですか。小学5年生にして
ちゃんとわかってるって立派ですよ。彼女たちは、私たちよりも
しんどい世の中で生きていかなきゃいけない。隠したって
しょうがないです、それが事実ですから」
(中略)
「でも栄養が意味ないっていうのはいただけない。死ぬまでは
生きなきゃいけないし、健康じゃないと生きるのはますます苦しくなる。
なるべく快適に生きるためにも栄養は必要。あとね、
おにぎりを作れるようになると、人生の戦闘力が上がるよ」

食べることを無駄にしたくない 鈴木保奈美

小野寺せつなのキャラクター モデルはいるのか❓

薫子の父
「小野寺さんの手料理を食べてみたいな。
春彦にも作ってやっているんだろう?」
薫子の母
「そうね。私もプロの方のお料理、ぜひ食べてみたいわ」
(中略)
せつな
「かまいませんが、三千円いただきますよ」
(中略)
「それが私の時給なので。本当は交通費もいただくんですけど、
ご挨拶にうかがった身ですから、今回はおまけしておきます」
父も母も絶句していたが、母のほうが、立ち直りは早かった。
鉄壁の笑顔を忘れ、噛みつかんばかりの形相になった。
薫子の母
「あなた、私たちからお金を取る気なの?」
せつな
「プロの料理が食べたいと、今お母さんがおっしゃったのでは」
(中略)
「それなら、私とお母さんの常識は違いますね。私はそもそも、
プロの料理人を休日にただ働きさせようとは思わないのでは」
平然と言ってのけた小野寺せつなは、作法の行き届いた手つきで
母が出したお茶を飲み「玉露ですね、おいしい」
と何事もなかったかのように感想を述べた。

せつなは自分のルール、ロジックがある。
人生観、価値観は他人に左右されない。 鈴木保奈美

林祐輔プロデューサーの印象に残った表現

ぼうっとしたままマグカップを受け取り、息を吹きかけてから、
そっとお茶を含んだ。リンゴの香りがふっと鼻の奥に抜けていく。
蜂蜜の優しい甘みが、ささくれ立った神経をなだめてくれる。
すごい、と思った。人間はこんなに打ちのめされている時でさえ、
おいしいと感じてしまうのだ。そして、美味しいと感じた途端、
体中の細胞が息を吹き返していく。

「おいしいと感じること」のチカラ

❝名前をつけられない❞薫子とせつなの関係

2024年10月30日水曜日

歌川国芳&河鍋暁斎

塩田千春展へ
掴み取る魂ここに星明り
月上る繋がるI(私)とeyeと愛
静けさの中のピアノの末の秋
見えないものを繋ぐ記憶や秋麗
吾と向き合いて迷い闘う寒露
そぞろ寒シーツかぶりて絵のモデル

■先人たちの底力 知恵泉 
歌川国芳・河鍋暁斎 師弟で乗り越えた時代の荒波

「流行猫の狂言づくし」「里すゞねねぐらの仮宿」
描いたのは歌川国芳 
「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」「相馬の古内裏」
天才浮世絵師
反骨心で絵を描いていた ピンチを乗り越えた国芳の反骨精神

国芳に弟子入りし江戸から明治にかけて活躍した 河鍋暁斎
餓鬼とよばれた天才
衰退する日本画に新風を起こし世界からも共感を得た
二人に共通するのは「現代に通ずる感覚」
江戸から明治 どう乗り越えたのか❓

山下裕二 村雨辰剛 青木崇高 橋本麻里

20代後半まで売れない日々
千載一隅のチャンス「水滸伝」新たな手法にチャレンジ
「武者絵の国芳」と呼ばれ一躍売れっ子になった
「勇国芳桐対模様」一躍トップ絵師へ
大きな試練の開幕 天保の改革 老中 水野忠邦が贅沢禁止令
天保の飢饉が発端 庶民に倹約を強制 娯楽をも禁止される
役者絵 美人画の禁止 出版差し止め 
庶民の不満を察知 

知恵その一 消費者の想像力を信じろ!
もっとも国芳らしい作品「源頼光公舘土蜘作妖怪図」
当時の世相を反映している
「かの司(水野忠邦)に恨みがある者ども」
井関隆子日記より
沢瀉紋(おもだかもん)が水野忠邦を暗示
歯がない⇨はなし⇨落語家
禁止された初物 天保雑記 謎解き
売れっ子として再ブレイク
政府は出版禁止のお触れを発布
出版停止にするとかえって人気を煽ることになり
高値で取引される始末
なぜ国芳は作品を生み出せたのか?
浮世絵を買い求める人との関係性
何がウケるか すごく考えた人
歌舞伎役者を亀に見立てた「亀喜妙々」
江戸庶民の「想像力」にかけた

「新富座妖怪引幕」 河鍋暁斎(かわなべきょうさい)が
わずか4時間で描いたと言われている
反骨精神にあふれる国芳に師事した暁斎
「暁斎画談」国芳との交流を絵に残しています
7歳で弟子入りし子どもとは思えぬ才能を発揮
国芳に可愛がられた 10歳になると幕府お抱えの狩野派に入門
十数年かかる修業を9年で終える 10代でプロの絵師になる
江戸は終焉 明治へ 加納派は衰退
日本文化は大打撃 書画会への参加
書画会とは現在のライブペイントみたいなもの
暁斎は大人気絵師へとなる
「狂斎百図」国芳ゆずりの風刺画
文明開化で外国から入ってきたものにひれ伏す日本人
物申したかった
暁斎に突然の不幸 「筆禍事件」政府を揶揄したとして逮捕される
門前におきて笞(むち)五十の刑に処せられ師家へ引き渡されたし
「河鍋暁斎翁伝」より

知恵その二
激動の時代をハイブリッドで生き延びろ!

新たな境地を切り開拓く
暁斎楽画第三号 化々学校
ハイブリッドその一
西洋式の学校×日本の妖怪
揺れ動く日本人の心
「地獄極楽めぐり図 極楽行きの汽車」
ハイブリッドその二
古来の仏画×近代の汽車
西洋の汽車を中国の宮殿のように描いた
「美人観蛙戯図」鳥獣戯画に習った 
ハイブリッドその三
美人が×鳥獣戯画
画題も非常に幅広い 何でも描ける人
ウィーン万国博覧会 フィラデルフィア万国博覧会
新しい日本を世界へ
ある人物との出会い 建築家 ジョサイヤ・コンドル
日本近代建築の父とも言われている 鹿鳴館も建築
「鳥獣戯画 猫又と狸 下絵」
コンドル著「河鍋暁斎―本画と画稿」
彼ほど日本画の領域を広げた画家はいないだろう

暁斎は狩野派と浮世絵のハイブリッド

俺の表現ではなく
受容する人との間に化学反応が起きることを楽しめる 
二人の絵師

2024年10月29日火曜日

兼題「蓑虫」&「いただきます/ごちそうさま」

秋過ぐ(あきすぐ)や解読できぬ走り書き
風に揺られる紅白の萩の花
秋薔薇や剪定終えてすまし顔
飛沫浴び秋の彫刻凛と立つ
秋陽射し秋の彫刻暖めん

■NHK俳句 兼題「蓑虫(みのむし)」
選者 高野ムツオ ゲスト 能町みね子 レギュラー 中西アルノ
ゲスト俳人 堀切克洋 池田澄子 司会 柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」
蓑虫とは秋に木にぶら下がっているミノガの幼虫
絵本やアニメで親しみがある すごく難しい兼題でした

1 蓑虫に背を向けられているような   堀切克洋
2 蓑虫を飼ふ人ネイル紅(あか)くあり   能町みね子
蓑虫を飼ふ人ネイルますます紅 とする方法もある 
一音外して表現する
3 鬼の子のあはれと書いてあわれと読む   池田澄子
「鬼の子あはれ」というのは枕草子に出てくる清少納言の言葉
「鬼の子のいとあはれなり」ではじまる 蓑虫が蓑を着ている
鬼が蓑を着ているので「鬼の子供だ」言い伝えから始まった言葉
「あはれ」本来は「いいことだ」という意味「とても感動した」
その内に段々「身につまされるような」「かわいそうな」
反対の意味も加わってきた 
両方に揺れ動く所が「あはれ」という言葉の面白さ 不憫⇨趣深い
今の言葉で言うと「エモい」現代は「あわれ」「みすぼらしい」
4 夕焼けチャイム蓑虫にも響く   高野ムツオ
5 蓑虫はなんのこれしきと風をよけ   中西アルノ
「蓑虫は風よけなんのこれしきと」添削 調べを整える
少し儚いものがあった方が良いのでは?
「蓑虫はなんのこれしきと風を受け」「風を向き」添削 

・特選三席発表 兼題「蓑虫」
一席 Wi-Fiが飛ぶ蓑虫がぶらさがる   佐藤秀酔(しゅうすい)
Wi-Fi パソコンやスマホなどのネットワーク接続に対応した機器
二席 蓑虫の蓑美しき粗雑かな   小林土璃(どり)
三席 蓑虫や仮設にひとり越した夜   岡博子

簑虫や知覧の空は澄みわたり   藤田晋一
蓑虫の住所はくぬぎ五番枝   卯之町空
蓑虫や瓦礫に生きる戦禍の子   小倉あんこ
卒寿にて蓑虫の声聞き取れり   おかだみのる
蓑虫とだいだらぼっちの居りし山   市川我芭夫
蓑虫や最後は一人の帰り道   林園子

■ NHK短歌 テーマ「いただきます/ごちそうさま」
選者 枡野浩一 ゲスト 山本ゆり 司会 尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」

番台へ「ごちそうさま」と言いそうで言わないように気をつけて出る
枡野浩一
未遂であることが大事なのかもしれない

・31音の手紙
入選九首 テーマ「いただきます/ごちそうさま」
死ぬまでに一度でいいから「ごちそうさま」できれば「おいしかった」と言ってよ
鴨川富子
二席 私 幸せになれるものならなってみな。いただきますも言えないくせに
津田和樹
「ごちそうさま」なんて言わない家だった母が怒りを吐きだすまでは
髙谷慎司
一席 ひとりでもいただきますは言っているあなたとの約束はそれだけ
琴里梨央(ことりりお)
兄ちゃんはいただきますも言わないで他人の家のプリンを食べる
嶋村純
合掌し「いただきます」とお辞儀する君にいつかはフラれるだろう
小鳥遊湖々(たかなしここ)
感動をSNSに書くまでが外食だから写真に残す
澪那本気子(みおなまじこ)
口は無料(ただ)言っておいたらよかったな「いただきます」も「ごちそうさま」も
さわだみやこ
三席 声出さず「いただきます」と食べ始め病室の夕餉(ゆうげ)まだ十八時
小林一女(いちじょ)

・改悪添削
口は無料(ただ)言っておいたらよかったな「いただきます」も「ごちそうさま」も
改悪(だいなし 調味料たった一つを変えて駄目になった料理)
口先で言っておいたらよかったな「いただきます」も「ごちそうさま」も
短歌はとにかくいろんな言い方で言ってみる
最低でも5案とか10案とか同じ意味のことを10案くらい作れちゃうので
その中から一番しっくりくるものを選んでいく
選者がいいと言ったからといって安心しないでほしい
私はしっくりこないというものは一生考え続けてほしい

・山本ゆりさんの短歌
「ごはんやで」まだできないが呼んでおくどうせそこから五分はかかる
山本ゆり
突出して良い句と枡野浩一先生
コミュニケーションのずれは人生には必ずあることだから
折込済みで生きていくことが幸せのコツかな❓とまで考えさせられた
気どっていない所がすごくいい

書いてみたものを他人の目で見る みたいなところが必要
人が書いた文章のように冷たく突き放してみて それに違和感を
感じた時に直すみたいな作業が文章を書く能力って全部そうだと思う
時間が経つというのが大事なことで10年経って読んだら
自分の作品は駄目なものが殆どでこれだけがいいというのに気づける
時間をかけるか時間の短縮のために人に見てもらう味見してもらう

・言葉のバトン
詩奏(うたかなで)行く先々に幸せを
秋田県立大曲農業高校 太田分校 山方萌佳

風船葛(かずら)の中に込めて
星野高校(埼玉県) 文芸部 金子舞
ビスケットみたいな語彙で綴られた詩(うた)を紙面に並べる時間
金子舞(3年)
私感 自分を表に出した方が良いのでは?
ぶりっこが人生の邪魔になる日が近いのでは…。

2024年10月28日月曜日

100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(3) 

主なき家の草木や秋を伸ぶ
秋惜しむ大樹となりた楸(ひさぎ)かな
三階を越えて伸び行く楠よ
秋の雨重き荷を持ち駐車場
憎めない俺様加減空高し

■100分de名著 
ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(3) ナチュラリストの条件
福岡伸一 伊集院光 阿部みちこ

鳥はほとんど翼を動かさずに滑空して、
私のいかだの上をのんびりと二度ほどまわりました。
私はと言えば、これほど悲惨な状況だというのに、
ゆうべ、この鳥はどこで過ごしたのだろう
などと考えていました。(中略)
そう考えて、私はさまざまな生き物の
さまざまな生き方に気づきました。
体が大きいとか、力が強いことだけが
すべてではないことにも気づきました。
私よりはるかに小さくて力もない、
羽でおおわれた小さな生き物である
この海ツバメなど、海がひとたび牙を剥けば
ひとたまりもないかのように思えます。
けれど実際は、いくら海が何かをしかけても
海ツバメは悠然と翼をはためかせるのです。

私は心の中で、そんなドリトル先生と海ツバメを
比べずにはいられませんでした。(中略)
海ツバメと同じように、ドリトル先生ならどんな天気の
海ともうまくつきあっていけるはずです。(中略)
先生と一緒にいるだけで、誰もが明るい気分になって、
安心できるのです。(中略)
船が難破したせいで、ドリトル先生は剃刀(かもそり)以外にも、
想像もつかないほどたくさんのものを失ったはずです。(中略)
それでも、ドリトル先生はこの世にほしいものなどひとつもない、
かのように、いつもと変わらずにこにこしています。(中略)
やはりドリトル先生は偉大です。
まぎれもなく、不思議の人なのです。

こうして彼らをのせたいかだはークモサル島に到着

嵐の出来事を読み解く
スタビンズくんはナチュラリストにもうなりかかっている
ナチュラリストの条件は「a good noticer(注意深い観察者)」になること!
ドリトル先生の強さというか懐の深さ 不思議 ある意味変人?
自然に対する畏敬の念としなやかさ
自然は人間のコントロールの中に入らない
失敗や困難も1つのレッスンだと受け入れていく
アルゴリズムだけではできていない自然
自然との相対し方を具現化している
世の中大きく分けると 虫を通ってきた人と
通ってきていない人とは違う
ドリトル先生を見ていると自然の時間軸と自分の時間軸が一緒

ドリトル先生たちが上陸するとー不穏な空気に包まれる
島の住民たちがやって来て威嚇 
ひとまずジャングルの山へ逃げることにー
それはこの世で一番美しい昆虫といってもいいほどでした。
腹は薄青色で背中は艶やかな黒。そこに真紅の斑点が散っています。
「今日のわたしと入れ替われるなら、世界中の昆虫学者は誰だって、
全財産を差し出すはずだよ」
Question この手紙の意味は❓枯葉に書かれた手紙の謎
ナチュラリスト同士の信頼に基づくSuperCommunication
茶色のインク=血⇨それしか書くものがなかった

まもなく、何かが軋むような、こすれるような音がしました。(中略)
山肌から岩が離れると、その向こうから聞いたことのない言葉で
歓声があがりました。(中略)
ついには、轟音とともに岩が地面に倒れると、周囲の山々を
揺るがすほどの地響きがして、岩はぱかっと真っ二つに割れました。
出てきたのはロング・アローでした。
「はじめまして」とまずは犬語で話しました。
「お会いできて光栄です」と今度は馬が使う身ぶりで言いました。
「どのくらいのあいだ、洞くつに閉じこめられていたんですか?」
とシカ語で尋ねました。
それでも、ロング・アローはどれも理解できなかったようで、
ピクリとも動かずに、背筋をぴんと伸ばして
じっとその場に立ったままでした。(中略)
ついに、先生はワシの言葉を使いました。
「偉大なる赤い肌の人よ(中略)生きているあなたを見つけられた
今日という日は、わたしにとって人生最良の日です」
その瞬間、ロング・アローの無表情だった顔に、
わかったと言いたげな明るい笑みが浮かび、
ワシ語で返事が返ってきました。
「力強い、白い肌の人よ、あなたは命の恩人だ。(中略)」
ロング・アローとの対面
家畜やペットの言葉では通じなかった
ロング・アローは野生の思考を持った人なので
野生のワシ語で言ったら通じた
ロング・アローはワシと交流できるライフスタイル
「ナチュラリスト」ロング・アロー

笑い豆 食べると浮かれ騒ぎたくなる 大量摂取すると笑いが止まらなくなる
赤い根 砂糖と塩を加えてスープにして飲めば猛烈な勢いで踊る続けられる
ブドウの油 ひと晩で髪がつやつやになる
黒い蜂蜜 スプーン一杯でぐっすり眠れる
木の実 美声になる
水草 傷口の血を止める
コケ ヘビに噛まれた傷に効く
地衣類 船酔いを抑える

自然が無限のデザイン・リソース
西洋的な近代科学に対するアンチテーゼ
西洋近代科学主義は薬の成分が含まれていれば
原因物質を抽出生成して取り出そう
単一の要素還元主義
自然を操作すべき対象物とは捉えない
人間も生物の一員なのであらゆる他の生物が
人間のために用意されていると思わない

福岡伸一先生もネズミの実験をすることで
生物を機械とみなし過ぎていたことを知ることとなった
機械は部品を一つ取り除けば壊れてしまいますが
生命というのは部品が1つなければないなりに
なんとかバランスを取り直して新しい状態を作って
何事もないように行動できる
そのことに驚かないといけない

ドリトル先生も自然界を虚心坦懐に見て
その自由自在さに評価していたはず

ナチュラリストに戻ろうという転換があったと福岡伸一先生
福岡伸一にとって大切な一冊となっておられるとか…。

2024年10月27日日曜日

福沢諭吉&夏目漱石著「こころ」

風を背に月の創った海の道
モーツァルトへ音落とし込む夜長
瞬間に生まれくる音月の暈(かさ)
秋晴るところ見極め貫かん
忙しいと人遠ざけて秋の空

■偉人の年収 How much? 思想家 教育者 福沢諭吉
1872年(明治5年)「学問のすすめ」初編出版
人間はみな平等
この人間の世界を見渡してみると
賢い人もいれば愚かな人もいる
貧しい人もいれば金持ちだっている
その違いは学ぶか学ばないかである
「学問のすすめ」(現代語訳)
自ら学べば人生を変えられる

1873年(明治6年)11月「学問のすすめ」2編出版
学問とは何か
ただ文字を読むだけで学問だと思うのは見当ちがいである
(中略)実生活も学問であり実際の経済や
世の流れを知るのもが学問である
「学問のすすめ」(現代語訳)
4年間で17編出版
一心独立して一国独立する
1冊 1,650円(3銭3厘) 全17編 累計発行部数 340万部
現在価値 56億円
国民の10人に1人 驚異的ベストセラー

国民がしっかりと自分の意見が言えるようにならなければ!
議論の場を作る speech=演説
1875年(明治8年)三田演説館建設
学生に議論の練習 一般公開 
議論するには根拠となる知識や情報を
誰もが手に入れられるようにしなくては
1882年(明治15年)時事新報 創刊 経営者となる
日本初の天気欄 スポーツ欄 まんが欄 
総合メディアとしての新聞を生み出した
その新聞の論説で日本人の新しい生き方を書き続けた

女性も家の中にばかり居ないで自由自在に外に出て人と付き合い、
日本の半分は女性のものと思えるような社会にしよう
「日本婦人論 後編」1885年

商業や工業といった民間の経済活動に政府は干渉することなく
自由にさせるべき 魚と鳥は違う 魚は迷惑している
「実業論」1893年

そして晩年楽しみにしていたのは毎朝の散歩 諭吉(65歳ころ)

自らの人生を「福翁自伝」1899年をまとめ上げ
福沢諭吉は1901年(明治34年)没66歳

諭吉が好んで用いた言葉が「独立自尊」
自らの判断と責任で行動していこう
福沢諭吉61歳の年収は40億円
使い道は「学びを志す人々をサポート」
北里柴三郎が伝染病の研究所を設立する際 土地や建物を提供した

■10min.ボックス現代文 こころ(夏目漱石)
私はその人を常に先生と呼んでいた。
だから此所(ここ)でもただ先生と
書くだけで本名は打ち明けない。
これは世間を憚(はばか)る遠慮というよりも、
その方が私に取って自然だからである。
私はその人の記憶を呼び起こすごとに、
すぐ「先生」といいたくなる。
筆を執っても心持は同じ事である。

私は最初から先生には近づきがたい
不思議があるように思っていた。
それでいて、どうしても近づかなければ
いられないという感じが何処かに強く働いた。
人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、
それでいて自分の懐に入ろうとするものを、
手をひろげて抱き締める事のできない人、
―これが先生であった。

夏目漱石 小説を発表したのは1905年(明治38年)~1916年(大正5年)
「こころ」1914年(大正3年)発表
先生の謎
「こころ」は上 先生と私 中 両親と私 下 先生と遺書 
に分かれています

「私は世間に向かって働きかける
資格のない男だから仕方がありません」
「恋は罪悪ですよ。よござんすか。
そうして神聖なものですよ」
「平生はみんな善人なんです、
少なくともみんな普通の人間なんです。
それが、いざという間際に、
急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです」
「私は死ぬ前にたった一人で好いから、
他(ひと)を信用して死にたいと思っている。
あなたはそのたった一人になれますか」
「あなたははらの底から真面目ですか」

私は暗い人生の影を遠慮なく
あなたの頭の上に投げかけて上(あげ)ます。
しかし恐れては不可(いけま)せん。
暗いものを凝(じつ)と見詰めて、
その中から貴方の参考になるものを御攫(つか)みなさい。

友人K
彼の重々しい口から彼のお嬢さんに対する切ない恋を
打ち明けられた時の私を想像して見て下さい。
その時の私は恐ろしさの塊といいましょうか、
または苦しさの塊といいましょうか、
何しろ一つの塊でした。

私は先ず「精神的に向上心のないものは
馬鹿だ」といい放ちました。
これは二人で房州を旅行している際、
Kが私に向かって使った言葉です。
私は彼の使った通りを、彼と同じような口調で、
再び彼に投げ返したものです。
私は一言(いちごん)でKの前に横たわる
恋の行方を塞ごうとしたのです。

私の眼は彼の室(へや)の中を一目見るや否や
あたかもガラスで作った義眼のように、
動く能力を失いました。
私は棒立(ぼうだち)に立竦(たちすく)みました。
もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫いて、
一瞬間に私の前に横たわる全生涯を物凄く照らしました。

私は何千万といる日本人のうちで、
ただ貴方だけに、私の過去を物語りたいのです。
あなたは真面目だから。
あなたは真面目に人生そのものから
生きた教訓を得たいといったから。

2024年10月26日土曜日

湯川秀樹の歌&竹久夢二&発想の飛ばし方&「雀大水に入り蛤となる」

無季句
808(ヤオヤ)へ託す表現の幅広き
808(ハチマルハチ)の音のセンスに磨きかけん
808(ヤオヤ)の使命時代ぶち抜く事だった
時代駆け抜け残る808(ヤオヤ)や永遠に
生み出され信念通す808(ヤオヤ)かな

■『湯川秀樹歌文集』より「原子雲」と題した歌が3首掲載されています。
天地のわかれし時に成りしとふ原子ふたたび砕けちる今
今よりは世界ひとつにとことはに平和を守るほかに道なし
この星に人絶えはてし後の世の永夜清宵何の所為ぞや

https://gendai.media/articles/-/139193

■日曜美術館 ひそかに春を待つ心 竹久夢二の油絵

宵待草 1918(大正7)年 作詞者:竹久夢二 作曲者:多忠亮
待てど 暮らせど
来ぬ人を
宵待草の
やるせなさ
今宵は月も
出ぬそうな

自分の繪(え)は、人の世の旅路に、たとえば、胸に挿(はさ)むだ
心の花から花瓣(びら)を一つ一つ路に捨ててはゆくその花瓣だ。
繪は、僕の命だもの。
夢二の文章より(夢二の画集・夏の巻 1910・明治43年)

形と色の奥に秘められた何者かをつかみたい。
人の心のうちに自分の影を映したい。
夢二の日記より

モデル女よ、その色が俺の絵の具箱にはないのだ。
光の中でお前は真裸身(まはだか)だ。
日本男児のつつましさを俺は恥ぢる。
夢二の日記より 1932年(昭和7)3月20日

カミイルの花を煎じてのむ夕べ
ひそかに春をまつ心かも
夢二の日記1932-33(昭和7-8)年

1934(昭和9)年9月1日逝去

■夏井いつき俳句チャンネル
【俳句作りのヒント】発想の飛ばし方講座

季語ではない単語を書き出そう!
第一キーワードから生まれた第2キーワード!
第2キーワードからさらに連想を広げよう!
キーワード同士が繋がることも!
第3キーワードから発想をはじめよう!

「発想は飛ばすものではない、繋げながら辿っていくもの」
夏井いつき(2024)

コスモスや今朝の牧場は風力2

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「雀大水に入り蛤となる」
(すずめうみにいりはまぐりとなる)
全体で実に15音もある季語になります
「大水」と書いて「うみ」と読んだり
「たいすい」「だいすい」という読み方もあるそうですが
歳時記の傍題としては「すずめうみにいりはまぐりとなる」と
記載されております非常に長いので
「雀蛤となる」という形で記憶している方も
いらっしゃると思います
七十二候の一つとなりまして現在の暦でいうところの
10月13日から10月17日までの期間をいうそうです
全体で15音もある長大な季語になってきますから
あと自分でどうにかするといったら たった2音しか
17音に収めようとするとないわけですねぇ
雀大水に入り蛤となるかな
みたいなもので完成といっていいのかわかりませんが
どう活かしていいのか持て余すきごでございます
(ですよね。確かに。)

2024年10月25日金曜日

松平容保&向島百花園&舘ひろしの言葉

無季句
カウベルとハンドトラップ響かせり
リズムマシーン808(ヤオヤ)駆使して成功へ
世界席巻808(ヤオヤ)マシーン鳴り響く
世界を変えた808(ヤオヤ)サウンド今もなお
808(ヤオヤ)の音にどっぷり嵌る秋の夜

■偉人・敗北からの教訓 
第64回「松平容保・会津戦争を招いた藩主の決断」

・松平容保 敗北の伏線~京都守護職としての奮闘~
慶喜
「この任に当たりうるものは 家柄・兵力に優れている会津藩をおいてない」
容保
「私は才うすく この空前の大任に当たる自信はない」
保科正之の残した家訓(かきん)
「他藩の動向に関係なく将軍には忠節を尽くさなければならない
 もし二心を抱く藩主があれば もはや自分の子孫ではない」
家老
「まるで薪を背負って火中に飛び込むようなもの 是が非でもご辞退を」
容保
「主従もろとも京都を死に場所に…」
言路洞開(げんろどうかい はなせばわかる)
「上に意見する道は開かれねばならない」
容保
「国事に関することなら内外大小を問わず申し出よ」
「関白を通じ 天皇に奏上する」
「策は用いるな 最後に必ず一途な誠忠が勝つ」

・松平容保 敗北の伏線
藩祖の家訓に縛られ 京都守護職を安請け合いしてしまった

・松平容保 敗北の瞬間
真面目過ぎた性格が利用され 会津藩を窮地に追い込んでしまった

・松平容保の敗北から学ぶ教訓
一、むやみに人を信じない
一、恨みを買わないよう努める
一、他人に頼りすぎず行動する

■新美の巨人たち 向島百花園
大田南畝
世の中は色と酒とが敵なりどうぞ敵にめぐりあいたい
大窪詩仏の漢詩
「春夏秋冬 花は絶えることなし」

女郎花(オミナエシ) 南蛮煙管(ナンバンギセル 思い草) 藤袴(フジバカマ)
葛(クズ) 屁糞蔓(ヘクソカズラ) 桔梗(キキョウ) 
上記が向島百花園に植えられている植物
萩(ハギ) 薄(ススキ) 撫子(ナデシコ) 尾花(オバナ)
赤字が秋の七草 秋の七草の名所でもある

文化元年(1804)仙台出身の日本橋住吉町で骨董商を営む 
佐原鞠塢(さはらきくう)によって造園された

当時のインフルエンサー
酒井抱一 谷文晁 大田南畝 川上不白
に支援を求めた

自由で野諏あふれる庭を
「梅は百花にさきがけて咲く」こういう意味から
名付けられたと言われています

重要文化財「夏秋草図屏風」酒井抱一
右隻には 青芒 女郎花 百合 葉陰の奥に美しいもの
左隻には 野葡萄 藤袴 葛 江戸琳派の最高傑作

作家・俳人 久保田万太郎
ここの焼跡をみて立ったときほど
胸がいっぱいになったことはなかった
だって君(中略)
ただもう白っちゃけた地べたが剥き出しに
一面に広がっているばかりだったじゃないか
荒涼とも何とも言いようのないこの世の終わりのすがたを
まざまざと見せられたような気がしたよ
久保田万太郎著「むかしの仲間」より

江戸から続く心の聖地として「向島百花園復旧工事」が始まった

烏瓜(カラスウリ)は夜になって咲く花

咲く時間の異なる植物を集めた七草 
鞠塢(きくう)の秋の七草・江戸の花時計
ねりの花 明け方⇨7時頃 ひおうぎ⇨7時から9時 
りんどう⇨9時から11時 ごじの花 昼頃 おしろい花 
13時⇨15時 ゆうがお 15時⇨17時 からすうり⇨日没

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん
~昭和の大先輩とおかしな2人~#26
昭和の大先輩 舘ひろしの言葉
「紳士たれ! 舘ひろし」

渡哲也氏を心から尊敬しておられたのですね。
人との出会いが人生を形成するのでは…?
を、痛感した回でした。



2024年10月24日木曜日

星野富弘 あの人に会いたい

無季句
無機質を熱い音へと808(ハチマルハチ)
808エモーションかつセクシーへ
808独自の音を癖とする
しがみつきセンス守った808
世界中熱狂の渦808

■NHK映像ファイル あの人に会いたい
星野富弘(詩画作家)
今年4月に亡くなった星野富弘さん。
事故で手足の自由を失い、口に筆をくわえて創作活動を行う。
四季の草花を描いた水彩画に詩を添えた作品が多くの人々の共感を呼んだ。

星野さんは昭和21年群馬県生まれ。
群馬大学卒業後、中学校の体育教師になる。
2か月後、クラブ活動の指導中に首の骨を折る大けがをし、首から下の身体機能を失う。
入院中に口に筆をくわえて文字や絵を書き始め、
絵に詩を添えた「詩画」と呼ばれるスタイルを生み出した。
多くの詩画集を発表し、日本だけでなくニューヨークなど海外でも作品展を開催。
平成3年には地元に「富弘美術館」が開館し、これまで700万人以上が訪れた。

https://www.nhk.jp/p/anohito/ts/K15V8PLV63/ より

2024(令和6)年 78歳没

ほんとうのことなら
多くの言葉は
いらない
野の草が
風にゆれるように
小さなしぐさにも
輝きがある

言葉というのが どうもこれでいいのかなとかね
こんなちょっとダメだろうな
ということが随分あるんですよね
でも花のそばに書くと
花がみんな それを受け入れてくれるというか
ほわっと包み込んでくれる
だから 花だから詩が書ける
花に添えるから言葉が書ける

絵を描くのは
旅をするのとおなじ
私は今
花びらの谷間から
雄しべと雌しべの
丘に続く
春の小道を
旅している

いつも山の向うには何があるんだろう
山の向うにはきっといい
楽しい世界があるんじゃないか

宙返りに失敗しまして マットの上に落ちて
何十秒か過ぎたぐらいのときもう
自分がどういう状態になったか
っていうのはわかりました
手に触られた感覚もないですから
「あっ これはもう神経をやっちゃったな」
このままなるべく…
早く 命が終わったらいいな
そんなふうに思いましたね
私が怒ったり もう口を利かなくなったりするときも
変わらないで看病し続けてくれる
ずっとベッドの横の狭いところで寝起きして
しょっちゅう熱が出ていたり
喉の気管切開をして
その吸引を1時間か2時間おきぐらいに
そういう姿を見ていて「たった一人の母ちゃんだ」
そういう気持ちをもちました
なんとしても 一字でもいいから書きたいと思いまして
それで口に筆をくわえて
点でもいいから書こうと思って
それでも書けなくて
母が帽子の方を動かして
私の名前の一字を やっと書いてもらった
最初 片仮名の「ア」という字を
やっとの思いで震えながら
でも やはり一枚の紙の文字をいっぱいにする
っていうのは大変なことなんです
なんとかその余白を埋めたいと思って
枕元にあったお見舞いの花を
一輪 描いたのが始まりなんですね

このごろじゃぁ絵をかくことにむちゅうだよ

6月17日
けがして3年
なにかうめえ すしでも
たべようとおもったが休み

神様が たった一度だけ
この腕を動かして下さるとしたら
母の肩をたたかせて もらおう
風に揺れる ぺんぺん草の
実を見ていたら
そんな日が 本当に
来るような気がした
「なずな」

これから先 自分がどうして生きていったらいいか
というのが具体的に見えてきたんですね
いっぱいこういうものを描いて
これがおれの一生の仕事になるかもしれないなと

ブラインドのすき間からさし込む
朝の光の中で
二つのつぼみが 六つに割れた
静かに反り返ってゆく花びらの
神秘な光景を見ていたら
この花を描いてやろう などと
思っていたことを
高慢に感じた
「花に描かせてもらおう」
と思った

小さくて ちょっと目に入らない花なんですけどね
ヘソカズラ

一人では絶対描けないですから
何かみんなで一つのものを
仕上げるっていう気持ちがあるし
描きあがったものを妻が褒めてくれたり
母が驚いてくれたりするっていうのが 何か
次にまた描きたいっていう原動力って
いうんですか それになってくる

1991(平成3)年 富弘美術館 オープン

自分の描いたものをみんなに見てもらえて
たくさんの人が見に来てくれる
「力づけられました」とかね
「お前の詩で励まされたよ」って聞くと
いちばん励まされるのは私なんですよね
花ってやっぱり 秋になると枯れてきますよね
でもきれいなんですよ
虫に食われちゃったり
全部花びらがそろっていないものもあったり
それのほうが何か面白い
いろんな困難があって
きれいな花になっていくと思うんですよ
自分の本当にね 嫌な面も繕わないで
そのまま受け入れて生きていた方が楽だし
それが いちばんいいなって

冬があり 夏があり
昼と夜があり
晴れた日と
雨の日があって
ひとつの花が
咲くように
悲しみも
苦しみもあって
私が私になっていく
「悲しみの意味(サフラン)」

絵も詩も 両方とも何か中途半端というか
ちょっと足りないような
欠けたようなものの方が
一枚の紙に合わさったときにピタっといく
何か弱さというものを
そんなに隠さないで
一つの社会というものを作っていけたら
何かもっといい世界ができるような気がする

あおむけに寝たままで
次から次へと 悪くちをいった
右目の隅で桃の花が
笑いながら咲いていた
「桃の花」

2024年10月23日水曜日

808&「雑巾」&兼題「銀杏散る」

無季句
808(ハチマルハチ)大音量で踊りけり
独自性完成度上ぐ808
ユーミンもホイットニーも808
808創り広めた日本人
808ラテンと宇宙同居せり

■シーズン2(8)「808(やおや)」
初回放送日:2022年12月24日(土) 再放送日:2024年10月4日
第8回は「世界の音楽を変えたジャパニーズマシン 808」。
今回は、音楽家ではなく、数々の名曲を生み出した日本製のリズムマシン
TR-808(てぃーあーるはちまるはち 通称「やおや」)を取り上げます。
1980年に発売された808は、特徴的な電子音が耳に残る、
“一度聴くと癖になる”リズムマシンとして一世を風靡。
マイケル・ジャクソン「Beat It」、
ホイットニー・ヒューストン「I Wanna Dance With Somebody」、
アッシャー「Yeah! feat. Lil’ Jon & Ludacris」、
サイボトロン「Clear」など、ジャンルを横断して
世界中の大ヒット曲にそのサウンドが使われてきました。
今回はその革新的な「音」で世界の音楽シーンに
絶大な影響を与えた「808」をディープに掘り下げます!

今回は、「808」をこよなく愛するラヴァ―がインタビューゲストとして出演。
アフリカ・バンバータやニュー・オーダーを手がけたプロデューサー、
アーサー・ベイカーが「808」の魅力を熱く語る。
さらに、1980年に発売された「808」の開発責任者・菊本忠男さんが
40年以上前の貴重な開発秘話を明かします。
放送は12月24日のクリスマス・イヴ。
「音楽を聴くことが楽しくなる、もっと色々な音楽を知りたくなる」
そんなステキな時間をあなたにプレゼントします!
参照:https://www.nhk.jp/p/ongakukouron/ts/M7W7W1446Z/list/ より

最高に刺激されました。シーズン1から聞きたかった。残念…。
素晴らしい番組でした。感謝を込めて…。

■漢字ふむふむ 雑巾
中国では雑巾は多種多様である 布きれという意味

広辞苑には 雑巾は床板などの汚れを拭きとるための布
布巾は食器類を拭く小さな布 
大布巾は食卓などを拭くのに用いる布 と記されている

日本の掃除文化を振り返ろう‼
江戸時代 掃除に対する意識が変化‼
元々雑巾は着物だった 物を大切に扱った
着物⇨布団・座布団など⇨袋もの・布おむつなど⇨雑巾へと
雑巾の「雑」という字は「ボロ布を集める」という意味
雑は「ボロ布を集めた衣」という意味
誰が当てたのか知りませんけど
「雑」という字を当てて「雑巾」になった
雑多な布 雑巾となった

■ギュッと!四国 家藤正人の俳句道場
兼題「銀杏散る」秋の季語
黄葉した銀杏(いちょう)の葉が落ちること。
銀杏の木は並木などに植えられることも多く、
黄葉する木の中でも最も身近なもののひとつ。
黄金色の葉をいっせいに落とす様は華やかであると同時に、
秋が終わろうとする寂しさも連想させる。

・ギュッと!特選
黄の画材多き文具屋銀杏散る   霧賀内蔵
(イメージの重ね方がうまい 紙と銀杏の葉の質感が近い
 重層感が漂っている 秋の豊かな色彩を生んでいる)

銀杏散る庭に園児の笑顔咲く   怪盗みかん
(笑顔咲くという表現はよくありますが可愛い作品でした)
銀杏散る絨毯阻止の竹ぼうき   ミナトヨーコ
(絨毯は冬の季語だがこの場合例えとなっているので季重なりとは考えなくて良い)
銀杏散るジョギングの吾(われ)そろり行く   しまおか実由季
(説明の一句)
佳作 銀杏散る老犬と踏む散歩道   みどちゃん
(老犬という第三者が出てくるところが味わい深い 2つの音を同時に楽しめる)
秀作 銀杏散る私はただの木になれる   花紋
(大人が持っている童心を歌った句 ほんの少しの寂しさもあるかもしれない。)
微(かす)かに臭う銀杏は靴の裏   大熊克甫
(銀杏とだけ書いた時は銀杏の実となる)
銀杏散る校門駆ける吾遅る   ヘイタのパパ
(動きを表す動詞が3個詠われている 気忙しい バタバタしている印象を受ける
 遅刻と3文字に圧縮することでブラッシュアップ推敲できるかもしれない)
佳作 薪束と本と頭へ散る銀杏   織部なつめ
(謎かけに挑んでいるような一句 二宮金次郎像を読み手は理解することができる)
銀杏散る掃くとちるちる校庭や   古木紫苑
(散るにチャレンジ)
佳作 いてふちるちるちるみちるみちたりる   小笹いのり
(今回の最多散る賞 童話青い鳥に出てくる主人公の兄弟の名前
 幸せを探すお話ですが実は近くにあったのよという一句
 作者にもこんな気付きが合ったのかも?)
秀作 朝倉に金の鳥なる銀杏散る   近江菫花
(与謝野晶子の詩に銀杏を金の鳥と比喩した作品がある。
 その歌を下敷きにしたオナージュなのかもしれません
 作者は青春時代高知の朝倉で過ごしたのかもしれないですね
 人生のキーワードとして銀杏散るがあるのかもしれませんね)
佳作 来世では級友くらい銀杏散る   夏村波瑠
(読み手がそれぞれに想像して楽しむ句 
 ご夫婦での来世の温度感を歌ったのかも…❓)

・正人のもったいない
季重なり 一句の中に靴もの季語は入っている状態
季語は主役のようなものですから多いと誰が主役か分かりづらい
さわやかなフラダンスのよう銀杏散る   双海の夕日
「さわやか」は秋の季語
境内のくしゃみひとつに銀杏散る   服部与四郎
「くしゃみ」は冬の季語
銀杏散る昼寝している猫の上   原島ちび助
「昼寝」は夏の季語
知らずにうっかり使うことがあります うっかり「季重なり」と呼んでいる
たくさんの季語を知ることもまた俳句の世界を楽しむ近道。
ひとつ新しい季語を覚えて得したわ♪の前向き精神でともに楽しんで参りましょう。

参照:https://www.nhk.jp/p/gyuttoshikoku/ts/7MXVZZ52K3/blog/bl/pKyjJXApJB/bp/p1GXYLD9kl/

2024年10月22日火曜日

坊ちゃん&伝説のバンカー大櫃直人

艶やかに欅や紅葉(大藤)薬師堂
群れなした化粧軍団花鶏(あとり)かな
懸命に木の実啄むつぐみかな
鶫(つぐみ)来し絶えぬ食欲眼力よ
鵯(ひよどり)や口とがらせて逃避せり

■10min.ボックス現代文 坊ちゃん(夏目漱石)
親ゆずりの無鉄砲で子供のときから 損ばかりしている。
小学校にいる時分、学校の二階から飛び降りて、
一週間ほど腰を抜かしたことがある。なぜそんなむやみをした、
ときく人があるかもしれぬ。べつだん深い理由でもない。
新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、
いくらいばっても、そこから飛び降りることはできまい、
弱虫やーい、とはやしたからである。人におぶさって帰ってきたとき、
おやじが大きな目をして、二階ぐらいから
飛び降りて腰をぬかす奴があるか と言ったから、
この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。

四国松山に赴任した坊ちゃん
二時間目に白墨を持って 控所を出た時には何だか敵地へ
乗り込むような気がした。教場へ出ると今度の組は前より
大きな奴ばかりである。おれは江戸っ子で華奢に小作りに
出来ているから、どうも高い所へ上がっても押しが利かない。
喧嘩なら相撲取とでもやって見せるが、こんな大僧を四十人も
前へ並べて、ただ一枚の舌をたたいて恐縮させる手際はない。
しかしこんな田舎者に弱身を見せると癖になると思ったから、
なるべき大きな声をして、少々巻き舌で講釈してやった。

新人教師VS生徒たち
「なんでバッタなんか、おれの床の中に入れた」「バッタ何ぞな」
と真先の一人がいった。やに落ち付いていやがる。
この学校じゃ校長ばかりじゃない、
生徒まで曲がりくねった言葉を使うんだろう。
おれはバッタの一つを生徒に見せて「バッタたこれだ、
大きなずう体をして、バッタを知らないた、何の事だ」というと、
一番左の方にいた顔の丸い奴が「そりゃ、イナゴぞな、もし」
と生意気におれを遣り込めた。

教頭のなにがしというのがいた。これは文学士だそうだ。
この暑いのにフランネルのシャツを着ている。
文学士だけにご苦労千万な服装(なり)をしたもんだ。
しかもそれが赤シャツだから人を馬鹿にしている。

おれと同じ数学の教師に堀田というのがいた。
これは逞しい毬栗(いがぐり)坊主で、
叡山の悪僧というべき面構である。
やあ君が新任の人か、ちと遊びに来給え
アハハハといった。何がアハハハだ。
この坊主に山嵐という渾名(あだな)をつけてやった。

画学の教師は全く芸人風だ。べらべらした透綾(すきや)の羽織を着て、
扇子をぱちつかせて、御国はどちらでげす、え?東京?そりゃ嬉しい、
お仲間ができて… こんなのが江戸っ子なら江戸には
生まれたくないもんだと心中に考えた。

赤シャツと山嵐との戦いに巻き込まれる
おれはいきなり袂(たもと)へ手を入れて、玉子を二つ取り出して、
やっといいながら、野だの面へたたき付けた。玉子がぐちゃりと
割れて鼻の先から黄身がだらだら流れだした。野だはよっぽど
仰天した者と見えて、わっと言いながら、
尻餅をついて、助けてくれといった。
「だまれ」と山嵐は拳骨(げんこつ)を食わした。
赤シャツはよろよろしたが、「これは乱暴だ、狼藉(ろうぜき)である。
理非を弁じないで腕力に訴えるのは無法だ」
「無法で沢山だ」とまたぽかりと撲(なぐ)る。
「貴様のような好者はなぐらなくっちゃ、答えないんだ」
とぱかぽかなぐる。

船が岸を去れば去るほどいい心持ちがした。
神戸から東京まで直行で新橋に着いた時は、
漸く娑婆へ出たような気がした。山嵐とは
すぐ分かれたきり今日まで逢う機会がない。

■プロフェッショナルの仕事の流儀 
伝説のバンカー 最前線の攻防 
スタートアップ育成の陰の立役者 銀行員 大櫃直人

伝説のバンカーと呼ばれる銀行員がいる。
かつてメガバンクの常務を務めながら、
あえて現場に立ち、誰よりも営業に駆け回る。
実績のない若い企業にも融資し、
伴走し、“リアル半沢直樹”と慕われる。
トップ営業マンとして数字を追いかけた20代、
1つの失敗をきっかけに出世レースから脱落した。
50代にして見つけたバンカーとして生きる意味。
これまで堅く閉ざされてきた、経済の中枢。
バンカーの正義をかけた戦い。

参照:https://www.nhk.jp/p/professional/ts/8X88ZVMGV5/episode/te/JM5M5MQ41Q/

2024年10月21日月曜日

兼題「栗」&テーマ「迷い」

かけがえのない音を紡ぎて秋思
音楽に正座で向かう星月夜
華やかな言葉遣いや秋麗
型にはめるな赴くままに花野
蚯蚓(みみず)鳴く時を超えたる音そこに

■NHK俳句 兼題「栗」
年間テーマ「季語を器に盛る」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 夢枕獏 司会 柴田英嗣

おおかみに螢(ほたる)が一つ付いていた   金子兜太
この俳句に感銘を受けて夢枕獏氏は俳句をはじめられた
俳句ってアニミズム(自然界の全ての事物には霊が宿るという信仰)
かな?ということに気付かれやってみたいと思われたとか…。
ファンタジーとかSFを五・七・五の世界に
季語ありで落とし込もうとしたことが今やっていることなんです
夏井いつきさんはボクが釣りの師匠 夏井さんがボクの俳句の師匠
夏井さんが選者をやっている雑誌の俳句コーナーがあって
自分の名前を隠して投句 拾って貰ったら世間に「俳句やっている」と
言ってもいいかな❓と思っていた 
1年かかったけれど選んでいただきました その時の句は
湯豆腐を虚数のような顔で食う   夢枕獏
虚数ってi=√-1 かけてもかけてもマイナスになる ということ
陶句郎先生
有るようで無いようで有るのが虚数
湯豆腐も味が「有るようで無いようで有る」
この句は面白いと思った 虚数を持ってきたか!
さすがに素晴らしい

・器に季語を盛る 兼題「栗」
栗は縄文時代から植林されていた 食料として栗を食べていた
古くから愛されてきた食べ物 材料
栗にはたくさんの傍題(子季語)がある

栗の傍題(子季語) 山栗、柴栗、丹波栗、毬栗、落栗、焼栗、
ゆで栗、栗山、栗林、栗拾、一つ栗、三つ栗、柴栗、ささ栗、虚栗など。
「笑栗(ゑみぐり)」は、毬が開いた状態を微笑みになぞらえた言い方。
「虚栗(みなしぐり)」は皮ばかりで中に実のない栗。

栗の俳句
栗山に在れば落日慌(あわただ)し   高浜虚子
(自分の心が慌ただしい 「慌」ただしい「忄」は「心」
 「栗山」ですから暗くなると毬栗(いがぐり)の位置が見えない
 足に刺さっちゃうかも 陽が落ちてきて「帰らなきゃ」
 栗山にいるので心細さもある のではないか?)

・今回の陶句郎先生の作品
木の葉皿 木の葉のモチーフが「栗の葉」
色合いも美しい
器は料理に魔法をかける道具
いい魔法がかかっていると夢枕獏氏

・特選六句発表 兼題「栗」
毬栗や父のすべてに抗ひて   白神公(しらがたかし)
(二物配合(取り合わせ)記憶を引き出した季語 心に響く句)
「俺なんて」なんて言うなよ虚(みなし)栗
(自己否定のかっこ書き 虚栗が絶妙な空間を与えている 
 虚栗は大樹になる可能性も秘めている)
長ぐつの色のにぎやか栗ひろい   荒田苔石(たいせき)
(中七が効いた句 長靴で栗を剥くことを教えてくれている
 長靴だと安全だから 栗拾い体験に出かける前に
 色とりどりの長靴に履き変えて栗拾い体験をした)
拾ふたび見せに来る子や栗拾ひ   塚本治彦
(中七の切れ字「や」が効いている 
 最後の季語で詠み手の景色が広がる 
 その微笑ましさがこの句の良さ)
艶やかに落ちたる栗や草の中   田中スミ
(客観写生の句 物をしっかり見てその儘を表現している
 「 艶やかに」風を感じる 「や」で映像を切り替えている
 草に落ちた栗の音が聞こえる 格調があって映像が見える句)
サッカー部辞めて毬栗蹴っている   星子恵巳(ほしこめぐみ)
(何らかの事情で辞めたサッカー部 落ちていた毬栗でドリブルをしている
 まだサッカーのことが忘れられないんだという母親目線 情のある一句)

・特選三席
一席 虚栗誰もが褒めてもらいたい   神谷車林(かみやしゃりん)
(虚栗も種子です いつか大きくなる可能性がある 
 内容と虚栗の響き合いが飛躍している 
 書いた本人が一番褒めてもらいたいのでは?)
二席 笑栗や絵手紙に塗る風の色   山田由美子
(季重なり 風の色は色なき風の傍題 木についている笑栗も
 いつか落ちるだろうなぁと思いつつ風にあたりながら絵具をといている
 「これが風の色か」と連想を掻き立てる一句)
三席 笑栗(えみぐり)や縄文人の歯と歯茎   前島康樹(こうき)
(栗を食べ出した頃より虫歯が出てきた 栗と歯の見た目が似ている
 縄文人は奥歯が強い 現代人よりも顎の骨格もしっかりしている
 生の栗を歯で剥いて食べたのではないか?縄文人へ思いを馳せて読める)

・俳句やろうぜ 若手俳人探査隊長 黒岩徳将
中矢温(のどか)さん(25歳)
ポルトガル語が公用語のブラジル留学
ブラジルの俳句
儚いプレアデス マンゴーの高い木に眠る 大食の蝙蝠(こうもり)が

プレアデス蝙蝠高い木に登る(訳 中矢温)

クロイワ 推しの一句
はろーわーるど白木蓮なるほど   中矢温
(ことば遊びの俳句)

・夢枕獏の一句
なまいきな重さ手にあり栗拾う   夢枕獏
柴栗の重さを「なまいきな重さ」と捉えた そこが面白い
俳句は省略の文学 余分な言葉もある
手に持っているから栗は手にある「手にあり」がいらない
添削
拾いたる栗なまいきな重さかな

・柴田の歩み
褒めてもらおう

■NHK短歌 テーマ「迷い」
年間テーマ 「❝ものがたり❞の深みへ」
選者 大森静佳 ゲスト 川上未映子 司会 尾崎世界観

表現の機微と結びつくテーマ

大といふ字を百あまり/砂に書き/死ぬことをやめて帰り来(きた)れり
石川啄木

・歌に❝ものがたり❞あり
入選九首 テーマ「迷い」
もう好きじゃないって言えない口の中鋭くなってゆくパインアメ
毛糸
三席 私 迷ってもぼくのなかには祖母がいるイチゴ大福食べれば平気
佐々木泰三
迷ったら亡き妻の手を誘い出し指さす方へよーしわかった
青木安生(やすお)
好物をそれしか知らぬゆえ父に迷わず供えるカルピスソーダ
小野小乃々(おののこのの)
 新しい街に越したら新しい道できちんと迷子になれる
青山祐己(ゆうき)
二席 踏み外したい踏み外したいと丁寧に下りていくときの正しい感じ
植垣颯季(そうき)
「ごめんね」と「ごめん」で迷う一ヶ月笑ったままの君のスタンプ
黒川かおる
一席 今だけはどれにしようか迷う側リクスーのままドーナツを買う
梅木袱紗(ふくさ)
(常に選ばれる側にいたと思っていたけど選ぶ側の時もあったと気づいた時の詩)
迷ったら自然な模様になるようにマークシートの答えを選ぶ
長澤ひかる

・ものがたりの深みへ
夏物語 川上未映子著(2019年刊行) 
夏子 38歳 独身 「自分の子どもに会いたい」
逢沢潤 精子提供によって生を受ける
善百合子 逢沢潤の恋人 「出産は親の身勝手な賭け」

父と卵 川上未映子著 の続編

大森静佳の好きなシーン
夏子が逢沢と観覧車に乗るシーン
細やかな情景描写の積み上げ 
静かに夏子の心が波打っているのが解かる
特に好きな一文⇩
「よくみると窓の表面には細やかな白い傷が無数についていて、
それでかすかに靄がかかっているようにみえた。」
簡単に視界が晴れるわけではなく ずっと靄がかかっている
窓の描写を通じて夏子の心の中が表現されている

大森静佳
川上未映子さんの文には体幹が刺激される
「夏の薄暮を押しあげてゆくように」
「何艘かの船が海面に指でなぞるような小さな白い跡をつけながら」
読んでいるこちらの身体感覚が刺激されて 
夏子と一緒にゴンドラに乗って眺めているような感覚がしてくる

川上未映子
世界の側にあるものを比喩で一番近い側を取って
ここでしかできない形で記録するということを当時考えていた
言葉にするって祈りみたいなところがある
私たちが触れることができるのは比喩 だからかもしれない
全部比喩の交換 音も色も文字も全部比喩
いろんな比喩で何かに近づこうとしている

尾崎世界観
分からないから安心して行ける ぶつかれる 本気出せる

生きて死ぬこの漂流のひとときをゴンドラの底に溜まりゆく影
大森静佳
(誰もが悩みや迷いを漂流しているということを表現した
 影が底に溜まっている 底に時間が溜まっているImage)

川上未映子
生きているということを歌にしたらこの歌になるだろう

大森静佳
動詞に気をつけている この歌だと「溜まりゆく」
流れている時間とかリアリティを出せるのは動詞や形容動詞

・言葉のバトン
大気の奏でる曲のような娘 
青森県立八戸西高等学校 奥銀次郎

詩奏(うたかなで)行く先々に幸せを
秋田県立大曲農業高校 太田分校 山方萌佳
本当に言いたい言葉分からずに言いたいことを待ち続けている
山方萌佳

2024年10月20日日曜日

100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(2)

丸すぎる林檎手に取り星の降る
紅玉や色には意味があると言う
螻蛄(けら)鳴くや酢橘(すだち)の皮に栄養が
手に力酢橘絞りて聞く香り
酢橘狩り山では恥の採り残し

■100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(2)「道のり」を楽しむ
福岡伸一 伊集院光 阿部みちこ

動物の言葉が話せるドリトル先生と
助手のトミー・スタビングは航海に出ることを決意します

シュー・マグ ジョー 犬ジップ アヒルダブダブ 
豚ガブガブ オウムポリネシア と同居
第一作目「ドリトル先生アフリカゆき」の
登場人物たちがドリトル先生家に結集
猿チーチー バンポ
航海に出るには船乗りが必要 
船員を探す2人はある人物を訪ねることにー
世捨て人のリカ

「よろしい。では、私が昨日の夕食に何を食べたか、
この犬に訊いていただきましょう。この犬は食事中、
最初から最後まで私と一緒にいて、
主人のことをしっかり見ていたのです」
ドリトル先生は身ぶりや声で、裁判長の犬に話しかけました。
そうして、そのまま、ずいぶん長いこと話をしていました。
やがてドリトル先生がクスクス笑いだしました。(中略)
「まだ終わらないのかね?」裁判長がドリトル先生に尋ねました。
「私が夕食に何を食べたか訊くだけなら、
こんなに時間がかかるはずがない」
「ああ、いや、閣下」とドリトル先生は言いました。
「食事については、だいぶまえに聞きました。(中略)
あばら付きの羊肉とベークド・ポテトをふたつ、
クルミのピクルスひとかけに、エール酒を一杯と言っています」
ユーステス・ポーシャン・コンクリー裁判長は
唇まで真っ青になりました。(中略)
「それに、夕食のあとに」とドリトル先生が続けました。
「懸賞獲得試合を見にいって、その後、真夜中までカード賭博に
興じてから、鼻歌をうたいながら家に帰りました。(中略)」
「もうよろしい」裁判長がドリトル先生のことばを遮りました。

「法廷劇」が語るもの
立場の逆転 裁判長の鼻を明かした
無罪放免になったルカは妻と暮らせるように
なったので船員にすることを諦めた
「seek and find(探して見つける)」の定型になっていない
そこまでに行くまでの色々なエピソードが物語のコアになっている
本来の物語の豊かさがここにある
「何も起こらなかった日に意味がない」ということではない
ゴールではなくプロセス

残る船員問題… ムラサキゴクラクチョウ ミランダ がやってくる
偉大なる博物学者ロング・アローがブラジル沖あたりに浮かぶ
クサモル島での目撃を最後に消息を絶った
ベン・ブッチャー 自分を売り込んできた人
マシュー・マグ 行きたがるがリューマチ持ちで諦めた

ドリトル先生とスタビンズくんと犬のジップとオウムのポリネシアと
猿のチーチーとバンポが選ばれる

出航はしたものの密航者が現れる 
マシューマグ 旅への誘惑に勝てず船に乗り込む 
リューマチが悪化し発見される

新天地を求めて乗り込んだルカと船酔いの妻が
寝台の下から発見される

イギリスの南西部のペンザンスで降ろして全財産を渡す
でも もうひとり一番ひどい密航者がいたんです ベン・ブッチャー
積んでおいた塩漬けの肉のほとんどを食べ尽くしてしまっていた
予期せぬ密航者たち
お金を渡していたのは泥とる先生の少年性の現れ
世間の面倒なことから自由でいられるというのが少年のよいところ
お金に無頓着で身軽な生き方
子供時代が持っている一番良いところを大人になっても体現できる人
ペンザンスで彼らを下ろしている
パドルビーは架空だがペンザンスは実在する町
ブリストルから出発
福岡先生も「航海記」をしていた。
ブリストルには王女橋(Princess Bridge)
パドルビーには大様橋(Kingsbridge)

本を読み終えた時はゴールではなく そこから新たな旅が始まっている

カパブランカ諸島
偶然、ドン・エンリケと出会う
「もちろん、明日は闘牛を見にいかれるんでしょうな」
ドン・エンリケはにこやかにドリトル先生に尋ねました。
「とんでもない」とドリトル先生はきっぱり言いました。
「闘牛なんて大嫌いです。
残酷で卑劣極まりない見世物ですからね(中略)
牛が疲れ果てて、ふらふらになってようやく、あなたがたの
勇敢なマタドールは牛を殺しに出てくるのですから」
頭から湯気が出そうなほど怒っている。ドン・エンリケは、
今にもドリトル先生に殴りかかりそうでした。(中略)
「もしわたしが(中略)怒り狂った牛を巧みに操ったら、
カパブランカ諸島では、二度と闘牛を行なわないと約束して
ください。あなたの目の黒いうちは闘牛を廃止すると。(中略)
(中略)「いいとも」とドン・エンリケは言いました。
客席で女の人がパニックを起こして、(中略)叫びました。
「やめさせて!牛を止めて!こんなに勇敢な人を死なせないで。
あのイギリス人はこの世で一番りっぱなマタドールよ。(中略)」
ところが、次の瞬間には、ドリトル先生は獰猛(どうもう)な
牛たちから逃れていました。五頭を次々に捕まえては、
首をぐいとひねって地面に投げつけます。(中略)
ドリトル先生は客席の女の人たちに最後にもう一度
お辞儀をして、ポケットから葉巻を取り出すと、
それに火をつけて、のんびりと闘牛場を後にしました。

前代未聞の闘牛

ポリネシアたちはドン・エンリケらに賭けを提案し
食料調達のための大金を稼ぐことに成功した

1991年 スペイン領・カナリア諸島で禁止
2012年 カタルーニャ自治州で闘牛を禁止する条例を可決

ドリトル先生の価値観に時代が追い付いてきた
食べるという行為については命が連続していくために仕方がないが
闘牛のような娯楽のためだけに牛が殺められることは反対
命に対する温かいまなざし
人間のために酷使されることに対して批判的な面を持っていて
それをこの物語におもしろく入れ込んだ
「ドリトル先生」シリーズ挿絵はロフティング自身が描いたもの
動物たち一つ一つは弱い力だが相補的に
より合わさって大きな屋根がかかる
徹底的にオールマイティーなキャラクターが出てこない
ダメダメなところもあるがどこかで役に立つ
多様性があると言える 古くても現代的な問いかけ・読みどころがある

現在「ドリトル先生」シリーズは欧米ではほとんど読まれていない
0.5倍速で読む
この物語は差別意識があって記述されたものではない。
この時代の背景を知って読むことが大切。
この物語と確り付き合い復権すべきだと思う。と福岡伸一先生。

2024年10月19日土曜日

絆&藤原惟規辞世の句&「椿の実」&令和相聞歌&堺正章の言葉

許容せず視線そらして秋闊歩
秋深し記憶と時間反比例
秋時雨心象映す風景よ
壊滅的運動センスそぞろ寒
秋の声どこにも居ますさがなもの

■漢字ふむふむ 絆と書かれた呪いの手紙
日本では「絆」中国語では「绊」漢字が違います
日本での絆は助け合い 人と人との離れがたい結びつき
中国での绊は転ばせる 罠にはめる という意味らしい

日本での絆が初めて登場したのは「平家物語」
平維盛(たいらのこれもり)が妻と子を残し家を出ていこうとした
妻子が離れたくないと泣くのであった

この場面での絆は夫婦や親子などの間の情のこと
人と人との断つことができない繋がり
離れがたい深い結びつきという意味だけが残った
日本人の人と人との繋がりを大切にする考え方が読み取れる

絆は中国では綱(縛りつける)の意味が強かったが
日本では断つことのできない人情へと変わっていった

■光る君へ(39)とだえぬ絆 より
逢坂の関うち超ゆるほどもなく今朝は都の人ぞ悲しき
藤原惟規(紫式部の弟のぶのり) 辞世の句

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「椿の実」

椿と言えば立派な花の季語でありますがその実も季語になっています
「椿の実」は夏になると緑色 鮮やかな綺麗な緑色になりますが
それが秋になっていくにしたがって 段々赤っぽい色に変わり
もうすっかり木の皮のような色になって実がパカッと裂け
中から種が取れるわけです この種からは椿油が取れるわけです
椿油は食用になったり髪につける油にしたりと
昔から様々な用途で使われてきました
「椿の実」秋の季語であることを考えるとその硬くなった状態
種が見えている状態 みたいなところに季語の本意
肝心要の部分があるのかもしれませんね

■夏井いつき俳句チャンネル
【作品募集!】第6回令和相聞歌のおしらせ
「恋」をテーマに短文作品を募集!
締切:2024年11月11日(月)
ホームページ:https://www.reiwasoumonka.com/

第5回(令和5年度)テーマ「恋」
最優秀賞
くちびるの奥に歯バレンタインの日   稲畑とりこ

第4回(令和4年度)テーマ「恋」
最優秀賞
あるだけの好きを詰め込む雪つぶて   クラウド坂の上

第3回(令和3年度)テーマ「恋」
最優秀賞
軽率になんの取り柄もないと言う君はきれいに僕の名を書く   ツナ好

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん
~昭和の大先輩とおかしな2人~#25
昭和の大先輩 堺正章の言葉
「上善如水 堺正章」
女優になられたお嬢さまの事をお話しされた時の
嬉しそうな笑顔がたまらなく素敵でした。



2024年10月18日金曜日

100点満点で一句

間違いを認める勇気秋の空
押し付けるほどの価値観秋の声
天高し持って生まれた美感あり
星月夜個性育み歩みをり
星流る異なる個性持って生く

■プレバト纏め 2014年10月17日
100点満点で一句

特別永世名人 梅沢富美男のお手本
百点に二重線あり豊の秋
(ありと念を押すほどの事ではない 自分に酔った?
 バランスとして季語「豊の秋」が添え物になった
 豊の秋で十分なのにさらに闌けて豊の秋が盛りになりました
 100点だけでも十分なのに二重線まで引いてくれた
 こうすると言葉の質量のバランスが整う 
 特別永世名人ですからこれくらいまでは整えて欲しい)
豊の秋闌(た)け百点に二重線

こがけんの昇格試験
枝豆を買うダイハード放映日
(取り合わせでワクワクした行動が見えてくる
 季語=枝豆という庶民的なもの 取り合わせの妙というもの)

1位 望月理恵
山粧(よそお)う三面鏡に百の母
(山粧う=秋の季語 山々が紅葉で色づく様子
 三面鏡に百の母 とても良い詩がある
 山粧うでは着飾ったお母さんに限定されがち
 喜怒哀楽が見えてくる可能性があるのは星流る 星月夜)

2位 ニシダ(ラランド)
数式にエナドリの染み降り月
添削(降り月=秋の季語 満月が過ぎ次第に欠けていく月のこと
   降り月に上手くいっていない空気感 焦っている時間の動き
  欠けていく月に託そうとした 季語が近い 星流るだとちょうどいい)
数式にエナドリの染み星流る

3位 薮宏太
誤字原点泣きべそ帰路に色葉散る
添削(色葉散る=秋の季語 紅葉しながら散りゆく葉のこと
   散文的 詩的な情景に乏しい 季語が近過ぎる
   季語のイメージと取り合わせた言葉のイメージが似通っている
   鰯雲 これぐらいの距離にすると俳句としては1ランク上がる)
誤字原点泣きべそ帰路鰯雲

4位 青山祐子
焼けた顔赤土(コート)で歓喜秋実る
添削(秋高し=季語 秋になると空気が澄んで空が高く感じられる)
赤土のコート歓喜高し

5位 笠松将
まつりの後満点の月懐く風
添削(まつり=夏の季語 月=秋の季語 最後に風がスーッと吹いてくる)
満点の月や祭の後

2024年10月17日木曜日

あの本、読みました?赤と青のガウン・百年の孤独

秋の空モンゴルを行く踊る阿保
モンゴルを響くぞめきや天高し
命への畏敬の念よ月光よ
広重を模したゴッホや秋麗
星月夜救い求めてパリへ行く

■あの本、読みました?
2024年上半期文庫本売上ランキング!赤と青のガウン・百年の孤独は?
鈴木保奈美 角谷暁子 小川哲 國分功一郎 中村悠志

中村悠志
「赤と青のガウン」文庫化された理由は❓
彬子女王殿下が街に飛び出した
皇族の日常が描かれている

留学当初、いちばん辛いと感じたのは、
いつも一緒だった側衛がいなくなったことだった。
日本から送ってくれた側衛が帰り、
オックスフォードの寮で一人になったときの
さびしさは言葉にしがたいものでだった。
それまでは、道がわからなかったら
聞けばよかった。一人で映画を見にいっても
美術館に行っても、感想を共有できる人がいた。
一般の方には考えられないことだと思うけれど、
生まれて初めて一人で街を歩いたのは
日本ではなくオックスフォードだった。
お店のショーウィンドウで気になるものを
みつけ、後ろを振り返って誰もいないことに
気づいたときの、なんだか穴がぽっかり
あいてしまったような気持ちは
いまでもよく覚えている。

翻訳家 柴田元幸からみた「百年の孤独」
著者曰く 文学は人をからかうための最良の道具である

菊池亮 友田とん
「百年の孤独」とは?
ガブリエル・ガルシア=マルケス著 コロンビア出身の作家
1967年にアルゼンチンのスダメリカナ社から刊行
日本では1972年新潮社から出版
50年間を経て 5000万部売り上げている
阿部公房 大江健三郎 中上健次などが影響を受けたと言われている
「文庫化したら世界が滅びる?」その真意は?
50年以上文庫化されなかっら理由
文庫化してみると想像以上に売り上げ一日一万部が売れた
「百年の孤独」のあらすじ

「メルキアデスは死んだよ」。この知らせに呆然
となったホセ・アルカディオ・プエンディアは、
深い悲しみに耐えるためにしばらく
身じろぎもしなかったが、そのうちに群衆は
ほかの仕掛けに引き寄せられて散っていき、
アルメニア生まれの寡黙なジプシーの
溶けてたまったものも完全に蒸発してしまった。
(中略)
そして目のくらむような喜びのなかで、
新来の客が何者であるかを知った。
それは、メルキアデスだった。
マコンドの人びとが記憶の回復を祈っている
あいだには、ホセ・アルカディオ・ブエンディアと
メルキアデスは旧交を暖めあった。

「百年の孤独」を代わりに読む 友田トン早川書房

齋藤孝
毎晩この本を10ページ読んで、南米の魔法に酔いしれよ!
西加奈子
ミクロとマクロを往来する、「物語」にしかなしえない奇跡。
小川哲
想像力の限界を超えた作品。この本がなければ、
ぼく自身が小説を書けなかった。

「百年の孤独」と「地図と拳」
「百年の孤独」が難解と言われる理由

彼女はふたたび土を口にするようになった。
最初はほんの好奇心から、また、嫌な味を
思いだすのが誘惑にかつ最良の手段だと
信じて、それを口にした。
事実、口にふくんだ土の味は
とても我慢のできるものではなかった。
しかし、ますますつのる欲望に負けて、
彼女は土を食べつづけた。
少しずつ昔のような食欲を取り戻していった。

「百年の孤独」で描かれる奇想天外なエピソード

大黄を混ぜたオレンジの絞り汁を
土鍋に入れて、ひと晩たっぷり夜露にあて、
翌朝の食事前に飲ませることにした。
これが土を食べる悪い癖によくきく療法だと
誰かに教えられたわけではなかったが、
からっぽの胃になにか苦いものを入れてやれば、
肝臓の働きが活潑になるだろうと考えたのだ。

あらゆるものに、変身したレメディオスの姿を
認めた。午後二時の睡魔をさそう風の中の
レメディオス、薔薇の穏やかな息遣いに
つつまれたレメディオス、蛾の浮いた静かな
水時計のなかのレメディオス、明け方のパンの
匂いにただようレメディオス。
いたるところにレメディオスがいた。

読みたいのに読み切れない「百年の孤独」を読み切る方法

新潮文庫 ガブリエル・ガルシア=マルケス
百年の孤独 読み解き支援きっと
池澤夏樹 監修
インターネットからダウンロードできる

ブエンディア家家系図

ドリフターズのコントだと思って読んで欲しい
お母さんの出てきた時は注視する 迷子になりにくい

保奈美さんへのお薦めの本
族長の秋 他6篇 
ガブリエル・ガルシア=マルケス著 鼓直訳 木村栞訳 新潮社刊
悪行を繰り返す独裁者の哀しい素顔を描いた物語

2024年10月16日水曜日

稚児俳句「レベチ」&戦争と平和の詩 茨木のり子と原民喜

無我の手が作る世界や天高し
カシオペア力づくでも破る自我
圧倒的白と黒白粉花(おしろいばな)
枯れゆく体沸き立つ命野分
ゴッホめく志功の写生秋晴れる

■ワルイコあつまれ(102) 稚児俳句
高柳克弘 石原良純 松尾葉翔

今回の稚児 レベチ「レベルがちがう」の略
レベチはすごく現代的な言葉 
俳句は古い言葉づかいとどう折り合いをつけるかがむずかしい

模試レベチ色なき風の中帰る   髙柳克弘
(色なき風は秋の季語 秋に吹く風のこと
 さびしさや憂いの感情がこめられた季語
 色なき風は古い季語 レベチは現代的な季語
 この事を俳句では「二物衝撃」と言う
 二物衝撃とは異質な言葉の組み合わせ 
 そこから生まれる味わいを楽しみテクニック)

松茸を大人買いする俺レベチ   石原良純
(松茸は秋の季語 個性が出ている 豪快な人柄
 全体的にわかりやすすぎる 添削ポイント
 読者が想像できる余白をつくる)
添削 松茸をレベチに積みしカートかな
(間接的に表現 松茸をたくさん買える俺はすごい)
松茸を天ぷらにする俺レベチ   石原良純

すきっ腹渋柿甘柿レベチ柿   松尾葉翔
(柿が秋の季語 季語を3つ入れるのはやりすぎ
 添削ポイント 同じ季語は入れても2つまで)
柿日和ひとつレベチの甘さなり
(柿日和は秋の季語 柿がたくさん実るころの晴れた日
 ポイント 原因と結果をはっきりさせずに余白を残す)

今回の最後を松尾葉翔先生に五七五でしめて貰いました
松茸を今年は食べるぜ本気だよ   松尾葉翔

■10min.ボックス 現代文
・戦争と平和の詩 茨木のり子
わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで 
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った

・「わたしが一番きれいだったとき」
わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈物を捧げてはくれなかった
男たちは拳手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残し皆発っていった

わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで 
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った

わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた

わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
私はとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

だから決めたできれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのようにね

・戦争と平和の詩 原民喜(たみき)
アノ日 トツゼン
空ニ マヒアガツタ
竜巻ノナカノ火箭(カセン)
ミドリイロノ空ニ樹はトビチツタ

・原爆小景
彼にとって、一つの生涯は既に終わったといつてよかつた。
妻の臨終を見た彼には自分の臨終をも同時に
見とどけたやうなものだつた。
小説「美しき死の岸に」より

・「コレガ人間ナノデス」
コレガ人間ナノデス
原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ
肉体ガ恐ロシク膨張シ
男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル
コレガ コレガ人間ナノデス
人間ノ顔ナノデス

・「焼ケタ樹木ハ」
焼ケタ樹木ハ マダ
マダ痙攣ノアトヲトドメ
空ヲ ヒツカカウトシテヰル
アノ日 トツゼン
空ニ マヒアガツタ
竜巻ノナカノ火箭(カセン)
ミドリイロノ空ニ樹ハトビチツタ

・「鎮魂歌」より
自分のために生きるな、
死んだ人たちの嘆きの
ためにだけ生きよ

・「永遠のみどり」
ヒロシマのデルタに
若葉うづまけ
死と焔(ほのほ)の記憶に
よき祈よ こもれ
とはのみどりを
とはのみどりを
ヒロシマのデルタに
青葉したたれ

2024年10月15日火曜日

100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(1)

(三縄地区漆川線)ボンネットバス秘境の秋をラストラン
秋の三縄乗り合いタクシー始まれり
顔隠す姫様カット秋の声
秋渇き幾度も器舐める犬
星明り心静かに定まれり

■100分de名著 
ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(1)ドリトル先生のフェアネス
ヒュー・ロフティング(1886~1947)
福岡伸一(生物学者) 伊集院光 阿部みちこ

いよいよ、私がこの目で見て、偉大なるドリトル先生と
ともに経験したことを記すときがやってきました。
(中略)
もちろん、今、私はずいぶん歳を取ったので、
若いときほど記憶は定かではありません。
けれど、おや、あれは どうだったかな?と
よく思いだせないときには かならず、
オウムのポリネシアに尋ねることにしています。
(中略)
まあ、それはともかく、そろそろ始めましょう。

ドリトル先生の異常なる持ち味
普遍性を持っている。
個別性 その人だけのために書かれた物語のように読める。 

水辺の町 パドリビー
「その人は獣医なの?」
「いいや」と貝取り名人のジョーは答えました。
「獣医じゃないぞ。ドリトル先生はハクブツ学者だ」
「ハクブツ学者?」
「ハクブツ学者とはな」
ジョーが眼鏡をはずして、パイプに煙草を詰めながら言いました。
「動物のことも、蝶のことも、植物のことも、
鉱物のことも、なんだって知っている 学者さんだ。(中略)」

私は大差のお屋敷を探しあてて、玄関のベルを鳴らしました。
大佐がドアを開けて、真っ赤な顔を突きだしたと思ったら
「配達人のぶんざいで表から訪ねてくるとは何事だ。
裏口へまわれ!」と言ってドアをピシャリと閉めました。
「ご、ごめんなさい」と私は言いました。
「下を向いてたから、あなたが来るのが見えなかったんです」
驚いたことに、小柄な男の人はぶつかった私を
怒鳴りつけるのではなく笑いだしました。(中略)
「いや、きみも不注意だったが、わたしも不注意だった。
 わたしも下を向いていたんだよ。(中略)
 ひとまずわたしの家に来て、体や服を乾かしなさい。
 こんな大雨はそう長くは続かないはずだからね」
それがドリトル先生でした。

ドリトル先生との出会い
舞台は19世紀前半のイギリス(パドルビーは架空の町)
登場人物 ドリトル先生 スタビング マシュー・マグ ジョー
ドリトル先生 ジェントリ(ジェントルマンの語源) 中流階級の上
人間の医師だったが現在はやめて 小太りで脱力系の人と思われているが
貧富の差というものを意に介さず生きとし生けるものすべてに公平に
眼差しを向けているフェアネスを具現化している人物として登場する
ジョー ドリトル先生は博物学者だ
マシュー・マグ ドリトル先生は動物の言葉を話す

ダブダブ(真っ白なアヒル) この家の家政婦

「航海へ持っていったのは その鞄だけですか❓」
「そうだよ」
ドリトル先生が紐をほどきながら言いました。
「旅のたくさんの荷物など本当は必要ない。
 そんなものはかえって邪魔になるだけだよ。人の一生は短い。
 荷物なんかにわずらわされているひまなどない。
 いや、実際、人生に荷物など必要ないんだよ、スタビンズくん。
 はて、あのソーセージはどこにしまったかな?」
「さあ、行こう」とドリトル先生は言いました。
「雨もやんだようだ」
外に出るとあたりはふたたび明るくなって、
暮れゆく空が夕日で真っ赤に染まっていました。

ガブガブ(豚) ジップ(犬)

ごくごく普通にソーセージ食べるのすごくないですか?
食というのは「命と命のつながり」
「好きなものは好き」と生きることを肯定的に扱っているのが
ドリトル先生のフェアネス

ドリトル先生のフェアネス
「スタビンズくん」と名字で呼ぶ
対等で子ども扱いしない
ドリトル先生の階級の人が靴屋さんの家にあがったり
交流したりすることは 当時の階級社会ではあり得なかった
ドリトル先生はまったく躊躇なくフルートの共演をして
分け隔てなく付き合う

ポリネシア(オウム)

「(中略)あなたは注意深い方ですか❓つまり、
 いろいろなことによく気がつくかってことです。
 そう、たとえば、リンゴの木に二羽の雄のムクドリが
 とまっていたとして、それを一度よく見ただけで、
 次の日、またその二羽を見たら、どっちがどっちかいえますか?(中略)
 それが観察力っていうものですよ。
 鳥や動物の些細な特徴に気づくかどうか。(中略)
 わかってると思うけど、動物は舌を使って話すだけじゃないのです。
 舌の代わりに、息や、尻尾や、脚なんかも使うのです。(中略)」

「いや、それはどうかな。たしかに、読み書きができるのは便利だ。
 といっても博物学者ならみんなできるとは限らない。
 たしかに、今、世間の注目を浴びている若い学者の
 チャールズ・ダーウィンは、
 ケンブリッジ大学を出て読み書きは達者だ。(中略)
 そう言った者がいるいっぽうで、この世で最も偉大な
 博物学者は自分の名前の書き方も、アルファベッドの
 読み方も知らないんだよ」
「それは誰ですか?」と私は尋ねました。
「(中略)その名はロング・アロー、(中略)それはともかく、
 もう一度確かめさせてくれ、スタビンズくん、
 きみはほんとうに博物学者になりたいんだね?」
「はい」と私は答えました。
「もう決めています」

「a good noticer」注意深い観察者になれ
自然というのは隠れることを好む
まず自分の動きを止めて目を凝らしたり耳をすませたり
「a good noticer」にならないと自然が語っていることがわからない

ハクブツ学者とはナチュラリスト 自然界のあらゆる生命に
耳を傾けて ありのままに自然の多様性を寿(ことほ)ぐ人
生物学者の理想形がここには描かれている

「斜めの関係」の大人
垂直の関係 抑圧的なもの ドリトル先生は命じたり禁じたりしない
学校社会でも家庭でもないところにいる 何かを教えてくれる大人

黒沢良彦(1921-2001)
日本の昆虫学者 国立科学博物館の昆虫標本資料の基礎を築いた
福岡伸一少年は新種の動物だと思い国立科学博物館へ持ち込んだ。
結果新種の夢は潰えましたが生物学者の存在を知ることができた。
その後、福岡伸一氏は生物学者となられました。

自分の斜めにところに理想の大人がいて
違う世界が開かれるかもしれない

2024年10月14日月曜日

兼題「秋茄子」&題「音」

湧き出づる力を込めた長き夜
地虫鳴く老いて無限の成長す
父の居た花と語らう秋の庭
(所信表明演説)冬近しデフレの定義違えをり
秋寒しスタグフレーションではないか❓

■NHK俳句 兼題「秋茄子」
選者 西山睦 ゲスト 南うみを 司会 柴田英嗣
年間テーマ「やさしい手」

豊の秋分け入ってゆく一詩人   西山睦
(豊の秋=秋の収穫を寿ぐ 喜ぶ言葉)
若葉風喫茶店までパンはこぶ   南ゆふこ(うみを氏のお嬢さまの句)
今回は野菜作り×俳句

猪除(ししよ)けの燻(くす)べに藪(やぶ)のぞめきだす   南うみを
ぞめきだす=ザワザワとする

吞まれゆく蛙(かわず)や脚を真っ直ぐに   南うみを
写生が写生を超えている 崇高な感じ
トマト
完熟のトマトを夕日よりはづす   南うみを
俳句は「空よりはづす」は割とある表現

野菜は自然のもの 俳句は有季定型 必ず季語が入る
季語は季節の言葉 季節は循環する自然 
両方「自然」という意味では繋がる
自然や命のありようを受け止める 肯定することが大事
句作りの一番大事な思い

身体を使って自然と対話して生まれてくる句はすごくうらや
ましい

・今週の兼題「秋茄子」
煮る・焼く・揚げる・父・母・ふるさとの類想が多かった
特選六句発表
秋茄子や油の香る美術室   山下明寿
(油=テレピン油)
亡き夫(つま)の切り戻したる秋茄子(なすび)   池本ヒサ子
(切り戻す=剪定する)
屈(かが)むこと厭(いと)はぬ暮し秋茄子   芹澤由美
ひろびろと畑にひとりや秋茄子   堀部一良
秋茄子や妻に土壌に恵まれて   村田雅松(がしょう)
鉄路より低く住み古(ふ)り秋茄子   笹沼郁夫

特選三席発表
一席 秋茄子や衰へ知らぬ母なりき   島崎有造
(「なりき」=連体形で止めている 余剰を込めている)
二席 秋茄子を洗はなけふのシネマみて   近藤ひろこ
(シネマは小津安二郎?オードリー・ヘップバーン?
洗はな(古文)願望を表す助動詞)
三席 父からの文(ふみ)なき便り秋茄子   大洋
(「男のハニカミ」が出ている)

・俳句やろうぜ 黒岩徳将
俳句づくりをはじめて20年 中矢温さん(25歳)
難民のキャンプに轍天の川   中矢温(のどか)
今回の俳人 昔からの知り合い?
中矢さんが中学卒業した春に宮城県の俳句コンクールで出会った
高校に入ったら「俳句甲子園」に出たい!
ただ者じゃないと思った
俳句との出会い
5歳 父が新聞投稿が好きな人 兄弟3人に俳句の作り方を教えてくれた
地元の「愛媛新聞」子供の俳句欄に投稿掲載された
中矢三兄妹の俳句
山わらう力をこめてそばを打つ   中矢元
いきさきはプラネタリウムほーほけきょ   中矢光
かぜふいていっしょにまつよこいのぼり   中矢温
苦手なまま俳句づくりをしていたが中学3年の夏突然俳句好きに
友人のお兄さんが俳句甲子園に出場 応援に行ったのがきっかけ
俳句のイメージが変わった ディベート
お互いの句をより良く鑑賞する時間 マイクを握って話す瞬間
世界の主人公みたいなまぶしさを見て
2016年第19回俳句甲子園に出場
難民のキャンプに轍(わだち)天の川   中矢温(のどか)

野菜は一番身近な「季語」「命を育てる 食べる」

■NHK短歌 題「音」
選者 俵万智 ゲスト 冬野(とうの)ユミ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「光る愛の歌」

水仙をふるさとの花と思うとき暗き海色の花瓶を選ぶ
俵万智(福井に住んでいた時に詠まれた短歌)

明るさを支える深い暗さマイナスのイメージではなく
光を支える暗さとして海を感じた

今の時代目から入る情報が多いので耳を澄ますことはすごく大事
ということで…。

・入選九首 テーマ「音」
風の音は聞こえぬけれど立秋を過ぎて物干すときの涼しさ
高原晴子
(古今和歌集の立秋の日の詠まれた歌の本歌取りという技法
 古の歌を踏まえると奥行きが出る 読むほうも二重に楽しめる
 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる
 藤原敏行「古今和歌集」)
行き先を告げずに発車するような電子ピアノの自動演奏
大津穂波
 入選なら今日にもはがきが来るはずと単車の音を嗅ぎ分けており
高橋久美枝
二席 子の声が音に聞こえる私からのSOSだケーキを買おう
小出知美
音を立てて啜(すす)る珈琲(さっきのはやはりセクハラだったと思う)
芍薬
 音速で届く「好き」より光速で届いたあなたの表情が好き
大王グループ
 11時2分を鐘の音が告げるみんなはカフェの話をしてる
三戸茅夜子(ちよこ)(静かに平和を感じる歌 11時2分 長崎)
一席 「ドン!」という音にベランダ出ることを平和と呼ぶか花火が開く
広木登一
三席 階段を上る足音待ちわびたあのアパートは取り壊された
さわだみやこ

・「光る君へ」で短歌を10倍楽しもう!
「羽音」平安時代の雅だけどちょっと怪しい感じを出したくて作った

秋風のうち吹くごとに高砂の尾上の鹿の鳴かぬ日ぞなき
「拾遺集」よみ人しらず
万智訳 飽きられて吹く秋風になく鹿のように私も泣かぬ日はない
「秋風」と「ひとに飽きられる」がかかっている
鹿の鳴く声は異性を求めて鳴く声
ある種のステレオタイプな発想がみんなに染み付いている
歌がうまいかどうかが妻選びのひとつの基準
いかに和歌が大事だったか

冬野ゆみさんの音楽を作るときの気持ちは❓
記号にならない 音楽でいたい 音楽で決めちゃいたくない
不必要な音楽にならないほうがいい
素晴らしい映像には音楽はいらない

短歌を作るときの言葉選びにも共通する
記号の「悲しい」言葉を使うとつまらない歌になってしまう
言葉がいろいろな表情に見えるとき「悲しい」歌になる

見ている人・詠む人の想像力をかき立てるような作品であるべき

短歌づくりのポイント
感情そのままの言葉ではなく、ずらしたり逆の表現をしてみる

くせつよと言われるたびにふふっふふ今日も今日とて88鍵
冬野ゆみ
冬野ゆみさんにとっては「くせつよ」は最高の誉め言葉
チーフ監督・中島さんのために企んでこの後も彼女に
「ふふっふふ」と言ってくれるように今日も曲創りをしているという歌

・言葉のバトン
〈アリア〉というハンドルネームの友だちは
ベテランち こと 青松輝(あきら)(歌人)

大気の奏でる曲のような娘 
奥銀次郎 青森県立八戸西高等学校
花を手向けているように手を擦(こす)る何億世代目のキンバエは
奥銀次郎 
アリア(伊・aria)空気・大気 オペラなどで歌われる独唱曲
第19回全国高校生短歌大会 優勝!おめでとう!

2024年10月13日日曜日

源氏物語の花&「たまの兎」&「鰍(かじか)」

赤蜻蛉(とんぼ)小さき命の羽音かな
長き夜叶わぬ夢は夢のまま
生じるもの全て滅す肌寒し
椋鳥や撓む電線ゆ~らゆら
気をつけて頬張る葡萄落つ果汁

■夏井いつき俳句チャンネル
【第2回】楽しい日本語【たまの兎】

【たまの兎】の意味を知らない状態で一句
秋風や偶(たま)の兎を待つなかれ   夏井いつき
卵に生まれて玉の兎と呼ばれけり   ローゼン千津
珠(たま)の兎べつかふあめの夜店かな   家藤正人

「たまの兎」とは
月の中に住むと考えられていた兎。また、月の異称。玉兎である。

【たまの兎】の意味を知ってから一句
たまの兎つきの兎と唄うてやる   ローゼン
飢ゑありきたまの兎を見上ぐのみ   夏井いつき
たまの兎愛されぬ指持て余す   家藤正人

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「鰍(かじか)」

魚に秋と書いてかじかと読みます
文字のとおり魚になるわけです
本州や四国そして北九州に生息している淡水魚
4~10㎝位の大きさだそうです
きれいな谷川の浅瀬に棲んでいる魚だそうです
季語で「かじか」と聞いた時にうっかり
勘違いしてしまう人もいるかもしれません
よく川辺から聴こえてくるきれいな鳴き声
あれ「かじか」だよねっていろんな俳人と
一緒に近くに行くと言ったりするんですけど
実はあの鳴き声は蛙 河鹿蛙(カジカガエル)
という種類の鳴く声になります
こちらは夏の季語になるんですね
魚の方の「鰍」は秋の季語になります
覚えておきましょうね

■「源氏物語の花」を歩く~植物探偵・紫式部~
かの見つる先々の 桜、山吹をいはば これは藤の花とや いふべからむ

先に見た女君がたが桜や山吹のように美しかったと喩えようなら
さしずめこの姫は藤の花とでも言った方がよかろうな
高い木に這いまつわって花房がふっさりと咲いてそれが風になびく
その美しさはきっとこんな風情であったろうにな
「謹訳源氏物語」より

花の香は 散りにし枝に とまらねど 移らむ袖に 浅く染(し)まめや

私が調合したこの花の香りは花が散ってしまえば枝には残らないでしょうが
焚き染めてくださる明石の姫君の袖には深く残ることでしょう
訳 高野晴代

心あてに それかとぞ見る 白露の 光そへたる 夕顔の花

当て推量にあなたさまでしょうかと思います 白露のような
美しさを受けこちらの夕顔も一層輝きを増しています
訳 高野晴代

末遠き 二葉の松に 引き別れ いつか木だかき 影を見るべき

行く末の遠い二葉の松のような幼いこの姫君と離ればなれになって、
いつの日か、大きく成長した姫君の姿を見ることができるのでしょうか
訳 高野晴代

二葉とは 松葉の付き方 
ゴヨウマツは五枚の葉が出ている⇨五葉の松
赤松・黒松⇨二葉の松
紫式部は その片方は母 もう片方は娘
母と娘の悲しい生き別れのストーリーを考えだした
鋭い観察眼

ものを思うと 過ぐる月日も 知らぬ間に 年もわが世も けふや尽きぬる

物思いばかりして月日の過ぎ行くのを気づかずにいる間に
こうしてこの一年もまた私の生涯も今日で終わってしまうのか
訳 高野晴代

2024年10月12日土曜日

乗り物のドリンクで一句

心を映す墨の濃淡星月夜
墨一色に込めた魂秋の夜
秋高し構図の巨匠ありのまま
秋晴る作りあげたるキャラクター
聞くほどに心をノックけらつつき

■プレバト纏め 2024年10月10日
乗り物のドリンクで一句

永世名人藤本敏史の俳句史に残る句集作り
タラップを降りてバスまで歩く秋
(力みがない一句 秋と言う季語は長い時間軸を持っている
 使い熟すのは難しい 自分の感じたことを言葉にのせる
 バスまでの短い時間 「風が秋になってる」「空が澄んできたな」
 「空が秋になってるな」秋という長い時間軸を
 バスまでと言う短い時間と距離 しみじみとキャッチしてしまう
 歩くという距離・動作・人物が入っている 俳人の句)

犬山紙子の昇格試験
車窓のぬるいお茶行けない二学期
添削(二学期が秋の季語 語順を変えることで
   大人なのか子どもなのかが解決する)
行けない二学期車窓のぬるいお茶
行けない二学期水筒のぬるいお茶

1位 小宮山雄飛
缶酎ハイプシュッ車窓に鰯雲
(鰯雲が季語 開ける動作と映像 指先の感覚 触覚が入っている
 映像が切り替わり車窓に鰯雲が広がる カメラワークが上手い
 リズムも軽やか 旅を楽しむ気持ち 高揚感 
 難しい言葉は使っていないのに全部入っている こういうのが俳句)

2位 山崎玲奈
郷の駅コーヒー香る星月夜
添削(季語は星月夜 星空が月夜のように明るいようす
   邪魔しない形で組み立てられている 語順は逆でもいい
   空⇨香り⇨駅 こういうやり方も覚えて帰ったらよい)
星月夜コーヒー香る郷の駅

3位 知花くらら
千筋なる月光伸びて珊瑚礁
添削(月光が秋の季語 「伸びて」入らない)
千筋なる月光珊瑚礁しづか

4位 市川紗椰 
単線のカーブに耐える月見酒
添削(耐えているのは人物 人物が月見酒を飲むと読まれる可能性が高い
   季語は月見酒 月を愛でる心・行為 酒よりも月を愛でる人に軸足
   物の擬人化と読まれにくい)
単線卓に傾くワンカップ

プレバト名俳句 セレクション 全3091句から厳選!
電車にちなんだ優秀句 名句3選
右肩に枯野の冷気7号車   皆藤愛子
初旅のB席iPadにドリフ   川島如恵留
オーディション帰りの車窓波乃花   早見あかり
(波の花が冬の季語 岩礁に冬の高波が押し寄せ
 砕け散る時にできる白い泡を花にたとえた言葉)

次回のお題は100点満点

2024年10月11日金曜日

英一蝶&吉田松陰&伊藤若冲

田中一村を詠む
異文化へ戸惑い持ちて秋の朝
秋の島蘇鉄(そてつ)に自由込め描く
蚯蚓鳴く我慢あきらめ時として
一心の描く普遍や天高し
あの世とこの世境目の花野径

■日曜美術館 
この世を楽しく美しく 江戸のレジェンド絵師 英一蝶

しばしとていざ蕣(あさがお)日からかさ   英一蝶

宝井其角を友とした英一蝶

芭蕉と其角と一蝶(暁雲)の句が並んでいる歌集がある
詫びてすめ月侘斎(つきわびさい)が奈良茶歌(ちゃうた)   芭蕉
盞(さかずき)ヲ漕ゲ芋を餅にして月ヲ釣ン   暁雲 蘇軾(蘇東坡)
闇の夜は吉原ばかり月夜かな   其角

俳書を見る限り一蝶(暁雲)は認められていた

幇間(太鼓持ち)もやって吉原で場を盛り上げていた
浅妻舟 其角と一蝶(三宅島へ島流し)の別れの講談 神田泊山

英一蝶 1724年(享保9)没
辞世の句
紛らはす浮世の業の色どりもありとや月のうすずみの空

歌川国貞は一蝶を敬い「香蝶楼」とも名乗った
喜多川歌麿は一蝶の「雨宿り」を意識した浮世絵を描いている

■偉人・敗北からの教訓 
第62回「吉田松陰・安政の大獄に散った苛烈な思想家」

・敗北の伏線~諸外国の脅威~
春に種を蒔き夏に苗を植え秋に実り冬には蓄える
人の命にも同じように四季があり歳月の長さではない
私は30歳ですが収穫の時を迎えたと思っております
どうか一粒の籾として次の春の種となれますよう
吉田松陰「留魂録」より意訳
人生最期の著作

松陰「諸君、狂いたまえ」
「松陰詩稿」所収「西征残稿」より意訳

一心不乱に己の信ずる事を行なう
かくすれば かくなるものを 知りながら やむにやまれぬ 大和魂
至誠にして動かざる者は未だ之れ有らざるなり
誠の心をもって尽くせば動かなかった人など今まで誰もいない

・吉田松陰 敗北の伏線
人を動かすには思い切った行動が必要なことも
純粋な精神でも独りよがりに注意

・敗北の瞬間~命を懸けた告白までのカウントダウン~
松陰「学者になるのはつまらない 
   学者になるには 本を読みさえすればできる」
  「学問をするには立志が大切だ」
  「征夷(将軍)は天下の賊なり 今おきて討たざれば
   天下万世それ吾れを何とかいわん」
  「老中 間部詮勝を暗殺すべし」
  「僕は忠義をなすつもり 君たちは功業をなすつもり」
  「今 私が死を求めてやまないのは このまま生きていても
   理想を実現するための行動を起せる見込みが全くないからです」
  「もしも私菓子んで見せたらそれで考えを
   変えてくれる人も現れるかもしれません」
  かえらじと 思いさだめし 旅なれば 一入ぬるる 涙松かな

・敗北の瞬間
松陰「生死は度外におきてただ言うべきを言うのみ」

・自らの死を確信
身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ぬとも留め置まし 大和魂
吾今国の為に死す死して君親に背かず
悠悠たり天地の事 鑑照明神に在り

・吉田松陰 敗北の瞬間
自分の正義が全てではない
自分が正しいという思い込みは禁物

・吉田松陰の敗北から学ぶ教訓
自分を安売りしてはいけない

■新美の巨人たち【新発見!伊藤寂聴「果蔬図巻(かそずかん)」世界初公開】
伊藤若冲の言葉
私は理解されるまでに千年の時を待つ

2024年10月10日木曜日

北野武×村山斉 スイッチインタビュー

藍を詠む
空高し独創性とインパクト
秋晴れや藍で染めたる木の器
木の皿の波打ち際や秋の音
秋の雲木目が波となりにけり
藍色の木目くっきり秋の猪口

■スイッチインタビュー「北野武×村山斉」EP2
「弔辞」ビートたけし 講談社
私が本当にやりたかったことはお笑いではありません。
お笑いは二番手でした。
いまでも、ノーベル賞を受賞した科学者を見ると嫉妬します。

素粒子物理学者 村山斉(ひとし)(60)
36歳でカリフォルニア大学バークレー校教授

K宇宙そのものが人間そのものの存在理由である
M宇宙が加速している観測が出た瞬間「あっこれだ!」
ジャンプする瞬間があるから楽しくてやっている
K神に近づく神の本質に研究することで近づける

芸術について
K映画っていうのは絵画ほど歴史がない 映画は100年なんです
絵画だと何百年 絵画の中にはキュビズムとかフォーヴィズムとか
印象派とかある 映画における印象派って何だ?
シーンナンバー書いてある玉をビンゴみたいに出て来た順番に
映画を並び替える それはキュビズムじゃないか
M実験するんですね
K映画っていうのは初めフィルムだった フィルムの時の
写真というのは化学反応 銀が黒く変色する分子原子レベル
デジタルだとドット数 フィルムと全然違います
経済というのは人間の進化とか文化を阻害しているのは
経済じゃないか 
M宇宙論なんか言われていますよ「何の役に立つんだ?」
人間は無駄が好きな生き物
K無駄と言われちゃ困る
Mそれも無駄なんですけど そこから新しい研究のアイデアが
生まれたりひらめきがあったり無駄ってすごく大事

「赤信号みんなで渡れば怖くない」北野の放った毒舌
当時の日本の集団主義を風刺し拍手喝采を浴びた

K芸能の仕事なんていうのは俯瞰で見てる 俯瞰で見ちゃって笑っちまう
なんなんだろう これ? そういうことでは喜べない 
でもその人にはなれない 俯瞰で見る罰 喜怒哀楽を売り物にする人 芸人
喜怒哀楽というのはいいもんであるけど それを商売にしている
下世話の幸せ
M落語とか見てても客観的にやってる感じ演じてるんですね
K0.何秒でその台詞を言うか言わないか 「間」
上手い人はいい「間」してる
でもその人には浸りきる喜びはない

K作品を作る前に完成してる 作って見せるときに失敗する
こういう映画なんだよ いつまでたってもできない
突き破ったって感覚ないんじゃないか?
到達してないからやってみたい 次の作品
M葛飾北斎 晩年に語ったとされる言葉
「百十歳まで努力すれば生きているような絵が描けるだろう」
K一番感じるのは失敗のとこばかり 出来たら撮り直したい
また失敗する 根柢の部分でつながってる 邪道ってのはない
この宇宙の中で生きててあらゆる関係があってどの関係で
それができたか?
M恐竜が絶滅したのは隕石のせいだ を言い出したのは素粒子物理の人
一見関係ない 素粒子と恐竜の絶滅がつながって
恐竜の絶滅があった時代の地層から隕石由来のイリジウムが発見されている
掟破りの人がいないと物事進歩しない 
K掟破りをやるために評価されるとこにいないといけない
演芸場でいきなりやると出入り禁止になる 干されちゃう
人気者になるとどんなことしても干されない
クビにならないようなとこを作っといて そこから実験を始める
無鉄砲だけども計算高い 無鉄砲さをプロデュースする
新しいことをやって失敗してもまだ認めてくれるように動く

M人間原理
K時間を認識する人がいないのに時間なんてないだろう
宇宙論自体が哲学とも結びついてるし宗教とも結びついてる
宇宙そのものが人間そのものの存在理由である
死んだら分かるようになってくるんじゃないか?
科学的には素粒子になって終わりだよ 何もないよ
一瞬で理解できるときが来るのかな?期待してる。
朝起きたらそういうことか
M宇宙の話とかについて?
K未知の部分っていっぱいある 死ぬこと怖くないんだけど
期待しちゃう 
M悟りってそういう感じなんですかね?
K何も分かんないんだよ 何も分からないし
生きていく理由も分からない を悟ったということが解脱なのでは?
脳がパラドックスに入っていく

2024年10月9日水曜日

紫式部のスマホ&「心中」&ゴッホは日本の夢を見た

ムラを詠む
集落の地盤形成秋の声
蚯蚓(みみず)鳴く有瀬(あるせ)集落今もなお
地滑り後住まい構えん星月夜
秋の山コエグロ敷きて土押さえ
秋晴る杉の古木に見送られ

■紫式部のスマホ
1
春はあけぼのがエモい。
だんだん白っぽくなってく
山のはじっこのとこの空が、
ちょっと赤みを帯びて明るくなって。
紫がかった雲が細くたなびいてるのって、
めっちゃエモいわ。
夏は夜しか勝たん。
闇夜に蛍がめっちゃ飛んでるのって神すぎ。
でもでも、一匹一匹くらいが
ほわんって光って飛んでゆくのもチルい。
雨が降ったら降ったで優勝よ。
秋は夕暮れが最高。
夕日が射して、その夕日と山の輪郭が
接近してる時間に鳥が三~四羽とか、
まあ二~三羽くらい?
いつメン連れて飛んでく姿って、もう天才よね。
あと雁とかマジメかってくらい きっちり整列して飛んでくのか
2
横目をもゆめと言ひしは誰れなれや秋の月にもいかでかは見し
3
光の君が雨夜に仲間たちと
女の品定めで盛り上がった翌日。
ようやく天気は晴れ。 
宮中にばかり籠っているのも舅の左大臣に悪いので、
光の君は女君のもとに向かおうと、退出なさいました。
左大臣邸のしつらいも、女君の様子もビシっと整えられて
気高く、どこにも乱れたところがありません。
この女君こそが、昨夜の品定め
7
「利口ぶっているだけのインチキ風流人!
式部が清少納言❝ぶった斬り❞持論展開

清少納言 知ったかぶりのドヤ顔女
斎院の女房 名歌らしきものひとつもなし
和泉式部 和歌の風格ゼロ恋の歌しかうまくない
赤染衛門 和歌が古いいまどきの和歌も詠め!
8
最終話 源氏物語 五十四帖 夢浮橋
第六段 小君、空しく帰り来る
山里らしいごちそうをいただいたけれど、子どもである小君はどう
からなくて、「薫の君が私をわざわざお遣わしくださったのに、何も
姉君から返事をいただかずに帰らなくてはならないのでうか?
一言でいいから薫様へのお言葉をください」などと訴えました。
尼君は「その通りですわ」と言って、浮舟に伝えるものの
何の返事もございません。
尼君は薫の君には正直に浮舟様のはっきりとしないご様子を
伝えるしかないでしょう。こちらは山里ではございますが
雲がはるかに遠くへだった場所というほどでもありませんから、

源氏物語の最終回、書き終えました。
日記の方も、昨日送ったものを最後とさせてください。
私の役目は終わりました。
道長様のおかげで色々な景色を見ることができました。
ありがとうございました。

雲隠れに夜半の月かな

清少納言
私はものづくしで書いたけど、式部さんは女づくし、で書いたんでしょ?
紫式部
さすがです!わかります?

これ!この切り口、面白かったです。続きを楽しみにしています。

■漢字ふむふむ「心中」
中国語で心中は文字通り、心の中という温かいニュアンスの言葉。
しかし日本では男女が死んでしまうという意味。
これはそもそも江戸時代 遊女の間で使われた遊女の恋のテクニック
本気ですよと誠意を伝えること これを「心中立て」と言った
心中立て 心中=真心 真情 
「髪切り」「入れ墨」「証文(誓いの言葉)」など
その後「爪剥ぎ」「指切り」と、エスカレートしていった。
いろんな「心中立て」の行きついた先が「情死」
2人で死を選ぶということになる
男女の死への旅立ちを近松門左衛門らが「心中劇」として作りあげた
これが大変評判になり「心中」=「情死」が一般化していった

■ゴッホは日本の夢を見た
ゴッホの残した言葉
「私の絵のすべては日本の芸術の上に成り立っている」

テオへの手紙
「体中の血液がまた巡りはじめている気がする
 パリではなかったことだ」

「親しい弟よ 僕は日本にいる気がするんだ」

ゴッホの手紙
「いっそう明るい空の下で自然を眺めたら
 日本式の感じ方や描き方がより正確にわかるだろうと思ったのだ」

「この土地が空気の透明さと明るい色彩によって
 僕には日本のように美しく見える
 黄色と菫色の花が一面に咲く 野原に囲まれた小さな街
 まるで日本の夢のようだ」

「もっと日本的な目で見ることができ 色彩の感じ方が変わってくる」

ゴッホの耳―天才画家 最大の謎―より
「オランダ人の風景画家が自分の言動もわからないほどの
 異常な興奮状態に陥っています 家族のもとに直ちに
 送還するか 精神病院への引き渡しに必要な手続きを
 お取りくださいますようお願い申し上げます」
ゴッホはアルルを追放された

ゴッホの手紙
「画家の共同体 何人もが生活を共にするという考えは
 もう二度とやらない 子どもじみた夢であった」

ゴッホからテオへの手紙
「日本の芸術を研究するとまぎれもなく賢明で
 達観していて知性のすぐれた人と出会う
 彼は何をして時を過ごすのか 
 地球と月の距離を研究しているのか 違う
 彼が研究するのはたった一本の草の芽だ
 しかし この一本の草の芽がやがて彼に
 ありとあらゆる植物を ついで四季を
 風景の大きな景観を 最後に動物
 そして人物像を描写させることになる
 すべてを描くには人生はあまりにも短い
 そう これこそ かくも単純にあたかも自分自身が
 花であるかのように自然の中に生きる
 これらの日本人がわれわれに教えてくれることこそ
 もうほとんど新しい宗教ではないか」

ゴッホからテオへの手紙
「この世に生まれてくる坊やのおじさんになるのだ思うと
 人生への関心がまた湧いてくるよ」

花咲くアーモンドの枝 について
「仕事はうまくいったよ この絵を見たら根気よく
 丹念に仕上げたと思うだろう 最高の出来だ」

2024年10月8日火曜日

あの本、読みました?池井戸潤&恩田陸

ムラを詠む
秋の浜灰と泥と火山岩と
秋の波煌めく層や白雲母
秋日和急峻削りV字谷
星月夜土砂固まりて人の住む
今なお活きる中央構造線(活断層)(無季句)

■あの本、読みました?この半年の小説&新書売上ランキング!池井戸潤&恩田陸
鈴木保奈美 角谷暁子
2024年度 上半期小説《単行本》&新書 売り上げランキング

・「spring」恩田陸 著 筑摩書房
高層・執筆に十年
一人の天才の人生を描いた「新バレエ小説」
主人公は天才的なバレエダンサーで振付家の萬春
八歳でバレエに出会い十五歳で海を渡った
踊る者 作る者 見る者 奏でる者
それぞれの情熱がぶつかりあい 交錯する
作者の恩田さん曰く
「今まで描いた主人公の中でこれほど萌えたのは初めて」
四章にわたる長編小説

砂金有美(いさごゆみ)
依頼から10年で完成

三宅香帆 書評家・作家 恩田陸の大ファン

俺は、ヤツの作品の中では「KA・NON」が一、二を競うくらいに好きだ。
タイトルは使用曲である「パッヘルベルのカノン(CANON)」と
千手観音(KAN-NON)を掛けたもの。
ゆったりとした曲に合わせて、一列に並んだ十人がゆったりと踊る。
ただそれだけのシンプルな踊りだ。ジャンプもピルエットも
ひとつもなく、ゆっくりとした動きで舞台上を進んでゆく。
(中略)
曲の始まりとともに、ゆっくりと横向き一列にダンサーが
舞台に進み出てくる。ぐるりと舞台を一周し、やがて中央を
正面を向いて進んでくる。ゆっくりと角度をずらして
十人のダンサーが舞台を歩き回りつつ、腕を回していく。
それを先頭から見ると、本当に千手観音を目にしているようなのだ。
腕の動きはシンプルながら本当に美しく、衣装の色彩の
グラデーションが残像のような効果を生み出し、見ていると
だんだんトランス状態に陥っていくような錯覚を感じる。

バレエの公演をひたすら鑑賞
取材先の人に「ダンスは言語化できない」と言われて…。
主人公・春の振り付けは恩田陸が考えている

林祐輔P お薦めの一文
「じゃあ、行ってきます。」
四人は何も言わずに、春に向かって頷いた。
あっさりとした別れだった。
春はくるりと背を向け、スタスタと歩いて行く。
四人はその背中をじっと見つめている。
その背中が遠ざかり、人混みに吸い込まれる、
と思った瞬間、彼はピタリと足を止めた。
春が、まっすぐに駆け戻ってきた。
その真っ青な顔が近寄ってくるあいだに、彼は成長していった。
八歳、九歳、十歳、十一歳、十二歳。どんどん背が伸び、
成長痛に苦しみー十三歳、十四歳、そして十五歳。
今や四人の親たちよりも背が高くなった彼が。
(中略)
春は混乱し、泣きべそを搔いていた。彼は叫んだ。「俺の、先生!」
(中略)
わたしの先生。その一言くらい、教師にとって嬉しい言葉が
他にないということを彼は知らなかったに違いない。

4章構成で悩んだ著者「次は誰の視点にするか」

・ツミデミックの短編「祝福の歌」について 一穂ミチ

・「俺たちの箱根駅伝 上」池井戸潤著 文藝春秋
内藤淳 生島淳

執筆のきっかけは中継ポイント「箱根小涌園前」
名言誕生の秘密 「倍返しだ」も池井戸潤氏

解説の円藤が声を震わせるほど、派手な転倒であった。
体重を支えていた右脚が宙に浮き、大柄な猪又の体が
バウンドするほどの勢いで、地面に叩きつけられたのだ。
(中略)
小田原中継所まで、あと僅か百メートルというところだ。
それまでペースを落としながらもなんとか走ってきた猪又だが、
ここにきて目に見えてスピードが落ちていた。
相当の痛みを我慢して頑張ってきたのだろう。
だが、いよいよ力尽きようとしている。
(中略)
脚の痛みと闘いながら前に進む猪又に、
辛島の実況は静かに語りかけるようだ。
「中学時代はサッカー少年でした。ですが、❝内向的な
性格だった自分にはチームプレーは向きませんでした。
でも走ることは大好きです。だから、個人競技である
陸上を始めたんです。そして高校時代からこの箱根駅伝に
出ることを目標にして、毎日頑張ってくました。
本選ではいままで自分を応援してくれた両親や監督、
武蔵野農業大学や関東学生連合のチームメイトのために
全力で走りたいと思います❞―そう語ってくれました。猪又丈。
中継所まであと三十メートルです。佐和田晴が待っています。
チームメイトが待っている。猪又、頑張れ!」

箱根駅伝は人間ドラマ中継
レース前で終わるはずだった…。
怒涛の展開を迎えるレース終盤
往路キャラ(派手な選手)と復路キャラ(一人で走ることが得意な選手)
外見的な描写がなくても…。

・「暗殺」柴田哲孝著 幻冬舎刊
元総理が凶弾に倒れ その場にいた一人の男が捕まった
日本を震撼させた2発の銃弾
本当に彼が、元総理を撃ったのか❓
実際の事件をモチーフに膨大な取材で描く傑作サスペンス

ヒットの理由は❓フィクションにした理由❓

「エアスラッグ弾を使うことは、私も賛成だ。
しかし我々は、ミッションの当日に、
ある特殊な弾丸を使うことも想定している」
マエダがいった。「特殊な弾丸とは?」シャドウが首を傾げた。
「水銀弾だ…」「水銀弾と聞いて、シャドウは首を傾げた。
「水銀弾が存在するのか?」シャドウが訊いた。
(中略)
マエダによると素材となるアマルガムは水銀とインジウムの合金で、
常温・常圧で凝固する。だが融点は水銀の比率によって、
任意に決めることができる。もしこのアマルガム弾の融点を
二十度から三十度くらいに設定しておけば、人間を撃ったとしても、
その弾は体内で溶けなくなってしまうことになる。

「暗殺」を出版した意義

・「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」三宅香帆 集英社新書
鈴木保奈美女史「うちの娘が読んでいました」

前書きより
正直、本を読む時間はあったのです。電車に乗っている時間や
夜寝る前の自由時間、私はSNSや
Tou-Tubeをぼうっと眺めていました。
あるいは友だちと飲み会で喋ったり、休日の朝に
寝だめしたりする時間を読書に充てたらいいのです。
だけど、それができなかった。
本を開いても、目が自然と閉じてしまう。なんとなく
手がスマホのSNSアプリを開いてしまう。
夜はいつまでもYou-Tubeを眺めてしまう。
あんなに、本を読むことが好きだったのに。

働いていると本が読めなくなる理由
「半身」は読書を続けるコツ
(中略)
人生ずっと全身全霊を傾けるなんて」

「半身」のススメ 社会が全身全霊を言うのはいかがなものか
囚われ過ぎに対しての忠告 余裕をなくしている社会への警告

著者が語るヒットの理由

2024年10月7日月曜日

兼題「夜食」&題「触れる」

演説の流行すたりや秋の声
夜明け前ようやく秋がやってきた
秋の風いきなり譜面飛ばしをり
花水木赤く色づけられし秋
期限なき隠忍自重星月夜

■NHK俳句 兼題「夜食」
選者 堀田季何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣
年間テーマは「俳句の凝りをほぐします」

今回テーマは「類想から抜け出す」
類想から考えて半ボン・脱ボンできる方法を伝授!
漠然としている
景色が見えない パッとしない そのまんま 映像が浮かんでこない

八月の平和祈れり恋人と
ナイターの試合白熱汗握る

梅雨じめりいつも躰の重きこと
(堀田)ある俳人の句を「改悪」した
梅雨じめり二の腕いよよ重きこと   宇多喜代子
(いよよ=いよいよ)具体的=漠然を逃れる
類想の句をまず作ってみてそこをちょっと変えてみる

類想句から脱ボンする実験!
具体的に掘り下げる!
秋の季語 松茸 酢橘

① 松茸や一番小さいものを買う
② 松茸や薄く切って皆で分け
③ 松茸や昔実家の裏山に
④ 松茸や香り楽しみ歩み去る

具体的にして脱ボンする!
②松茸や薄く切って皆で分け
松茸やひとつを薄く皆で分け   柴田英嗣
①松茸や一番小さいものを買う
松茸やしめじの様なものを買う   柴田英嗣

④松茸や香り楽しみ歩み去る
松茸や山の香りをスーパーで   庄司浩平
②松茸や薄く切って皆で分け
松茸や友と手で割き持ち帰り   庄司浩平

ツボポイント②
「視点を少し変える」

島中の熊蝉(くまぜみ)鳴けり朝(あした)より
すべて熊蝉領や朝より   小澤實
島が全部「熊蝉の領土のようと(視点を変えた)

一斉に片手の上がる踊かな
のんびりと片手の上がる踊かな   西村麒麟

類想から抜け出すポイント
① よく見て具体的にする
② よく見て視点を少し変えてみる

・特選六句発表 兼題「夜食」
夜食にす宇宙ステーション過ぐる頃   冨田裕明
AIの粋な提案夜食抜く   細見俊雄
それぞれの机は孤島夜食とる   北村浩子
学徒動員工場夜食高粱飯(こうりゃんめし)   松長朔風(さくふう)
(高粱飯 戦前戦中日本や満州でもよく食べられていた
物が少ない時代の背景が見えてくる)
スパゲッティコードうにやうにや夜食とる   大黒富々
信長にメガネ描き入れ夜食待つ   山口良子

・柴田の歩み よく見る
庄司の歩み 夜食パクパク俳筋力ゲット

■NHK短歌 題「触れる」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「❝私❞に出会おう~2年目の飛躍~」
今回のテーマは「雪月花のパワー」

「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる ことも なしと思へば」
満月のように我が世自分も一族も欠けたところがない
千年ほど前に藤原道長は作ったもの
月 雪 花 昔から詠われてきた題材が今も最先端で使われている

雪月花は万葉の時代 それから平安時代ずっと通して 
長い時間 歌の言葉として磨かれてきた

月光を挽くのこぎりの刃はむかし図工の部屋の冬の窓辺に
鈴木加成太(かなた)「うすがみの銀河」

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐのことかよ
穂村弘「シンジケート」

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これはの可能性が大きい
笹井宏之「ひとさらい」
ピンポイントの景色だけではなく過去にたくさん
歌われてきた桜の歌や桜満開の景色に繋がっていく
非常に小さな風景が大きな時間を超えた風景につながる
色んな想像力を呼び込むことができる 現代短歌の中に
流れ込んでとても大きな飛躍力を生む言葉になっている

・入選六首 題「触れる」
百均のプラスチックの聴診器こんな場所にも心臓がある
横縞
鍾乳石に両手で触れる夏休みたった五万年前の冷たさ
弘中典子
触れないでぼくの過去には触れないで静止画みたいに教室を出る
荒川優斗(まさと)
春風がぬるいふれあい公園で一方的にうさぎを撫でる
高原すいか
一席 夕方の顎に触れれば生きていた証の髭がざらざらとして
八号坂唯一(はちごうざかただひと)
まだ父の温かいとこあるはずと看護師(ナース)は探し吾に触れさす
間(あいだ)由美

・みつけたキラリポイント
秀一郎「たった」 あむ「静止画みたいに」

・秀一郎あむの飛躍のカギ
君と見た雪の結晶手に残る冷たさだけがまだ温かい
深尾あむ 添削
君と見た雪の結晶の白い森冷たさだけがまだ温かい
君と見た雪の結晶ぎざぎざの冷たさだけがまだ温かい
君と見た雪の結晶はシンデレラ城冷たさだけがまだ温かい

ドクンという心の音が怖い時夜空の月がほほ笑んでいる
内藤秀一郎 添削
ドクンという心の音が怖い時うるさい月がほほ笑んでいる
ドクンという心の音が怖い時うさぎの月がほほ笑んでいる
ドクンという心の音が怖い時やさしい月がほほ笑んでいる
慣用的ないつもくっついてるような言葉ではなく
ちょっとだけ外した言葉を工夫してみると
色んなイメージが広がる
ドクンという心の音が怖い時大きい月がほほ笑んでいる
雪月花はとっても跳ねた表現 飛躍のある表現
アクロバティックな表現を支えてくれる
でも雪月花に頼ってはいけない
戦う気持ちで用いると支えてくれる

・言葉のバトン
〈アリア〉というハンドルネームの友だちは
ベテランち こと 青松輝(あきら)(歌人)

うしろ髪を照れてさわったのは僕で、終わってからが思春期だから。
青松輝「4」ナナロク社
短歌は漫画とか小説と比べて読者の側に力があるというか
読者がどう思うかの裁量が大きいからフラットな関係性で
読者と作者がいるのが好きで
普段の自分だったらこういう上句で考えるよなみたいなのを
自分で設定する短歌が最近結構好きで

2024年10月6日日曜日

10min.ボックス現代文 俳句&ザ・プロファイラー「源氏物語」

ソラを詠む
ソラの秋コエグロ背負い急斜面
秋のソラ畑へコエグロ敷き詰めん
秋の朝雲海に立ち背伸びせり
赤蜻蛉自給自足のソラを生く
雲海に浮かぶ山々空高し

■10min.ボックス現代文 俳句(2006年制作)
柿食えば金が生るなり法隆寺   正岡子規
いくたびも雪の深さを尋ねけり   正岡子規

近代俳句の父 正岡子規
芸術の域にまで高めたのが松尾芭蕉
古池や蛙飛びこむ水のおと   松尾芭蕉

明治に入り発句を俳句としたのが正岡子規
卯の花の散るまで鳴くか子規(ほととぎす)   正岡子規
「俳句分類集」を作成 使いまわしの語句が多いことが分かる
写生(西洋の絵画でもち入れられていた手法)をとり入れる
新しい俳句を目指した

赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり   
若鮎の二手になりて上りけり

「ホトトギス」(東京版)第1号
ここから多くの作家が育った 夏目漱石もその一人

菫ほどな小さき人に生まれたし   夏目漱石
糸瓜咲て痰のつまりし仏かな   正岡子規

東京都台東区根岸 子規庵
2万を超す俳句を残して34歳の若さでこの世を去りました

子規からつながる人々
高浜虚子 「ホトトギス」を引き継ぐ
季語と定型という決まりを固く守り 花鳥風月を題材に取り上げた
伝統を守る決意を詠んだ句
春風や闘志いだきて丘に立つ   高浜虚子

川東碧梧桐 新聞の俳句欄を引き継いだ
新しい俳句の表現を求めた碧梧桐は次第に季語と定型から離れて行った
紅い椿白い椿と落ちにけり   川東碧梧桐

ホトトギスの投句欄から見出された女流作家
谺(こだま)して山時鳥(ほととぎす)ほしいまま   杉田久女

彷徨うように旅を続け定型の枠を超えて生み出した句
分け入ってても分け入っても青い山   種田山頭火

17音の世界は時に限りない広がりを私たちに与えてくれます

■ザ・プロファイラー 書き尽くせぬ思い「源氏物語」作者 紫式部
おぼつかな それかあらぬか あけぐれの そらおぼれする 朝顔の花
紫式部集

ここにかく 日野の杉むら 埋む雪 小塩の松に 今日やまがへる
紫式部集

春になれば 氷が解けるように やがてあなたの心も 打ち解けるものだと 知らせたい
藤原宣孝 紫式部集

春なれど 白嶺のみゆき いやつもり 解くべきほどの いつとなきかな
紫式部集

おほかたの 秋のあはれを 思ひやれ 月に心は あくがれるとも
紫式部集

寂しい物思いの中 当てのない行く末を考えては 将来への心細い思いを 強めるばかり
そこで取りとめのない ものではあるけど はかなき物語を書いて 試行錯誤しては
慰み事に寂しさを紛らわせていた
紫式部日記

第一帖「桐壺」
いづれの御時にか 女御 更科 あまたさぶらひ 給ひける中に
いとやむごとなき際にはあらぬが すぐれて 時めき給ふありけり

同僚女房に言いたいこともあるけれど「何も言うまい」と思う
わかってくれない人に 何を言ってもむだ
また何かと文句を言って「われこそは」と得意になっている人の前では
煩わしくて口をきくのも おっくうになる
紫式部日記

紫式部⇨清少納言
あそこまで利口ぶって 漢字を書き散らしていますけれど
その学力の程度も よく見ればまだまだ足りない点ばかりです
紫式部日記

浮気者=すきものと 名にし立てれば 見る人の をらで過ぐるは あらじとぞ思ふ

人にまだ をられるものを 誰かこの すきものぞとは 口ならしけむ
紫式部日記 光源氏=道長説も出るほどだった

藤壺
第二帖「箒木」
空蝉
第四帖「夕顔」
女の枕近くに夢で見たのと瓜二つの顔をした女が現れてすっと消えた
昔話にはこんな話も書いてあるが
実際に目の当たりにすると源氏はともかくおそろしくなった
第五帖「若紫」

ひらがなの物語は文学として幼稚
物語こそ心が書けると気づいた紫式部
紫式部の心を光源氏に語らせている

誰でも身の上として多少誇張などはあるにしても
この世を生きる人々の見ているだけでは満足できず
後の世にも言い伝えたいと心にしまっておけず
語ったものが物語の始まりなのです
言いおき始めたるなり
第二十五帖「蛍」

この作者は日本の歴史書をよく読み込みまことに学識があるようだ
まことに才あるべし
紫式部日記

この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば
小右記

歳もまた出家しても よい年頃になってきました
罪深い私のような人間が必ずしも出家の志がかなうわけではないでしょう
紫式部日記
浮舟

紫式部の娘 賢子(けんし)もまた才能あふれる女子であった
後冷泉天皇の乳母(めのと)として宮中にあがった

後冷泉天皇の時代は文化的な時代だった
それは紫式部の娘 賢子の教育のおかげである

2024年10月5日土曜日

太田道灌&俳句甲子園2024&棟方志功

利上げなし金絶好調秋うらら
秋の君たまに表出決めてきた
パソコンや機嫌直せよ野分(のわき)立つ
散る柳痛みに耐えて生く老後
タンクトップにできた水玉渡り鳥

■偉人・敗北からの教訓 
第61回「太田道灌・文武両道の名将の最期」

思いもよらぬ形で命を絶たれた太田道灌(どうかん)の敗北

敗北の伏線~太田道灌の活躍が落した影~
不驕者又不久(驕りがある者は没落するだろう)

我が庵は松原つづき海近く富士の高嶺を軒先にぞ見る
太田道灌

太田道灌 敗北の伏線
自身が力を増すことが上司の力を減らす事になると気づけなかった

太田道灌 敗北の瞬間
過剰な自己アピールは危険
相手の面目を配慮することが重要

七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだに無きぞ悲しき
太田道灌

太田道灌の敗北から学ぶ教訓
賢者は理屈で動き 愚者は感情で動く

■心に届け!17音~俳句甲子園2024~
アイスキャンディー栄養ないし好き

興南高等学校
稲妻に淵の蒼さの深まれる   速水彩華
稲妻すとんファミレスの友だち抜きください   知念ひなた
ZigeunerWeisenぼくら鶏頭だった罰   知念ひなた
だめになる切ればメロンにすこし夜   知念ひなた

洗足学園中学高等学校 森有沙 
カットメロン角透けかけてをりにけり   森有沙
翡翠や樹々は古墳を溢れ出て   明石菜央

審査基準 俳句のできとディベート力 自分らしさ

「俳句甲子園2024」を見て一句
炎昼や再出発は髪切ろう
小顔への強きあこがれ夏の蝶
蒸暑しあるがまま読めつくるなよ
落ち着けよゆっくり喋れ日の盛
最後までぶりっこ通す草いきれ

■プレミアムカフェ 巨匠たちの肖像 棟方志功―無我の手―(2009年)

板画は描く仕事ではない。(中略)如何なる場合にも板画は肉筆画に
接近すべき性質のものではなく、肉筆とは全く別なものに立脚し、
全く別個の方向から出発して画になっているのだと云うことを、
知らなくてはならないと思います。
従って、「肉筆らしさ」「肉筆画に近寄る仕事」、そういうことは
板画の道では一種の邪道なのです。
「板散華」より

鍾渓頌(しょうけいしょう)昭和20年

サンパウロ・ビエンナーレ国際美術展
「版画部門最高賞」受賞
受賞後のインタビュー
僕一人 個人の喜びじゃないと思います
日本の国から出た大きな喜びじゃないかと思います
魂自体が 丸となって 線となり 幅となり 
面となるところに 本当の新しいものがー
生まれてくる 湧いてくる 溢れてくる
それが本当の新しい命なんですよ

2024年10月4日金曜日

金秋戦 自分で撮った写真で一句

(手話言語の国際デー)
集まりて薄暗き街秋の声
家族連れナイトマルシェへ宵の秋
秋の宵青く浮かんだ廃校舎
秋の星鳳翔太鼓鳴り響く
美郷から世界へ向けて長き夜

■プレバト纏め 2024年10月3日
俳句タイトル戦「金秋戦」 自分で撮った写真で一句
スマホの中の写真を自分で選択

1位 的場浩司 島根県隠岐諸島で一句
三日月や真朱(まそほ)の隠岐に藍の波
(三日月 秋の季語 真朱 混じりけの無い朱色を意味する古い表現
 三日月を詠嘆 ややくすんだ朱色 藍も伝統的な色
 美意識が言葉に入っていて言葉だけでスケッチができている
 一言一句置くべき位置に選び抜かれた言葉が置かれている)

2位 千賀建永 宮古島の星空で一句
灯台の周期星月夜の無辺
(星月夜 秋の季語 対句表現 灯台は一定のリズムで光を放つ
 星月夜は宇宙とつながる広大な自然 対比もいい 
 損をしたのは「無辺」消極的表現だった)
灯台の周期星月夜の深閑

3位 村上健志 ベビーサークルで一句
長き夜や絵本の丸き角を拭く
(長き夜 秋の季語 家庭の風景だと読める 
 長き夜と絵本の取り合わせが「あるある」
 拭いているは工夫が見える 類想感で順位を落とした)

4位 藤本敏史 八百屋さんで一句
銀杏の実剥き終へ自由になる十指
添削(「に」を消した方が臨場感が高くなる)
銀杏剥き終へ自由なる十指

5位 横尾渉 スカジャンで一句
外苑はさやか孤食のカチョエペペ
添削(さやか 秋の季語 爽やかな秋の心地良さ
   カチョエペペ チーズと胡椒だけのシンプルなパスタ
   カチョエペペとさやかの響あいはおもしろい
   評価の分かれ目は孤食 評価をあげたければ一人とする)
外苑はさやか一人のカチョエペペ

6位 立川志らく 夕焼けで一句
師が逝きひぐらし号泣しております
添削(ひぐらし 秋の季語 静かにカナカナと鳴く
   鳴き方に対して号泣は強引 季語との相性を近づける)
しずかなる号泣ひぐらし逝き

7位 森迫永依 インドネシア・カリマンタン島で一句
待宵のジャングル細切れのラジオ
添削(待宵まつよい 秋の季語 ジャングルと細切れの因果関係
   細切れを「瀕死なる」「盗品の」にすれば3位だった)
待宵のジャングル瀕死なるラジオ
待宵のジャングル盗品のラジオ

8位 千原ジュニア 稲穂と合掌造りで一句
稲穂波合掌屋根を上りけり
添削(稲穂波 秋の季語 書き方で損 季語を主役に立てる)
合掌屋根を登らむ稲穂波

9位 梅沢富美男 劇場で一句
芝居小屋奈落の闇を虫時雨
添削(虫時雨 秋の季語 奈落に闇はいらない 終わっている事を抑える
   土間の闇から虫の声が聞こえてくるのがわかるようにする)
芝居果てし奈落の土間やの闇

10位 森口瑤子 行き止まりで一句
方向音痴ぐるぐるぐるぐる秋思
添削(秋思 秋の季語 秋に感じるもの寂しい感じ
   意図がわかりすぎる一句 
   行く方ゆくかた 進んでいく方向 心を晴れやかにする方法
   進んでいく方向を失いつつ心を晴らす方法を失っている
   少し詩の方向に舵取りができる)
行く方を失いぐるぐるぐるぐる秋思

2024年10月3日木曜日

こころの時代 心とは何か 脳科学が解き明かすブッダの世界観

花丸のたまごを載せた秋の朝
小さきまま色の変わった苦瓜が
柿紅葉ジョルジュ・ルオーのマドレーヌ
月の暈神々しさと静けさと
日毎増す忘却力と星月夜

■こころの時代 心とは何か 脳科学が解き明かすブッダの世界観
脳外科医 浅野孝雄氏 僧侶・仏教学者 佐久間秀範氏

・諸行無常
すべてのつくられたものは無常である
万物は常に変転してやむことがない
・諸法無我
すべてのものは実体として存在しているものはない
すべての形成されたものは変形する

諸行無常について
生成 変化 消滅 こういうサイクルがどこまでも続いていく
日本でも仏教を捉えるときに「プロセスの存在論」という捉え方をしている
「方丈記」
ゆく河の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず
よどみに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて
久しくとどまりたるためしない
ブッダはなぜ「諸行無常」を押し出したか
世の中には落ち着くことはない 物事はすべて変化する
一定・同一性を保つものがないこと自体が人間にとって「苦」の原因になる
ブッダが「苦」と言ったのはそのこと
「プロセスの存在論」はハッピーにするものではなく苦しめる
「実体の存在論」にどうしても心がひかれるところを考えると
我々は言葉を自由に使うようになって便利だったので
言葉で表現しようとすることを覚えた ものを表現するときに
プロセス流れのままに捉えることが難しい 認識するには
流れているものを止めて概念化して言葉にしてたのではないか
一度「実体の存在論」に持っていかないと認識・物を判断が難しい
それでそちらに流れていった可能性もある
一定のもの変わらないものを人間は必要としている
現実生活の必要 自分の心の安定のために実体 
恒久不変な何かを人間は必要としている 求めてしまう
求めているものが存在すればいいのだが 現実にかつて存在したことはない
今も存在していない 姿を現してくれたこともない
「プロセスの存在論」を現実として受けとめて そこから人間とは何か
人間はどのような生きる希望 意味 価値を見出すことができるのか
考えましょうというのがお釈迦さまの基本的なスタンスだった

カオスとは周期で表現されているのは秩序 
非周期で表現されているのは無秩序
混然一体となているが非常にきれいな構造を持っている
そういうものをカオスと呼んでいる

十二支縁起 無明
そのときブッダなる世尊は菩提樹のもとにおられた。
縁起の理法を順の順序に従ってよく考えられた。
すなわち、無明によって生活作用があり、生活作用によって
識別作用があり、識別作用によって名称と形態とがあり、
名称と形態とによって六つの感受機能があり、六つの感受形態によって
対象との接触があり、対象との接触によって感受作用があり、
感受作用によって妄執(もうしゅう)があり、妄執によって執着があり、
執着にとって生存があり、生存によって出生があり、出生によって
老いと死、憂い、悲しみ、苦しみ、愁い、悩みが生じる
このようにしてこの苦しみのわだかまりがすべて生起する。
「律蔵」より 中村元訳

無明 行 識 名色 六処 触 受 愛 取 有 生 死
線ではなく円として捉えた
無明   行      識             
混沌   本能的な欲求 気づき
カオス  (志向性)   (大域的アトラクターの成立)

名色 六処 触 受 愛 取 有 生 死

「無明」はどう解釈するか
脳科学的な見地から見る限りにおいては混沌 カオス 天地の始まり
混沌の中から「行」志向性が働いて形を持った心的なプロセス「識」ができる
「気づき」という形になって気づきの対象がナーマ・ルーパ「名色」に分かれる
それから「六処」感覚器官が働いて「触」この「触」があって 
これはフリーマンの知覚理論とも一致している
「触」によって知覚が発生したあとに「受」という知覚の発生に対する
情動的な反応 快苦で人間は良い悪いを判断 
「愛」は憎と対になっている ともかく自分のものにしたい
あるいは逆に離れたい 愛憎という情動の一番強い形が出てくる
人間の情動反応が習慣となってそのレベルで生活している
動物の状態 その状態が「取」執着の状態 「取」までの状態は
すべての有情に共通する心のプロセス ブッダは仰ったと私は考える
そこからが問題 「有」というのは動物的に存在する我々が
「有」というあり方を観察すると いろんな抽象的な考え
たとえば愛 国 欲望 煩悩 これみんな抽象的な考え方
抽象概念というものが生じてくる ブッダは人間が
動物と違う人間であるのは「有」において瞑想を経て
抽象的な概念 表象を生み出すように至ったそのことを彼は強調
ブッダが瞑想修業の最初に悟ったことだろう
死は大域的 アトラクターの崩壊 それにより無明に戻り
新たなるサイクルに入っていく

「大域的アトラクター」というのは常にその下で混沌が渦巻いている
条件が変われば当然変わって全部1回崩壊
その現象を瞑想においてブッダは捉えていた それが刹那滅(せつなめつ)
その頃はまだ刹那滅 クシャナ クサニカ その言葉はまだなかった
ブッダは「生死(しょうじ)」という言葉で表した
「生」生まれるという意味 ものごとが生じること 2つの意味がある
「死」も同じ 人間が死ぬことだけではなく 
ものごとが消失すること 滅すること 生じたものは滅する
それが「プロセスの存在論」ブッダは「生死」ということで
人間が「有」から「生死」を経て 六道輪廻(ろくどうりんね)
天海の世界に行くのではなく 生が継続 循環的に継続する
「苦」というのは生きているうちに生じて滅するものであると
ブッダは考えられた 「生死」というのは思考の回転
ブッダは循環的回転を「生死」「無明」いったん
頭の中で空白になるというプロセスで表現された
「無明」の中からまた新たな五蘊(ごうん)が生起してくる
これが循環 
人間の心の働きとは十二支の連関をもって回り続けている
十二支縁起として言われたんじゃないか
円環的に捉える 「生死」生住異滅 生じたものは滅する
さらに「無明」に結びついて人間が次第に意識のレベルが
進んでいくと仰っているように聞こえる
瑜(ゆ)伽行派の文献の中で興味深いものがあって
仏教では瞑想という修行法 
インドで古くからあるものを引き継いでいる
ヴィパッサナー(ヴィパッシュヤナー) サマタ(シャマタ)
サマタとヴィパッサナーを繰り返すことによって
レベルが次第に上がっていく
転依思想 我々の基本的な基盤になるのが
修行法を使うことによってレベルが上がっていく
抽象概念「愛」意識が散乱してどこへ行くかわからない場合に
心を一点に集中させていく 何もない状態でものを観察するのは
難しいので瞑想の対象を置いて意識を集中させて訓練
熟練してよくできるようになってきたら対象を外しても
向き合うことができる これがサマタのやり方
意識を広げていったり集中させていったり巧みにできるようになる
ここでカオスが入ることが極めて重要 カオスが入らないと
人間はそれまで学んだこと言葉も含めて習慣として行動で
身に着いたことを繰り返すだけ 「無明」があって頭の中に
あった先見 偏見 既成概念が一時消えて 無明の状態
混沌の状態 自分が意志を持っていればある方向に対して
意志を持っていればこれを発心という その方向に従って
新たな考えが生まれてくる 循環関係の中で唯識では種子 善の種子
十二縁起を通して刹那滅を経ながら積み重ねていくうちに
考え自体も洗練されてより良い考えになっていく
そこに修業の意味がある 

津田一郎教授 
神は方程式を決めたかもしれないが
その中で起こっていることは我々にとってすごく自由度がある
それが人間の自由意志 決定論に従っているけど
自由意志が必ずある 裏打ちしてくれるのが カオス現象
あるいは カオスのアトラクター
カオスというものが存在することを
人類が理解したことで我々は救われている
決定されているかもしれないが実は決定されていない世界で
我々は生きることができる

佐久間秀範教授
仏教がなぜ今日まで伝わっているか
思い悩み苦しんでいる自分 そういう方がいるとしたら
どうしたら心が安らかになり 安寧になるか
そこを目指すのが一番基本にある
ブッダが説いた 自分の悩み 苦しみはどうして起こるのか
一番基本的なものの見方 ものごとをあるがままに見る
自分の固定観念にとらわれるのではなく あるがままに
変化するものはそのまま捉えていく 難しいことだが努めていく
心安らかな状態はどうしたら生まれるのか
行き着けないと感じる時は祈りを捧げる
祈りは難しい行動ではあるがそういう姿が大事

浅野孝雄教授
ブッダはありのまま「如実知見」と言われた 何がありのままなのか❓
自分の頭で考えなさいということ 自らによれ 法によれ 自らを島として
自らに頼れ 法を島として 法を頼って 他のものを頼ってはいけない
独立自尊 誇りを持って ひとりひとりが 自分自身の生き方を
考えながら生きていきなさい ブッダは言われるんだなと
私は解釈している

佐久間秀範教授
良い悪い あるがままといっても 言葉を受け取った人が
自分の勝手な解釈で行えばブッダの意図とは違ってくる
ものごとをあるがままに見なさい そして
他の人の意見に惑わされるのではなく 自分をよりどころとして
あるがまま ダルマ 真理 「法」それによって歩んでいきなさい
と言われた 「涅槃行」ブッダが残された言葉が一番最後に出てくる

さあ 最後の教えを示しましょう 我が弟子たちよ
世の中のものは全て変わりゆく あなたたちは怠ることなく
正しく生きていくことに努め 励みなさい
これが私の最後の教えです

「プロセスの存在論」をよくわかるように自分の中に
薫(た)き込めて認識して 変わるのだから諦めてしまえではなく
正しく生きることに どの瞬間も務めなさいと残されていると思う

2024年10月2日水曜日

あの本、読みました?第2弾!名著に名酒あり

秋扇開店前の駐車場
汗だくだくで待つオープンや秋の服
秋彼岸ぽたぽた落ちる汗拭う
品揃え悪しきスーパー秋湿り
You-Tube栗の鬼皮剥けませぬ

■あの本、読みました?
第2弾!名著に名酒あり~加藤シゲアキ&森見登美彦&夏川草介
「なれのはて」加藤シゲアキ著 講談社
「スピノザの診察室」夏川草介著 水鈴社
「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦著 角川文庫
作品に登場するお酒に注目して読めば違った面白さが見えてくる

・「スピノザの診察室」登場人物に隠されたお酒との深い関係とは?
夏川草介

指定された店は、軒先に鉄製のランタンを下げた
瀟洒(しょうしゃ)な洋酒店であった。
(中略)
「なるほど」と無難な相づちを打つ葛城の横で、
花垣は赤ワインの注がれたグラスを手に取った。
軽やかにテイスティングして、
ウェイターに向かってうなずいてみせる。
一連の流れるような動作を、
龍之介は緊張で身を固くしたままじっと見つめている。

雄町先生が飲まない理由は❓
お酒のシーンを描く理由

涼しげなカクテルが届いた。「淳ちゃんが飲んでいるズブロッカを、
リンゴジュースで割ったシャルロッカ」そう行ったカレンは、
グラスの横に小皿を一つ並べた。
皿の上には黒光りする直方体が二つ載っている。
「こっちはサービス、この前お客さんがお土産にくれた『夜の梅』」
「とらやじゃないですか」思わず哲郎は声を出していた。
とらやの羊羹は、哲郎が東京にいた頃からの大好物のひとつだ。
言わずと知れた和菓子の名店だが、もともと京都創業の老舗である。
「ウォッカと和菓子って結構マッチするんよ。
淳ちゃんがお友だちを連れてくるなんて珍しいから特別ね」
(中略)
「私は狂気の果てを見て、そこから逃げ出してきた人間です。
それなのに逃げ出した先では、あなたのような医師が、
淡々と死と向き合っている。狂気も死も、人間いう存在が
成立するぎりぎりの外縁に漂う宇宙ですよ。迂闊に近づけば、
戻って来れなくなる。いや、戻って来る意味さえ見失います。
勇気はいくらあっても足りません。」
アルコールの影響もあるだろう。いつになく滔々と語りながらも
秋鹿のビーム砲は、ますます精度を増していく。

医者の苦悩を表現するお酒
シャルロッカを登場させた理由
ポーランドのウォッカをリンゴジュースで割ったカクテル
登場人物の名前はお酒からつけた

・小林順 大曽根幸太 木村衣有子
大曽根幸太
「なれのはて」「夜は短し歩けよ乙女」
担当編集者が語るお酒とその狙いとは?

酒蔵に行く前に、見せたいところがあると京佑は言った。
山道を行くと、どことなく見覚えがあるような気がした。
(中略)
「ただいま」守谷がそう言うと、父はぶっきらぼうに
「手伝え」と手招きをした。父が収穫していた針葉樹には
ブルーベリーよりも小さい青黒い実がいくつもなっていて、
彼はそれをこそぐようにして籠に集めていた。
「これ、なに?」応えようとした父や京佑よりも早く夏米が
「知らないの?」と小馬鹿にする。「ジュニパーベリーだよ」
守谷は「へぇ。ということは、この樹がセイヨウネズか」
と声を漏らし、改めて樹を見る。
「もしかしてこれでジンを?」京佑が嬉しそうに頷く。

クラフトジンを登場させた意味

「ジンはなんでもありだ。せっかく器の広い酒なのに、
こっちで収まりよくしてどうする。全部この地の
ボタニカルで作ったジンを
まずは作って、まずかったらそこから考えればいい」
(中略)
「全部自分でやると、失敗しても誰かのせいにしないでしょう。
それがいいんだよ。
自分で責任をとるというのは、実はすごく楽なことなんだ。」

「謝ることはない」父はそう言って、
自分の猪口にとっくりから日本酒を注いだ。
「誰も知らないところで闘うのは簡単じゃない。
おまえは自ら苦労を貰いにいった」
溢れそうになる酒に父が口をつける。守谷も少し日本酒をもらう。
「親父もそうだろ。この酒蔵、ひとりで建て直したんだ」
そう言うと、父は笑った。
「まあな。だからわかる。自分から苦労したくなる性分も」

実家の日本酒に込められた意味

・小林順
「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦著
電気ブラン
東京の神谷バーで明治15年に考案されたカクテル
様々なお酒が使われているが製法は秘伝となっている

「そもそも電気ブランというのは、大正時代に東京浅草の
老舗酒場で出していた歴史あるカクテルでね、
新京極のあたりにも飲ませる店はある」
「偽電気ブランというのは、電気ブランとは違うのですか」
「電気ブランの製法は門外不出だったが、
京都中央電話局の職員がその味を再現しようと企てた。」
試行錯誤の末、袋小路のどん詰まりで奇蹟のように
発明されたのが、偽電気ブランだ。偶然できたものだから、
味も香りも電気ブランとは全然違うんだよ」
「電気を使って作るのでしょうか」
「そうかもしれんね。電気ブランというぐらいだからねぇ」

森見登美彦が考案した「電気ブラン」

「有頂天家族」森見登美彦著 幻冬舎
京都を舞台に狸の家族が人間や天狗と繰り広げる
奇想天外な青春感動ファンタジー

一杯。一杯。一杯。
(中略)
偽電気ブランドをお腹に入れながら、私は無性に
楽しくてなりませんでした。美味しうございました。
幾らでも飲めるのです。そして、わたしはこの勝負が
永遠に終わらなければ良いのにと願ったのですが、
気づくと目の前の李白さんが動きを止めておられました。
テーブルの上に置かれたコップには、
皺だらけの手のひらがかぶさっていました。
「儂(わし)はもう飲むことができない」李白さんはそう仰いました。

偽電気ブランだから生まれたネ名シーン

Bar MoonWalk
森見登美彦が京都大学在学中に通っていた
「月面歩行」のモデルとなった京都にあるBar

甘くもなく辛くもありません。想像したような、
舌の上に稲妻が走るようなものでもありません。
それはただ芳醇な香りをもった無味の飲み物と言うべきものです。
口に含むたびに花が咲き、それは何ら余計な味を残さずに
お腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わります。
それがじつに可愛らしく、まるでお腹の中が花畑に
なっていくようなのです。
飲んでいるうちにお腹の底から幸せになってくるのです。

・木村衣有子
「BOOKSのんべえ お酒で味わう日本文学32選」
木村衣有子著 文藝春秋

「アンソーシャル ディスタンス」金原ひとみ著 新潮文庫
ストロングゼロ
私ちょっとコンビニ寄ってくから。二人にそう言い残して
先に社食を出ると、歩いて三分のコンビニに入り
ストロングのレモンを二本手に取りチョコやグミと共に買う。
コンビニを出ると人通りの少ない路地に入り、電柱に背を
凭(もた)せながらハンカチで覆ったチューハイを一気に飲みした。

「ストロングゼロ文学」とは?
ストロングゼロを使う意味

・青山美智子
お酒の小説を書いた意外なきっかけ

「ほろよい読書おかわり」~きのこルクテル~一文
青山美智子著 双葉文庫
そちらに目をやり、僕はハッとした。
シェーカーを振るいずるさんの姿が、
びっくりするほどなまめかしかったからだ。
細い指先から流れる腕のしなやかさ、半開きの瞳。
束ねた黒髪がつややかに揺れた。すべての所作に無駄がなく、
官能的で美しい。いずるさんは銀色のシェーカーから
三角のグラスに向かって、とろりと白い液体を流し込んだ。
「フローズン・ダイキリです。」
(中略)
「飲んでいけば」フローズン・ダイキリを指さしている。
僕は戸惑った。下戸なんです。とは言いづらい。
「…あ、いえ。ありがとうございます。
でも仕事中は飲むなと編集部から言われていまして」
「なんだ、酒癖でも悪いのか」「そんなところです。好きすぎて」

飲めない人のリアルな気持ちを描いた

「シャーリー・テンプルってどういう意味なんですか」
「幼くしてハリウッド・スターになった名子役の名前よ。
昔アメリカで禁酒法が撤廃されたときに、大人だけじゃなくて
子どもも親と一緒にカクテルを楽しめるようにって
名付けられたんだって」「…いい話だなぁ」
心が弱っていたからか、僕はじーんと胸を打たれて泣きそうに
なってしまった。その頃、カクテルと共に楽しいひとときを
過ごした家族がいるのだ。幼いハリウッド・スターの名前を
冠したこの赤い飲み物で、グラスに合わせて乾杯してであろう
子どもたちの笑顔を思い浮かべ、僕は本当に幸せな気持ちになった。
「いいな。カクテルに込められたストーリーが飲んだ人を
ハッピーにするんですよね。素敵な物語は、人を優しく
酔わせる力があって…。自分の話じゃないのに、
まるで自分のことみたいに」
ほろ酔いしたみたいないい気分で、僕はぼんやりとそう言った。

シャーリー・テンプル感動の由来

2024年10月1日火曜日

村木厚子の知恵&理想的本箱 EDITION愛&第9回尻文字三角パス②

夕月夜涙の涸れる時もある
背景はアガパンサスと満月と
零余子(むかご)生る犬のじゃれ来た昨日今日
(高倉)健さんがお好きでしたね野菊咲く
手を振るも振り向きもせず去る燕

■先人たちの底力 知恵泉 徳川三大を支えて大出世! 土井利勝
村木厚子(週休二日制 男女雇用均等法) 和田明日香 大石学

武家諸法度 参勤交代 鎖国 重要な政策に関わり幕藩体制の礎を築く

知恵その一 偏らないことが信頼を生む!

村木厚子の知恵
全部を見ているからどこでバランスをとるか決められる
その人の立場で考えて説得する
「全体を見てやっている」と全方向から思われないとできない
●調整するためには自分の中に軸をつくる
みんなの意見や状況を見ながら一番いいところを見つけていく
みんなを引っ張ってくる
●いい関係が長続きするには率直であることが大事
言いたいことは言い続けよう
ひとりの意見は弱いがみんなの意見を聞いたことで強い声になる
●相手にちゃんと説明できて分かってもらう力が必要

知恵その二 私情をはさまず事実に基づき判断しろ!

村木厚子の知恵
一番反対の強いところへ行って公聴会をやりなさい
逃げずに反対派に説明したことが信頼につながった
事実は強い
データや理論に基づいて決めたものが一番説得力がある
ブレる人は信用したくない ブレないために事実を把握する
●偏った意見に引っぱられない

和田明日香の知恵
信じたいところだけを信じていると必要なものが見えなくなる

村木厚子の知恵
私心がない
幕藩体制を設計している感じがかっこいいプロ

■理想的本箱 君だけのブックガイド EDITION愛
吉岡里帆 太田緑ロランス 幅允孝

さまざまな愛をめぐる珠玉の本たち

・「くまちゃん」著者 角田光代
人の気持ちは図々しい だから また 恋愛を始める

・「すべての見えない光」著者 アンソニー・ドーア 藤井光 訳
重なる奇跡 出会いの美しさ 儚さ

・「それから」著者 夏目漱石
よみがえる恋心 厳しい現実に悩む 
三千代「しようがない。覚悟を決めましょう」

・「愛するということ」著者 エーリッヒ・フロム 鈴木晶 訳
愛は技術である 愛はひたすら与えること 
孤立の克服こそが人間の命題
与える能力・技術があれば自由な幸福に近づける

・「カミングアウト・レターズ」編 RYOJI+砂川秀樹
19通の手紙のやりとり ノンフィクション
伝えたい間から踏み出せる

「あなたはお母さんを育てようとして、私のところに生まれたのかもね」
あなたは生まれつき人生にはままならないこともあるのだと
学ぶように定められていました。
それはあなたを苦しめたし生き難くしたでしょう。
でも、当たり前でない人生は豊かなんです。
悲しみの前で足を止めるのではなくどんな世の中でも
生き抜く強さを持ちなさい。優しく強かでありなさい。
涙を枯らさず笑顔でいなさい。そして長生きして
世の中が変わるのを見届けなさい。
「家族の誰の思い出のなかにも、生まれた時からの、あなたがいる。だから大丈夫」

■夏井いつき俳句チャンネル
【第9回尻二字三角パス②】次の尻文字は...?【「らい」】

来世とは死後の生なり黒揚羽   乃咲カヌレ
げはと吐く炎熱の息セーヌ川   夏井いつき
ガワだけはよろしいでんな心太   家藤正人
てんてんとこぼして春の離乳食   ローゼン千津
植林の計画頓挫鉦叩(かねたたき)   夏井いつき
タキオンと名付けて炎天の悍馬(かんば)   家藤正人
「んば」と呼ばれて嬉しかり赤とんぼ   ローゼン千津
ん、ぼんやりなんかしてない案山子の目   夏井いつき
のめやうたはん月を愛する民として   家藤正人
四天王寺に吾子を抱く春着(はるぎ)かな   ローゼン千津