病葉(わくらば)にちょこんと鎮座落し鱧
茗荷の子酢味噌とともに頬張らん
これが最後のスポットライト菖蒲
高所得者はバターに変える初夏
すべてから解放される夏の星
■NHK俳句 特集 夏井いつきの発想力を鍛えるドリル2
今回のお題「木漏れ日」
出演者 柴田英嗣 アンジェリーナ1/3 庄司浩平 ペンた丸
蠅とんでくるや箪笥の角よけて 京極紀陽(きよう)
①季語はあるか
「木漏れ日」は季語ではない
無季の俳句が駄目ではない
季語は生き物なので時代とともに変わる
②兼題の意味を理解しているか
【木漏れ日】木の葉と葉の間からもれる太陽の光のきらめき
木漏れ日は昼の太陽がもたらすもの
③ありがちな比喩が使われていないか
夜の光景に比喩をするのは無理がある
木漏れ日の光の強さを把握する
頭で想像するのではなく自分の目で見ることが大切
④不要な言葉を使っていないか
(書かなくてもわかる言葉 意味が重なる言葉)
季語に入っている映像は記さない
重複する言葉 いらない言葉が入っていないか 客観的な目でチェック!
⑤詩はあるか❓
報告・説明になっていないか 日記のようになっていないかチェック!
⑥読み手に伝わるか❓
独りよがりな表現になっていないか
読者の立場になって客観的に振り返る
投句する前にチェック!
■NHK短歌
スペシャル 短歌で「光る君へ」を10倍楽しもう!
「光る君へ」に登場する和歌を、歌人・俵万智女史と作家・渡辺祐真(すけざね)氏が解説。
人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな
万智訳
子を思う親の心というものは闇にさまよう迷子のごとし
▪俵さんのおすすめのシーンと和歌
嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る
右大将道綱母
万智
あなたがなかなか来なくていつ来るのかしらと
嘆きながらひとりで寝ている夜が明けるまでの時間が
どれだけ長いかあなたは知っているの
恋愛の嫉妬
すけざね
ドラマのシーンだと歌が全く違った意味を帯びる気がした
兼家はこのあとなくなるので寧子(やすこ)はこれからひとりになる
いよいよ「ひとり寝る夜」が本当にひとりっきりで寝るようになる夜になる
孤独 寂しさがより募ってくる
万智
永遠に来ないあなたを待つ時間に変わっていく
兼家が振り返ったときに「輝かしい日々であった」(と言った)
そんなふうに寧子と心のやりとりができたこと自体が
すばらしかったと振り返っている
2人の関係を象徴的に振り返らせてくれるのが和歌
和歌の喚起力 時間を閉じ込める力
すさまじい力を感じさせる歌でありシーン
▪すけざねさんおすすめシーンと和歌
忘れじの行く末までは難ければ今日をかぎりの命ともなが
儀同三司母
親子そろって思い出の歌を読んで臨終する
昔詠んだときは恋愛の歌 思いを告げてくれたときに
思いは変わらないなんて言うけれど そんなのはいつまで
続くかわからないからああ今日で終わりでいいのに
命がなくなってもいいのに
情熱的な一句
最後に「この歌で貴子と決めた」それくらいの強い思いで
添い遂げたことがこの一首で伝わる
亡くなるまでこの31文字が道隆のなかに
貴子への愛として生きていたことが改めてリフレインされる
万智
みんな女性からもらった歌を口ずさんで死ぬことで
株を上げて消えていく
滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
大納言公任
万智
流麗な言葉の流れが滝の流れを彷彿とさせる
音としてすごく好きな歌
韻のふみ方は現代短歌にも参考になる
すけざね
公任は祖父も父も有力な政治家だったが早めに引退
そのあと彼は政治的にはあまり成功できなかった
しかし今なお文化人としての名前はとどろいている
公任に重ねて読みたくなる歌
万智
私は実体はなくなっているのに名前だけとどろいているのは
いいことなの?と思ってしまう
すけざね
有名無実みたいな?
万智
百人一首の歌でもまだまだこれからもいろいろ読める
▪道長からまひろに送られてきた和歌
思ふには忍ぶることぞ負けになる色には出でじと思ひしものを
よみ人しらず
死ぬる命生きもやするとこころみに玉の緒ばかりいはなむ
藤原興風
命やは何ぞは露のあだものを逢ふにしかへば惜しからなくに
紀友則
万智
「古今和歌集」の恋の歌からとっている
どんどん恋の思いが進行している
「古今和歌集」の並べ方は恋一恋二あたりは恋はしているけれど
結ばれていない 恋三になると実際に結ばれる
紀友則の歌は恋二の最後の歌 この歌を送ったら
次は結ばれるしかないくらいの瀬戸際な感じ
やるなあ道長
すけざね
ドラマでは道長の和歌に対して まひろは漢詩を送る
道長は最初そのことの意味がわからず
友人・藤原行成に聞きに行った
2人のなかで見ているものが違う気がする
まひろは道長に対して国の政治をこうしてほしい
こうあって欲しいと願っている 道長はまひろに対する
思いがあふれてどんどん大きくなっている
それが2人が和歌と漢詩を選んだ意味かも
万智
和歌で返してしまうと思いが
ただ漏れてしまうのではないかという不安
和歌は思いをのせるものだから 漢詩・漢字を
よろいのように自分の心に着せて愛しい思いが
だだ漏れないようにせき止めているのかも
万智
まひととききょう
「枕草子」が生まれることになったやりとり
四季春夏秋冬とサジェスチョンしたときに
見ている人ほとんどが「春はあけぼの」「夏は夜」と思ったはず
古典を習っていて良かったな
すけざね
「たったひとりの悲しき中宮のために『枕草子』は書き始められた」
を受け止められずにはいられない
万智
すごく示唆的
「多くの人に伝わる歌はどうやったら作れますか❓」と聞かれる
最初から多くの人 不特定多数の人を狙って作ってもうまくいかない
歌もたったひとりの人のために作った歌が
結果として多くの人に読まれたり愛されることはある
あのシーンはすべての創作について大切なポイントを教えてくれている
夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
清少納言
藤原行成と清少納言のやりとり
ある夜に行成と清少納言がしゃべっていて
行成が用事があって早く帰ってしまった
後日 行成が「早く帰ってしまってごめんね」と言ったところ
清少納言が「鳥のそら音でしょ」「うそでしょ」と冗談っぽく責めた
万智
鳥のそら音:古代中国の政治家孟嘗君が
函谷関を鶏の鳴きまねで通り抜けた故事
行成が「函谷関じゃなくて逢坂の関を開けたい」と言う
すけざね
「逢坂の関」があなたへの思いは本物ですよということもふまえている
万智
私の逢坂の関をあなたが超えることは許されません
かっこいいやりとり
すけざね
機転に富んでいる
万智
めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな
紫式部
幼友達と久しぶりに会ったけれど短いやりとりだけで
お別れになってしまった それを雲隠れした月にたとえている
道長との何かでこの歌が使われたらどうしよう
「枕草子」は清少納言 ❝をかし❞の文学
「源氏物語」紫式部 ❝あわれ❞の文学
❝あはれ❞は「ああ」と言う心の奥から
生まれてくるいみじみした感慨を表わす
❝をかし❞は知的に楽しめるウィットに
富んだ楽しさを表わす言葉
契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは
清原元輔
やすらはで寝なましものをさ夜ふけて傾くまでの月を見しかな
赤染衛門
心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
三条院(三条天皇)
有馬山猪名の笹原吹けばいでそよ人を忘れやはする
大弐三位(紫式部の娘)
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