猛暑日を凌霄花(のうぜんかずら)鮮やかに
マリーゴールドの甘い香り受け取らん
劈(つんざ)ける蝉の雄叫び堂々と
寺で生く鯉と桔梗や涼やかに
熱帯夜思考停止となりにけり
■あの人にあいたい 伊集院静
伊集院さんは昭和25年山口県生まれ。
広告代理店でCMなどを手がけた後、昭和56年「皐月」で作家デビュー。
昭和59年、俳優・夏目雅子さんと結婚するが、翌年白血病で亡くす。
少年時代の経験をもとにした「海峡」や、妻の死後、
立ち直るきっかけとなった作家・色川武大さんとの出会いを描いた
「いねむり先生」など、自伝的な小説を執筆。
「受け月」で直木賞を受賞。
作詞も手がけ、「愚か者」で日本レコード大賞を受賞した。
文章とか言葉を1回洗って出してあげるっていうね
その方が毎日働いて寝る前にね
小説を読んでみようかっていう人には
ちょっと入りやすいんじゃないかと
ちょっと母屋とは離れたところで
父親が「女の中で育っちゃダメだ」って言うんで
小学校に上げる前にもう別棟で
お小遣いとかもう全然必要ないと
自分で小遣いが欲しければ何かアルバイトをしてという
非常に厳しかったですね
小学生のころ夢中になったのは野球です
感動がありましたね 打球の音だとかね
青空へこう球が飛んで行ってみんなが追いかけて
打った人が走ったりね こんなすてきなものがね
あるんだと思いましたね
立教大学時代の野球部に入部した伊集院さん
あのころはまだ野球肘になったら大体終わりだったんですね
手術ができなかったんです ぼくらの時はまだ
ただもうこれだけ一生懸命やったんでね
私は残りの2年で自分の生きる一つの道をね
探さなきゃいけないって自分で思っていたんで
「もう僕は帰らない」って言って仕送りは全部止められて
でも東京という都会へ来たときに
非常にいろんなことを学びましたからね
もう自分でアルバイトして卒業すればいいと思いましたからね
卒業後、広告代理店に就職するも違和感を感じるように
どうの人とね たくさんで仕事をしていくと どうも僕はいつも
ぶつかってしまうんですよね 僕はまだ若かったんで
人間社会っていうか浮世みたいなものがね 間違いもあって
浮世なんだっていうことが分からなかったんでね
会社を辞めフリーに
1981(昭和56)年「皐月」で作家デビュー
1984(昭和59)年俳優夏目雅子さんと結婚
しかし、翌年白血病で夏目雅子さんが27歳で死去
そばにいて突然だったから それはなかなか大変ですよね
最初はね 家族は皆こう思うんですよ 何であの子だけとか
何で自分だけこんな目に遭わなきゃいけないって
酒やギャンブルに溺れ、仕事が手につかなくなります
そんな時知り合いの紹介で知り合ったのが作家色川武大(たけひろ)さん
2人で全国各地を回ることになりました
先生(色川さん)が自分という若い名もない人間を
何となく勇気づけてやろうっていうね
人生の経験値が非常に広いっていうことと
それから決めつけないで話を聞いてくださるとかね
そういうのに少しずつ何かかたくなにしているものが
和らいでいったんだと思います
後にこの時の経験をもとに「いねむり先生」執筆
耳の奥で声がした。先生の声だった。
「人は病気や事故で亡くなるんじゃないそうです。
人は寿命で亡くなるそうです」
なら彼女は、それが寿命だったのか…。
彼女の死を自分なりに受け止めた伊集院さんは執筆活動を再開
妻の闘病生活を題材にした「乳房」
少年時代の経験を元にした「海峡」
自伝的な作品を執筆していきます
1992(平成4)年には愛してやまない野球を軸に人生の悲哀を描いた
「受け月」を発表 直木賞を受賞
小説は人の人生を変えることはできないんですよ
悲しみをなくすことはできないの
だけど小説のね 一つの役割で私はね
「小説は人の悲しみに寄り添っていけるはずだ」
っていうのがあるんですよ 小説を読んだことで
「ああここにもこういう悲しい人たちがいるんだ」というね
「だけどこの人たちも再生したんだ」っていうね
そういう力はね 私は小説にはあると信じて書いているんですけどね
「大人の流儀」シリーズも執筆 累計230万部を誇るベストセラーに
大人というのは自分の責任を果せること
同時に自分以外の誰かに何かをしてあげる力を持っていること
そして自分以外の誰かに力を与えるということが実行できること
それが僕は大人だと思いますね
ワープロは使わず原稿は手書き 独特の書き方をしています
1マスに2文字書くんですね 100枚書くとね 原稿用紙っていうのは
肉厚でね 膨らんでくるんです このぐらいの100枚書くと
でもこれだと50枚なんで100枚を見ると
「ああちょっともう働いて疲れたな」と思うんだけど
このぐらいだと50枚だとまだ何とか
もう少しできるかっていうのがあるんですよ
1992(平成4)年 俳優篠ひろ子さんと結婚
その後、篠さんの故郷仙台に移住 東北大震災に見舞われます
自宅が半壊
1年経っていかこの形だから どうこの街を再生して
いいかっていうことが皆も戸惑っているんだよね
当時の思いを歌に託しています
「哀しみの終わりに」作詞 伊集院静
本当ですね 哀しみが終わって いつか笑える日が来る
まぁ悲しいかな 失敗とか忍耐とか苦節とか
そういうものでしか 人間は成長しないからね
自分から進んで 風の中にとか 水の中にとか
そういう所へ行ってみようと じゃあ その精神というのは
やっぱり挑んでみようっていうね
作家 伊集院静 1950-2023
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