2024年7月4日木曜日

100分de名著 キャンベル「千の顔をもつ英雄」(1)

三島喜美代女史へ
梅雨の月塵を使って塵作り
梅雨の星塵から塵を作り出す
土から作る割れる新聞夏日
梅雨晴れる紙を土へと置き換えて
情報を焼き物とせり梅雨晴間

■100分de名著 キャンベル「千の顔をもつ英雄」(1)
第1回 神話の基本構造「行きて帰りし物語」
ジョーゼフ・キャンベル(1904~87)
人類共通の「物語の構造」

神話の中の英雄は何者かの召命を受け異世界への冒険の旅へと旅立つ。
異世界で英雄はさまざまな試練に直面しながらも、
それらを乗り越え大いなる秘宝を得る。
最後に英雄は、自らが得たものを携え、
さまざまな障害を振り払いながら、現実世界に帰還。
その世界に豊かな実りや変化をもたらす。
こうしたプロセスが私たちの人生のプロセスと見事に重なり合うという。
第一回は私たちは「神話の知恵」から何を受け取ればよいかを考える。

戦略デザイナー/多摩美術大学特任准教授 佐宗邦威(さそうくにたけ)

2人の子どもと母親が象にのみ込まれた物語
主人公が何者かにのみ込まれる神話はこれだけではありません

アイルランドの英雄フィン・マックールは、ケルト世界では
ピーストとして知られる、形のはっきりしない怪物に
呑み込まれた。ドイツの少女、赤ずきんは、
オオカミに呑みこまれた。ポリネシアで人気のあるマウイは、
曾祖父の母ヒネ-ヌイ-テ-ポに吞み込まれた
ギリシャの神々は、ただ一人ゼウスを除いてすべて、
父であるクロノスに呑み込まれた

英雄神話 物語の共通パターン 
英雄はごく日常の世界から、自然を超越した不思議の領域へ
冒険に出る。そこでは途方もない力に出会い、決定的な
勝利を手にする。そして仲間に恵みをもたらす力を手に、
この不可思議な冒険から戻ってくる。

モノミス=単一神話論(英雄の旅)
出立・旅立ち X 試練 Y 帰還 Z
英雄の物語の基本構造
神話に共通点があるのはなぜ?
キャンベルは心理学者C・G・ユングの影響を受けた
集合的無意識 集団の中にも無意識が存在し
その中に共通の元型・パターンがある
集団の無意識の中になる共通の元型に
神話は影響を受けているのではないか
(神話は)人類がこの世界を生きていくうえで
共通のノウハウとして太古から残ってきた

未来のブッダ
ゴータマ・シッダールタの伝説
試練 愛と死の神 カーマ・マーラの登場
この恐ろしい神は、象に乗り、一○○○の手に武器を持って現れた。
(中略)しかし「偉大なる者」の心は取り乱すことがなかった。
創造神ブラフマーの願い 帰還 世界中の人々に教えを説く

キャンベルが世界のクリエイターに与えた影響
「スター・ウォーズ」(1977)監督ジヨージ・ルーカス
主人公ルーク・スカイウォーカーが銀河系を舞台に
仲間と冒険を繰り広げ成長してゆく物語
「キャンベルは人生における3人のメンター(助言者)の1人」
「『千の顔をもつ英雄』に会わなければ
今も脚本執筆を続けていただろう」
「現代の神話」を作ろうと思っていた

ハリウッドのストーリー・コンサルタント 
クリストファー・ボグラーが7ページの
「千の顔をもつ英雄」実践ガイドにまとめた
ハリウッドにおけるストーリー開発のフォーマットになっている
日本では2002年「神話の法則」として出版された
この影響を受けて「マトリックス」や
「ロード・オブ・ザ・リング」が作られた
世界中の小説・舞台・ゲームの
シナリオなどにも影響を与えている
神話には人間が本能的にワクワクしちゃうものがあるはずだ

「人が根本的な自己存在を探して内面へ向かう旅こそ、
私が四十年前に書いたささやかな本、
『千の顔をもつ英雄』で考察を試みたものです」「神話の力」

ジャーナリスト ビリ・モイヤーズと対談
英雄の旅の構造は原始的な部族社会の思春期儀礼
既に先取りされている

この儀礼を通して、子供は子供らしさを放棄して
大人になることを強制される。いわば、幼な子の
人格と精神において死に、責任あるおとなとして
よみがえるわけです。これはだれもが
経験しなければならない基本的な精神の変身です。
「神話の力」訳 飛田茂雄

子供時代の私たちは、誰かの保護と監督に依存しています。
(中略)だれかに叱られたり 誉められたりしながら、
(中略)おとなしく依存している存在です。
この心理的未成熟の状態を抜け出て、
自己の責任と自信とに支えられた勇気を持つためには、
いったん死んでよみがえることが必要です。
これが普遍的な英雄の旅の基本的なモチーフですー
ひとつの状態を去り、より豊かな、より成熟した状態に
達するために生命の源泉を見つける、というのが。

華々しい英雄じゃなくても自分の内部における
精神的な旅をしなくてはいけないのか

神話のなかには、ヴィジョンの探求と言いますか、
神からの賜物やヴィジョンを求めて旅立つという型のものが
あって、どの民族の神話でも形式は同じです。(中略)
自分の世界を後にして深淵(しんえん)へ下っていく、
あるいは遥かかなたへあるいは天の高みへ昇っていく。
そしてそこで、自分がそれまでいた世界では
意識できなかったものに出会う。
人が根本的な自己存在を探して内面へと向かう旅こそ、
私が四十年前に書いたささやかな本、
『千の顔をもつ英雄』で考察を試みたものです。

キャンベル自身の話が「英雄の旅」に当てはまる
英雄の旅はその人の成長の物語
「千の顔をもつ英雄」のもう一つの読み方
英雄の旅を一人一人の内面が成長していく
旅として読んでいく
自分自身こそが小さな英雄
自分の物語を自分で作っていく生き方を
するためのヒントとして活用する

0 件のコメント:

コメントを投稿