2024年7月30日火曜日

兼題「母」&題「おかえり/ただいま」

蒸暑し愛の形の歪みをり
風薫る生きた事実は残りたる
雲の峰人それぞれの感謝あり
(ヴィクトール・フランクル)夏の星鎖断ち切る人となる
(ヴィクトール・フランクル)憎しみの連鎖断ち切る夏の雲

■NHK俳句 兼題「母」
選者 高野ムツオ ゲスト 小坂大魔王 レギュラー 中西アルノ
俳人 山口昭男 俳人 なつはずき 司会 柴田英嗣 
年間テーマ「語ろう!俳句」

叔母二人アッパッパにて現はるる   山口昭男
蛇いちご母をまっすぐ見られぬ日   なつはずき
(「日」というのは俳句ではよろしくない 
 蛇いちご 無垢できれいないちご 「蛇」を逆の意味で使っている
 「蛇いちご」という季語を巧く表現している 蛇いちごの存在感 
 嘘っぽかったり 母に嘘をつくと言った意味が込められている)
涼風や母の頭に虫とまる   小坂大魔王
母の棚には伝家の宝刀離婚届   中西アルノ
添削 鏡台に母の宝刀離婚届 (シチュエーションを作る)
夜の蟬母の眠りへ落ちて来る   高野ムツオ
(夜の蟬の最近どんどん変わっている 昔は泣かなかった
 お母さんが眠って夢をみているときに外界から蝉が落ちてきたという意
 幻想性が入ったイメージを詠んだ)

▪特選三席発表 兼題「母」
一席 母の腰くの字に曲げる銀河かな   渡辺むめい
(年老いたお母さん 一生の時間を感じている 銀河は悠久の時間
 お母さんの生きている命の時間と銀河の豊かな時間が段々溶け合っていく
 お母さんに対する愛情を表現 魅力的でユニークな俳句)
二席 母だけに見える父をり風信子(ひやしんす)   主藤充子
三席 香水をふり百歳を目指す母   荒木信夫

麻服の母のテネシーワルツかな   源早苗
母として腹を蹴らるる熱帯夜   横縞
九十の母の署名や原爆忌   水木合歓
母の手を骨まで握る緑雨かな   葉村直
海賊の裔(えい)といふ母花蜜柑   玉家屋
豆飯の湯気の中から母の貌   田中和行
参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/p5znJEq2D5/

■NHK短歌 題「おかえり/ただいま」
枡野浩一 ゲスト 町屋良平 司会 尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙/かなたへの手紙」

ただいまという気持ちだということが花にはバレている気がします
枡野浩一

手紙のように大切にしていることば 
町屋良平さんがお守りにしている短歌
どんなにか疲れただろうたましいを支えつづけてその観覧車
井上法子「永遠でないほうの火」

▪31音の手紙
入選九首 テーマ「おかえり/ただいま」
この花は例えば遅れて帰宅した君が負けずに返す「おかえり」
二席「ただいま」と言えば「おかえり」と言う人があなたにはいてわたしではない
大津穂波
帰るべき家はあるけど誰もいず帰る先とは人だと思う
守谷直紀
一席 私 近道は坂道きみのただいまにまにあいたくて全身で漕ぐ
荒木文子
「ただいま」も大きな虹を見たことも言わない傘を失くしたことも
北入(きたいり)はるか
こんな日にコンビニで買うプリンパフェ、食べて泣いたらおかえり私
美好ゆか
 「ただいま」の声聞こえずに四年経ち今も「おかえり」言いたがってる
堀口依佐子(いさこ)
ただいまと言っていたのは帰ったらりんごジュースを飲んでいたころ
井田里紗
三席 山積みの本に毎日ただいまと言うおかえりはまだ聞こえない
伊勢谷小枝子(いせやさえこ)

▪改悪添削
山積みの本に毎日ただいまと言うおかえりはまだ聞こえない
添削
山積みの本に毎日ただいまと言うおかえりは聞こえないけど
(時間の流れが「まだ」という言葉で描けているところがいい
 「まだ」でドラマになっている 重層的な所
 自分の短歌の中で「時間の流れはどうなったいるか」
 を意識すると良いと思う)

▪町屋良平さんの短歌「おかえり/ただいま」
淋しさがわからないという淋しさは咲くはずのない花きみを思う
町屋良平
「咲くはずのない花」は最初直接的な言葉は
「自分勝手に」「エゴイスティックに」と書いていた
小説は推敲しても元の形とか気持ちとかは
全くなくなることはあまりないけど 短歌は直していくと
元のものが分からなくなったりなくなったりする

枡野浩一氏
町屋さんの小説の身体的な表現について
「1R1分34秒」町屋良平著 より
プレッシャーをかけつづけた効果か、
相手は全く手がでなくなっている。
それでボクシングの横の円をひろげてみせたあげく、
別の軸にすばやく移行し、斜めの円を作る。
練習していたシュートアッパー。
何度かガードに阻まれたが、外円からのボディが、
利かせていないまでもしっかり打ちつけていた効果で、
相手の体幹が乱れ、ようやく斜めに線を結ぶアッパーが
相手のアゴまで届いた。

主人公が心の中で思っていることが説明じゃない部分で
畳み掛けてくることの力強さをこの小説を読む時に何度も思った

町屋良平氏
ボクサーの体の中にあるイメージとして
リアリティーがあるような形を意識して書いた
外に出せない形の言葉を書く
翻訳されない前の生の形みたいなのを意識して
特に運動する人の内面なので

良い文章とは何か❓
尾崎世界観氏
自分の内側の時間の流れみたいなものが
小説によって分かる時はすごくうれしいし
そういうものがいい文章だなと思いますね

枡野浩平氏
「嘘のないこと」ですね 僕の場合のいい文章は
魂に近いところでも自分にとっての
「嘘の無さ」の検証ができていると
この文章はちゃんと書けている
これは書けていなかったというのが分かる

町屋良平氏
魂パートとそんな魂パートじゃないパートは
どうしてもできてしまう

▪言葉のバトン
バンドやろうか還暦だもの
国兼秀二「短歌研究」編集長

ブラボーが降りそそぐようなステージに
ファブリ イタリアン歌人
あさやかのすっぱい光に目覚めれば水平線はリモーネの色
Iimoneとはレモンのこと
第一歌集「リモーネ、リモーネ」を出版
ブラボーはイタリア語で❝上手 上手❞

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