2024年7月9日火曜日

あの本、読みました?R-18文学賞&柴田元幸

約束を守らない人梅雨の空
還付なし政府の苛め?梅雨の雷
梅雨寒し還付に見えた不公平
梅雨冷や家計直撃還付なし
いつも政府に切り捨てられて黴びる(かびる)

■あの本、読みました?
「成瀬は天下を…」を生んだR-18文学賞&翻訳家柴田元幸

女の文学賞 女による女のためのR-18文学賞
窪美澄 西山奈々子 鈴木保奈美 角谷暁子

「ミクマリ」の一文 窪美澄著/新潮文庫
セミダブルのベッドの上に、「なにかのアニメのなんとかという役」の
コスプレをしたあんずが横たわっている。
あんず、というのは仮の名前でおれは本当の名前を知らない。
(中略)
おれが近づくと、あんずは薄く目を開け、ハンガーにかかった
衣装を無言で指さす。おれは制服を床に脱ぎ捨て、するするとした
手触りの布でできた「なにかのアニメのなんとかという役」の
白衣のような衣装を身につける。
(中略)
おれは「なにかのアニメのなんとかという役」になりきって、
「いい子で待ってたんだね」という気持ちの悪いセリフを
口にする。それもあんずとの約束なのだ。

2024年R-18文学賞大賞 広瀬林檎「息子の自立」の一文
息子の性処理を母親がやっているというと、たいていの人間は
嫌悪か困惑の表情を浮かべるか凍りついてしまうものだが、
看護師の同僚や友だちや医師は顔色一つ変えない。
(中略)
曜子元夫は「おれは絶対にそんな気持ち悪いことはしない」と
なぜか自慢げに云ったのだが、そう断言してしまえる夫を、
ずいぶんおめでたいやつであることよなあ、と思ったとき、
曜子は息子と二人で生きる決意をした気がする。

「君の無様はとるにたらない」の選評 神敦子著/新潮社
「友近賞選評」友近
ずっと言えなかった彼女の想いが流れ込んでくるような、
最後の長いセリフを読んでいるとき、自分でも予想外に、
読み進める手が止まり、突然涙が溢れました。
私の中でも急展開で他の作品のインパクトを超えて、
感情を揺さぶられた作品です。

「君の無様はとるにたらない」の一文 神敦子著/新潮社 
配布されたパンフレットの、ヨシコと山田くんの恋愛漫画は
肝心なシーンは花が散らされているだけで、全然わからない。
いやわかっている。ネットにはエロ漫画が氾濫しすぎている。
何か調べるたびに、定食の漬物のようにエロが入りこむ。
でもそこに現実味はない。

「赤い星々は沈まない」の一文 月吹文香著/新潮社
「モテモテなのは良いことやけど、もう夜中に潜り込んだらあかんよ。
あ、もしかして山口さんの所にも行ったんやないでしょうね」
「行ったよ。ちょっとお手を拝借しただけや。借・り・た・だ・け」
キヌ子がクシャッと鼻にしわを寄せた。あきれ果てて大きな
溜息が出る。キヌ子の素行に気づけなかった自分自身にも。
「うちの施設でそういうことは困ります。三ヶ月も経たないで
変わるのはイヤでしょう。キヌ子さん、旦那さんに満足させて
もらってかなったんちゃいますか?」牽制するつもりで
嫌味を込めて言った。キヌ子がきょとんとした顔で私を見る。
「は?おとうちゃんは満足させてくれてたで」
キヌ子としばらく見つめ合った。
「もう長いことしてないでしょ、私たち。でね、嫁がいつも
ジーンズばかりじゃ、裕也だってつまんないでしょ?
だからたまには女らしい下着でもつけてみようって」
(中略)
「だから、どこまで僕に求めるの?君が夜勤の時は、
和樹を保育園に迎えに行って、夕食だって作ってる。
レトルトも使わずにね。同僚との飲みだって断ってさ。
ミサと和樹のことを思えばこそだよ。年二回は旅行だって行くし、
今度は石垣島に行きたいって言うから旅行サイトも
チェックしている。これ以上、何が不満だって言うんだよ」
そう。不満なんだろう。夫には感謝しかない。
いい父親。理解ある夫。でもー。
「抱かれたいと思うことが、欲張りなことなの?」

「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」の一文
リリー・フランキー著/新潮文庫

オカンが死んでしまった後、オトンが息子に言う。
「女には言葉にしてちゃんと言うてやらんといけんぞ」
「1+1が2なんちゅうことを、なんでわざわざ口にせんといかんのか」
「そやけど、ちゃんと口で2になっとるぞっちゅうことを
言うてやらんといけんのやな」「お父さんは、お母さんにも最後まで
それができんかった、、。取り返しがつかんこったい」

シスターフッド
男性優位の社会を変えるため階段や人種性的指向を
超えて女性同士が連帯することを表すもの

「うろんな客」エドワード・ゴーリー著 柴田元幸翻訳/河出書房新社
原題「The Doubtful Guest」
日本題「うろんな客」

風強く客もなきはず冬の夜ベルは鳴れども人影皆無

英語特有の定型性を柴田流で訳すと…
韻を踏むか 七五調で表現するのが定型性としては等しいだろう

「マザー・グースのうた」谷川俊太郎訳 堀内誠一イラスト/草思社
くわのまわりをまわろうよ まわろう 母はさむい しもの朝

ロンドンばしが おっこちる おっこちるったら おっこちる
ロンドンばしが おっこちる きれいなきれいな おひめさま

目指すのは「ミズスマシ」のような翻訳

「ハックルベリー・フィンの冒けん」の一文
マーク・トウェイン著 柴田元幸翻訳/研究者

「トム・ソーヤーの冒けん」てゆう本をよんでない人は 
おれのことを知らないわけだけど、それはべつにかまわない。
あれはマーク・トウェンさんてゆう人がつくった本で、
まあだいたいはホントのことが書いてある。ところどころ
こちょうしたとこもあるけど、だいたいはホントのことが書いてある。

漢字とひらがなをミックスして表現
子どもの頃はマンガ好き
イギリスを放浪
英訳が困る作家・町田康

柴田元幸 オススメの本は?
「文体練習」レーモン・クノー著 朝比奈弘治翻訳/朝日出版社
ある日バスの中で起こった他愛もない出来事
それを99通りものバリエーションで変幻自在に書き分けていく
「地下鉄のザジ」で知られ20世紀フランス文学の革命を牽引した
レーモン・クノーの究極の言葉遊びを朝比奈弘治が見事に翻訳した
ユニークな作品

「文体練習」の一文 レーモン・クノー著 朝比奈弘治翻訳/朝日出版社
S系統のバスのなか、混雑する時間。ソフト帽をかぶった
二十六歳ぐらいの男、帽子にはリボンの代わりに編んだ紐を巻いている。
集合論
昼のバスSにおいて、座っている乗客全員を集合Aとし、
立っている乗客全体を集合Dとする。ある停留所において
待っている人の集合はPである。その中で、このバスに
乗る人の集合をCとすれば、CはPの部分集合であり
古典的
昼は、バス。満員のころはさらなり、やうやう乗り込んでデッキぎは、
人あまたひしめきて、爪先立ちたる客のほそく詰め合ひたる。
反動老人
もちろんバスは混んで居ったし、車掌はいやな奴じゃった。
それもこれも、みんな八時間労働と国有化政策のせいじゃ。
今やフランス人は、組織の能力も、公民精神もなくしてしもうた。

鈴木保奈美女史が番組はじまって以来
初めてサインをもらっておられました。
でもそのお気持ち物凄く解りました。
私も柴田元幸氏の大ファンになってしまいましたもの…。
プロのあるべき姿を見せていただきました。

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