2024年3月4日月曜日

兼題「蛙(かわず)」&題「ひとり」

春の雲助詞が言葉を歌にせり
うららけし句読点さえ助詞として
春昼やままならぬこと今日もまた
因習の虜となりて春嵐
グリムから学ぶ疑念や春の霜

■NHK俳句 兼題「蛙(かわず)」
選者 夏井いつき レギュラー 家藤正人 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ「凡人からの脱出」

「雨蛙」「青蛙」「蟇蛙」=夏の季語
「蛙」=春の季語
蛙を春の季語としているのは
卵からかえっていって蛙という形になるからという本意がある

●ボンの段 
古池に居(お)るは芭蕉の蛙かな   水野滋子
古池の主(ぬし)に追われる蛙かな   田頭隆徳
古池の静かな波紋蛙かな   小原護
古池の雲に憧れ蛙跳ぶ   勝鳥
此の蛙かの古池の子孫かも   柴田太
古池だ蛙は何処だ靴の音   酒井重治
古池に置き忘れたる蛙かな   小嶋夏舟
古池にどぼんと蛙フライング   平坂謙次
(「古池」という芭蕉のイメージから一歩も出られていない
 「古池」に「蛙」がくっついたら芭蕉の引力から絶対に出られない)

半ボンの段
古池に音符を作る蛙かな   安東優汰
古池や呪文のごとく蛙鳴く   大津留直
(芭蕉の引力から抜け出せていない)

脱ボン
飛び込みし水輪(みなわ)の外に浮く蛙   杉岡壱風
(俳句で言う描写 映像になっている
 飄々とした俳諧味・滑稽味も出てくる)

今回は「凡人脱出」の最後の回なので特別サービス
もう一つピラミッドをお見せします!

●ボンの段
待ってるよ一緒に歌う蛙さん   金井つね子
蛙の子いつの間にやら大合唱   稲垣佳
蛙の子ドレミドレミと歌ひけり   添野純
静けさを破る蛙の大合唱   池嶋久春
輪唱の声追ふ声や蛙鳴く   ?菫久

半ボンの段
第九より勝る蛙の大合唱   大庭一定
ニュータウン夜な夜な蛙の大合唱   山下知子
(比較をしている 芭蕉の句とは違う視点が入れられている)

脱ボン
蛙鳴くあんなに清く歌へない   白神公
(季語「蛙」へのリスペクト)

この2つの類想のピラミッド両方使った
「スペシャル脱ボン」の句があった

飛びこまぬ方の蛙として歌ふ   嶋村らぴ

「類想」という共通理解の土台
手だれになってくると2つを踏み台にしてもう一つ高い所へ行く
フィナーレにふさわしい

▪夏井家伝授!家藤正人と中西アルノ+柴田英嗣
0から俳句 

ご挨拶句 
招かれた土地や人物へプレゼントする気持ちで読む俳句

▪特選六句 兼題「蛙」
霊山を今宵(こよい)蛙に明け渡す   花瀬玲
病む母の鈴振つてをり夕蛙   山田蹴人
田のすみの水笑はせて泣く蛙   市橋富士美
(擬人化が成功するのは映像になっているかどうか)
小蛙(こがえる)が金星丘(きんせいきゅう)を蹴っている   大藪恵子
(字面の勝ち)
ライダー寄るうどん自販機遠蛙(とおかわず)   和田典子
私 健忘や蛙は歌を繰り返し   樫の木
(上五で季語ではないものを詠嘆して残りの十二音の中に
 季語を入れたフレーズを作るのは難しい型)

▪柴田の歩み
季語以外も詠嘆してみようかな?

■NHK短歌 題「ひとり」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ入門コース 今回は「キラッと光る表現」

▪三十一音の物語
仕掛けよう光る表現
キラッと光ってどきっとさせて読者を立ち止まらせる表現

金目鯛おほきな眼(まなこ)みひらけり戴冠せしごとかあんと死にて
川野里子「天窓紀行」

野口あや子。あだ名「極道」ハンカチを口に咥(くわ)えて手を洗いたり
野口あや子「夏にふれる」
(ドキッとする言葉を入れることでギャップを作る
 ギャップの間に作者の内面が見える)

先生、と呼ばれて胸に羞(は)ずかしさ怖さのが咲くので隠す 
千種創一「千夜曳獏」
(全体を象徴するようなジャストな言葉をつかむ
 印象深く仕掛けて見ようという感じで驚かせるような言葉を入れる)

▪入選六首 題「ひとり」
木漏れ日をゆらゆら歩むまひるまにひとり寡黙な豹(ひょう)になりゆく
石川真琴
ベビーカーへみどりごひとり残されて船外活動ほどの静けさ
小鷹佳
僕だけが集合写真のひだりうえどこにも存在しない向日葵
山田裕樹
一席 私 聖夜ひとり元旦ひとり震度5強で部屋が雪崩落ちても一人
玄兔(くろうさぎ)
月光(つきかげ)に猫は裸で磨かれてつくづく生きてゆくのは一人
浅井克宏
遠くまで悲しみ見えるキリンには無数の小島ひとつはぼくの
佐々木泰三

▪秀一郎 あむ ココカラ短歌
一年間の宿題を振り返る!
上だけをただひたすらに上だけを見上げる子どもの笑顔がきれい
深尾あむ(自己添削)
降ってくる花びら見上げ上だけを見上げる子どもの笑顔がきれい

綺麗だなガラスのかけら僕はまだ何色にも染まりたくない
内藤秀一郎(自己添削)
虹色のガラスのかけら僕はまだ何色にも染まりたくない

作るだけではなく磨いていくことによって階段を自分で上がっていく

▪紹介されなかった力作・名作発表!
海に行こ。誘ったもののどうしよう海を眺めた君の横顔
内藤秀一郎

あの音はそうか最後のスターマイン夏に背を向け一歩踏み出す
深尾あむ

家康の友と友になれた喫煙所会えなさそうやな光る君には
ヒコロヒー

▪ことばのバトン
雪の夜踊る男と飲む麦酒   
宮城マリオ

とける陽を呼ぶまばたきの人
南阿紗美 写真家

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