岳人の森レンゲショウマの咲きはじむ
炎昼や日除けの中をうずくまり
扇風機抱きて移動極暑かな
号砲や祭の報せ響きをり
午後一時熱風回す扇風機
■100分de名著 金子みすゞ ①
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
金子みすゞ「こだまでしょうか」より
大漁 金子みすゞ
朝焼け小焼けだ
大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の
大漁だ
浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう。
「童話」大正十三年三月号
お乳の川 金子みすゞ
なくな、仔犬よ、
日が暮れる。
暮れりゃ
母さんいなくとも、
紺の夜空に
ほんのりと
お乳の川が
みえよもの。
「美しい町」
みすゞの詩の特徴
① 視点の移動・逆転 ②対比 ③比喩の素晴らしさ
かなりあ 西城八十
唄を忘れた金糸雀(かなりあ)は
後の山に捨てましょか。
いえ、いえ、それはなりませぬ。
唄を忘れた金糸雀は
背戸の小藪に埋めましょか。
いえ、いいえそれもなりませぬ。
唄を忘れた金糸雀は
柳の鞭でぶちましょか。
いえ、いいえそれはかわいそう。
唄を忘れた金糸雀は
象牙の船に、銀の櫂(かい)、
月夜の海に浮かべれば
忘れた歌をおもいだす。
鶏さん 野口雨情
雛の母さん
親鶏さん
鳥屋に買われて
ゆきました
大寒子寒で
寒いのに
親なし雛に
なりました
雛に別れた
親鶏さん
鳥屋で淋しく
暮らすでしょう
「金の星」大正十年一月号
にわとり 金子みすゞ
お年をとった、にわとりは
荒れた畑に立って居る。
わかれたひよこは、どうしたか
畑に立って、思ってる
草のしげった、畑には
葱の坊主が三四本
よごれて、白いにわとりは
荒れた畑に立っている
「童話」大正十二年十月号
お魚 金子みすゞ
海の魚はかわいそう。
お米は人につくられる、
牛は牧場で飼われてる、
鯉もお池で麩を貰う。
けれども海のお魚は
何にも世話にならないし
いたずら一つしないのに
こうして私に食べられる。
ほんとに魚はかわいそう。
「童話」大正十二年九月号
積った雪 金子みすゞ
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。
中の雪
さみしかろな。
空も地面(じばた)もみえないで。
「空のかあさま」
鯨法会 金子みすゞ
鯨法会は春のくれ、
海に飛魚採れるころ。
浜のお寺で鳴る鐘が、
ゆれて水面をわたるとき、
村の漁師が羽織着て、
浜のお寺へいそぐとき、
沖で鯨の子がひとり、
その鳴る鐘を聞きながら
死んだ父さま、母さまを、
こいし、こいしと泣いてます。
海のおもてを、鐘の音は、
海のどこまで、ひびくやら。
「さみしい王女」
悲しみが文学へと昇華
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