2023年7月4日火曜日

題「海」

路傍のアガパンサスや涼しげに
梅雨の月マンダラートの埋められず
山桃や着果おおすぎ熟れられず
大賀ハス午前五時より開花せり
苔茂る転ばぬようにそろりそろ

■NHK短歌 題「海」
選者 川野里子 レギュラーゲスト 内藤秀一郎 深尾あゆむ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「私に会おう」

▪三十一音の物語
上の句と下の句の関係

色褪せて砂浜にひとつ漂着す海を歩いてきたゴム草履
川野里子
上の句は景 下の句はその風景を見て感じた心を表現
言葉と言葉の間に弾力 バネが生まれる

白鳥はふっくらと陽にふくらみぬありがとういつも見えないあなた
渡辺松男
上の句と下の句が化学反応を起こした

▪入選六首 題「海」
未来から来たのか過去へ来てるのかこのカーナビは海上を行く
みくに
一晩で眠りの海を泳ぎ切り最後のタッチで止める目覚まし
秋山楓
夏空と海の間を進みゆく飛び魚たちは誰の縫い針
石川真琴
プール後の授業で子らは居眠りしなんて静かな海なんだろう
初夏みどり
一席 「あっ、海」という顔をした上の子をルームミラーは静かに映す
中村マコト
凪(な)ぎわたる海にヨットの白き黙(もだ)神の手により置かれしごとく
好井晶子(まさこ)

▪秀一郎 あむのココカラ短歌
上の句と下の句の使い方
落差 飛躍の作り方

みずからの心臓よりも大きいか子がかじりつく苺ひとつぶ
大松達知

ニジマスが流しの横に置いてあるすべてのものがこわいと思う
平岡直子

きゅうくつなローファーのまま飛び込もうあばれる海勝負の夏
深尾あむ
(結句の字足らずは全体を不安定にする)
朝の海強い日差しに照らされて今日もみんなを主人公に
添削
朝の海強い日差しに照らされて今日のぼくら海賊する
内藤秀一郎

▪ことばのバトン
区役所で出生届型破り   FUNI(郭正勲)

過去退(の)けたるは春筍(はるたけのこ)か   井口吾郎
白藤に軽く贈るか虹降らし
逃げ水は遙か光るは弾み気に
(作る俳句は回文になっている)

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