涼やかを揺蕩う瓜や井戸の脇
晩夏光ますます増えるガラパゴス
必要なき機能つけすぎ秋を待つ
ふだん着とよそゆきの人晩夏かな
山枇杷や思考停止の待ち時間
■NHK短歌
選者 山崎聡子 ゲスト 五月女ケイ子 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「伝えられなかった思い」
6月は「職場でのこと」
「新人はいいから後ろで見ておきな」フリルの戦闘服の先輩
上坂あゆ美
▪つぶやきを短歌に
トラックで朝を運んで行く人を夜に浸(ひた)したこの目で見た
山崎聡子
▪てれび歌会
入選九首 テーマ「職場でのこと」
三席 もう二度と入ることなき教室に蛍を放つように辞めたり
水鳥
一席 打ち抜きの当番がきてシスターのように社訓を読みあげる朝
ひびの祈り
二席 15階富嶽(ふがく)快晴借景に部長がカラス導き座る
掛口弘
私 ブラックと今は言はれてゐるけれど職員室の夜の珈琲
浅井克弘
派遣さん、と呼ばれるひとの本当の名を呼ぶほんの少し大きく
神守(かみもり)彩枝
注文書納品書の束分ける手が昨夜(ゆうべ)のきみの手を忘れゆく
星田美紀
仕事場の冷凍倉庫の端の端つららを育てているのは私
高橋裕樹
問い合わせコールと雨が止んだ午後5時いっせいに虹を見ている
風鈴
私 竜巻に巻かれる城を遠くからながめるような昔の職場
樋口淳一郎
▪五月女ケイ子さんの「職場でのこと」
歩数計今日も100歩を切ったけど私の机はどこでもドアー
五月女ケイ子
▪ことばのバトン
過去退(の)けたるは春筍か 井口吾郎
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竹の秋触れては破れ土筆水母(つくしくらげ)
(掬う掌のくらげや生命線深く)
ドゥーグル・リンズィー(海洋生物学者)
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