喉絞めつけて守る縄張り秋の鳥
好きと言われず好きとも言えず虚栗(みなしぐり)
腹まわりだけが日に日に秋渇き
風まかせ風車と芒佐那河内
佐那河内光る芒の大うねり
■100分de名著 ロフティング❝ドリトル先生航海記❞(4)
小さな鞄ひとつで軽やかに生きる
福岡伸一 伊集院光 阿部みちこ
敵が来るぞ!
バグ・ジャグデラグ族の軍勢が山を駆けおりてくる!
「しかたない」とドリトル先生は言いました。
「こうなっては覚悟を決めるしかないな。
わたしは戦争には反対だが、
村が攻撃されるとなれば、加勢しないわけにはいかない」
そう言うと、地面から太い棍棒を拾いあげて、
岩に打ちつけて強さを試しました。
クモサル島の部族間争い
完全に敵を撃退・殲滅(せんめつ)したわけではない
最低限の平和主義を守った
その後、オウム和平条約を結ぶ
・飢饉が起きても両者が助け合う
・二度と戦わない(不戦の誓いを立てさせる)
常に弱肉強食で争いを繰り返してその中で
優れたものが勝ち残ったようにみえるが実はそうではない
利己的に振る舞うよりも利他的に協力・共生したときの方が
進化が大きくジャンプしている
一方が一方を支配しているわけでもなく
支配されているわけでもなくバランスで世界が成り立っている
ドリトル先生はポリネシアから
「酋長に選出された」という報告を受ける
「わたしだって?」ドリトル先生は腰を抜かしそうになりました。
「とんでもない、よりにもよって!」
「ほんとですね。先生を酋長にするとは驚きましたわ。
でも、それだけではありません、ここの人たちは
先生の苗字も勝手に変えてしまったのです。」
ドゥ・リトルって❝なんにもしない❞って意味でしょう?(中略)
だから、これからは、先生のことをジョング・シンカロットと
呼ぶんだそうです。シンカロットは
❝たくさん考える❞って意味ですものね。(中略)
「勘弁してくれ(中略)問題は王さまという重い責任を
引き受けたら、気分しだいでそれを放っぽりだす
わけにはいかないことだ。(中略)王さまになったら、
博物学者としての人生は終わってしまう。(中略)
「(中略)残念ながら、今、取りかかっている仕事を
投げだすわけにはいかない。(中略)わたしたちは島民の生活を
以前とはまるで違うものに変えたと言っても過言ではない。
人の生活を変化させるのは、実に微妙な問題だ。
そして、わたしたちが起こした変化が、最終的に
いい結果をもたらすのか、悪い結果をもたらすのか、
それを見届けるのもわたしたちの責任だ(中略)
そうなんだ、自分を信頼してくれる人に対して、
それを裏切るようなことはとてもできない…。
いや、それに、わたしもこの島の人々が好きなんだ。(中略)
とにかく、とうぶんはこの島を離れられない。
今、離れるのは正しくない」
王さまになったドリトル先生
ドリトル(Dolittle)⇨シンカロット(Thinkalot)
ほとんどしない おさぼり先生
自分から無理矢理取りに行かない 背伸びしない
あまり積極的に何かを求めない
⇩
Dolittleをこのように訳したのは井伏鱒二
「山椒魚」で知られる作家
「ドリトル先生」シリーズの翻訳を手がけた
❝Do a lot❞はあくせくして生きなくてはならない
何かがやってきたらそれに応じて変幻自在に変われる
ドリトル先生の自由な生き方が出ている
ドリトル先生の生き方は状況によって常々変わっていく
生命本来の風任せ主義
月日は上陸から約2年経過―
大ガラス海カタツムリ
そうして、見たことも聞いたこともないような
この世でもっとも奇妙な会話がはじまりました。
まずはヒトデが海カタツムリに質問をして、海カタツムリの返事を、
ヒトデがウニに伝えます。そしてウニがそれをイルカに話して、
最後にイルカがドリトル先生に通訳するのです。(中略)
やがて、ドリトル先生の顔がほころぶようになり、
ほんの少しずつではあるけれど、話が
通じているのが私にもわかりました。(中略)
「スタビンズくん、(中略)わたしの診察鞄を持ってきてくれ。
たしか、謁見(えっけん)の間の玉座の下に置いておいたはずだ」
ロング・アローの言葉
あなたの未来も仕事も、海の向うの異国の故郷で手招きしている。
私が人類のために集めた植物の知識も、あなたとともにそこへ行く。
ここよりももっと役立つ場所に。ごらんなさい、
東の空が白みはじめている。まもなく一日がはじまる。
空気を吸い込むような音とともに、海カタツムリが体と
殻のあいだに隙間をあけると、私たちは外に這いでました。
そうして、湿原におりたつと、
秋の霧雨が降っているのに気づきました。(中略)
ポリネシアが翼から雨を振り払いながら、
ため息交じりに言いました。「これこそ英国よ。
この陰気な天気がその証拠だわ」(中略)
ドリトル先生がたくさんの荷物の中から古びた鞄を
手に取りながら言いました。(中略)「(中略)おっと、
時刻は4時だったな!さあ行こう。
どうにかお茶の時間に間に合いそうだ」
エンディングを読み解く
利他の精神で島に残ろうと思っているドリトル先生を最後に
説得したのはロング・アローの利他の精神
旅を通して世界のことがわかるということは自分自身が
変わるということは 航海記の最初と最後で示されている
スタビンズくんがひとまわり成長したということ
「航海記」は人生の比喩 最初はワクワクするような少年時代
困難に出会う青年時代 旅をだんだん終える壮年時代を
スタビンズくんが体験してだいぶ後に書いているという二重構造
そこには少年の日々をありありと思い出すという要素がある
センス・オブ・ワンダーという言葉で表現できる
自然の美しさとか精妙さに対して驚く心
大人になると忘れがちになってしまうが 航海記のような物語で
自分が辿ってきた人生をもう一度辿り直してみると少年の日々の
センス・オブ・ワンダーがあったことを思い出させてくれる
というのが航海記のもう一つの意味
原点を思い出すということは大人になった後も自分を支えてくれる
人生をどうすれば良いかわからない人は旅に出ればよい
いろいろな解釈ができる物語はそれだけ懐が深い
「伏線がすべて回収される」
自分の人生を照らし合わせると響き方が違う
この本には「そこに自分の原点があったな」
出発点が感じられる
自分のセンス・オブ・ワンダーを知ることとなる一冊
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