2024年9月30日月曜日

俳句特集&短歌スペシャルコラボ2俵万智×渡辺祐真

柿紅葉ペンキの剥げたトタン屋根
秋茜蔦絡まりた廃屋へ
秋の音踏みしめながらポコアポコ
秋日和孤独愛して愛されて
ふうふうと頬張る零余子(むかご)青き空

■NHK俳句 特集 夏井いつきの発想力を鍛えるドリル3
凡人発想から脱出するためのシリーズ 
出演:夏井いつき 庄司浩平 ペンた丸 司会 柴田英嗣
兼題「ふるさと/故郷」

もっとも使われた季語ランキング!
1位 月(秋の季語)
2位 盆(秋の季語)
3位 墓参(秋の季語)
4位 祭(夏の季語)

凡人ワードランキング!
1位 母 2位 風 3位 山 4位 川・河 5位 水
6位 匂・香・にほひ 7位 父 8位 星 9位 海 10位 友

凡人脱出ピラミッド
ボン
①ふるさとの無い人達で芋煮会   小田和夫
②ふるさとの無い子どうしの夏休み   草野立青
③ふるさとの無き吾に降る里の雪   岩本実佳
④故郷の無い者同士夜長哉   平山仁彦
⑤故郷は無いが生きてる去年今年   松虫姫の村人
⑥帰省子の羨む我に故郷なく   白浜尚子
⑦秋うらら故郷の無き夫婦なり   高橋ひろみこ
⑧故郷を持たぬ我が身へ青嵐   草深みずほ
⑨故郷を持たぬ秋風どこへ行く   山多左夢
⑩街静か故郷を持たぬ夏休   立花紅
⑪地虫鳴くふるさと持たぬ人もゐて   井上三哉

土台が一緒なので新しみが殆どない

半ボン
⑫ふるさとを持たぬわたくしソーダ水   水須ゆき子
⑬草笛でふるさとない子うまくふく   野村和子
⑭凩やふるさとのない吾とあゆむ   益田信行
⑮歪(いが)む夢老いて故郷なき夜寒かな   仲本昌弘

「寂しい」「辛い」「しんどい」と言った季語を取り合わせがち⑫
小さな裏切りが季語との取り合わせができている⑬
思い込みをちょっとずらしている 小さな工夫がある⑭
調べが滞っている⑮

脱ボン
⑯満月と僕に故郷なんてない   佐藤茂之
⑰故郷はない金もない柿を食う   けーい○

並列で表現 一緒に悠々と生きている⑯
潔いな 上五・中七「ない」韻を踏んだ調べ 
下五の開き直りにオリジナリティーが脱ボン⑰

類想というのは共通の理解の土台
類想を使ってはダメと考えない
類想を土台にしてその上にもうひと匙
新しいオリジナリティリアリティをどうのせるか

・兼題「ふるさと」で発想を飛ばしてみよう
「ふるさとはない」を使った穴埋めで発想力を鍛える
俳句には数学の公式みたいな型がいっぱいある
これは俳句の型の1つ
対句…並置された二つのフレーズが対応するように作られた表現形式
対になったフレーズを考える
ふるさとはない○○○○は○○○○○

ふるさとはない洋服は爽やかに   柴田英嗣
(対句の片方と響き合っていないと俳句・詩としての価値が下がる)
ふるさとはないアメリカは冷やかだ   庄司浩平
(ささやかな響きあいが作れている)
ふるさとはない散髪は稲刈だ   ペンた丸
(季語を比喩に使うと鮮度が落ち主役ではなくなる)

■NHK短歌 スペシャルコラボ 俵万智×光る君
スペシャル 短歌で「光る君へ」を10倍楽しもう!2
大河ドラマ「光る君へ」とのコラボ・スペシャル、第2弾。
今回はまひろが書き始めた「源氏物語」に焦点をあて、
和歌の魅力を解き明かす。
出演:俵万智 渡辺祐真(すけざね)作家・書評家

・俵万智女史の注目のシーン
ドラマの中では文章をまひろが音読していましたが
「源氏物語」ではこの部分 和歌が使われていました
「源氏物語」の「若紫」という帖(じょう)の中のシーン
光源氏は義理の母であり生涯思い続ける藤壺と
密通した際にこの歌のやり取りをする

見てもまた逢ふ夜まれなる夢のうちにやがてまぎるるわが身ともがな
光源氏
世語りに人や伝へむたぐぎなく憂き身をさめぬ夢になしても
藤壺
まひろの音読
こうしてお逢いできてもまたお会いできるとは限りません
夢の中にこのまま消えてしまうわが身でありたい
光源氏
世の語り草として人は伝えるのではないでしょうか
類いなくつらいわが身をさめない夢の中のこととしても
藤壺

二人の恋愛に対するスタンスはまひとと道長を思い起こさせる
この歌のやりとりは光源氏・道長 まひろ・藤壺が重なる
2人の心理のやりとりが和歌に集約されている

・すけざね氏の注目のシーン
まひろが書いていた和歌に注目
寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔
光源氏 「源氏物語」第四帖「夕顔」

「源氏物語」の「夕顔」という巻で
光源氏が夕顔という女性に贈った歌
まひろが代筆業で詠んだ歌だったけれど
それが「源氏物語」の中に登場している
物語の中で(代筆業)をやっていたというのは
すごく素敵な伏線だと思う
「源氏物語」は800首近い和歌が出てくる
作者紫式部の代筆とも言える

・さまざまな登場人物の心を詠む 800首の和歌
「源氏物語」の中の上手い歌と下手な歌

からころも君が心のつらければたもとはかくぞそばちつつのみ
末摘花
本当にあなたは薄情なお人
ご自分の事しか頭にないのですね
いつも思い慕って鳴いてばかりおります
私の衣は袖も袂も濡れに濡れ、干くひまさえありません
ただただお待ち申し上げております
今夜も明日も変わらずに

からころも(唐衣) 着る 裾 袖などにかかる枕詞
あなたの心が私につれないから袖のたもとはこんなに濡れています

袖ぬるるこひぢとかつは知りながら下り立つ田子のみづからぞうき
六条御息所(光源氏が関係を持った女性の1人)
袖が濡れるほど泣くことになる恋だと分かっているけれど、
感情の沼にはまっていく自分が悲しい…。
【掛け詞】
こひぢ:小泥(こひぢ)恋路 みづから:自ら 水
ズブズブになると分かっているのに 
自分からこの恋の泥沼に入って行ってしまう 私が悔しい悲しい
【縁語】
ぬるる 泥(ひぢ) 田子(たご) 水
技巧を凝らしながらも自分のつらさ 切なさがパシッと表現されている

2首どちらも紫式部が作っている 物語作者だと思う
物語の中に入ったらこんなに自在に
超上手い人からダサい歌まで詠い分けられる
和歌を味わってこその「源氏物語」

・枕草子の和歌に注目
みな人の花や蝶やといそぐ日もわが心をば君ぞ知りける
枕草子
人々がみんな花や蝶と浮かれている日も
私の気持ちをよく分かってくれているのね
(みんな人が花や蝶やすなわち道長側についている そんな中で
私のことを思ってくれているのは清少納言お前だけだ)

(定子が)住んでいた屋敷が火事によって
焼失してしまって一時的に退避している
定子側にものすごく不利な政治的状況になっている
いろいろな人々は今 勢いのある道長側についている

俵万智女史 注目の歌人
ドラマの中ではあかねと呼ばれている和泉式部
黒髪のみだれも知らずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき
和泉式部
契りの後の場面 黒髪の乱れも分らないほどうち伏せていると
その瞬間またこの髪をかきやったあなたが恋しい

白露も夢もこの世もまぼろしもたとへていえば久しかりけり
和泉式部
あっという間に終わってしまった恋 その相手に送った歌
白露 夢 この世 幻 
和歌の世界では儚いものの例えとして使われる
そんなものは久しい 永遠のようなものだ
この私の短い恋に比べれば 
白露とか夢を儚いものとして詠んできた全歌人にケンカを売っている

人生の元手がかかっている歌だから 
この人の歌には敵わないと俵万智女史
重さの深さが歌の迫力に出ている
元手を掛けている場面に遭遇した時に
日頃から歌を詠んでいる人に神様がほほ笑んでくださる
諦めず詠んでいきましょうと俵万智女史は力説されるのでした

たった1人のためでさえなく私は自分のために書くんだという
すごくすがすがしい宣言
本当の意味で「源氏物語」が書かれ始めた
俵万智女史も自分自身のために詠んでおられるとか…。
誰に「書くな」と言われても書く 
というぐらいの気持ちがあることが大事

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