田名網敬一に捧ぐ
揚花火ピカソの模写へプラスワン
戦争の記憶抱きて月の暈(かさ)
秋の声消えぬ戦争下敷きに
流れ星忘れられない色と生き
螻蛄鳴く(けらなく)最後の個展開催中
■100分de名著ウェイリー版・源氏物語2
シャイニング・プリンスとしてのゲンジ
安田登 伊集院光 阿部みちこ
安田登流 「源氏物語」の構成
第一部(序)(1)桐壺~(13)明石 ゲンジ神性を獲得していく
第二部(破の序)(14)澪標~(21)少女 ゲンジ政治的にのぼりつめる
第三部(破の破)(22)玉鬘~(33)藤裏葉 ゲンジの子どもたちが登場 ゲンジ頂点に
第四部(破の急)(34)若葉上下~(41)雲隠 女三宮を中心に展開 老いるゲンジ
第五部(急)(42)匂宮~(54)夢の浮橋 ゲンジ亡き後の世代の物語
第一部
① 第2帖「箒木」でゲンジは普通の青年になっている
② さまざまな恋をしていくことでRPGのようにアイテムをゲット
③ ふたたび神に近い存在になっていく
シャイニング・プリンス 光り輝く者…。
このような名前を戴ければ誰でも、
必ずやなにかと噂の的となり、
嫉妬混じりの陰口をたたかれるもの。
ほんの戯れの恋でさえ、後世まで大仰に語り伝えられてしまう。
ゲンジはそう自覚していました。
後々つまらぬ浮気者と思われるのも気障りです。
友人たちがしているような、軽々しくありきたりで
安直な情事には些(いささ)かも興味が持てなかったのです。
ゲンジといえども、いくら抗おうとも恋に落ちることはあります。
でも、彼には変わったところがあって、
可能性もなければ望みもまったくない、
そんなややこしい愛にばかりのめり込むのでした。
「源氏物語 A・ウェイリー版」毬谷まりえ 森山恵訳
「箒木ブルーム・ツリー」
ただの女好きとは思われたくないゲンジ
彼がもっとも好きなのはフジツボ お父さんの奥さん
その影にいる亡き母
恋とは何か 民俗学者 折口信夫の説
恋=乞い 心の底から何か足りないものを渇望する
手に届かないものを求めることが恋
ウツセミ
「ああ、これはぜんぶ夢なんだわー、
あなたが、あの名高いプリンスが、
わたしのようなつまらない女に身を屈するなんて。
あなたはわたしの身のうえをお忘れなのでしょう。
取るに足りない地方次官の妻!それは変えようがありません。(略)」
自分の勝手なふるまいが、これぼどこの人の心を苦しめかき乱したか。
ゲンジはようやくそれに気がづき、恥じ入ってこう答えました。
「おっしゃるとおりです。地位身分のことなど、
何も考えていませんでした。そんなこと、煩わしいばかりですから。
わたしの噂をどうお聞きかわかりませんが、どうか聞いてください。」
「このできごとが、人生の苦難に遭う前、
わたしの運命が決する前であれば良かったのに。
それならばあなたのお心が続く限り、喜んでお受けしたかも知れません。
でもわたしの道はもう定まっているのです。
こんなふうに出会っても、悲しみと悔いのほかに、
なにがあるというんでしょうか。
「わたしの家を訪ねたなんて、誰にも言わないで」」
古い歌を引用して彼女は言葉を結びました。
「この人が悲しむのはもっともだ」
そう思ったゲンジは、一層優しさを尽くして彼女を慰めるのでした。
ゲンジとの恋に悩む人妻ウツセミ
人妻だから問題ではなくて身分の違いが問題
ヒカル・ゲンジが獲得するもの
① コンパッション パッション=イエスの受難
その苦しみを友に感じる=コンパッション
古典ギリシャ語では「スプランクニゾマイ」(内臓)(動く)
「末摘花」の帖
門番の老人と女性が貧しく凍えているのをゲンジが目にする
「ユウガオ、夕暮れの顔(イブニング・フェイス)という名の花です。
うら寂しい塀にこんな愛らしい花が群れ咲くとは、
なんともゆかしいことです。」
従者の一人がゲンジに言いました。(略)
ゲンジは召使いを一人、花を摘みに遣ります。
召使いが半開きの扉から入って摘み始めたとき、
小綺麗な引き戸から、黄色のチュニック姿の少女が現れました。
香を深く焚きしめた白い扇を差し出すと、
「なにか花を載せるものがご入用ではございませんか。(略)」
「あなたを惑わせたのは、つまらぬユウガオの花。
輝く露玉のドレスを纏い、謎めいて見えたのでしょう」
ロクジョウ ユウガオ
「どうしてこれほど狂人になってしまわれたのだろう」
自分でも不可解です。
彼女はおっとりと温和(おとな)しく、無表情ともいえるくらい。
深い感情が欠けているのかと思うほどです。
そのうえ、少女のように初々しいのに、
ゲンジが最初の恋人ではないのです。
本当に一体自分は、彼女のどこにこんなにも溺れているのだろう。
とはいえ、過去を聞かれたくない事情もあるようです。
ゲンジは好奇心を抑えました。
謎の女性ユウガオとの恋
② エンパシー 苦しみ エン=能動的に
ユウガオが表に出さない苦しみを自分から思いやるのがエンパシー
ヒカル・ゲンジは救済する人になる
ムラサキ(紫の上) 継母のもとにいくとひどい扱いを受けそうな
ムラサキをゲンジが引き取る
スエツムハナ(末摘花) 貧乏からゲンジが救済
ゲンジは白馬の王子様になれた
逆境の中で得たもの
ゲンジは来(き)し方をつぶさに思い返し、またこの先の我が人生に
幸いがあるだろうか、と大空と海の静けさを見つめ、
行く末に思いを巡らせていました。
嵐は止みません。来る日も来る日も雨と風、絶え間ない雷雨。
迫る来る危機。
来し方は憂鬱、行く末にも希望が見えません。
「(略)この地を離れよ。ゲンジよ、舟に乗りなさい。
髪がお導きくださるであろう」
「ご加護を失ってより、悲しみと不運に見舞われるばかり。
うらぶれたこの岸辺で惨めに命果てるとしか思えません」
「そのように弱気になってはならぬ」エンペラーは答えました。
「(略)そなたの苦難は見るに耐えない、その苦しみから救ってやろう」
父の霊に導かれるゲンジ
③ 「来し方行く末」を見る力
「来い方」「行く末」という言葉
「須磨」「明石」の帖でたくさん出てくる
自分に欠けていたものを充足していった
ゲンジは完成した人間になっていった
ゲンジは政治のトップ 大政(だいじょう)大臣になる
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