秋分や赤き焦土と青き空
フィクションで真実を描く鰯雲
おけら鳴くDO NOT BOMB寂しげに
自覚の象徴B29野分
発酵の音聞き待ちて月渡る
賢明に生きる人をり秋彼岸
■NHK俳句 兼題「花野」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 坂東彌十郎 司会 柴田英嗣
年間テーマ「季語を器に盛る」
「俳名」…歌舞伎役者が俳句を詠むときの雅号
彌十郎氏の俳名は「酔っ払う」「寿」で「スイス」
本名が「寿男」「酔寿」と書いて普通なら「すいじゅ」
ヨーロッパのスイスが大好きなので
それをかけて「酔寿(スイス)」にしました 坂東酔寿彌十郎
俳句は一生できる趣味
「花野」とは秋の七草に代表される草の花
人の手の入らない自然に咲いている広い野原のことを「花野」という
榛名湖の花野で毎年「夢二忌俳句大会」があり
高野ムツオ先生が選者として参加
薄、女郎花、撫子…。七草ではないが有名なのが松虫草
花野行く一人に道の生まれけり 稲畑汀子
俳句を作るためには一人にならないといけない
自分の思考が花野と対話をしながら俳句にしていくことが大切
私が師事した稲畑汀子先生の句として実際の花のを見ていると
同時に自分の人生 この先の美しもの さみしいもの
そういうものが感じられる奥深い句
稲畑汀子先生はカリスマ。俳句においては怖い方。
普段はお優しいが、句会になるとめちゃくちゃ怖くなります。
榛名山は活火山 地中にはマグマが眠っている
・特選六句発表 兼題「花野」
花野行く自分で決める終着点 成田乱泊(らんぱく)
(人生にも言える)
花野道もうほっといてくれないか 長山香織
(話しかけないで)
花野行く手話に花の名咲かせつつ 野々村澄夫
(人間のときめきも見えてくる)
大花野妻の浄土もかくあらむ 久塚謙一
(以前妻と行った花野で浄土もこんな場所なんだろうと…。)
花野より招待状の届くころ 町田憲一
(花野のレストランから…。)
記念日を忘れた人と花野ゆく 福原あさひ
(滑稽味が俳句には大切)
・特選三席 兼題「花野」
一席 花野より戻りて籠の鳥放つ 鈴木研児(けんじ)
二席 花野径(みち)きのふの雨の行潦(にわたずみ) 芝田太
(径は小道のこと 行潦とは水たまりのこと)
三席 エゾシカの跳ねては沈む花野かな 酒谷百合子
(「鹿」は秋の季語 北海道を言うが為なので全く問題はない)
動物の季語 「熊」は冬の季語
・俳句やろうぜ
若手俳人探査隊長 黒岩徳将
メキメキポッサーバナナはぼくの朝ごはん 松尾和希
和希くんの両祖父は俳人 松尾隆信 矢野春行士
父 松尾清隆 母 矢野玲奈 ご両親も俳人
松尾家・恒例の句会
祖父の結社の句集には和希くんの絵が掲載されている
俳句づくりの技
「歳時記」から季語を選ぶ俳句づくり
秋の蝉鳴いて見下ろす木々のかげ 松尾和希
「目で見て 音を感じるのが大事」
肌の感じも影で感じるのもいいな
・坂東彌十郎の一句
花野行く先に朧な誰そ彼 坂東酔寿彌十郎
(「朧」は春の季語 誰そ彼はたそがれの語源)
添削 花野径(みち)幻の君見えかくれ
(「君」をどう捉えるかは読み手次第)
・柴田の歩み
鹿は秋 熊は冬
■NHK短歌 テーマ「鳥」
選者 大森静佳 ゲスト 木村優里 司会 尾崎世界観
年間テーマ「❝ものがたり❞の深みへ」
短歌は言葉の「意味」ではない部分が結構重要
身体表現やバレエからヒントを
羽ばたきに息継ぎはあり飛ぶといふ鳥の驚きかたを愛する
吉澤ゆう子
・歌に❝ものがたり❞あり
入選九首 テーマ「鳥」
三席 ブレーキを離せば光る坂道で心臓からだんだん鳥になる
舟樢(ふなと)いま
「あ、海」と声が響いて小説は羽根を休める鴎となれり
くらたか湖春(こはる)
私 斉唱のむくどりむくどりむくどりが声で一樹を持ち上げんとす
古関聰(あきら)
せせらぎの光の粒で綴られた一行詩として白鷺は立つ
石川真琴
一席 東京で死んだら渡り鳥になり故郷の海でもう一度死ぬ
芋高(いもたか)舞
鳥の名をひとつ覚えてまた少し空に近づく右の手のひら
古川柊(しゅう)
私 辞めたって私のかわりに渡るだろいつもの信号いつもの鳩が
森内詩紋
二席 光源のようなさくらの球体にメジロ発信メジロ着信
麻倉遥
「家の周り、白鳥だらけ」と言う妻の息はずみたり頬紅くして
髙井勝巳
・ものがたりの深みへ
白鳥の湖を見て
白鳥の裡(うち)なる腕(かいな)しならせて信じてみたいあなたの声を
大森静佳
短歌は素っ気なく書いても感情的に伝わってしまう
想像する余地を残してあげる方がいい
もう夜を待たなくていい天国のPas de Deuxひとりでも踊るから
大森静佳
・言葉のバトン
まっさらな白紙を前に全能感(ぜんのうかん)
金子崇 漫画編集者
⇩
きみの香りが残る窓際
文月悠光(ゆみ)
つまらないこと(一部抜粋)
心臓はなぜ、自分の意志で止めることができないのだろう。
止まらないことも心臓の持つ別個の意志なのか。
目に見えてあらゆる手足よりも わたしの、大切なもの、
傷ついてはならない一つの意志は、見えない からだの内部にある。
文月悠光「パラレルワールドのようなもの」思潮社
0 件のコメント:
コメントを投稿