2024年9月25日水曜日

そしてまた、フジコ・ヘミングとともに

迫り来る時間に追われ月見月
忘れゆくことの多さよ秋彼岸
菊日和美味い不味いは置いといて
人として如何なものか秋の声
鴨渡る度を超す陽射し遠慮なく

■そしてまた、フジコ・ヘミングとともに
パガニーニの「鐘」による華麗なる大幻想曲(1832) リスト

リストはパガニーニのヴァイオリン技法を
ピアノの音の置き換え表現しようとしました
1832年演奏を聞いた僅か2カ月後に
パガニーニの「鐘」による華麗なる大幻想曲を作曲
以降何度もカンパネラ(鐘)を主題にした曲を作り
私たちの知るラ・カンパネラが完成したのは1851年
最初に作った曲から19年の年月が流れていました

ピアニスト レスリー・ハワードさん
リストが書いたすべての楽章の曲や 
曲のバージョンなどを合わせると
彼の作曲の総局は何千にもなるのです
ですから私のピアノ曲の録音は1400曲にもなり
時間がたっぷりかかりました

レスリー・ハワード演奏 リスト「ラ・カンパネラ」第1稿(1832)
曲の冒頭は私たちの知る「ラ・カンパネラ」とは全く違う
主題のメロディーが奏でられるのは全体の3分の1を過ぎてから

野本由紀夫 玉川大学芸術学部教授
リストはヴァイオリンのテクニックをピアノに翻訳することは
できないだろうかということを考えたんですね
なので わざわざ難しくなるように作曲しました
右手の上を左手が交差するようになっています
これは明らかにお客さんに顔を見せる為です
ちゃんとビジュアル的なことまで考えながら作曲したんだと思います

リスト「ラ・カンパネラ」第2稿(1838) 
第1稿から6年後に作曲された第2稿

リスト自筆譜「ラ・カンパネラ」第3稿
リスト「ラ・カンパネラ」第3稿(1845)
ヨーロッパ中でコンサートを開いたリストは
自ら演奏するために何曲もの「ラ・カンパネラ」を作曲した

リスト「ラ・カンパネラ」」(1851)
フジコさんが演奏する「ラ・カンパネラ」」は最終稿となり
1851年リスト39歳の時に作られた

最終稿を仕上げた背景にはリストの人生の転機があった
フランツ・リストは1841年ザビン・ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人と
知り合い恋に落ちます 彼女の影響を受けたリストは
ピアニストとしてのキャリアを放棄し 
作曲家として生きていく決断をします

彼女に言われたのが「あなたはピアニストとして
ずっと旅回りするのではなく作品を残しなさい」
ということを言われたわけです
ピアニストじゃなくて作曲家としてやっていこうと言うふうに
人生を大きく転換させたんです
同じ「ラ・カンパネラ」を使っていても技巧のための
ピアノテクニックのための曲じゃなくてピアノ曲として
完成したものにしようと言うふうに大きく変質するんです
その結果 逆にピアニストじゃなくて作曲家が作った
このピアノ曲の方が生き残っていくことになったわけです
人気ピアニストから作曲家へ人生を転換させたリストは
以後、「ラ・カンパネラ」の改定をすることはありませんでした

リストはパガニーニの「24のカプリース」から5曲と
「ラ・カンパネラ」を加えた全6曲をー
「パガニーニの超絶技巧練習曲集」として出版
その後 全曲を改定した「パガニーニの大練習曲」を出版するなど
パガニーニの名曲をピアノ曲として完成させることを長年拘った

フジコさんは「ラ・カンパネラ」を中心にパガニーニや
リストにまつわる曲を演奏する特別なコンサートを2024年春に
行うことにし何か月も前からどんなプログラムにするか考えていた

バスコ・バッシレフさん
あのピアノを見てフジコさんのことを思いました
スタインウェイの前身時代の古いピアノです
フジコさんは間違いなくそこに座って「カンパネラ」を弾いた事でしょう
ここに来られたなら

しばらく音を探った後弾き始めたのは幼い頃から親しんでいた
モーツァルトのピアノソナタ
フジコさんは自らピアノのふたを閉じた
この日がフジコさんがピアノに触れた最後の日となった
2024年7月5日

日本に来ていたヴァイオリンニストのバスコ・バッシレフさん
そして指揮者のマリオ・コシックさんが
フジコさんに捧げる特別な演奏を行うことにした

マリオ・コシックさん
私たちはパガニーニのヴァイオリン協奏曲第3楽章の演奏を決めました。
フランツ・リストが「ラ・カンパネラ」を作るのに
インスパイアされた作品です。

バスコ・バッシレフさん
これからもフジコさんを偲ぶコンサートを続けていけることを願っています

魂のピアニストと呼ばれたフジコ・ヘミング
ピアノに全てを捧げた92年の生涯だった

2023年11月2日自宅の階段から転落
腰椎骨折と脊髄損傷 さらに2024年2月膵臓がんが見つかる

2024年4月21日 午前3時25分
フジコ・ヘミング逝去 享年92

パリの魅力は❓
「個性を重んじる自由な空気感」と言っていたフジコさん…。
自由を満喫しておられますか❓

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