行列の先はスシロー秋渇き
秋湿り強きな人へ群がりて
秋ともし逢えない時間愛育て
おけら鳴く人間知りて己知る
リアルから異形への道秋高し
■100分de名著「ウェイリー版・源氏物語」(1)翻訳という魔法
安田登(能楽師) 伊集院光 阿部みちこ
いつの時代のことでしたか、
あるエンペラーの宮廷でも物語でございます。
能になった二大古典 「平家物語」「源氏物語」
当時の人はみんな「源氏物語」を知っていた
それをもとに作られた2.5次元作品が能
与謝野晶子が初めて「源氏物語」を現代語訳した
1911年 翻訳開始 1912年~1913年出版
アーサー・ウェイリー
1925年 英訳版 「源氏物語」第1巻を出版
文学者 正宗白鳥
「はじめて源氏物語の面白さが分かった」
「源氏物語」第一帖「桐壺」
いづれの御時(おほむとき)にか、女御(にょうご)、更衣(かうい)
あまたさぶらひ給ひける中に、いとやんごとなき際にはあらぬが、
すぐれてときめき給ふ有りけり。
「源氏物語A・ウェイリー版」毬矢まりえ 森山恵 訳
いつの時代のことでしたか、
あるエンペラーの宮廷での物語でございます。
ワードローブ(更衣)のレディ、ベッドチェンバーのレディ(女御)など、
後宮にはそれはそれは数多くの女性が仕えておりました。
その中に一人、エンペラーのご寵愛(ちょうあい)を
一身に集める女性がいました。
その人は侍女の中では低い身分でしたので、
成り上がり女とさげすまれ、妬まれます。
あんな女に夢をつぶされるとは。
わたしこそと大貴婦人たち(グレートレディ)の
誰もが心を燃やしていたのです。
病気がちで鬱(ふさ)ぎこむ彼女に、エンペラーの熱は
冷めるどころか、ますます彼女に溺れ、たしなめる
周囲の声にもいっさい耳を貸しません。
そのことは次第に国中の噂となっていきました。
ミン・ホワン(玄宗)皇帝の恋人、ヤン・クウェイフェイ(貴妃)の
ことをいう者も出てくる始末。けれど不満が燻ぶりつつも、
エンペラーの威光と寵愛は動かしがたく、
表立って彼女を叩く人はいませんでした。
異国のおとぎ話のようなはじまり
第一帖「桐壺」について
紫式部は宮中年代記(クロニクル)とおとぎ話(フェアリー・テール)が
混在したスタイルで書いている(ウェイリーの注釈)
古文から英語に翻訳すると?
・複雑な敬語がなくなる
・守護の明確化 古文では主語が省略されていることが多い
・言葉のおきかえ
帝(天皇)⇨エンペラー
更衣⇨ワードローブのレディ
御簾⇨カーテン
琵琶⇨リュート
前裁(せんざい)⇨コテッジの前庭
修験者⇨エクソシスト
物の怪⇨エイリアン 外のものが内側に入ってくる
「入ってきた」物の怪を「外に出す」役割がエクソシスト(修験者)
伊集院光
カフカの「変身」 主人公が「虫」に変わった
先生が「虫けら」に訳し直したら理解できた
エクソシストはキリスト教カトリックの言葉
キリスト教的な色彩が重なってくる
やがて彼女は幼いプリンスを産み落としました。
前世から、きっと深い繋がりがあったのでしょう。
国中を見渡しても比べるもののない、輝くような男御子です。
七歳になり、プリンスは文字を習いはじめました。
プリンスのその並外れた才能に、エンペラーは驚きます。
少年は、ふつうなら許されない皇族方のカーテンのうちにも、
自由に出入りするようになりました。
いかに武骨な兵士や無情な政敵でも、この子を見れば
微笑まずにはいられなかったでしょう。
さすがのコキデンも、追い払いはしません。
彼はまた、パレスのグレートレディたちとも、
打ち解けて遊びます。とても愛らしくはにかんで
ふるまうものですから、みな惚れ惚れ。習い事にも熱心で、
またたく間に上達し、彼の奏でるシターン(琴)や
フルート(横笛)の音は、楽しげに天へと翔(か)けのぼります。
もっとも、こうしてわたくしがプリンスを
ほめそやしてばかりいても、お聞きのみなさまは、
「そんな子はすぐ、つまらない大人になるもの」
とおっしゃることでしょうね。
こうしてフジツボのはかない美しさに、
幼いゲンジは初めて淡い恋心を抱いたのでした。
そうです、ゲンジ皇子は、その輝く美貌から
シャイニング・プリンスとかヒカル・ゲンジと
呼ばれていたのです。
フジツボ姫も、プリンセス・グリタリング・サンシャインン、
輝く日の宮と呼ばれ、讃美されていたのでございます。
ヒカル・ゲンジは12歳でプリンセス・アオイと婚約。
光君 Genji the shaining One
目の前に来ると嫌い通すことができない力が「シャイニング」
ヒカル・ゲンジ=「神」だと思えば女性遍歴を許せる?
ドン・ジョバンニ=(ドン・ファン)
17世紀スペインの伝説上の人物 ハンサムな好色漢
モーツァルトがオペラにした(1789年)
ドン・ジョバンニが関係した女性は「美の中で燃え立ち」
「輝かされ」「浄化される」(キルケゴール「あれか、これか」より)
月の光に詩を感じて風の音に松の笛を聴くように人生が変わる
ヒカル・ゲンジは出会った女性の
詩的なものを引き出す神的な存在ではないか
(ここで伊集院光氏が火野正平氏を語ってくださいました。
一日も早く持病の腰痛を完治され「にっぽん縦断こころ旅」が
再開されますように。楽しみにしています。)
「源氏物語」を翻訳した英国人
アーサー・ウェイリー(1889~1966)
左目をほぼ失命し研究者の道は諦め1913年大英博物館に就職
配属された部署で独学で中国語 日本語の古典を習得
一枚の浮世絵と出逢い 源氏物語が読んでみたくなった
たった一人で源氏物語の翻訳を続けた
1925年第一帖を発表するや英米でまたたく間に反響を呼んだ。
「ここにあるのは天才の作品である』(モーニング・ポスト紙)
「ヨーロッパの小説がその誕生から三百年にわたって徐々に得てきた
特性のすべてが、すでにここにあった」(ザ・ネイション誌)
語学の天才 アーサー・ウェイリー
ヴァージニア・ウルフが書評を出して
ウェイリー訳「源氏物語」を絶賛した
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