2024年6月3日月曜日

兼題「万緑」&題「橋」

ゴールなき一所懸命髪洗ふ
南吹くツクシイバラの強き香
船窪を四百歳のオンツツジ
努力なき人への政治海霧かな
傷ついた人への賛歌夏の月

■NHK俳句 兼題「万緑」
選者 堀田希何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣
年間テーマ「俳句の凝りをほぐします」

今週のテーマ 取り合わせ
全く異なる2つの要素が組み合わさっている俳句
①同じ情景(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の
      五感いずれかで同時に感じられる)
遠火事や玻璃にひとすぢ鳥の糞(まり)   相子智恵

②物と心(五感で感じられる「物」感情や考え五感で感じられない「心」)
さま〲の事おもひ出す桜かな   松尾芭蕉

万緑やシェフの気まぐれ土団子(だんご)   柴田英嗣
視覚 触覚 同じ情景になっている
写真機のからっぽ許す万緑や   庄司浩平
添削 万緑や写真機のからっぽ許す

③二物衝撃(2つのイメージには因果関係がなく意外性があり衝撃的
      2つのイメージは五感で感じる「物」だけとは限らない)
万有引力あり馬鈴薯にくぼみあり   奥坂まや
(中七に創造したものをなくすことで意外性があって衝撃)

二物衝撃にもちょうどよい近さと遠さがある
先生方のあいだでは「細い糸で繋がっている」と言うらしい
細い糸でわずかに繋がっているところが妙味
ポイント 二つのポイントが細い糸でつながる
真ん中の連想ワードを抜き取り俳句にする

靴箆(べら)の大きな力春の山   岸田奎

「二物衝撃」ツボポイント
細い糸でつながる距離感で取り合わせる

二物衝撃 名句への連想ゲーム
ミサイルが来る風呂吹に箸の穴   杉山久子
(同じ情景ではない)
①連想が細い糸でつながっている
②連想と連想の間は抜いて俳句にする
③連想を逆戻りしてはいけない

二物衝撃を制するものは取り合わせを制する

▪特選六句 兼題「万緑」
万緑とは夏 見渡す限り生命力のある圧倒的な緑それが万緑

万緑や僕はたすけてが言えない   栗皮
ホルモン剤二錠万緑が痛い   井上れんげ
万緑や立て札朽ちてなほ禁ず   葉村直
空海の糞(まり)堆(うずたか)し万緑裡(り)   寺尾当卯(あてう)
万緑になりゆくはやさはやおくり   磯村咲希(さき)
万緑や脳(なずき)おほいに水使ふ   斎藤秀雄

▪柴田の歩み
二物衝撃を学び 取り合わせを制す

庄司の歩み
衝撃的な出会いを求めて…。レッツゴー( ´∀` )!

■NHK短歌 題「橋」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「❝私❞に出会おう」

冒頭の「初句」終わりの「結句」は一番人の心に残りやすい

▪飛躍の扉
衝撃の初句 運命の結句

生きるとはこのやうにリボンつけることリボンのうれしさ焼け残る服
川野里子「ウォーターリリー」
(結句にもってくることで生きていた時のリボンの様子を印象に残す)

隣人にはじめて声をかけられる「おはよう」でなく「たすけてくれ」と
木下龍也「つむじ風、ここにあります」

誰にも言わないでー小さな声の残りおり闇をくぐりて映画館出づ
吉川宏志「雪の偶然」
(初句は全体を決める 初句以降に続く言葉の方向づけをする句
 読者をぐっとつかんで方向づけた言葉の方にぐっと引き込む
 ―は余韻として残っている時間、時間差を表現)

▪入選六首 題「橋」
中島川の橋の眼鏡を透き行けり光となりて鶴の港へ
馬場実
鳩避(よ)けの下に集まる鳩の胸泣きたいのならそうすればいい
天音閑(あまねかん)
佐波(さば)川の橋を渡りて母に会う御襁褓(おむつき)がいまぬれていぬかと
山下睦子(むつこ)
一席 私 落ちた橋傾いたビル生きようねトランポリンの上だと思って
三島瀬波(せなみ)阪神淡路大震災の経験を詠んだ句だと即解かりました
水枯れの潜水橋を徒歩通勤いるけどいないハケンのアタシ
谷真澄
飛ぶことを諦めた俺の目の前で照らされている白鳥(はくちょう)大橋
君村類(るい)

秀一郎君のきらりポイント
泣きたいのならそうすればいい
あむちゃんのきらりポイント
白鳥大橋

▪秀一郎あむの飛躍のカギ
飛躍のカギ「初句と結句を意識する」
努力せず成し遂げられると、君は言うそんな橋なら駆け上がらない
内藤秀一郎 添削
瞬発力だけで行けると、君は言うそんな橋なら駆け上がらない

わたる時恋の願いが叶うという夢の吊り橋ミルキーブルー
深尾あむ 添削(結句は運命を反転させる)
わたる時恋の願いが叶うという夢の吊り橋ひとりでわたる

カーテンに春のひかりの添う朝(あした)はじめて見たり君の歯みがき
染野太郎「あの日の海」

結句にどんな加減のリアルさを入れるかはとても大事なこと
全体をキュッとうまい具合の力加減で引き締めてくれる言葉の選び方
うまいリアルさというものを結句で選べるといい

▪言葉のバトン
胸が背中がどこまでも向く
神戸大学短歌会 府田確(ふだたしか)

工場の煙が遠く立ち上る
神戸大学短歌会 奥村鼓太郎
大人数でひとつの歌を歌ったらどんどん溢れでてくる森林
(寝かせているみたいな気持ちあります技量が
 追い付いてないこともあると思うので
 思い出の情報を表わすのに十分じゃないことも
 あると思うのであえて頭の中の残してます)

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