2024年6月10日月曜日

兼題「植田」&テーマ「嫉妬」

風青し情緒のままを生き行かん
保育園過疎に開園夏の風
いろどりの赤き帳簿や青き嶺
無常観生きて生かされ網代傘(あじろがさ)
程々の距離保ちつつ夏を生く

■NHK俳句 兼題「植田」
選者 西山睦 ゲスト 若井新一 司会 柴田英嗣
年間テーマ「やさしい手」

吹かれ立ち身じろぎもせず青山河   西山睦
青山河が夏の季語 青々として茂った山や川

▪若井新一さんの「やさしい手」米づくり・俳句三選
水 しろがねの水躍り込む植田かな   若井新一
土 泥舐めむばかりに這うて田草取   若井新一

若井新一さんの田草取の句一覧
泥舐めむばかりに這うて田草取
田草取り終へ両膝を畦(あぜ)に突く
もの言はぬ時の長しや田草取
抜き足を泥の離さず田草取
腰燃えむばかり真昼の田草取
太陽に額づくごとし田草取

稲 黄金の波へ乗り出す稲刈機   若井新一

▪特選六句発表 兼題「植田」
植田より最後のひと足抜きにけり   吉田勝也
来年の結(ゆい)は二戸なり植田風   太田省三
畔(あぜ)の昼ほうじ茶匂う植田かな   畑(はた)美保子
「いい雨」と父のうなずく植田かな   中島正則
植田ゆく鯨のやうな雲の腹   沼野大統領
病欠の午後を植田のひかり浴ぶ   内藤羊皐(ようこう)

▪特選三席発表 今週の兼題「植田」
一席 朝の日の朝の日らしき植田かな   上田和代
二席 ブレザーに変はりし母校植田風   村上玲子
三席 引越の車窓明るき植田かな   夏野猫宙(ねこぞら)

▪俳句やろうぜ 黒岩徳将
俳句と短歌の二刀流 第12回星野立子新人賞 
女性史上最年少で受賞 野城知里(22歳)
半睡の文字で受賞

クロイワ推しの一句
指に砂糖燕まつすぐ沈みゆく   野城知里
取り合わせ 季語(つばめ)+季語以外の事柄

詠む時は気持ちがあると思う
「物」に「気持ち」を託せるのが俳句ならではの良いところ
喜怒哀楽とかじゃない小さな弦(音)の震えみたいな
すっごい小さな感動みたいな「心が少し動いた」気持ちを伝えたい

野城さん 早読み一句 お題「初夏」
初夏や鳩いくたびも向きを変え   野城知里

▪柴田の歩み
自分の職業を詠んで近くなろう

■NHK短歌 テーマ「嫉妬」
選者 俵万智 ゲスト 凰稀(おおき)かなめ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「光る愛の歌」
大河ドラマ「光る君へ」とのコラボの第2週

▪入選九首 テーマ「嫉妬」
預かった猫の毛なのねウェーブがかかってるのね金色なのね
麻倉遥
きみたちが同じバッグを持っててもリプはつけない気付きもしない
畑依裕(よりひろ)
一席「すごいね」に混じってしまうざらざらを潰していますカレーの匙で
北村保
三席 わたしより先に生まれただけなのに姉の部屋には陽がよく当たる
中村マコト
長男の好物ばかり並べ置く実家の味を割箸(わりばし)で食む
丸山ま美
妬まれる要素が何もないことで私はとても得をしている
伊藤澄子
産休に入る友への花を買う我は受粉せぬめしべを持ちて
古澤茅世加(ちよか)
二席 恋人の話題を避けた型抜きの抜いた形で分かってしまう
今井マイ
退院を遂げしベッドの空き地へと不法投棄の如き舌打ち
村松正敏

▪「光る君」で短歌を10倍楽しもう!
顔の見える相手への嫉妬と顔の見えない相手への嫉妬
どっちが深い?
高松殿(明子)は目に見える別の妻 
そうじゃない別の誰かに対するメラメラ歓
「嫉妬」にまつわる赤染衛門の歌

やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな
赤染衛門
万智訳
迷わずに寝ればよかった気がつけば月を見送るためだけの夜
来るのかな❓来ないのかな❓と言っているうちに
夜がふけて月が傾くそこまで時間がたってしまったという歌
赤染衛門が姉妹に代わって詠んでいる歌
赤染衛門の夫 大江匡衡(まさひら)が尾張の国司をしていたときに
他の女性のところに行ったりそこで子供が生まれたりして
帰ってこない夫を待つのに疲れたこともあった
通い婚の時代 このシステムは嫉妬せざるを得ない
「嫉妬」の名歌がたくさん生まれた時代
送ってこそ歌

「光る君」から学べる 短歌づくりのポイントは?
その題で詠んだという「てい」で醜い心も吐き出せる
ネガティブな感情もしっかり自分と向き合って見つめることは大事
作品になったことでマイナスの感情もプラスの土産を持って帰ってきた
感情に捨てるとこなし
短歌づくりのポイント
歌に詠むことで自分の気持ちに向き合える
マイナスな気持ちでも心にためず吐き出せる

君や来む我や行かむのいさよひにまきの板戸もささず寝にけり
万智訳
来る来ない行く行かないの十六夜(いざよい)に
戸を開けたまま寝てしまったわ
「言葉の裏に込められた思いを感じ取れるようになると歌が上達する」
これは現代短歌を作る私たちにもいえる
ひとの歌を読めるようになると自分の歌も上達する

俵万智女史の嫉妬
つまらない人を独占するより
すてきな人をシェアしたほうがいいと思う

▪言葉のバトン
工場の煙が遠く立ち上る
神戸大学短歌会 奥村鼓太郎

空のあなたはどうしてますか
妙圓(えん)寺住職 本間大智

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