2024年6月2日日曜日

100分de名著 トーマス・マン❝魔の山❞(4)生への奉仕へ

夏の陽や腹がぎゅるぎゅる朝食後
苦潮や自己防衛を旨として
暑き日やゴム入れ替えて深呼吸
待っていました和田島のバッチ網(漁)
夏の海しらす陽光跳ね返す

■100分de名著 トーマス・マン❝魔の山❞(4)生への奉仕へ
小黒康正 九州大学教授
スイスの結核診療所「ベルクホーフ」の人々
ハンス・カストルプ ヨーアヒム・ツィームセン ベーレンス顧問官
レオ・ナフタ セテムブリーニ クラウディア・ショーシャ婦人

「御一同―結構。万事結構。私の言うべきことは、
何はさておき、とにもかくにも、私たちが義務を負っているー
犯すべからざる要求が私たちに向けられているということだー」
結局、彼は何も言ってなかったのだ。
しかし、彼の頭部は問答不要なほど堂々たるもので、
表情と身ぶりは、断乎とし、強烈で、力強いものであったから、
聞く耳を立てていたハンス・カストルプも含めて誰もが、
極めて重大なことを聞かされたと思ったし、まとまりのある
実質的な話がないのに気がついていたところで、
特に残念だと思わなかったのである。

「ぼくにはとってもよく分かるんだよ、君が女として
あの人をずいぶんと愛している気持ちが」
「あの人がわたしを愛しているの」と彼女は言った。
「その愛情にわたしは誇りを持ち、感謝をし、
彼に心服しているの。この気持ち、分かるでしょ」

圧倒的な生を表現する ペーペル・コルン
ショーシャ婦人のその後 あっさりベルクホーフを去る

部屋には以前よりも人数が一人多くなっていた。
それは、死んだ頃のように頬が暗く落ちくぼみ、
戦争ひげをはやしたヨーアヒムで、そのひげの中では唇が
実にふっくらと誇らしげに反り返っていたのだ。
まなざしは静かに優しく見守るように
ハンス・カストルプに、彼ひとりだけに注がれていた。
のどが絞めつけられ、四度五度と嗚咽が込み上げて、
心の奥底からひきつる。
「すまない」と彼は息をのんでつぶやいた。
それから眼に涙があふれ、もう何も見えなくなってしまったのだ。

「鉄かぶと」ヨーアヒムの被っていたもの 戦中戦後が同時に進行
ハンスからヨーアヒムへの謝罪
作者トーマス・マンからドイツの青年たちへの謝罪
これはある種のレクイエム小説 亡くなった人を思い出す

第6章「雪」
ハンスはある夢をみて「生への奉仕」に
目覚めるがその夜には忘れてしまう

月日が経つにつれて、ベルクホーフの中で悪霊のようなものが
徘徊し始めていた。どんな雰囲気になっていたのか。
―喧嘩の蔓延だ。
セテムブリーニとナフタは感情的になる。決闘となった。
「きさまは空に向けて撃った」
「どこに撃とうが私の勝手です」
「もう一度撃つんだ!」
「そのつもりは毛頭ない。あなたの番だ」
セテムブリーニ氏は、頭をもたげて天を臨みながら、
相手に対して斜に構え、真正面に向いていなかったが、
それは感動的な光景だった。
「卑怯者!」とナフタは叫んだが、それはこのように
人間臭い叫び声を上げることで撃たれるよりも
撃つ方がもっと勇気を必要とするのを認めてのことで、
そして決闘とはもはや、何の関係のない仕草で
ピストルを上げて、頭を撃ったのである。

戦争が起こる前の状態を示している
我々が戦争を導くかのように状況がだんだんと蔓延していく
その臨界点というのがふたりの決闘のシーン

ナフタの自死

こうして彼がここに来たときの真夏を迎えると、
本人のあずかり知らぬところだが、
1年の歳月そのものが7回めぐったのである。
すると、とどろきが鳴り響いたー抑え気味に言わせてもらえば、
地球を根底からぐらつかせた歴史的な青天の霹靂であった。
しかし私たちにすれば、魔の山を吹き飛ばし、7年間の
眠りびとを手荒に外に放り出す青天の霹靂だったのである。

さらばハンス・カストルプ、人生の誠実な厄介息子!
君の物語は終了だ。私たちは最後まで語った。ご機嫌ようー
君がとにかく無事にせよ戦死しているにせよだ!
君の先行きは暗い。
君は余寒に満たされながら「陣地とり」をすることで
死と肉体の放蕩の中から愛の夢が生まれる瞬間を経験した。
このように世界を覆う死の祝祭からも、雨模様の夜空を
いたるところで焦がす熱病のようなひどい劫火(ごうか)からも、
いつか愛が立ち現れるのであろうか。

青天の霹靂=第一次世界大戦
二人の兵士は誰なのか ヨーアヒムとカストルプ?
説明しないのが良い
デカダンス(没落)の克服?そして雪の章そして…。
見えない上昇志向があるように思える

「いつか愛が立ち現れるのであろうか。」
読む人へこの続きを見届けて欲しいという願いが込められている疑問形。
この作品が書き終えられたのち、第二次世界大戦が勃発した。
複雑なものがいかに複雑であるかを示すのが研究者の役目。
と、小黒康正先生。

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