2024年6月20日木曜日

あの本、読みました?~「本と東大」

川沿いを源氏蛍が群れをなし
夏座敷詫び寂びの美や黒茶碗
夏点前わざとな歪み黒織部
麻衣織部好みの歪(いびつ)の美
単物沓(くつ)形茶碗破格の美

■あの本、読みました?~「本と東大」
東大生が一番読んでいる本&東大卒作家・小川哲

國分功一郎 窪拓哉 渡邊新月

2023年東大生が1番読んだ本
「暇と退屈の倫理学」の一文 國分功一郎著 新潮文庫刊
愚かなる人間は、退屈に耐えられないから
気晴らしをもとめているにすぎないというのに、
自分が追いもとめるもののなかに本当に
幸福があると思い込んでいる、とパスカルは言うのである。
(中略)
狩りとは何か?パスカルはこう言う。
狩りとは買ったりもらったりしたのでは
欲しくもないウサギを追いかけて一日中
駆けずり回ることである。
人は獲物が欲しいのではない。
退屈から逃れたいから、気晴らしをしたいから、
ひいては、みじめな人間の運命から
眼をそらしたいから、狩りに行くのである。

東大生に読まれている本
思考の整理学 外山滋比古著 ちくま文庫
声で考えるのは、現代人においても
決して見すてたことではなかろう。
書き上げた原稿を読みなおして、手を入れる。
原稿は黙って書くが、読みかえしは、音読する。
(中略)
そして、もし、読みつかえるところがあれば、
かならず問題がひそんでいる。
再考してみなくてはならない。
沈黙の読み返しではたいていこういうところを見のがしてしまう。
声は、目だけで見つけることのできない文章の穴を発見する。
声は思いのほか、賢明なのであろう。

東大出身直木賞作家《小川哲》の頭の中
理系から文系に変わった理由
大学院生の時小説家になろうと思った
学生時代は岩波文庫を順番に読んでいた
読書が小川哲に与えた影響

「君のクイズ」の一文 小川哲著 朝日新聞出版
帰宅してから、僕はSNSにアップされていた本庄絆の優勝シーンを見た。
「問題―」と聞こえた瞬間、ボタンを押した本庄絆が
「ママ、クリーニング小野寺よ」と口にする。
場面には映っていないが、舞台袖ではスタッフが慌てているし、
問い読みのアナウンサーの顔は青ざめている。
画面の右にいる僕は、きょろきょろと周囲を見回してから、
困惑した表情で下を向いている。
もう一度、本庄絆が「ママ、クリーニング小野寺よ」と答える。
しばらく間があって、「ピンポン」と音が鳴る。
真新しいことは何一つ見つからない。
僕がステージで見たことがすべてだった。
ただステージ上の僕が知らなかった唯一の情報として、
テレビ放送画面には本来読まれるはずだった問題が表示されていた。

「君のクイズ」誕生秘話 大変だったこと 小説の題材は何から?
「地図と拳」誕生秘話 情報収集の方法 林祐輔番組プロデューサー

「地図と拳」の一文 小川哲著 集英社
石本とは東横線の代官山駅で待ち合わせた。
(中略)
四辺を坂道で区切られた区画のちょうど中心に
目的のアパートがあった。
同潤会が設計したという重ね建て四戸は、
鉄筋コンクリート造りで、下階は東西が出入り口となっており、
上階には北側の階段から上るようである。
大震災の後に立てられたことは間違いないようだが、
モダンというよりは紋切り型の建築だった。
二階の手前が中川の部屋だった。
(中略)
石本が言うには、中川は「千年に一人の秀才」らしい。
(中略)
明男は慌てて立ちあがった。
尻の下にはフランス語の論文が置かれていた。
「ル・コルビュジェ」石本がそう口にした。
中川が「知ってるのか?」と聞き返した。
「いえ、読みあげただけです。
英語よりはフランス語の方が得意なので」
「『輝く都市』ですね」と明男は付け足した。
「もう読んだのか?」「いえ、読みたいと思っていました」
「若手建築家で集まって、この論文の
勉強会をしようという話をしているんだ。君もどうかな」
「ええ」と明男は答えた。
「千年に一人の秀才」に少なからず興味が湧いていたし、
こうして他人に興味が湧くこと自体、ずいぶん久しぶりのことだった。

直木賞受賞作「地図と拳」の一文 小川哲著 集英社
「ヒュン」という音がした。中川の耳元を高速の塊が通過したのだった。
第三の銃声だ、と思った。
銃声は二種類ではなく、三種類だった。
自分が撃った音、他人が撃った音。
そして自分に向けて撃たれた音。
第三の「ヒュン」という銃声は、「ドン」や「パン」の記憶を
かき消してしまうほど強烈な音だった。自分が一銭五厘の
使い捨て歩兵として戦場に立っていることを思い知らされる音であり、
籤引きでたまたま「生」は出たことを教えてくれる音だった。

小川哲の小説の書き方 小説を書く時のこだわり 
小川哲が鈴木保奈美にオススメの一冊
「スローターハウス5」
カート・ヴォネガット・ジュニア著 伊藤典夫翻訳 ハヤカワ文庫SF
時の流れの呪縛から解き放たれたビリー・ピルグリムは自分の生涯の
未来と過去を往来する奇妙な時間旅行者になっていた
時間の迷路の果てに彼が見たものは何か?
著者自身の戦争体験をまじえた半自伝的長篇

柴田元幸
ポール・オースターの翻訳で知られる日本を代表する翻訳家
鈴木保奈美が大ファン

小川哲の次回作 スタートアップ ベンチャービジネス
投資家と出版社 企業家と小説家 ギャンブル

0 件のコメント:

コメントを投稿