2024年5月28日火曜日

兼題「電車」&テーマ「がんばって/だいじょうぶ」

夏の陽やテレビ画面を直撃す
夏初(なつはじめ)足踏みならし立ち止まり
夏の日や硬くなりゆく我が身体
夏の月自己距離保ち存えて
老鴬(ろうおう)の囀り続く午前二時

■NHK俳句 兼題「電車」
選者 高野ムツオ ゲスト 西生ゆかり 伊藤伊那男 小坂大魔王 
レギュラー 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」

香水や電車は人を飼ひならし   西生ゆかり
(電車に乗ってどこにでも行けるはずなのに
 満員電車に乗っている自分が毎日決まりきった電車に
 マナーを守って乗ってだんだん飼いならされている感覚
 「香水」というのは人の汗の匂いを消していい匂いに見せかける
 文明の利器によって人が野生を失い飼いならされていくイメージ
 「香水」をつけた 我にしなかったのは読者を信用した)

母と花電車に揺られ共に咲く   小坂大魔王
(花は俳句では桜 機能性がちょっと弱い 
 桜以外の花にした方が良かった
 伊藤伊那男氏は守旧派 伝統に則って作っていきたい
 各地各国に歳時記が生まれてイメージが作られると良いと高野ムツオ先生)

錆兆すブリキの電車新樹光   伊藤伊那男
(古びていることにネガティブなわけではない 「錆」が思い出の象徴
 子ども時代の記憶をブリキの電車の錆に見だしている
 そこに「新樹光」が射してくる 類想感は拭えない
 「兆す」がこの句の勝負所と考えると魅力的)

天上天下電車がたごと生ビール   高野ムツオ
(最初は「頭上足下ずじょうそっか」にしていた 三段切れになった
 いろんな観点から鑑賞して貰えて良かった)

巣立鳥あれがあなたの乗る電車   中西アルノ

小坂大魔王氏の言葉
人の言葉尻や発言を批判・否定するインターネット
この句会に来ると「真逆」をやっている
誰かが言った「いい部分」を抽出している
とても贅沢な時間 「好きな部分」を探すという
より文明的・文化的なことをやっている
句会は忙しい人ほどやった方がいい
贅沢で建設的・文化的なことだと改めて思った

▪特選三席発表 兼題「電車」
一席 おぼろ月経由ふるさと行き電車   三玉(みたま)一郎
二席 電車なき電車通りや昭和の日   古川晴野
三席 電車って熱帯魚だと思はない?   岡本恵

特選六句発表
エイプリルフールの電車空ぐらい飛べ   夏風かをる
麦秋やここから電車単線に   平山仁彦
春風や電車が電車待つている   山内貞市
葉桜や市電の跡のなくなりぬ   渡辺一成
東京の虹を行き交ふ電車かな   葦屋蛙城
八月の雨を回送電車ゆく   大黒富々

参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/p0O2865JmM/

▪私感
今回のゲスト西生ゆかり女史・伊藤伊那男氏・小坂大魔王氏!
最高でした。勉強になりました。
またの機会が近い日でありますように…。(祈)

■NHK短歌 今月のテーマ「がんばって/だいじょうぶ」
選者 枡野浩一 ゲスト 蓮見翔 司会 世界世界観
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」

振り向いてくれたけれども「がんばれ」はたぶん自分に言った言葉だ
枡野浩一

蓮見翔さんが貰ったファンレターより
ただでさえ才能あるのに へらへらしないでプレッシャーと
責任感と共にお仕事しているところ、本当にかっこいいです!

▪31音の手紙
入選九首 テーマ「がんばって/だいじょうぶ」
三席 私 友だち?と訊けば小さく「なりたい、と、ぼくの方では思っているけど」
原田冬
がんばってなんて言わなきゃよかったが自分のために言ってしまった
和田康
手の甲にちっちゃく数字が書いてあるいい歳のひと幸せでいて
へそごま
「頑張って」いるねいるよねそうだよね他に言葉が浮かばずごめん
仲川暁美(あきみ)
 土手沿いの桜は今年も満開です頑張らなくてもいいから生きて
野口優菜
 この道はここに出るのかあの時に流した涙はここで晴れるか
三井基史
一席 私 大谷にがんばれを言うカロリーで俺ががんばるべきだと気づく
宮尾大地
二席 その坂を登りきったら振り返り甲府盆地の夜景を見なよ
赤城条治(あかぎじょうじ)
「玉子焼き食べに来て」もうこれ以上頑張れないと思ったときに
芋田智恵子

▪改悪添削
手の甲にちっちゃく数字が書いてあるいい歳のひと幸せでいて
添削(「幸せでいて」という言い方が「がんばって」の代わりに
ピンとくる言い方になっている)
手の甲にちっちゃく数字が書いてあるおじさん強く生きてください
枡野浩一
手の甲にちっちゃく数字が書いてある年甲斐もなくしょうもなく
尾崎世界観
手の甲にちっちゃく数字が書いてある自分で書いた向きだ独りだ
蓮見翔(改悪になっていない)

▪蓮見翔さんの短歌 「がんばって/だいじょうぶ」
救われた実績がある曲を聴く僕にとってはBUMPがそれで
蓮見翔

▪言葉のバトン
舌のうえ炭酸の味うすれつつ
同志社大学短歌会 不凍港(ふとうみなと)

胸が背中がどこまでも向く
神戸大学短歌会 府田確(ふだたしか)
ささなみと呼ばれて青果コーナーのバイトの君は本名でした

▪私感
私の琴線にこんなに触れる句を選んでくださるだなんて…。
枡野浩一先生と内なるもの、秘めたものが似ているのかも…。

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