2024年5月19日日曜日

100分de名著 トーマス・マン❝魔の山❞(2)二つの極のはざまで

夏鶯(なつうぐいす)や声高らかに藪の中
夏鶯や五羽一斉に喉見せん
縄張りのひな守り抜く夏鴬
夏鴬や皮弛むほど鳴き叫び
縄張りに複数の雌夏鴬

■100分de名著 トーマス・マン❝魔の山❞(2)二つの極のはざまで
小黒康正 九州大学教授 朗読 玉置玲央(素晴らし過ぎる)

それはハンス・カストルプにとってどうにも我慢がならず、
前々から嫌っていた騒音だったのだ。
この場合はおまけに小さなガラスがドアに何枚も
はめられていたこともあってショックが増し、
バタン、ガチャン、という音になった。
チェッ、とハンス・カストルプは腹を立てて思った。
何というだらしなさだ!

「きっとあなたはこちらよりも立派な患者さんに
なられるでしょう。うけあいますよ。
誰であれ、患者としてものになるかならないか、
それは一目で分かるんです。
患者になるのにも才能を要しますからな」

「ご両人はご機嫌ですなーごもっとも、ごもっとも。
見事な朝です!空はすみ、太陽はほほえむー
居場所を忘れてしまうくらいです」

彼女は音も立てずに歩いたが、それは入ってきたときの物音と
奇妙な対照をなし、独特の忍び足で、いくらか頭を前に突き出して、
ベランダに出るドアに対して垂直に置いてある一番左端のテーブル、
すなわち「上流ロシア人席」に向かって歩いて行き、
体にぴったり合ったウールジャケットのポケットに片手を入れていたが
もう一方の手を後頭部に回して、髪を押さえ整えていた。
ハンス・カストルプはその手に目を向けた。

ハンス
「病気は人間を常に繊細で、賢明で、特異な存在にすると考えられています」
セテムブリーニ
「私はその見解に異議ありです。病気は絶対に高貴なものでありません。
絶対に尊厳に値するものではありません-
こんな考えそのものが病気であるか、病気をもたらすのです。」

少年ヒッペとの重ね合わせ
少年時代に憧れた男の子 彼から鉛筆を借りた
結婚も国の役に立つものでなければならない

「私はあなたに目を付けていたんですよ、
カストルプ君、今だから言えることですが」

「ここはアジア的雰囲気にあふれています。
低地にいてはじめて、あなたはヨーロッパ人たりうるわけで、
ご自身の流儀で果敢に病苦と戦い、
進歩を促し、時間を有効に使えるのです。
くどいようですが、しっかりしなさい!誇りを忘れてはなりません、
場違いなところに迷い込んではなりません。
この泥沼、この魔女の島から立ち去るのです」

人生の厄介息子
3人の関係=世界情勢!?
セテムブリーニ ヨーロッパ(合理。進歩と啓蒙、秩序)
ハンス・カストルプ ドイツ
ショーシャ婦人 アジア(東)(非合理、エロス、混沌)
ヨーロッパ中心主義
ドストエフスキー全集

「リーリトは夜の魔物となり、特にその美しい髪によって
若い男たちにとって危険な存在になりました」
「なんだって、美しい髪をした夜の魔物だって。
そんなのに君は我慢がならないはずだ。そうだろう?」
とハンス・カストルプはうわごとを言った。
ワインの混ぜ物をかなり飲んでいたのだ。
「いいですか、エンジニア、そんな言い方はおやめなさい」
とセテムブリーニは眉をひそめて命じた。
「ボクハ君ヲ愛シテイル。イツモ愛シテイタンダ、ナゼカト言うと、
君ハ僕ノ人生ノ「君」デアリ、僕ノ夢、運命、願望、永遠ノ憧憬ダカラダ…
アア、愛トハ…、肉体、愛、死、コノ三ツハ一ツナンダ。
君ノ毛穴ノ八さんヲ感ジサセ、君ノ産毛ヲ触ラセテクレ、
墓デ朽チル運命ニアル水トタンパク質カラナル人間像ヨ、
僕ヲ滅ボシタマエ、君ノ唇ニ僕ノ唇ヲ当テルコトデ!」

「アデュ、謝肉祭ノ私ノ王子サマ。私ノ鉛筆、返スノ忘レナイデネ」
そして彼女は出て行った。

デカダンス(没落)の達成

戦争が書かせた後半部
現実を目の当たりにしたマン
茶番ではない「違う要素を組み込んでいかなければならない」
時の小説としての「魔の山」

上巻
第一章 滞在1日目
第二章 ハンスの少年時代
第三章 滞在2日目
第四章 ~滞在3週間
第五章 ~滞在7か月

下巻
第6章 ~滞在2年半
第7章 ~滞在7年

主人公が経験する時間間隔を小説の分量にうまく当てはめている

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