フェアウェイ弁当抱え夏の風
フェアウェイ箸を運ばん夏陽射し
草茂るタイのお遍路出迎えん
常楽寺ろうそく灯す薄暮かな
短夜や心の屏風閉じられず
■NHK俳句 兼題「穴子」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 林家たい平 司会 柴田英嗣
年間テーマ「季語を器に盛る」
まくら…落語で本題に入る前の話・導入部
(まくら)に俳句を入れると落語の格調があがる
「藪入り」という落語で親子の情愛をまくらで話していて
「藪入りや何にも言わず泣き笑い」というと
イントロにもなるし格調が高くなる
落語と俳句は密着している
落語の内容を理解しやすくなる
「穴子でからぬけ」という落語がある
なぞなぞを「与太郎」という人物が出す
「うなぎ」「どじょう」と答えさせておいて
答えは「穴子」だったという小話
穴子はさっぱりしていてうなぎはこってり
穴子は海うなぎは川で住んでいる
うなぎも夏の季語だけど意味合いが違う
「うなぎ」と「穴子」を入れ替えてもいいような句はダメ
▪器に季語を盛る
甘辛のどつちもこの身穴子寿司 行方克巳(なめかたかつみ)
酒を飲む方(辛党)も甘いものすき(甘党)…陶句郎先生解釈
甘いツメ「甘党」をつけるのか
塩と柚子「辛党」で食べるのか…大平師匠解釈
議論の余地あり!
「卯の花」は5月(初夏)の季語
ウツギ(卯の花)をイメージしておからを「卯の花」と呼ぶ
海では「卯波(うなみ)」(初夏の季語)という白波が立つ
それもイメージしていると思うと陶句郎先生
▪特選三席 兼題「穴子」
一席 穴子鍋悪い奴ほどよく眠る 鋤柄郁夫(すきがらいくお)
(黒澤明監督の映画タイトルをそのまま使っている 1960年公開の映画
傑作であり問題作 オマージュとして受け止めた
季語を見て五感を使って俳句は作って欲しい)
二席 穴子釣る娘を嫁に出す人と 岡部正彦
(季語を強調するために倒置法を使っている)
三席 播州の漢(おとこ)に惚れて焼き穴子 伊藤和子
(「漢」筋骨隆々の日に焼けた海の男のイメージ)
▪特選六句発表 兼題「穴子」
大将の声は野太し穴子鮨 槻木(つきぎ)俊彦
宮島に穴子焼く香や日照(ひでり)雨 田中孝子
(日照(ひでり)雨は日照雨(そばえ)ともいう
三音の時は日照雨五音の時は日照り雨を使う)
煤(すす)けたる火伏せの護符や穴子飯 古川(ふるかわ)晴野
月光のぬめる穴子をつかみけり 浅木ノヱ
丹田に締める前垂れ穴子割く 藤澤廸夫(みちお)
私 恋ごころとうに忘れて穴子食む 池田君子
(うなぎでは成立しない俳句「恋ごころなんかもう忘れたわ」)
▪俳句やろうぜ
黒岩徳将 帯谷致子(おびたにとうこ)村上智彦先生の結社に入会
元日の畦にみつけし母子草 村上鞆彦
人形の黒髪固し冬座敷 帯谷致子
▪林家たい平の一句
焼台の穴子プクリと香を放つ 林家たい平
添削
焼台の穴子プクリと香を放ち
▪柴田の歩み
俳句は思いでのアルバム
私感
林家たい平師匠の鑑賞、勉強になりました。
またのご出演を楽しみにしています。
■NHK短歌 テーマ「名残」
選者 大森静佳 ゲスト 中村壱太郎 司会 尾崎世界観
年間テーマ「“ものがたり”の深みへ」
クラシックバレエを辞めた足先が体の前の陽に触れたがる
川上まなみ(主語が足先が良い)
▪入選九首 テーマ「名残」
同窓会半ばを過ぎてユーターン組のいつしか訛り始めぬ
小泉浪士(ろうし)
三席 男女別名簿は春に色褪せて蛍の生まれ変わりがミモザ
常田瑛子
私 最後まで残る拍手の一粒を聞き終えてより春は始まる
大津穂波
二席 私 コーヒーの香りがきみを連れてくる今は鞄を置いている席
花林(かりん)なずな
ふらふらと鏡にうつるおばさんは母の名残を宿したわたし
つきひざ
間違って親父の靴を履いた夜は兄が勝手に酒場へ向かう
竹内一二(かつじ)
一席 丁寧に自転車を漕ぐもうここは通り過ぎてもいい場所だから
倉橋駒子
山ちゃんを山ちゃんと呼ぶときいつも六月の旧校舎の匂い
牧野冴
やんわりと絞ったタオルで我がデスク三度目を吹く退職の日
村上秀夫(字足らずが欠落感を表現)
▪ものがたりの深みへ
近松門左衛門作 曽根崎心中
醤油屋の徳兵衛と遊女のお初は愛し合っていたのだけれど
徳兵衛が親友にお金をだまし取られ最終的には
曽根崎の森で心中を果す 道行の段
この世の名残、夜も名残、
死に行く身を譬(たと)ふれば、
仇しが原の道の霜、一足づゝに消えて行く、
夢の夢こそ哀れなれ。
祖母四代目坂田藤十郎が生涯に1400回ほど演じた作品
自分なりに曽根崎心中を一度かみ砕いてみたい
現代作家の角田光代さんの本ならではの解釈があった
徳兵衛が親友にお金をだまし取られたという設定
その場面はお初は見ていない
徳兵衛が「だまし取られた」と
言っているのはうそかもしれない
これしか愛を守る形はなかったというのが答えだと思う
朝日の出る直前、希望を持って死んでいく
義太夫節
物語の情景や人物の心情を「語り」と「三味線」で観客に伝える
歌舞伎俳優はそれに対して身体だけで表現する
壱太郎さんが心情を表すのは指先
頭蓋骨に美しき罅(ひび)うまれよと胸にあなたを抱いていたり
大森静佳
お初が先導して徳兵衛を一緒に死のうという方に持っていく
矛盾した気持ちが複雑に混じり合っている
身体的な表現が有効
▪言葉のバトン
毒をはぐくむ桜木の陰
同志社大学短歌会 三々凪四葩(ささなぎよひら)
⇩
舌のうえ炭酸の味うすれつつ
同志社大学短歌会 不凍港(ふとうみなと)
とりあえず我と我が身を浴槽にぶち込み明日は明日のやり方
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