2024年5月7日火曜日

第25回NHK全国俳句大会

吾のどこが我儘ですか夏の潮
夏の雲積んだ経験生かせずに
夏の風うつらうつらの駐車場
ゴルフ場送り届けて夏を伸ぶ
くしゃみして攣る腹筋や夏の月

■NHK俳句 第25回NHK全国俳句大会
これまでの題詠
初 餅 水 海 土 光 波 声 空 人 明 立 
新 母 和 一 風 山 天 大 生 行 千 平

▪特選俳人を深堀り! 進行 小澤康喬アナウンサー
西村和子 村上鞆彦 夏井いつき

▪特選 題詠「平」
西村和子選
胸起こし見張る地平や稚児の春   うーみん
山田佳乃選
平がなで話す幼子小鳥来る   清水綾乃
夏井いつき選
水平器の気泡のやうに春眠す   溝口トポル
高野ムツオ選
平凡な暮しに蚯蚓鳴きにけり   横田青天子(せいてんし)
星野高士選
手の平の力抜け出す暑さかな   島田文代
小林貴子選
平時とは重き言葉や蝉しぐれ   能田孝昌
村上鞆彦選
肘枕源平桃(げんぺいもも)の花の下   田中久幸
小澤實選
平家滅びし海の青さよ時鳥(ほととぎす)   坂本たか子
小川軽舟 神野紗季選
太陽は平凡な星ふきのたう   佐藤直哉
(第24回大会自由題特選 
孤独死にあたたかな死後二日かな 佐藤直哉)

▪NHK全国俳句大会25年の歴史
第1回(1999年)NHK教育テレビ40周年として開催
題詠が始まったのは第2回以降 第1回は自由題のみで実施

鷲谷七菜子の教え
・俳句は沈黙の詩 沈黙の中に思いを響かせること
・自然と一体になること

清崎敏郎の教え
・俳句は平明
・深みや広がりがあることが大事

▪大会の名場面を大公開
黒田杏子選
墓になる一坪ほどの草を引く   越川三朝
炎昼の骨壷土に還(かえ)しけり
長生きといふ淋しさを昼の虫

この三選に異を唱えたのが藤田湘子
夏井いつきの俳句を始めるきっかけを作った人が黒田杏子だった

黒田杏子の教え
・季語の現場に立つこと
・季語と交信をすること

黒田杏子の三つの教え(花瀬玲さん) 
常に歳時記を読みなさい
過去の優れた句を書き写しなさい
できるだけ季語の現場へ赴きなさい

第1回以降見所になったのが
伝統派 稲畑汀子 と 前衛派 金子兜太 の熱い議論
第1回
金子兜太選
百段の上に炎帝座(おわ)しけり   塩田良一
(本歌取りならぬ本句取りを提案 
類型だ盗作だと野暮なことを言う人がいますが…。
炎帝を大根にしてはどうかと 金子兜太
季題が動くということをご存じか❓と怒ったのが稲畑汀子
季題を重く大切に扱おうとする稲畑汀子
季題を動かすおもしろさっていうのもあると金子兜太
私は金子兜太先生に拍手喝采してしまいました。)

第2回
稲畑汀子選
木登りを教へて帰す夏休   平田隆

稲畑汀子が特選句 金子兜太が秀作に選んだ
これでまたまた熱い闘いとなりました。
「季題季題という人は嫌い」と金子兜太で打ち切りとなりました
西村和子と夏井いつきと村上鞆彦はこんなディペートがやりたいとか…。
私には理解できない世界…。

現在は待ち時間1分ほどで選者が選評などを話す

2004年開催 第5回大会
類句・類想について議論がなされました
伊丹三樹彦 どちらが先に発表したか❓作者は取り消すべき
岡本眸 作るべきではない
藤田湘子 心ある人は避けるべき 力がついたら止めるべき

2007年開催 第8回大会
特選作品に選ばれるためには
有馬朗人 定型の良さをスパッと使った時 その切れた俳句はとる
後藤比奈夫 だれの隣に座るか
宇多喜代子 断定 言い切るくらいがいい
稲畑汀子 季題が生きているか いかに上手に使うか
金子兜太 選者の横に並ぶ方法はないと思う 
季語に拘っている内は選ばれない

▪龍太賞
自由題や題詠とは違い15句1組での作品として審査
「蘇る」岡田眞利子
遠嶺より雲湧き出づるお花畑
老鴬や石切り出せる谷深く
縁下や風渡り行く蟻地獄
暮れ始めぬ小鳥葬(はぶ)りし花野より
雁渡し卓に白磁の皿重ね
柿吊るす山に飢ゑたる獣どち
曼殊沙華釜の炎の透き通り
箸立に隙間なく箸昼の虫
冬濤(ふゆなみ)のどうと崩るる岬馬

巖頭の羚羊(かもしか)に靄(もや)流れけり
枯葦の根方(ねかた)おびただしき羽毛
冬の蜂磔刑(たっけい)像の足元に
凍蝶(いてちょう)の死と見れば翅(はね)ゆると立て
抱き上ぐる兎の汚れ冬ぬくし
凍鶴(いてづる)に山河はるかとなりゆけり

まとめ方と題のつけ方がとても興味深い
連作のアドバイス 緩やかなテーマが必要 西村和子
前の句の世界を土台にして次の句を詠む 夏井いつき
最初の句と最後の句は注意深く考える 村上鞆彦

▪特選 自由題
西村和子選
葉桜や静かに人を歩ませて   行澤(ゆきざわ)直子
星野高士選
夕虹を見知らぬ人に教へられ   印出井(いんでい)慶子
山田佳乃選
溜息をかたちにからすうりの花   石川理恵
高野ムツオ選
鳥渡る石筍(せきじゅん)にまたひと雫(しずく)   古賀睦子
夏井いつき選
鉾立(ほこたて)の横夕刊のバイク押す   花瀬玲
(先生からの教えが自分たちの心柱となり培われている 夏井いつき)
小澤實選
柿が好き子規も青畝(せいほ)も我が夫(つま)も   高田みづ杞(き)
神野紗希選
晩夏光(ばんかこう)砂浜で聴く子の本音   柏原恵美子
小川軽舟選
寒明の解放弦の響きかな   堀瞳子
村上鞆彦選
大海に溶けゆく雨を泳ぐかな   木下美奈子
(船焼捨てし船長は泳ぐかな 高柳重信 先行作品との響き合い
固有名詞は季語に匹敵する)

▪大会大賞
題詠
太陽は平凡な星ふきのたう   佐藤直哉
自由題
大海に溶けゆく雨を泳ぐかな   木下美奈子
(先行作品があることが判明したため、作者本人より辞退)

▪次回の題「出」
詳細:https://www.n-gaku.jp/public/life/zenkokutaikai_25th/#grandprize-haiku

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