2025年1月29日水曜日

あの本、読みました?辻村深月スペシャル

違和感を譜面に残す冬の靄(もや)
冬霞(かすみ)記憶辿りて音刻む
冬の月人には見せぬ柔と剛
(フォリント・コルナ)寒昴小さき元本高金利
中国(経済)が解かる搾菜(ざーさい)冬ざるる

■あの本、読みました? 
「傲慢と善良」「かがみの孤城」…今夜は辻村深月スペシャル
鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

幅広いジャンルを描く発想とは?
ポジショニングマップ 辻村深月と一緒に改訂!
ドラえもんは私の独断で闇には落とせない

「青い壷」の一文 有吉佐和子著/文春文庫
釜の中にはデパートの注文を受けて作った型物の壷八十点がある。
だが、この日、省造がいつもより緊張しているのは
久しぶりに精力をこめて製作した一点物の壷が、
同じ釜の中に三個入っているからである。
(中略)
省三は、まっ先に中央の円筒型の壷を抱き上げた。
胸がすぐ温かくなった。釜から一番遠い机の上に運んだ。
釉の色が青く透き通っている。省三は、釉変が出ていないか、
一個所でも色に濃淡が現れていないか、息を止めて探した。

辻村深月の描く 青春と不思議な力
あの本、読みました?出演のきっかけは…
名作の特徴がわかる 辻村作品ポジショニングマップ
ホラー作家・背筋が凍る「傲慢と善良」
未公開映像 
「傲慢と善良」の一文 辻村深月著/朝日文庫
畳みかけるようにして、美奈子が言う。「じゃあさ、今、何パーセントくらい
結婚したいの❓架(かける)」「え?」
「あの子と結婚したい気持ち、今、何パーセント?」
「―七十パーセントくらいかな」架がそう答えた瞬間だった。
美奈子の顔に意地の悪い笑みは浮かぶ。「ひどいなぁ」と彼女が言った。

婚活の闇「傲慢と善良」
「高慢と偏見」ジェイソン・オースティン著 大島一彦訳/中公文庫
1800年代イギリスの片田舎が舞台 女性の結婚事情と
誤解と偏見から起こる恋のすれ違いを描いた恋愛小説

「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月著/講談社文庫
ある雪の日 校舎に閉じ込められた8人の高校生
誰も登校しない時が止まった校舎の中で不可解な謎を追う青春小説

青春を舞台に描く理由
忘れ物をした気持ちを確かめに行くような気分
今年映画化「この夏の星を見る」感動の青春小説

「この夏の星を見る」の一文 辻村深月著/KADOKAWA
「来週、よろしくお願いします。」綿引が言った。改めて、画面に向き直る。
「十二月九日、大きいズレなく、十八時前―予定だと、
十七時五十二分頃からISSが観測できそうです。
市野先生、参加校、結局どのくらいになりましたか」
「五十二校です。沖縄から北海道まで、全都道府県というわけにはいきませんが、
日本の南から北まで、参加してくれる学校があります」
森村と才津が息を吞むのが聞こえた。「すごいな…」「おっ、そんなにか」
その声を満足そうに聞いて、市野が笑う。
(中略)
皆が頷き合う。それを見て、綿引が言う。
「―失われたって言葉を遣うのがね、私はずっと抵抗があったんです。
特に、子どもたちに対して」
(中略)
実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。それはわかる。
だけど、彼らの時間がまるごと何もなかったかのように言われるのは心外です。
子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。
きちんと、そこに時間も経験もありました」
(中略)
「見せてやりましょう」森村の声がした。
「きちんと、君らが考えたおかげで出来たんだってとこを、
あの子たちに、僕も見せてやりたいです」
「ええ、お願いします」綿引の声に、皆が頷く。
できたばかりのナスミス式望遠鏡を、視界に捉える。
その途端、ありがとう、という強い思いがこみ上げた。

本屋大賞「かがみの孤城」執筆秘話
「かがみの孤城」の一文 辻村深月著/ポプラ文庫
一瞬のうちに頭の中でいろんなことを考えて、言葉の先を失っても、
もうひと押し喜多嶋先生に尋ねられたら、こころは言ってしまったかもしれない。
「学校で何かあったの?行けない理由があるんじゃないの?」と、
喜多嶋先生から次の一言で聞いてもらえることを、
こころはきっと心の中で期待していた。それこそ、待ちわびるように。
しかし、喜多嶋先生が口にしたのは全然、違うことだった。
「だって、こころちゃんは毎日闘ってるでしょう?」
こころは声もなく、息を吸い込んだ。
喜多嶋先生の顔は、何か特別に微笑んでいたり、同情を浮かべていたり、というー
こころが思う、“いい大人”の大袈裟な感じがまるでなかった。
闘ってるー、という言葉を、どういう意味で喜多嶋先生がつかったのか、
わからなかった。けれど、聞いた瞬間に、胸の一番柔らかい部分が熱く、
締め付けられるようになる。苦しいからじゃない。嬉しいからだ。

死者と一度だけ会える「ツナグ」
「ツナグ」親友の心得の一文 辻村深月著/新潮文庫
「―『道は凍ってなかったよ』って伝えて欲しいって」

「ぼくのメジャースプーン」の一文 辻村深月著/講談社文庫
「それでも、ぼくには力があって、何かができるんです。
できるのに、それをしなかったら、絶対に後悔する」
「なるほど。そこにせっかく銃があるのに、
撃たなければ勿体ないというわけですね。
(中略)
「嫌いな考え方ではありません。では実際、彼に対してどんな罰を
与えることがふさわしいと思いますか。さっき、執行猶予だけでは
不満だという話が出ましたが、刑務所で過ごす刑期を設定するのがいいですか。
あなたが何年か期間を決めて、その間の自由を彼から奪う」先生が静かに微笑む。
「うさぎの命を人間と同じように数えるなら、大量虐殺だから無期懲役ですか。
それともうさぎ何匹分を一人、というように単位の決まりを作って
考えるのがいいですか。実際には、うさぎは何匹殺されようと
人間一人分の命には及ばない。そこを考え直しますか」
「―先生は、無期懲役にして自由を奪ったら、あの犯人が反省すると思いますか」
「反省させたいんですか」
「二度と同じことをして欲しくないし、自分がやったことが
どれだけひどいことだったのかを、しっかりわかって欲しいんです」

倫理と罰「ぼくのメジャースプーン」

「イノセント・デイズ」の一文 早見和真著/新潮文庫
「あの先生。私は先に失礼しますね」丹下健生の目の前にようやく色が伴った。
見上げた先に、長年勤めてもらっている助産婦師が立っている。
(中略)
頼りなさそうに微笑んだ彼女にうなずきかけて、
丹下は読んでいた新聞に視線を戻した。
瞬きすることも忘れ、視界がかすむのを自覚しても、
〈田中幸乃〉という文字から目が離せない。
春先からしきりに報じられていた放火殺人事件の被告人だ。

小説家・辻村深月 誕生秘話
「ドラえもん」の大ファン 知られざる絆

辻村深月女史の大ファンになってしまいました。
凄過ぎます。言葉の選び方、思考経路に魅了されてしまいました。
読みたい本が次々紹介されるので、遅読な自分自身が情けなくて…。
もっともっと読みたいのに…。

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