暮早し道案内に導かれ
雪催(もよい)居間をストーブフル稼働
寒昴無いものねだりしてみても
吾に還る独りの時間冬陽射し
■NHK俳句 兼題「寒椿(侘助)」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 篠井(ささい)英介 司会 柴田英嗣
年間テーマ「器に季語を盛る」
「選は創作なり」と高浜虚子が言っている
10か月で選句で6万数千句選んだ 毎月9句特選を選ぶ
一句一句に(作者の)人生がある それがとても面白い
選句大好き 木暮陶句郎です。先生最高!私は先生が大好きです!
俳句は時間が止まって自分の気持ちと向き合える
俳句には立ち止まるという意味合いがある
(寒椿・侘助)どちらもツバキ属の仲間 でも少しずつ違う
侘助は花びらが開ききらない筒咲き
寒椿は花びらが開ききる
植物にとって厳しい時期がやってくる
寒い中でなかなか花が見られない
「寒椿」や「侘助」が一生懸命咲いている
凛とした寒椿の姿を見ると温かい椿の力を感じる
侘助には赤・白・斑(ふ)入りもある
寒椿・侘助の名句
侘助のひとつの花の日数(ひかず)かな 阿波野青畝(せいほ)
(侘助を)茶花として一輪選ぶ 茶室の床の間に生ける
その茶花がいつ開くのか この侘助の命がいつ尽きるのだろうか
器に季語を盛る
「寒椿」「侘助」って「和」じゃないですか フレンチの風が吹いている
寒卵(冬の季語)
寒中(小寒~立春)
1月から2月にかけての寒い時期に鶏が生んだ卵 滋養が豊富
・兼題「寒椿・侘助」特選六句発表
侘助や師匠のこゑはよく通り 砂山恵子
陶工の頬につちくれ寒椿 柚木(ゆうき)みゆき
侘助や曖昧母音ひとつ吐く 吉川佳生(よしお)
(侘助は筒咲き もし侘助がしゃべるとしたら訳がわからない
母音を発するんじゃないかと作者は発想を飛ばした)
乳房失ひ白の眩しき寒椿 伏見昌子
(定型では治まりきらない思いが込められている 白に限定しているということは
自分のまだ真っ白の未来 これからどうなるんだろうという思い
それが「白の眩しき」これは未来が眩しい
そんな思いが「寒椿」という季語に託されている)
寒椿時に聞こゆる鈴祓(すずはらい) 長谷川淑子(よしこ)
留石(とめいし)の向かう侘助らしき花 中田白甫(はくほ)
(留石とは「ここから向うへ行ってはいけないよ」と石に縄をかけたもの 篠井英介氏
季語が「寒椿」だったらズカズカ行って近くで見るのではと木暮陶句郎先生)
・篠井(ささい)英介の一句
床柱夕日影さす寒椿 篠井英介
添削(「夕日影さす」が「床柱」と「寒椿」にかかっている
俳句は省略の文学 「夕日影」は「夕影」と言い換えられる
「夕影」は「さす」という言葉は省略できる
「夕日影さす」に「倒す」という他動詞が入れられる
凛として咲いているという気持ちも入れられる
「床柱」がメインになる「寒椿」を奥ゆかしく添え物に
「寒椿」の白も陰って「床柱」の影が畳にうつっている)
寒椿夕影倒す床柱
・特選三席
一席 片口に白洲正子の寒椿 三船悦子
(白洲正子14歳で女性として能舞台に立つ アメリカに留学
海外から日本文化を見た 古美術や骨董を勉強
片口とは液体を他の容器に移す道具 そんな片口を花器として花を生けた
これこそが「見立ての美」
女流であり文化人としての最先端 奥深い日本の文化を愛された
骨董にも造詣が深い 「白洲正子と片口が出てくると日本の文化を象徴する
そこに寒椿 満点 日本の伝統のすごみを感じる句
すべては人名が効いている)
二席 侘助や父の句帳のみみず文字 西田尚子
(俳句に向き合ったお父さんの気持ちを受けて作者も俳句を作っている
「みみず文字」を想像しながら読んでいる娘の姿も見えてくる)
三席 寒椿徳利に挿して酒やめむ 民興次
(徳利に寒椿を生けてお酒を入れないようにしようと作者の気持ちを詠んだ)
・柴田の歩み
俳句で歴史や文化を学ぶ
(歴史や文化を学べるのははいくのいいところ)
■NHK短歌 テーマ「踊る」
選者 大森静佳 ゲスト 町田康(こう) 司会 尾崎世界観
年間テーマ「“ものがたり”の深みへ」
作るなよ自在自由に作られろ豚に生まれろそれが歌やぞ
町田康
意味が先に来るのではなく音が先に来るのでもなく同時に来る
自然と直感的に生まれてくる
日常の中で小さい踊りを見つけ出す
歌に❝ものがたり❞あり
・入選九首 てーま「踊る」
三席 揺れながら鍋かきまわす祖母のあの地球をあやすような足どり
舟樢(ふなと)いま
二席 北風に踊る落葉を追いかけて君の一日(ひとひ)へ映り込みたい
山口詢子(あやこ)
手は祈り胸は生き物足は風よろしく今日も驚かせてね
橋本南美(みなみ) 町田康氏は手は殴り足は蹴りだとか…。
バス停で踊る少女を軸にして午前八時の世界が回る
有賀(あるが)拓郎
早春の窓の光にゆつくりと手のみで踊る明日は退院
鈴木正芳
一席 私 湯の中でパスタが踊る愛憎と言うけれどほぼ憎なんでしょう?
砂崎柊(すなさきしゅう)
仕事場のゴミ出すわたし裏口でほんの一秒踊って戻る
青野朔(さく)
革命のなき国にゐて盆踊りの輪とふ輪廻に身を預けたり
吉行直人 歴史的仮名遣いは人が使うと腹が立つと町田康氏
かろやかに口開け腕上げ踊ってる埴輪のように信じてみたい
小野寺寿子
・ものがたりの深みへ
宇治拾遺物語 町田康訳
「鬼にこぶとらるゝ事」を現代語訳した
人間の細かい心の動きが描かれてある
どう現実を見るかによって 同じ景色を見てても
人によって歌が変わってくるのと一緒 どう読むかという話
大森静佳
優しいおじいさんと欲張りなおじいさんの対比をきつくして教訓を提示する
表現する時の態度の話として読める
善/悪や優しい/欲張りの話ではなく町田さんの表現論・文学論として読める
町田康
歌や踊りには目的がないはず
実際どういう気持ちでその人は踊っているのか 表現したい
原文
翁伸び上がり屈まりて舞ふべき限りすぢり
もぢりえい声を出して一庭を走り廻り舞ふ
現代語訳
おじいさんは、身体を伸ばしたり縮めたりしながら、
舞える限りに体をくねらせ、かけ声を出して、そこら中を駆け回って踊った。
町田康氏訳
うんと身体を縮めたかと思うと、気合いとともにビヨヨンと伸びたり、
身体を海老のように曲げたり、ときに娘のように腰をくねらせ、
指先の表現にも細心の注意を払い、ときにロックスターのように
律動的な文言で観客を煽りながらステージ狭しと駆け回ったり、と、
伸縮自在、緩急自在、技、神に入って、お爺さん、一世一代の名演であった。
大森静佳女史の気に入った「こぶとりじいさん」のしゃべり言葉
「なるほどね。でも、それって極悪じゃね?」
「ここまで言うんだからマジじゃね?やっぱ、瘤、いこうよ、瘤」
町田康氏
ある種ルールに従っていない人たちのような軽さ
人生を楽しんでいる感じも出したかった
踊りたい気持ちが夜空に穴をあけ雀わんさか降ってきたっけ
大森静佳
町田康さんの感想
時間がたってもその時の感情が生々しく表れている
大森静佳
自分が内側にいてしゃべっている感じを出そうと思うと
自然にしゃべり言葉も出てくる
町田康氏
大森さんが踊りたかったんじゃないですか
・言葉のバトン
生きる輝き背中を押され
松田茂 コピーライター
⇩
走りたい足がはいてたハイヒール
宮田愛萌(まなも)(作家・タレント)
小説「春・出逢い」を発表
短歌の魅力は瞬間を共有できること
雪催(もよい)居間をストーブフル稼働
寒昴無いものねだりしてみても
吾に還る独りの時間冬陽射し
■NHK俳句 兼題「寒椿(侘助)」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 篠井(ささい)英介 司会 柴田英嗣
年間テーマ「器に季語を盛る」
「選は創作なり」と高浜虚子が言っている
10か月で選句で6万数千句選んだ 毎月9句特選を選ぶ
一句一句に(作者の)人生がある それがとても面白い
選句大好き 木暮陶句郎です。先生最高!私は先生が大好きです!
俳句は時間が止まって自分の気持ちと向き合える
俳句には立ち止まるという意味合いがある
(寒椿・侘助)どちらもツバキ属の仲間 でも少しずつ違う
侘助は花びらが開ききらない筒咲き
寒椿は花びらが開ききる
植物にとって厳しい時期がやってくる
寒い中でなかなか花が見られない
「寒椿」や「侘助」が一生懸命咲いている
凛とした寒椿の姿を見ると温かい椿の力を感じる
侘助には赤・白・斑(ふ)入りもある
寒椿・侘助の名句
侘助のひとつの花の日数(ひかず)かな 阿波野青畝(せいほ)
(侘助を)茶花として一輪選ぶ 茶室の床の間に生ける
その茶花がいつ開くのか この侘助の命がいつ尽きるのだろうか
器に季語を盛る
「寒椿」「侘助」って「和」じゃないですか フレンチの風が吹いている
寒卵(冬の季語)
寒中(小寒~立春)
1月から2月にかけての寒い時期に鶏が生んだ卵 滋養が豊富
・兼題「寒椿・侘助」特選六句発表
侘助や師匠のこゑはよく通り 砂山恵子
陶工の頬につちくれ寒椿 柚木(ゆうき)みゆき
侘助や曖昧母音ひとつ吐く 吉川佳生(よしお)
(侘助は筒咲き もし侘助がしゃべるとしたら訳がわからない
母音を発するんじゃないかと作者は発想を飛ばした)
乳房失ひ白の眩しき寒椿 伏見昌子
(定型では治まりきらない思いが込められている 白に限定しているということは
自分のまだ真っ白の未来 これからどうなるんだろうという思い
それが「白の眩しき」これは未来が眩しい
そんな思いが「寒椿」という季語に託されている)
寒椿時に聞こゆる鈴祓(すずはらい) 長谷川淑子(よしこ)
留石(とめいし)の向かう侘助らしき花 中田白甫(はくほ)
(留石とは「ここから向うへ行ってはいけないよ」と石に縄をかけたもの 篠井英介氏
季語が「寒椿」だったらズカズカ行って近くで見るのではと木暮陶句郎先生)
・篠井(ささい)英介の一句
床柱夕日影さす寒椿 篠井英介
添削(「夕日影さす」が「床柱」と「寒椿」にかかっている
俳句は省略の文学 「夕日影」は「夕影」と言い換えられる
「夕影」は「さす」という言葉は省略できる
「夕日影さす」に「倒す」という他動詞が入れられる
凛として咲いているという気持ちも入れられる
「床柱」がメインになる「寒椿」を奥ゆかしく添え物に
「寒椿」の白も陰って「床柱」の影が畳にうつっている)
寒椿夕影倒す床柱
・特選三席
一席 片口に白洲正子の寒椿 三船悦子
(白洲正子14歳で女性として能舞台に立つ アメリカに留学
海外から日本文化を見た 古美術や骨董を勉強
片口とは液体を他の容器に移す道具 そんな片口を花器として花を生けた
これこそが「見立ての美」
女流であり文化人としての最先端 奥深い日本の文化を愛された
骨董にも造詣が深い 「白洲正子と片口が出てくると日本の文化を象徴する
そこに寒椿 満点 日本の伝統のすごみを感じる句
すべては人名が効いている)
二席 侘助や父の句帳のみみず文字 西田尚子
(俳句に向き合ったお父さんの気持ちを受けて作者も俳句を作っている
「みみず文字」を想像しながら読んでいる娘の姿も見えてくる)
三席 寒椿徳利に挿して酒やめむ 民興次
(徳利に寒椿を生けてお酒を入れないようにしようと作者の気持ちを詠んだ)
・柴田の歩み
俳句で歴史や文化を学ぶ
(歴史や文化を学べるのははいくのいいところ)
■NHK短歌 テーマ「踊る」
選者 大森静佳 ゲスト 町田康(こう) 司会 尾崎世界観
年間テーマ「“ものがたり”の深みへ」
作るなよ自在自由に作られろ豚に生まれろそれが歌やぞ
町田康
意味が先に来るのではなく音が先に来るのでもなく同時に来る
自然と直感的に生まれてくる
日常の中で小さい踊りを見つけ出す
歌に❝ものがたり❞あり
・入選九首 てーま「踊る」
三席 揺れながら鍋かきまわす祖母のあの地球をあやすような足どり
舟樢(ふなと)いま
二席 北風に踊る落葉を追いかけて君の一日(ひとひ)へ映り込みたい
山口詢子(あやこ)
手は祈り胸は生き物足は風よろしく今日も驚かせてね
橋本南美(みなみ) 町田康氏は手は殴り足は蹴りだとか…。
バス停で踊る少女を軸にして午前八時の世界が回る
有賀(あるが)拓郎
早春の窓の光にゆつくりと手のみで踊る明日は退院
鈴木正芳
一席 私 湯の中でパスタが踊る愛憎と言うけれどほぼ憎なんでしょう?
砂崎柊(すなさきしゅう)
仕事場のゴミ出すわたし裏口でほんの一秒踊って戻る
青野朔(さく)
革命のなき国にゐて盆踊りの輪とふ輪廻に身を預けたり
吉行直人 歴史的仮名遣いは人が使うと腹が立つと町田康氏
かろやかに口開け腕上げ踊ってる埴輪のように信じてみたい
小野寺寿子
・ものがたりの深みへ
宇治拾遺物語 町田康訳
「鬼にこぶとらるゝ事」を現代語訳した
人間の細かい心の動きが描かれてある
どう現実を見るかによって 同じ景色を見てても
人によって歌が変わってくるのと一緒 どう読むかという話
大森静佳
優しいおじいさんと欲張りなおじいさんの対比をきつくして教訓を提示する
表現する時の態度の話として読める
善/悪や優しい/欲張りの話ではなく町田さんの表現論・文学論として読める
町田康
歌や踊りには目的がないはず
実際どういう気持ちでその人は踊っているのか 表現したい
原文
翁伸び上がり屈まりて舞ふべき限りすぢり
もぢりえい声を出して一庭を走り廻り舞ふ
現代語訳
おじいさんは、身体を伸ばしたり縮めたりしながら、
舞える限りに体をくねらせ、かけ声を出して、そこら中を駆け回って踊った。
町田康氏訳
うんと身体を縮めたかと思うと、気合いとともにビヨヨンと伸びたり、
身体を海老のように曲げたり、ときに娘のように腰をくねらせ、
指先の表現にも細心の注意を払い、ときにロックスターのように
律動的な文言で観客を煽りながらステージ狭しと駆け回ったり、と、
伸縮自在、緩急自在、技、神に入って、お爺さん、一世一代の名演であった。
大森静佳女史の気に入った「こぶとりじいさん」のしゃべり言葉
「なるほどね。でも、それって極悪じゃね?」
「ここまで言うんだからマジじゃね?やっぱ、瘤、いこうよ、瘤」
町田康氏
ある種ルールに従っていない人たちのような軽さ
人生を楽しんでいる感じも出したかった
踊りたい気持ちが夜空に穴をあけ雀わんさか降ってきたっけ
大森静佳
町田康さんの感想
時間がたってもその時の感情が生々しく表れている
大森静佳
自分が内側にいてしゃべっている感じを出そうと思うと
自然にしゃべり言葉も出てくる
町田康氏
大森さんが踊りたかったんじゃないですか
・言葉のバトン
生きる輝き背中を押され
松田茂 コピーライター
⇩
走りたい足がはいてたハイヒール
宮田愛萌(まなも)(作家・タレント)
小説「春・出逢い」を発表
短歌の魅力は瞬間を共有できること
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