2024年9月30日月曜日

俳句特集&短歌スペシャルコラボ2俵万智×渡辺祐真

柿紅葉ペンキの剥げたトタン屋根
秋茜蔦絡まりた廃屋へ
秋の音踏みしめながらポコアポコ
秋日和孤独愛して愛されて
ふうふうと頬張る零余子(むかご)青き空

■NHK俳句 特集 夏井いつきの発想力を鍛えるドリル3
凡人発想から脱出するためのシリーズ 
出演:夏井いつき 庄司浩平 ペンた丸 司会 柴田英嗣
兼題「ふるさと/故郷」

もっとも使われた季語ランキング!
1位 月(秋の季語)
2位 盆(秋の季語)
3位 墓参(秋の季語)
4位 祭(夏の季語)

凡人ワードランキング!
1位 母 2位 風 3位 山 4位 川・河 5位 水
6位 匂・香・にほひ 7位 父 8位 星 9位 海 10位 友

凡人脱出ピラミッド
ボン
①ふるさとの無い人達で芋煮会   小田和夫
②ふるさとの無い子どうしの夏休み   草野立青
③ふるさとの無き吾に降る里の雪   岩本実佳
④故郷の無い者同士夜長哉   平山仁彦
⑤故郷は無いが生きてる去年今年   松虫姫の村人
⑥帰省子の羨む我に故郷なく   白浜尚子
⑦秋うらら故郷の無き夫婦なり   高橋ひろみこ
⑧故郷を持たぬ我が身へ青嵐   草深みずほ
⑨故郷を持たぬ秋風どこへ行く   山多左夢
⑩街静か故郷を持たぬ夏休   立花紅
⑪地虫鳴くふるさと持たぬ人もゐて   井上三哉

土台が一緒なので新しみが殆どない

半ボン
⑫ふるさとを持たぬわたくしソーダ水   水須ゆき子
⑬草笛でふるさとない子うまくふく   野村和子
⑭凩やふるさとのない吾とあゆむ   益田信行
⑮歪(いが)む夢老いて故郷なき夜寒かな   仲本昌弘

「寂しい」「辛い」「しんどい」と言った季語を取り合わせがち⑫
小さな裏切りが季語との取り合わせができている⑬
思い込みをちょっとずらしている 小さな工夫がある⑭
調べが滞っている⑮

脱ボン
⑯満月と僕に故郷なんてない   佐藤茂之
⑰故郷はない金もない柿を食う   けーい○

並列で表現 一緒に悠々と生きている⑯
潔いな 上五・中七「ない」韻を踏んだ調べ 
下五の開き直りにオリジナリティーが脱ボン⑰

類想というのは共通の理解の土台
類想を使ってはダメと考えない
類想を土台にしてその上にもうひと匙
新しいオリジナリティリアリティをどうのせるか

・兼題「ふるさと」で発想を飛ばしてみよう
「ふるさとはない」を使った穴埋めで発想力を鍛える
俳句には数学の公式みたいな型がいっぱいある
これは俳句の型の1つ
対句…並置された二つのフレーズが対応するように作られた表現形式
対になったフレーズを考える
ふるさとはない○○○○は○○○○○

ふるさとはない洋服は爽やかに   柴田英嗣
(対句の片方と響き合っていないと俳句・詩としての価値が下がる)
ふるさとはないアメリカは冷やかだ   庄司浩平
(ささやかな響きあいが作れている)
ふるさとはない散髪は稲刈だ   ペンた丸
(季語を比喩に使うと鮮度が落ち主役ではなくなる)

■NHK短歌 スペシャルコラボ 俵万智×光る君
スペシャル 短歌で「光る君へ」を10倍楽しもう!2
大河ドラマ「光る君へ」とのコラボ・スペシャル、第2弾。
今回はまひろが書き始めた「源氏物語」に焦点をあて、
和歌の魅力を解き明かす。
出演:俵万智 渡辺祐真(すけざね)作家・書評家

・俵万智女史の注目のシーン
ドラマの中では文章をまひろが音読していましたが
「源氏物語」ではこの部分 和歌が使われていました
「源氏物語」の「若紫」という帖(じょう)の中のシーン
光源氏は義理の母であり生涯思い続ける藤壺と
密通した際にこの歌のやり取りをする

見てもまた逢ふ夜まれなる夢のうちにやがてまぎるるわが身ともがな
光源氏
世語りに人や伝へむたぐぎなく憂き身をさめぬ夢になしても
藤壺
まひろの音読
こうしてお逢いできてもまたお会いできるとは限りません
夢の中にこのまま消えてしまうわが身でありたい
光源氏
世の語り草として人は伝えるのではないでしょうか
類いなくつらいわが身をさめない夢の中のこととしても
藤壺

二人の恋愛に対するスタンスはまひとと道長を思い起こさせる
この歌のやりとりは光源氏・道長 まひろ・藤壺が重なる
2人の心理のやりとりが和歌に集約されている

・すけざね氏の注目のシーン
まひろが書いていた和歌に注目
寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔
光源氏 「源氏物語」第四帖「夕顔」

「源氏物語」の「夕顔」という巻で
光源氏が夕顔という女性に贈った歌
まひろが代筆業で詠んだ歌だったけれど
それが「源氏物語」の中に登場している
物語の中で(代筆業)をやっていたというのは
すごく素敵な伏線だと思う
「源氏物語」は800首近い和歌が出てくる
作者紫式部の代筆とも言える

・さまざまな登場人物の心を詠む 800首の和歌
「源氏物語」の中の上手い歌と下手な歌

からころも君が心のつらければたもとはかくぞそばちつつのみ
末摘花
本当にあなたは薄情なお人
ご自分の事しか頭にないのですね
いつも思い慕って鳴いてばかりおります
私の衣は袖も袂も濡れに濡れ、干くひまさえありません
ただただお待ち申し上げております
今夜も明日も変わらずに

からころも(唐衣) 着る 裾 袖などにかかる枕詞
あなたの心が私につれないから袖のたもとはこんなに濡れています

袖ぬるるこひぢとかつは知りながら下り立つ田子のみづからぞうき
六条御息所(光源氏が関係を持った女性の1人)
袖が濡れるほど泣くことになる恋だと分かっているけれど、
感情の沼にはまっていく自分が悲しい…。
【掛け詞】
こひぢ:小泥(こひぢ)恋路 みづから:自ら 水
ズブズブになると分かっているのに 
自分からこの恋の泥沼に入って行ってしまう 私が悔しい悲しい
【縁語】
ぬるる 泥(ひぢ) 田子(たご) 水
技巧を凝らしながらも自分のつらさ 切なさがパシッと表現されている

2首どちらも紫式部が作っている 物語作者だと思う
物語の中に入ったらこんなに自在に
超上手い人からダサい歌まで詠い分けられる
和歌を味わってこその「源氏物語」

・枕草子の和歌に注目
みな人の花や蝶やといそぐ日もわが心をば君ぞ知りける
枕草子
人々がみんな花や蝶と浮かれている日も
私の気持ちをよく分かってくれているのね
(みんな人が花や蝶やすなわち道長側についている そんな中で
私のことを思ってくれているのは清少納言お前だけだ)

(定子が)住んでいた屋敷が火事によって
焼失してしまって一時的に退避している
定子側にものすごく不利な政治的状況になっている
いろいろな人々は今 勢いのある道長側についている

俵万智女史 注目の歌人
ドラマの中ではあかねと呼ばれている和泉式部
黒髪のみだれも知らずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき
和泉式部
契りの後の場面 黒髪の乱れも分らないほどうち伏せていると
その瞬間またこの髪をかきやったあなたが恋しい

白露も夢もこの世もまぼろしもたとへていえば久しかりけり
和泉式部
あっという間に終わってしまった恋 その相手に送った歌
白露 夢 この世 幻 
和歌の世界では儚いものの例えとして使われる
そんなものは久しい 永遠のようなものだ
この私の短い恋に比べれば 
白露とか夢を儚いものとして詠んできた全歌人にケンカを売っている

人生の元手がかかっている歌だから 
この人の歌には敵わないと俵万智女史
重さの深さが歌の迫力に出ている
元手を掛けている場面に遭遇した時に
日頃から歌を詠んでいる人に神様がほほ笑んでくださる
諦めず詠んでいきましょうと俵万智女史は力説されるのでした

たった1人のためでさえなく私は自分のために書くんだという
すごくすがすがしい宣言
本当の意味で「源氏物語」が書かれ始めた
俵万智女史も自分自身のために詠んでおられるとか…。
誰に「書くな」と言われても書く 
というぐらいの気持ちがあることが大事

2024年9月29日日曜日

100分de名著 ウェイリー版❝源氏物語❞(4)世界文学としての「源氏物語」

薄紅葉有限の美を日々求め
無限に広ぐ幾何学模様空高し
星月夜点と線へと落とし込む
暗闇に探す光や月の雲
花野径平和を作る才知あり

■100分de名著 
ウェイリー版❝源氏物語❞(4)世界文学としての「源氏物語」
安田登 伊集院光 安部みちこ 翻訳者 毬矢まりえ(俳人) 森山恵

原文にはない「エンペラー」という言葉に驚いた
更衣=帝の衣装(ワードローブ)の世話をする女性
女御=帝の寝所(ベッドチェンバー)の世話をする女性

いつの時代のことでしたか、あるエンペラーの宮廷での物語でございます。
ワードローブ(更衣)のレディ、ベッドチェンバー(女御)のレディなど、
後宮にはそれはそれは数多くの女性が仕えておりました。

翻訳中に有名なシェイクスピアの言葉が潜ませてあった
光源氏と頭中将が詠み交わす和歌(「賢木」帖)
(頭中将の歌)
それもがとけさひらけたる初花に 
おとらぬ君がにほひをぞ見る
(光源氏の返歌)
時ならでけさ咲く花は夏の雨にしをれにけらし 
にほふほどなくおとろへにたるものを。
(シェイクスピア ソネット18番 人生は儚いよね 重ねられていた)
若さのはかなさを嘆く「源氏」の和歌のテーマと
シェイクスピアのソネットとテーマが合っている

ふつう洪水はflood ここではdeluge を使っている
theDeluge 「ノアの洪水」(旧約聖書)を意味する

輝くブルーウェイブス
紅葉賀
十月には紅葉(レッドリーヴス)の賀(フェスティヴァル)のために、
エンペラーも朱雀院(スザクイン)へお出ましのご予定でした。
踊り手はみな、高貴な家柄の子息という決まりです。
皇子や大臣以下、誰もが熱心に稽古やリハーサルに励んでいます。
プリンス・ゲンジはトウノチュウジョウ(頭中将)をパートナーに
青海波(ブルーウェイブス)を舞います。
チュウジョも、その辺りの踊り手に比べれば、飛び抜けて美しく、
踊りも巧みですが、ゲンジと並ぶと、花盛りの桜の
脇に立つ、山樅(もみ)のようです。
沈みゆく金色の夕日がゲンジに降り注ぎ、
ふと楽の音が高まる、その妙なる瞬間。
ゲンジの雅な足の運び、たおやかに傾けた首。
これほど眩いものを見たことがあるでしょうか。
頬を生き生きと紅潮させ一心に舞う姿は、
まさにゲンジ、ザ、シャイニング・ワン。
紅葉する大樹のもと、四十人のフルート吹きが輪をつくりました。
彼らの笛の音に、山から吹き下ろす
荒れ狂う松籟(しょうらい)のハーモニーが加わります。
紅葉渦巻き、舞い散る中、
光り輝く華麗さで躍り出たゲンジの〈青海波〉の舞。
―観る者は、畏れにも似た歓喜を味わったのでした。
「源氏物語A・ウェイリー版」毬矢まりえ 森山恵 訳

舞楽「青海波」=ブルーウェイブス

スエツムハナ
ああ、それにしても、なんという馬鹿げた間違いを犯したのだろう。
この姫君がとにかく背丈がとても高いのは座高でわかります。
これほど胴長の女性がこの世にいるとは。
やにわに、最大の欠点に目が引きつけられました。
鼻です。鼻から目が離せません。
まさにサマンタバドラ(普賢菩薩)さまの白象の鼻!
驚くほど長く目立つうえに、(なんとも不思議なことに)
少し下向き加減に垂れたその鼻先はピンク色で、雪の白さも
霞むほどの色白な肌と、奇妙なコントラストを成しています。
たいそう痩せて骨ばり、とりわけ肩の骨が
痛ましくドレスの下で突き出ています。
こんな惨めな姿を晒させてしまったとは。申し訳ない気もしますが、
あまりに奇っ怪な姿に、どうにも目が釘付けになってしまいます。

ホントに不美人?スエツムハナ
スエツムハナは外国にルーツがあるのではないか❓
黒貂(てん)(セーブル)のマント 
渤海国(ぼっかいこく)から日本に入ってきていた

「今昔物語」重明親王の息子の描写がスエツムハナにそっくり

ゲンジが語る「物語論」

「私はこの芸術(アート)を見直しているのですよ。
実際的価値もはかりしれない。もし物語がなければ、
古代の神々の時代から現代に至るまで、
人びとがいかに生きたか、どうやって知ることができるでしょうね。
〈日本書紀〉(クロニクルズ・オブ・ジャパン)などの歴史書は、
人生のほんの一面しか見せてくれません。
その一方で、あなたのまわりに積んであるその日記(ダイアリー)や
物語(ロマンス)の類は幅広いひとのプライヴェートな出来事を
細々と伝えていますね…」
ゲンジは微笑み、さらに続けます。「けれどもわたしは
この小説(ノベル)という文芸(アート)とは何か、いかに
誕生したかについては独自の理論思っているのですよ。
まず小説とは単に作家(オーサー)が、
誰かの冒険譚(たん)を語るだけではないのです。
そうではなく良いことにせよ悪いことにせよ、
その作家自身が経験した出来事や出会った人物
―自ら直接体験したことのみならず、
目撃したとか、ひとから聞いた話とかでもー
に烈(はげ)しく感情を動かされ、自分ひとりの胸には仕舞って
おけなくなって、小説が生まれるのです。
自分の人生だったり、まわりの出来事だったりが、
とても重要なものとの思いが拭えず、
忘却の彼方に葬り去られるのがたえがたくなる。
そのことを誰も知らない時代が来てはならないと思う。
こうして小説という芸術が誕生した、私はそう思っているのです。
であれば当然、物語作家(ストーリーテラー)は、
良きもの美しきものを描いていれば
それで責任を果たというわけではないのです。
まわりで起こるさまざまな悪徳や愚行にショックを受けることも
まあまああるはずで美談とまったく同じ、
それにも激しく心が揺さぶられるのです。
なんと大切なことか、書きと4めておかねば、とね。(略)
「蛍」帖より

時空を超えた訳語
小説(ノヴェル)の語源=新しい
「ドン・キホーテ」セルバンテス著 1605年1615年が小説のはじまり

20世紀が来て新しい作品を作ろうと思っていたら
すでに「源氏物語」に書かれていた
しかも女性が書いていた日本で

     日本       イギリス
   現代日本語     
     ⇧      ↖
1000年前紫式部(原文)⇨100年前ウェイリー(英語)

らせん訳 
ドイツの哲学者ヘーゲル「物事はらせん的に展開していく」

らくご「死神」は元々はドイツ民話からきている
グリム兄弟が20年前に童話集に採集した
150年前に三遊亭圓朝が落語「死神」に仕立てた
今の噺家さんがもう一度新しいものにしている
色々な文化や歴史を巻き込みながら
時空を超えて戻ってきた「らせん」的発展

2024年9月28日土曜日

第9回尻文字三角パス①&「良夜」&「木天蓼(またたび)」

秋を打つ降りしきる雨受ける濤
夕暮れを鯨ゆるりと秋の海
透かし彫り面取り加え天高し
海と川入り乱れたり深き秋
日蝕の炎の揺らぎ秋創る

■ 夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「良夜」

読んで字のとおり良い夜 月の出ている美しい夜のことを
いう言葉なのですが 俳句の季語として使う場合には
注意が必要になります どういう季語かというと
秋の夜の漠然とした広い意味ではないのです
この季語は陰暦8月15日つまり名月の夜 
名月の夜の気持ちのいい 
美しい月夜ということになってきます
たった1年の中のその日1日だけというのが
この季語のポイントになってきます
名月が空に輝いている その下に広がる空間の広さ
そういったものを含んだ季語になってきます

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「木天蓼(またたび)」

俗に「猫に木天蓼」とも言いますが この「木天蓼」を
猫に与えると酔っ払ったようになるということで
猫好きもよく知っている植物かもしれません
季語としての「木天蓼」これは「木天蓼」の実になります
「木天蓼」の花は初夏の頃に咲くのですが その花が落ちて
そして実が黄色く熟してくるのが秋になってきます
この実は塩漬けにしたりすると食べることもできるようです
そのほか果実酒なんかにもなるようです
虫瘤ができたものは漢方薬の材料にもなるそうです
どんな味になるんでしょうかね

■夏井いつき俳句チャンネル
【第9回尻二字三角パス①】候補句を一挙公開!【「らい」】
夏井いつき俳句チャンネル

来世では躓かないわ春炬燵   甲斐杓子
磊落(らいらく)なボルゾイ梳いてゐる四日   小豆白虎
ライカライカ皮の手擦れや涅槃西風(ねはんにし)   山上ぽぽ
らいてふの太陽たたへ咲くミモザ   田中とうま
来客と伯母の背を刺す猫の恋   豆村あつ
礼拝の遅春をひかる黒真珠   松田T
ライトには新人春の定期戦   アントニオ
雷神のパンツ欲しがる二月かな   千秋
来世は猫破れかぶれの恋短か   たな屋英利
らいてふ忌古アパートにさす朝日   みづちみか
来客のメロンがやけに無口です   嶋村まき
来診の鞄よりチョコ花の蔭   かいいまず
ライムきゅるきゅる春宵のカウンター   Q&A
ライダーの襟足うねる風光る   北里有李
雷神の剣を盗んだ春夜かな   きょう大
ライオンの目の隅にある春愁   桂子
雷伝為右エ門初場所を刺す   きぼやしき
来世とは死後の生なり黒揚羽   たぶれ

投句者の名前は夏井いつき先生の文字が読み取れなくて
間違っている確立大です…。ごめんなさい…。

2024年9月27日金曜日

理想的本箱 EDITION青春&柳宗悦の言葉&稚児俳句

伝統へ新しき風小鳥来る
星明り漆に置いた夜光貝
沖縄を螺鈿(らでん)で埋めん秋の空
秋闊歩ハイビスカスを着た女
(にし阿波)秋高しムラの細部に神宿る

■理想的本箱 君だけのブックガイド EDITION青春
吉岡里帆 太田緑ロランス 幅允孝

悩み多き青春 手に取って欲しい青春の書

・「しろいろの街の、その骨の体温の」著者 村田沙耶香
教室の小さな価値観に縛られるもどかしさ
自分の価値は自分でつくる
伊吹 主人公・結佳と同じ書道教室に通うサッカー少年

・「遠浅の部屋」著者 大橋裕之
青春を謳歌したいけど」たどり着かないジレンマ
青春の真っただ中では青春に気づかない

・「えーえんとくちから」著者 笹井宏之
食パンの耳をまんべんなくかじる
祈りとはそういうものだろう
暮れなずむホームをふたりぽろぽろと音符のように歩きましたね
とてつもないけしごむかすの洪水が来るぞ愛が消されたらしい
わたくしは水と炭素と少々の存在感で生きております
半袖のシャツ 夏 オペラグラスから見えるすべてのものに拍手を
息抜きをしている人に栓をするすべてがぬけてしまわないよう
この星に消灯時間がおとずれるときも手を繋いでいましょうね
ふわふわを、つかんだことのかなしみの あれはおそらくしあわせでした
ひきがねをひけば小さな花束が飛びだすような明日をください
戦争が優しい雨に変わったらあなたのそばで爪を切りたい
ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす
えーえんとくちから えーえんとくちから 
永遠解く力を下さい
「人にやさしくなりたい時に読む本」より
自由な心で遠く見たことのない世界へ飛び込む

・「#Z世代的価値観」著者 竹田ダニエル
「大人に任せておけばいい」という時代は、もうすでに終わっている。
どんどん「変化の前例」を作っていくことで、自分たちの手で
腐った社会を少しずつ変えられることを証明している。
「仕事≠人生」的な働き方より
抑圧からの解放 新しい規範を作る
ありのままの自分らしく生き続ける探求

・「ボクの音楽武者修行」著者 小澤征爾
スクーター提供依頼に対し富士重工が出した条件
一、日本国籍を明示すること
一、音楽家であることを示すこと
一、事故を起さないこと
スクーターと共に貨物船で渡欧
欧州に来たのは棒ふりの修業
五体でぶつかる
Allegro(速く) Forte(強く)連発した
コンクール第一位の賞状を手にした
音楽に関しては努力型だったが粘りだけは超一流だった
抜群の行動力、人懐っこい人柄、並外れた努力、
自由かつ健やかに音楽を探求できたのでは❓
世界に自分を開いて運命をたぐり寄せることとなる文章

■芹澤銈介に影響を与えた柳宗悦の言葉
本当の美しさというものは実用に導かれ制作されるような
他力のものの中にこそある

■ワルイコあつまれ(100) 稚児俳句
辻内京子 髙柳克弘 松尾葉翔

「なぁぜなぁぜ」
疑問や質問を言うときに皮肉を込めて使うフレーズ

なぁぜなぁぜ雨名月の誕生日   辻内京子
雨名月(秋の季語)雨で中秋の名月をながめることができないようす

虫かごの窓開いておりなぁぜなぁぜ   髙柳克弘
虫かご(秋の季語)美しい鳴き声の虫を飼うためのかご

ポイント
間のびした印象になるため中七は字余りをさける

なぁぜなぁぜ腹ぱんぱんでも夜食食う   松尾葉翔
夜食(秋の季語) 添削ポイント 内容が重複している

髙柳先生の添削 牛飲馬食さらに夜食よなぁぜなぁぜ
牛飲馬食 たくさん飲んで食べること
ポイント 字余りすることで満腹感を表現
辻内先生の添削 なぁぜなぁぜ夜長の食い気きりもなき
夜長(秋の季語) やるせなさ皮肉を出すために「食い気」を入れた
ポイント きりのなき 言い切らないことで余韻を残した印象になる

2024年9月26日木曜日

夏井いつきのよみ旅!in山梨 後編&兼題「名月」

ひと眠り元気復活小鳥来る
秋彼岸声なき声と対話せり
涸れはてた涙探して吾亦紅(われもこう)
痛み増す最後の秋を意識せり
秋の蚊や人に疎まれ叩かれて

■夏井いつきのよみ旅!in山梨 後編
笛吹市 大善寺(ぶどう寺) 住職 井上哲秀(てっしゅう)
薬師寺(国宝)1286年建立 関東最古の木造建築物
奈良時代 僧・行基が薬師如来像を安置 ぶどう栽培を伝えた

甲州葡萄根元やさしく糠を撒く   松坂宮子
ボカシ 糠に魚粉などを混ぜ発酵させた肥料 自家製の肥料
糠はボカシの方が良かったといつき先生 洗濯は雨の日
俳句ひとくちMAMO
甲州葡萄…秋の季語「ワイン造る」「葡萄酒醸す」など

秋の虹妻と載(の)つけた論文誌   青柳修平
青柳さんMEMO 妻 暁子さん
学生時代に学んだ新林学を福祉に活用する論文を妻と共著
知的な関係 幸多かれといつき先生

夏富士と共に際立つ吾子(わこ)の笑み   髙野晃太朗
見事な山梨県民といつき先生 郷土愛が素晴らしい
俳句ひとくちMAMO
夏富士は雪が解けた登山シーズンで活気のある姿 
秋の季語 富士の初雪は神々しさなどを表す

森田絵美さん マットさん 桃の生産販売をしている
キッチンカーで桃をスムージーにして販売

あかき桃にっこり笑う朝日あび   マット

桃うつくし桃いつくしむ目うつくし   夏井いつき

稲妻に鍬持ち走りヒザ打撲   金子寛
金子MEMO
教員時代に妻となる裕子さんを紹介される

走り梅雨ヤングコーンのしづく落つ   福田和秀
ヤングコーン トウモロコシの若い実を早取りしたもの
心の中で美しい光景を美しいってちゃんと
キャッチする人だなって私は思いましたよ といつき先生

■ギュッと!四国 俳句道場 兼題「名月」
陰暦8月15日の月を名月という。
「陰暦8月15日の月」という暦に由来する性質上、必ずしも満月ではない。
ちなみに、今年は翌日が満月だった。

ギュッと!特選
名月や誰にも告げぬ湖の斧   香依蒼(かえそう)
(名月の持つ神秘性 
 イソップ童話「金の斧銀の斧」を下敷きにしたのではないか?
 童話の神秘と、月の神秘。両者が一句の中で調和を生んでいる。)

放送された句
名月に伸ばした両手届くやも   ポッキー
(名月を取ってくれろと泣く子かな 小林一茶 
 発想の下敷きにしている 永遠の定番)
佳作 名月を柔らにきゅっと掴めさう   まるかじり
名月ね名月だなあ祖母と祖父   五台山の麓っ子
(正岡子規の句に「毎年よ彼岸の入りに寒いのは」がある。
 子規の母である八重さんの発した言葉をそのまま書き留めた句。
 この句も、老夫婦の会話が俳句になっている。)
秀作 名月や「きれい」と小さく君の手話   井上れんげ
(最後の二音で見せてくれたのが見事)
名月を君と見たくて団子買ふ   笹木好里
(詩歌に置いて君とは思い人)
佳作 名月にナイフ入れたるパンケーキ   可猫
名月の光と絡むピアノの音   みかを
(ベートーベン「月光ソナタ」からの連想かも❓)
秀作 名月や峡の鶏舎の騒がしく   加田紗智
(名月とは月の神秘・恐ろしさも感じる季語)
秀作 名月や一茶の蔵に窓ひとつ   万里の森
(作者は一茶の故郷である長野県信濃町を吟行にでかけた。
 一茶の最後の家となった蔵を取材した実景の一句。
 一茶の人生に思いを寄せている)
佳作 #(ハッシュタグ)名月電車から月を   くぅ
名月のあかり頼りに魚釣り   ラ・クート
(「あかり頼りに」の部分は下手。
 名月と魚釣りとの取り合わせは悪くない。)
佳作 名月や古き地蔵は彫り浅し   ルック鷹丘
(端正に描写されている。)

正人のもったいない
名月を浴びまどろむや象二頭 かずポン
「季語の本意とは」月を愛でる気持ちがポイント
添削 名月を浴びまどろめる象二頭
   名月を浴びまどろみの象二頭
強調・詠嘆の「や」を外す 悪目立ちしないようにする
「まどろむ」姿を描写するだけでよい 視点が定まる

2024年9月25日水曜日

そしてまた、フジコ・ヘミングとともに

迫り来る時間に追われ月見月
忘れゆくことの多さよ秋彼岸
菊日和美味い不味いは置いといて
人として如何なものか秋の声
鴨渡る度を超す陽射し遠慮なく

■そしてまた、フジコ・ヘミングとともに
パガニーニの「鐘」による華麗なる大幻想曲(1832) リスト

リストはパガニーニのヴァイオリン技法を
ピアノの音の置き換え表現しようとしました
1832年演奏を聞いた僅か2カ月後に
パガニーニの「鐘」による華麗なる大幻想曲を作曲
以降何度もカンパネラ(鐘)を主題にした曲を作り
私たちの知るラ・カンパネラが完成したのは1851年
最初に作った曲から19年の年月が流れていました

ピアニスト レスリー・ハワードさん
リストが書いたすべての楽章の曲や 
曲のバージョンなどを合わせると
彼の作曲の総局は何千にもなるのです
ですから私のピアノ曲の録音は1400曲にもなり
時間がたっぷりかかりました

レスリー・ハワード演奏 リスト「ラ・カンパネラ」第1稿(1832)
曲の冒頭は私たちの知る「ラ・カンパネラ」とは全く違う
主題のメロディーが奏でられるのは全体の3分の1を過ぎてから

野本由紀夫 玉川大学芸術学部教授
リストはヴァイオリンのテクニックをピアノに翻訳することは
できないだろうかということを考えたんですね
なので わざわざ難しくなるように作曲しました
右手の上を左手が交差するようになっています
これは明らかにお客さんに顔を見せる為です
ちゃんとビジュアル的なことまで考えながら作曲したんだと思います

リスト「ラ・カンパネラ」第2稿(1838) 
第1稿から6年後に作曲された第2稿

リスト自筆譜「ラ・カンパネラ」第3稿
リスト「ラ・カンパネラ」第3稿(1845)
ヨーロッパ中でコンサートを開いたリストは
自ら演奏するために何曲もの「ラ・カンパネラ」を作曲した

リスト「ラ・カンパネラ」」(1851)
フジコさんが演奏する「ラ・カンパネラ」」は最終稿となり
1851年リスト39歳の時に作られた

最終稿を仕上げた背景にはリストの人生の転機があった
フランツ・リストは1841年ザビン・ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人と
知り合い恋に落ちます 彼女の影響を受けたリストは
ピアニストとしてのキャリアを放棄し 
作曲家として生きていく決断をします

彼女に言われたのが「あなたはピアニストとして
ずっと旅回りするのではなく作品を残しなさい」
ということを言われたわけです
ピアニストじゃなくて作曲家としてやっていこうと言うふうに
人生を大きく転換させたんです
同じ「ラ・カンパネラ」を使っていても技巧のための
ピアノテクニックのための曲じゃなくてピアノ曲として
完成したものにしようと言うふうに大きく変質するんです
その結果 逆にピアニストじゃなくて作曲家が作った
このピアノ曲の方が生き残っていくことになったわけです
人気ピアニストから作曲家へ人生を転換させたリストは
以後、「ラ・カンパネラ」の改定をすることはありませんでした

リストはパガニーニの「24のカプリース」から5曲と
「ラ・カンパネラ」を加えた全6曲をー
「パガニーニの超絶技巧練習曲集」として出版
その後 全曲を改定した「パガニーニの大練習曲」を出版するなど
パガニーニの名曲をピアノ曲として完成させることを長年拘った

フジコさんは「ラ・カンパネラ」を中心にパガニーニや
リストにまつわる曲を演奏する特別なコンサートを2024年春に
行うことにし何か月も前からどんなプログラムにするか考えていた

バスコ・バッシレフさん
あのピアノを見てフジコさんのことを思いました
スタインウェイの前身時代の古いピアノです
フジコさんは間違いなくそこに座って「カンパネラ」を弾いた事でしょう
ここに来られたなら

しばらく音を探った後弾き始めたのは幼い頃から親しんでいた
モーツァルトのピアノソナタ
フジコさんは自らピアノのふたを閉じた
この日がフジコさんがピアノに触れた最後の日となった
2024年7月5日

日本に来ていたヴァイオリンニストのバスコ・バッシレフさん
そして指揮者のマリオ・コシックさんが
フジコさんに捧げる特別な演奏を行うことにした

マリオ・コシックさん
私たちはパガニーニのヴァイオリン協奏曲第3楽章の演奏を決めました。
フランツ・リストが「ラ・カンパネラ」を作るのに
インスパイアされた作品です。

バスコ・バッシレフさん
これからもフジコさんを偲ぶコンサートを続けていけることを願っています

魂のピアニストと呼ばれたフジコ・ヘミング
ピアノに全てを捧げた92年の生涯だった

2023年11月2日自宅の階段から転落
腰椎骨折と脊髄損傷 さらに2024年2月膵臓がんが見つかる

2024年4月21日 午前3時25分
フジコ・ヘミング逝去 享年92

パリの魅力は❓
「個性を重んじる自由な空気感」と言っていたフジコさん…。
自由を満喫しておられますか❓

2024年9月24日火曜日

兼題「座る・座す」&題「だいすき/だいきらい」

旋回す鳶の集団刈田(かりた)へと
稲刈機つけ回す鳶忙しなく
鳶鳴かず追いかけ回す稲刈機
8.0の視力の鳶や秋を飛ぶ
舞う鳶や飛蝗(ばった)目掛けて急降下

■NHK俳句 兼題「座る・座す」
年間テーマ「語ろう!俳句」
選者 高野ムツオ レギュラー 中西アルノ ゲスト 伊集院光
ゲスト 福田若之 成田一子 司会 柴田英嗣

① 泣かないでと隣に座る櫟(くぬぎ)の実   中西アルノ
「泣かないで」の鑑賞が三人三様だった
② 秋灯に座しゴリラめく父の影   成田一子
ゴリラめくとは悲しみ、強さ、怠惰だけれど威厳はうっすら残っている感じ
③ 雨を聴くひたり鬼灯(ほおずき)のなかに座り   福田若之
メルヘンチックでもあるし切なさもある 女の子が2人座っているのを詠んだ
④ 名月を待つ虫籠の中に座し   高野ムツオ
虫の視点で詠んでいるところがおもしろい 「虫籠」「名月」の季重なり
⑤ 父の場所座す義弟(おとうと)と参る墓
婿養子は実家に帰った時座る場所を気にする気持ちを詠んだ
義弟とした墓参りとその後義弟の座っている場所を一句にしたのが悪かった
添削 家継ぎし義弟と参る父の墓 と詠んだ方が良かったと高野ムツオ先生

・特選三席発表 兼題「座る・座す」
一席 ガザの子の瓦礫の上に座す真夏   石井茶爺(ちゃじい)
(自分の思いを伝えようとする作者の気持ちが伝わる)
二席 今日も君の後ろに座る夜学かな   前田恵美
三席 座すままに車椅子より踊(おどり)の手   犬山裕之

・特選六句 
骨鳴らし座って立って墓参   公木正
秋澄むや麒麟座りてなほ高し   木村弩凡
走り根に座る少年鰯雲   竹田むべ
背もたれがあるから羽根を閉じて座る   二宮珊瑚
先生に遅れて座る夜学かな   塩野谷慎吾
星月夜SLの座す転車台   須田真弓
参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/pD4vzNB1gE/

■NHK短歌 題「だいすき/だいきらい」
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」
選者 枡野浩一 ゲスト 上田慎一郎 司会 尾崎世界観

川柳と俳句と短歌の区別などつかない人がモテるひとです
枡野浩一

好きだった雨雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君
枡野浩一

・31音の手紙
入選九首 テーマ「だいすき/だいきらい」
三席 あらアンズもう時期アンズ迷い無く値段も見ずに手に取るアンズ
野村貞江
二席 非を認め謝罪すること大嫌い傲慢なまま生きていきたい
森本晋(すすむ)
一席 蜻蛉(せいれい)に差し出す指が一本であるようにきみだけがすきだった
大津穂波(蜻蛉 昆虫トンボの別名)
線のあるイヤホンみたいにだいすきと単純に云えたいよ、あなたに
田中佳(よし)
大好きということにして君と会い罰として飲むクリームソーダ
美好ゆか
 「あかあさんだいきらい」だと言えるのはおかあさんから愛されてる子
北清水麻衣子
 「だいきらい」と口に出せたらそんなにもきらいにならなくてすんだのに
佐々木恵
父さんが大好きだった珈琲は大人になってもかしこい香り
佐藤研哉
結婚か仕事か迷うと孫が言うほんとに好きなら迷わないのよ
中門(ちゅうもん)和子

・改悪添削
非を認め謝罪すること大嫌い傲慢なまま生きていきたい
添削 非を認め謝罪すること大嫌い傲慢なまま生きちゃいそうだ
(誰にも好かれようとすると誰からも好かれない
語尾を「たい」とか「したい」にして欲望を短歌にしましょう
欲望短歌と呼んでいる そうすることで自分自身がより表現できる
勇気が大事です 全ての表現は勇気だと思う 
自分が勇気を出せているかを気にして欲しい)

・上田慎一郎さんの短歌「だいすき/だいきらい」
だいきらい つぎはだいすき だいきらい すきかきらいか さいころ振って
上田慎一郎

長編・短編・縦型・横型 表現の違いは❓
長いものはキャラクターが重たくなってくる
短いものはストーリーが重たくなってくる
キャラクターかストーリーかどっちに重きを置くかというのが変わってくる
縦と横の画面で見た時の違いは❓
縦型は人間を収めるのに適したサイズ
一人の人間を撮るのに適したサイズ
二人とか三人を収めるのには横サイズが良い
撮るShotが変わってくる
スマホは被写体と視聴者の距離が近い
縦型の方が親近感を感じるのは余白がないからじゃないかな
横型だと余白があっても少し客観的になって距離を感じるのかもしれない
縦型の方が親近感距離感が近い
(短歌は)一行だと印象が変わる

・言葉のバトン
きみの香りが残る窓際 文月悠光(ゆみ)
前回までに22人の人が言葉を繋いでくれました。と枡野浩一先生。
罪深い句 バンドやろうか還暦だもの 國兼秀二
良かった句 制服の内ポケットが光り出す 伊東敏恵

2024年9月23日月曜日

100分de名著 ウェイリー版❝源氏物語❞(3)「源氏物語」と「もののあはれ」

夕顔の大輪今も武相荘 
黒い茶碗へ浮かべた氷九月
固有名詞に宿る知識や秋高し
宇宙を遮断ギンコビロバの真っ黄色
多忙理由に許される人星月夜

■100分de名著
ウェイリー版❝源氏物語❞(3)「源氏物語」と「もののあはれ」
安田登 伊集院光 阿部みちこ

人里離れた寂しい場所ですが、美しい建物でした。
「あわれ」源氏物語を語る上でとても大事な言葉

(原文)
板谷のかたはらに堂建てて行へる
尼の住まひ、いとあはれなり。
しばしのほどに
心を尽くしてあはれに思ほえしを、
うち捨ててまどはし給ふ
「源氏物語」第4帖「夕顔」

(ウェイリー版日本語訳)
人里離れた寂しい場所ですが、
美しい建物でした。
なぜ突然現れ、
私の心を奪い、酔わせ、
あっという間に逝ってしまったのだ。
「源氏物語A・ウェイリー版」

ゲンジがはじめてフジツボに会った時
「子どもらしい夢想をふくらませ」
❝interested his childish fancy❞

「あはれ」のウェイリー版
同情心/sympathy 哀れ/pity ロマンティック/romantic
パセティック/pathetic メランコリー melancholy
静かで清らか/calm and lovely 怪しく騒ぐ/strangely stirred 
Very sorry/so depressing/fascination/strange and lovey
Apathy and gloom/O dear o dear
「レディ・ムラサキのティーパーティ」より 毬谷まりえ 森山恵 著

「あはれ」とは もともと深い溜息 あ~
源氏物語は「あはれ」の文学 944回 思わず溜息が出る「あ~」エモい
「をかし」534回 語源は「招(を)ぐ」思わず招かれてしまう ヤバい

本居宣長曰く「源氏物語」の本筆
「もののあはれ」が大事と言っている
本居宣長「源氏物語 玉の小櫛」(1799年)現代語訳 安田登
物語というものは、「もののあはれ」を知ることをその旨としている。
だから、そのストーリーには儒教や仏教などの教えに背くこと、
すなわち倫理的に問題のあるものも多い。
「あはれ(情動)」がものに動かされるときは、
「善悪」や「邪正」など考えない。
むろん、道理に反することには感動してはいけないということはわかる。
しかし、情動は心のままならぬもの。
どうしても我慢できないこともあり、そういうときには
「悪いこと」とわかっていても情動が動かされてしまうこともある。
たとえば「源氏物語」の中でも倫理的に特に問題なのは
空蝉の君、朧月夜の君、それから藤壺の中宮との関係で
この女性たちとの関係は、これ以上ないほどの「不義悪行」である。
そこに焦点を当てると光源氏はひどい男になる。
しかし「源氏物語」は、その不義悪行に焦点を当てずに
そこにあらわれる「もののあはれ」の深さにスポットを当てている。
すると、光源氏はよき人もよき人、これほどよき人はいない
よき人の手本であり、そんな観点で、その「よきことの限り」を
集めたのがこの「源氏物語」であって、
その善悪は儒教や仏教の善悪とは違う。
もし、倫理を云々したければ、その手の本を読めばいいではないか。

倫理は関係ない!「あはれ」エモーション

① 空蝉 地方次官の妻
② 朧月夜 エンペラー・スザクの妃となる人
③ 藤壺 父エンペラー・キリツボの妻 義母
(自分の父の妻に懸想する)
中世は仏教が盛んになる 仏教的にはよくない
皇室スキャンダルだらけなので明治時代には「不敬の書」となる
倫理より「心のありよう」が大事
折口信夫は「もの」=霊魂だと言っている
桜の霊魂と自分の霊魂が感応
倫理なんか入る隙間はない

「今まで書かれた世界の作品の中で
二指か三指に数えられる最大傑作の一つ」
(ウェイリーが出版社の社長に言った言葉)

千年前の物語なのに最近の小説のような感動を与えるという驚き
「源氏物語」では心の内面が詳細 豊富に描かれている

六条御息所 レディ・ロクジョウ(年上の恋人)
ロクジョウは日夜苦しみ抜き、一人胸の内で
「わたしの心はイセの岸辺の漁師の浮子(うき)、
波から波へ揉まれるばかり」という詩を繰り返していたのです。
ロクジョウは自分でもどうにもならぬ逆巻く激情に揉まれ、
くらくらと本当の舟酔いのように気分が悪いのでした。
ロクジョウも心を痛めていました。
長年、ゲンジの愛をアオイと公然と競ってきましたが、
あの惨めな〈コーチのクラッシュ〉の後でさえ
(とても悔しかったことは認めますが)、ロクジョウが
プリンセス・アオイを呪うことは、決してなかったのです。
ロクジョウ自身も気分が優れません。激情に繰り返し襲われ心が
かき乱され、このままでは少しずつ心が狂わされていくようでした。
一方、悪霊は凄まじい勢いを盛り返し、
またもアオイをひどく苦しめます。
レディ・ロクジョウの生き霊の祟りだ、と言う噂は、
ロクジョウ本人の耳にも達します。
ロクジョウはアオイへの気持ちを胸に問いますが、
そこにあるのは、深い悲しみだけ。
彼女への憎しみはもう、いっさいないのです。
とはいってもあんなにも苦悩に焼き尽くされた魂のどこか奥底に、
憎しみの炎が潜んでいないとも限りません。
娘が一人、広く立派な部屋に伏せっています。
それがプリンセス・アオイと、自分はわかっているようです。
そして目覚めているときならばありえない、思いもよらぬ
激情に駆られ、横たわる人の腕を手荒く摑むと、
ベッドから引き摺り出し、打ちすえていたのです。
ああ、恐ろしい!人の魂は、本当に肉体をさ迷い出て、
気が確かなら許すはずのない感情を噴出させるのです。
なんとしてもあの人を忘れなければ。なんとかして彼を
想わないように、と心に言い聞かせますが、そう思うたびに、
また一層ゲンジへの想いは激しく募るのでした。

圧巻!ロクジョウの心理描写

ウェイリーと同じ時代にフロイトが現れていた
夢 無意識が言われ始める 
もののけとは心の闇が作り出したものではないかと…。ウェイリー…。

能ではどのように表現されていたのか❓
内下清浄六根清浄 
これは六條の御息所(みやすどころ)の怨霊(おんりょう)なり
枕に立ち寄りちやうど打てば
一祈りこそ祈つたれ
東方に降三世明王(こうざんぜみょうおう)
成仏得脱の身となり行くぞ有難き

「源氏物語」では明確に「六条御息所の怨霊である」とは名乗らない
能では怨霊は成仏するが「源氏物語」では成仏しない

A・ウェイリー著❝The Noh Plays of Japan❞(1921年出版)
「葵上」など19の能の演目を英訳

「死んでも無くならない感情」を「残念」と言う
「残念」を鎮魂するのが能

見えない感情 亡くなってもなくならない感情を
ウェイリー訳ですごく感じた

プルースト「失われた時を求めて」(1913~1927)
詳細に心理・感覚描写で20世紀文学を切り開いた長編小説
英訳版(1922~31年)はウェイリーの幼なじみが翻訳

「源氏物語」は表に出さない「心」を描く
20世紀文学との近さを感じた

2024年9月22日日曜日

こころの時代 ヴィクトール・フランクル(6)人生の中の出会い

色変わる吊るしたままの秋簾
鉢を占領秋の蛙よごゆるりと
草実り桑の挿し木やまた枯れん
豊年を願う庶民や米不足
新米がやっと出回る値の上がる

■こころの時代 ヴィクトール・フランクル(6)人生の中の出逢い
ヴィクトール・フランクル(1905~1997)
フランクルの二人目の妻 エレオノーレ・カタリーナ・フランクル
小野正嗣 勝田茅生

生きる意味 ロゴセラピー
フランクルの孫 アレクサンダー・ヴェエリー

苦悩する人は、もはや運命を外面的に
変えることはできなくなっています。
けれども、その人はまさに苦悩によって、
運命を内面的に克服することができるのです。
苦悩は成長です。また、苦悩は成熟でもあります。
苦悩は人間に、ものごとを見抜く力を与え、
世界を見通せるようにします。
苦悩への勇気―これこそが重要なので
「苦悩する人間」

ちょうど病室のひとつを出て、
次の部屋へ行こうとしたときだった。
一人の若い看護婦が私のところへやってきて、
彼女の(口腔外科の)医長からの依頼を伝えた。
手術を終えたばかりの患者のために、
私の科のベッドを提供してくれないかとのことである。
私が承諾すると、彼女はありがとうと言わんばかりの
ほほ笑みをたたえて、去って行った。
私は助手たちの方に振り向いて聞いた。
「あの瞳、見たか…?」
「フランクル回想録」
これがヴェエリーとの出会いでした。
25歳の年の差でしたが話していくうちに縮まっていた。
宗教の違いはありましたが1947年二人は結婚しました。

もっとも深く考える者はもっとも生き生きとしたものを愛する
ヘンダーリン

心から感謝しつつも、私はそれをお受けできません。
というのも、エリーだけがこの栄誉に浴することにより、
その重要性がさらに際立つと考えるからです。
彼女がそれに値する人間であることは、
他の誰よりもこの私がよく知っています!
「人生があなたを待っている」
この時人生で初めてエリーの人生に光が当たりました。

フランクルは常に高いところを目指していた。
高層心理。パイロットの視覚を70歳を超えてから取得した。
「私はフランクルより25歳若いから、
本当は一緒に飛行機事故で命を堕としたかった。」エリー。

フランクルは85歳くらいからほとんど目が見えなくなっていた。
そこで孫たちがエリーの仕事を減らせようと提案したが
フランクルはエイリーの声で慣れているからと断った。
それだけ二人は必要とし合っていた。

エリザベート・ルーカス(フランクルの直弟子)
「人間とは常に決定する存在であり自分の次の瞬間
どうあろうとするかを自分で決められる」と、フランクル。
「平和は隣人やPartner 子どもとの間のものでもよいのです。
世界の平和について文句を言い騒ぎ立てる前に、まずは
あなたの家のリビングで、友人や親しい人のつながりの中で
平和を築きましょう。」エリザベート。
「耐える人こそ英雄なのです。この英雄は傷つき、侮辱され、
屈辱を味わいます。それでも英雄は、苦痛に耐え、
絶望せず、むしろ穏やかで品位のある方法で敵に接し
敵を理解しようと努め、妥協点を探り、相手に寄り添って
みようとするのです。大切なのは誰が争いをやめる勇気があるか
誰がその争いを終わらせる力を持っているかです。
争いをやめ同じ仕打ちをやり返さない人こそが英雄なのです。」エリザベート。

「ロゴセラピーは遠いものではない。
近くの事象に当てはめてられる。」小野正嗣。

ハラルド・モーリ(フランクル晩年の助手)
「フランクル氏は歩いていてわたしが付き添っています
彼は片眼が完全に見えませんでした。動きは制限されていて
もちろん思うように歩くことはできません それでも彼は
忙しくエネルギッシュで陽気でした ウィットに富み
エネルギーに満ちていました 体は疲れているときもありました
それでも彼の精神はいつも 何かの可能性や大きな目的に
向かっていたのです フランクル氏は亡くなる3年前から
心臓病を患っていました 肺水腫も起していました
とても衰弱して何度も死にかけ病院へ運ばれました
それでも彼は決して不平を言いませんでした 彼は何があっても
決して自分の人生に対して文句を言いたくはなかったのでしょう

1997年心臓の治療のため手術室に入る直前 エリーに伝えました
「ある本をプレゼントしようと思って家に隠しておいた。
きっと見つかるよ。」
手術後フランクルの意識は戻ることはありませんでした
3日後…。
1997年9月2日 ヴィクトール・フランクル死去(享年92)

その本は見つけました。
「苦悩する人間」HOMO PATIENS
開いてみるとそこにはほとんど見えなくなっていた
フランクルからのメッセージが書き記されていました。
「エリーへ
あなたは苦悩する人間を
愛する人間に変えてくれました
ヴィクトール」

フランクルの孫 アレクサンダー・ヴェエリー
祖父はいつも人々を気にかけていました
だから私は彼はこの墓に縛られてはいないと思います
ヴィクトール・フランクルは今この瞬間も
大きな世界のどこかにいるでしょう

「生きる意味」は必ずあります Viktor Emil Frankl
人間は苦悩や死さえも自らの人生の糧とすることができるのです
その時々の「意味」を見つけ出してください

2024年9月21日土曜日

細川ガラシャ&第12回おしゃべり俳句優秀句&下岡蓮杖

墓掃除流れ落つ汗ぽたっぽた
ぎらぎらと秋の陽強く盆用意
秋彼岸無駄に生きた日暮れゆかん
秋簾強烈な陽を遮断せり
陽にめげず秋薔薇凛と土手に咲く

■偉人・敗北からの教訓 
第59回「細川ガラシャ・キリスト教に殉じた謀叛人の娘」

戦国大名の妻、そして、敬虔なキリシタンとして生き抜いた
細川ガラシャの敗北から現代に通じる教訓を探る。

・細川ガラシャ 敗北の伏線~キリシタンへの道~
謀叛人の娘として生活が一変
救いの道にのめり込む

・細川ガラシャ 敗北の瞬間~矜持と殉教までのカウントダウン~
ガラシャ
「私は忠興様と離縁して信仰に生きます」
オルガンティーノ
「ひとつの十字架から逃れる者はその後
もっと大きな十字架を背負うことになります」
忠興
「万一わしが切腹を命じられたらお前も続くように…」
オルガンティーノ
「自害は大罪であり決して許されない行為です」
忠興
「もし妻の名誉に危機が生じたなら妻を殺し皆自害して後を追うべし」
ガラシャ
「私は屋敷から一歩も外に出ません」
「殿の命ではあるが命を絶つのは私だけで良い」
辞世の句「散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ」

束縛から解放されたかった
殉教という言葉に心を動かされてしまった

細川ガラシャ 敗北がもたらしたもの~伝説となったガラシャ~
オペラの原作「丹後の王妃グラティア」にもなった

・細川ガラシャの敗北からの教訓
衝動的に事を決すべからず

■夏井いつき俳句チャンネル
【第12回おしゃべり俳句】優秀句、発表します!

桜蘂降るねがいをかなえるはなあげる   Iくん(5歳)
お空にはトンネルはない春の旅   優日(2歳9か月)
七夕や夜のおりがみ欲しいのに   みちこ5歳
このままが一番きれいなんだ独楽   くろころ5歳
西瓜断つこれが二分の一なのね   みじゅ(8歳)

■先人たちの底力知恵泉 
日本カメラマン列伝・下岡蓮杖 執念をベンチャービジネスに
何もしないでいるよりは やってみて だめなほうがいい
「写真事歴」より

2024年9月20日金曜日

金秋戦「一人旅で一句」

名月や照らす海峡浮かぶ橋
ゆらゆらと海に浮かびし名月よ
水面のゆらぎ満月の一瞬
満月の見えて小躍り随喜する
月に雲がっかりしたり浮かれたり

■プレバト纏め 2024年9月19日
秋のタイトル戦「金秋戦2024」Cブロック
一人旅で一句

1位 清秋や海にマンタといたしじま   千賀建永
(季語・清秋 秋の澄み切った大気 しじまとは静まりかえっていること
詠嘆「や」がすがすがしい 秋の澄んだ海の色
1人とも旅とも書いていないが一人の旅先での出来事に違いない
マンタとだけの空間がパッキングされていて しみじみと楽しんでいる)

2位 ひとすじの秋水ひとり旅とどめ 中田喜子
添削(季語・秋水 秋の澄み切った水 
   一筋の澄んだ秋の水が流れている美しい
一人旅を胸にとどめて旅を終えましょう
   「果て」にするとあなたの思いに少しだけ寄る)
ひとすじの秋水ひとり旅の果て

3位 月白や温泉にいる吾と腫瘍   犬山紙子
添削(季語・月白 月が出ようとして東の空が白みを増す
   山の端がほんのり明るい 季語が作者に寄り添っているし
   主役にも立っている)
月白や旅の湯に吾と吾(わ)が腫瘍

4位 山の宿昭和のままの虫の闇   武田鉄矢
添削(季語は虫の闇 トーンの似合った言葉 「ままの」は説明的
   色にすることで説明ではなく映像に近寄る)
山宿(やましゅくorやまじゅく)昭和のの虫の闇

5位 退職金一括金秋の四季島   パックン
添削(TRAIN SUITE四季島 全室スイートタイプの列車
   「一括」をへんな風に使った)
退職の旅よ金秋の四季島 

予選通過 最後の2枠 決勝進出
空の巣症候群のような夜長   森口瑤子 
生きる為に飯を喰う外は蛍   立川志らく

金秋戦決勝のお題 自分で撮った写真

2024年9月19日木曜日

夏井いつきのよみ旅!in山梨 前編&コネクト❝原爆俳句❞

骨痩せてほうれい線が星流る
初紅葉❓陽に焼けたのか❓鉢の木々
竹の春舗装突き抜く10センチ
落し水音響きけり子守歌
一夜漬け茄子の彩際立ちて

■夏井いつきのよみ旅!in山梨 前編
甲斐の府中 伝統の技 
夏井いつき ROLAND
武田神社権禰宜(ごんねぎ) 佐野浩一郎
旧堀田古城園

夏の川よどむ想いを受け止めて   加々美美希
過去を詮索していいことはみじんもない   いつき
加々美さんMEMO 山梨県が行う婚活サポート事業で出会う
結婚は努力の結晶   いつき

避暑散歩おはようごいすお馬さん   鈴木明子

夏の朝庭に漂う明治の時空(とき)   田辺真一
八田家 武田家の蔵前奉行を務めた在郷商人
屋敷のルーツは八田家から移築した家だった
襖の裏から見つかった110枚の手紙

甲州印伝 工房 14代 上原勇七
甲州印伝MAMO 鹿皮を漆で装飾した工芸品 
1582年初代・上原勇七によって確立 400年続く伝統の技
勝ち虫 縁起が良いとして好まれている蜻蛉柄
燻(ふす)べ 皮を煙でいぶし染色する技法
1953年会社を創立

富士仰ぐ目に一歩ずつ蟻の道   上原勇七
(蟻というのは本当に小さいですし一歩一歩の歩みは非常に小さい
一歩一歩少しずつでも前進できるような会社でありたい
不易流行 本質的なものを忘れないなかにも新しい変化を重ねていくこと)

台箱の手擦(ず)れよ父の在りし夏   夏井いつき

涙ふく幼なの歩幅夏来たる   長谷部美佐子

出る杭を打たれつつ喜寿酔芙蓉   片田駿三
俳句ひとくちMAMO
酔芙蓉…秋の季語 朝は白く咲き午後には赤く色が変わる

■コネクト 夏井いつき ❝原爆俳句❞を訪ねて
ナレーション 小野文惠 夏井いつき
広藤暁子宅で句集 広島が見つかりました 

烏来て骸(むくろ)に頭なかりけり   金行文子

野の池に死してみな童(こ)ぞ頭(づ)より浸(つ)けて   小崎碇人

「夕凪」昭和29年12月号 「原爆ご広島」の俳句募集
句集「広島」編集委員会

太平洋の水爆実験(1952年11月)
1万1千句が寄せられました その中の1521句が句集に掲載
昭和30年8月6日出版

新庄美奈子(15句掲載されていた)父の名前は増本政次郎
洞(ほら)暑くはだへ爛(ただ)れし父に会ふ   
夏の季語:暑し
くちびりの血膿(ちうみ)よけつゝ瓜食ます
こときれし父を抱きて明易し
被爆直後の体験が生々しく表現されています

汗の手を握り死躰の腕切らんと
(夏井いつき先生が理解できなかった俳句)

国立広島原爆死没者追悼平和祈念館
美奈子との連絡が取れ 当日夜 船舶練習部に収容されたが
すでになすすべなく8月8日未明に(政次郎は)息を引き取った
(軍の)施設内であったため火葬することが許されず、わずかな頭髪と
手首を切離して遺骨としただけで遺体は他の無数の遺体と共に処理された
19歳の美奈子さんにそのような事を…。
詠むことで美奈子さんは生き延びようとした

美奈子さんのご家族が広島に暮らしていることが判明
美奈子さんの長男 新庄洋さんのお宅へ
美奈子と(生き残った)弟2人 当時たぶんですけど
(美奈子さんは)付属小学校の栄養士あか何かをしていたらしく
働いていたんだろうと思います
5年間ぐらいですかね それで弟2人を養っていたようです
26歳の時伍一郎氏と結婚 長男洋さんと長女真紀子さんの
二人の子供に恵まれました
(俳句をやっていたことは)本人からは聞いたことない
原爆については1回も話してもらったことなくて
こういう生々しい当時の様子を再現する句を聞かせていただいて
改めて(原爆は)大変な事だったんだな
もう少し原爆と正面向いて考えていくようにしないといけない
美奈子さんは癌で55歳で亡くなりました
美奈子さんは俳句の代わりに絵画を嗜んでおられました

夏井いつき先生のもうひとり気になる人
熊本から俳句を寄せた 行徳すみ子さん
春泥に馳せくる子あり亡き子かと
行徳すみ子さんの長女行徳功子(10歳)の句
蝉鳴くな正信ちゃんを思い出す   
弟の真白いシャツが眼に残る
弘子ちゃんまた姉ちゃんと遊びましょう
4人とも亡くしたすみ子さん一人が熊本に帰った

「阿蘇」5代目 主宰 岩岡中正さん
留守を娘に今宵の子規忌へと急ぎ
初縫の娘にきびしくも手を添へて
保温器の嬰児(ややこ)の窓の氷雨かな
(孫が生まれたという句)

熊本で亡くした子を思い詠んでいた行徳すみ子さん
応(いら)へなき娘は何思ふ天の川   
子等の忌や白桔梗(きちこう)は寂しすぎ
遺児に泣き遺句に咽(むせ)びぬ秋深む 戦後15年経った時の句

句集のあとがきには願いが込められています
あの日を永遠にとどめよう。
忘れ去られることのないようにー。
忘却が生むおろかな反復によって、
ふたたび、地表の亀裂に、
おびただしい血が
流しこまれることのないようにー。

2024年9月18日水曜日

上野彦馬&スティーズ・ジョブズ&坂の上の雲あとがき&宗教に悩んだ時に読む本

バイオレットキング水始めて涸る(みずはじめてかる)
キャンパスへ残す痕跡秋の色
秋の雲翼広げて飛ぶ天使
吠える人人気集めん虫選(むしえらび)
秋の草絵は愛らしく何気なく

■先人たちの底力 知恵泉 
日本のカメラマン列伝・上野彦馬 新技術にこめた信念
「私はもともと考えや味方の狭い研究者であり
深く恥じ入るところである
しかしながら知らないことを知らないとすることも
却ってためになることであろうと考え出版することにした」
「舎密局必携」より

■起業家 スティーブ・ジョブズの言葉
「今日が人生最後だとしたら
今日やることは本当にやりたいことだろうか
君たちの時間は限られている
だから無駄に誰かの人生を生きないこと
Stay hungry Stay foolish.(ハングリーであれ。愚かであれ。)

バカげた夢に思えても貪欲にそれを追求しろ」
情報を伝えるものから感情を伝えるものへ
スティーブ・ジョブズの思い描いた夢のような世界が
今、私たちの目の前に広がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=o97upTCsRME
https://www.nikkei.com/article/DGXZZO35455660Y1A001C1000000/

■司馬遼太郎著「坂の上の雲」あとがき
「のぼってゆく坂の上の青い天に
もし一朶(いちだ)の白い雲がかがやいているとすれば、
それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう」

■理想的本箱 君だけのブックガイド選「宗教に悩んだ時に読む本」
吉岡里穂 太田緑ロランス 幅允孝(はばよしたか)

・「神様」のいる家で育ちました ~宗教2世な私たち~ 著者 菊池真理子
信仰と家族のはざまで悩み抜いた子どもたちの声

・宗教を「信じる」とはどういうことか 著者 石川明人
宗教という営みの曖昧さやわからなさと向き合う
宗教は愛であり善であり全能だと信じられています
神が作られた世界に苦しみや悲しみがあるなんて
矛盾以外の何物でもありません
マザー・テレサ曰く
「私の魂の中で神の場は白紙です
神を欲する痛みが非常に強いので
私はただただ神を求めるのですが
私が感じるのは神が私を望まれないことです
神は不在です」(里見貞代 訳)
神を信じきれないという告白

イエスの最期の言葉
「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか?」
(マルコによる福音書/マタイによる福音書)
「明らかに正しいことは信じる必要はない」という切り口
神を疑うことも許容されている

イエスもマザー・テレサも悩んでいた

・ガダラの豚 著者 中島らも
人間は信じたいものを信じる
人間の心は見せ物小屋なんかじゃない本物の蒔絵ですよ
悲しみ続けるのは生きた人間のすることじゃない

水面というものはない。
それは、ただの❝鏡❞であって無いけれど有るものだ。
「ガダラの豚Ⅱ」本文より

2024年9月17日火曜日

100分de名著「ウェイリー版・源氏物語」(2)シャイニング・プリンスとしてのゲンジ

田名網敬一に捧ぐ
揚花火ピカソの模写へプラスワン
戦争の記憶抱きて月の暈(かさ)
秋の声消えぬ戦争下敷きに
流れ星忘れられない色と生き
螻蛄鳴く(けらなく)最後の個展開催中

■100分de名著ウェイリー版・源氏物語2
シャイニング・プリンスとしてのゲンジ
安田登 伊集院光 阿部みちこ

安田登流 「源氏物語」の構成
第一部(序)(1)桐壺~(13)明石 ゲンジ神性を獲得していく
第二部(破の序)(14)澪標~(21)少女 ゲンジ政治的にのぼりつめる
第三部(破の破)(22)玉鬘~(33)藤裏葉 ゲンジの子どもたちが登場 ゲンジ頂点に
第四部(破の急)(34)若葉上下~(41)雲隠 女三宮を中心に展開 老いるゲンジ
第五部(急)(42)匂宮~(54)夢の浮橋 ゲンジ亡き後の世代の物語

第一部
① 第2帖「箒木」でゲンジは普通の青年になっている
② さまざまな恋をしていくことでRPGのようにアイテムをゲット
③ ふたたび神に近い存在になっていく

シャイニング・プリンス 光り輝く者…。
このような名前を戴ければ誰でも、
必ずやなにかと噂の的となり、
嫉妬混じりの陰口をたたかれるもの。
ほんの戯れの恋でさえ、後世まで大仰に語り伝えられてしまう。
ゲンジはそう自覚していました。
後々つまらぬ浮気者と思われるのも気障りです。
友人たちがしているような、軽々しくありきたりで
安直な情事には些(いささ)かも興味が持てなかったのです。
ゲンジといえども、いくら抗おうとも恋に落ちることはあります。
でも、彼には変わったところがあって、
可能性もなければ望みもまったくない、
そんなややこしい愛にばかりのめり込むのでした。
「源氏物語 A・ウェイリー版」毬谷まりえ 森山恵訳
「箒木ブルーム・ツリー」

ただの女好きとは思われたくないゲンジ
彼がもっとも好きなのはフジツボ お父さんの奥さん
その影にいる亡き母
恋とは何か 民俗学者 折口信夫の説
恋=乞い 心の底から何か足りないものを渇望する
手に届かないものを求めることが恋

ウツセミ
「ああ、これはぜんぶ夢なんだわー、
あなたが、あの名高いプリンスが、
わたしのようなつまらない女に身を屈するなんて。
あなたはわたしの身のうえをお忘れなのでしょう。
取るに足りない地方次官の妻!それは変えようがありません。(略)」
自分の勝手なふるまいが、これぼどこの人の心を苦しめかき乱したか。
ゲンジはようやくそれに気がづき、恥じ入ってこう答えました。
「おっしゃるとおりです。地位身分のことなど、
何も考えていませんでした。そんなこと、煩わしいばかりですから。
わたしの噂をどうお聞きかわかりませんが、どうか聞いてください。」
「このできごとが、人生の苦難に遭う前、
わたしの運命が決する前であれば良かったのに。
それならばあなたのお心が続く限り、喜んでお受けしたかも知れません。
でもわたしの道はもう定まっているのです。
こんなふうに出会っても、悲しみと悔いのほかに、
なにがあるというんでしょうか。
「わたしの家を訪ねたなんて、誰にも言わないで」」
古い歌を引用して彼女は言葉を結びました。
「この人が悲しむのはもっともだ」
そう思ったゲンジは、一層優しさを尽くして彼女を慰めるのでした。

ゲンジとの恋に悩む人妻ウツセミ
人妻だから問題ではなくて身分の違いが問題

ヒカル・ゲンジが獲得するもの
① コンパッション パッション=イエスの受難
 その苦しみを友に感じる=コンパッション
 古典ギリシャ語では「スプランクニゾマイ」(内臓)(動く)
 「末摘花」の帖
 門番の老人と女性が貧しく凍えているのをゲンジが目にする

「ユウガオ、夕暮れの顔(イブニング・フェイス)という名の花です。
うら寂しい塀にこんな愛らしい花が群れ咲くとは、
なんともゆかしいことです。」
従者の一人がゲンジに言いました。(略)
ゲンジは召使いを一人、花を摘みに遣ります。
召使いが半開きの扉から入って摘み始めたとき、
小綺麗な引き戸から、黄色のチュニック姿の少女が現れました。
香を深く焚きしめた白い扇を差し出すと、
「なにか花を載せるものがご入用ではございませんか。(略)」
「あなたを惑わせたのは、つまらぬユウガオの花。
輝く露玉のドレスを纏い、謎めいて見えたのでしょう」

ロクジョウ ユウガオ
「どうしてこれほど狂人になってしまわれたのだろう」
自分でも不可解です。
彼女はおっとりと温和(おとな)しく、無表情ともいえるくらい。
深い感情が欠けているのかと思うほどです。
そのうえ、少女のように初々しいのに、
ゲンジが最初の恋人ではないのです。
本当に一体自分は、彼女のどこにこんなにも溺れているのだろう。
とはいえ、過去を聞かれたくない事情もあるようです。
ゲンジは好奇心を抑えました。

謎の女性ユウガオとの恋

② エンパシー 苦しみ エン=能動的に
 ユウガオが表に出さない苦しみを自分から思いやるのがエンパシー
 ヒカル・ゲンジは救済する人になる
 ムラサキ(紫の上) 継母のもとにいくとひどい扱いを受けそうな
 ムラサキをゲンジが引き取る
 スエツムハナ(末摘花) 貧乏からゲンジが救済
 ゲンジは白馬の王子様になれた

逆境の中で得たもの
ゲンジは来(き)し方をつぶさに思い返し、またこの先の我が人生に
幸いがあるだろうか、と大空と海の静けさを見つめ、
行く末に思いを巡らせていました。
嵐は止みません。来る日も来る日も雨と風、絶え間ない雷雨。
迫る来る危機。
来し方は憂鬱、行く末にも希望が見えません。
「(略)この地を離れよ。ゲンジよ、舟に乗りなさい。
髪がお導きくださるであろう」
「ご加護を失ってより、悲しみと不運に見舞われるばかり。
うらぶれたこの岸辺で惨めに命果てるとしか思えません」
「そのように弱気になってはならぬ」エンペラーは答えました。
「(略)そなたの苦難は見るに耐えない、その苦しみから救ってやろう」

父の霊に導かれるゲンジ

③ 「来し方行く末」を見る力
 「来い方」「行く末」という言葉 
 「須磨」「明石」の帖でたくさん出てくる

自分に欠けていたものを充足していった
ゲンジは完成した人間になっていった
ゲンジは政治のトップ 大政(だいじょう)大臣になる

2024年9月16日月曜日

兼題「花野」&テーマ「鳥」

秋分や赤き焦土と青き空
フィクションで真実を描く鰯雲
おけら鳴くDO NOT BOMB寂しげに
自覚の象徴B29野分
発酵の音聞き待ちて月渡る
賢明に生きる人をり秋彼岸

■NHK俳句 兼題「花野」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 坂東彌十郎 司会 柴田英嗣
年間テーマ「季語を器に盛る」

「俳名」…歌舞伎役者が俳句を詠むときの雅号
彌十郎氏の俳名は「酔っ払う」「寿」で「スイス」
本名が「寿男」「酔寿」と書いて普通なら「すいじゅ」
ヨーロッパのスイスが大好きなので
それをかけて「酔寿(スイス)」にしました 坂東酔寿彌十郎
俳句は一生できる趣味

「花野」とは秋の七草に代表される草の花
人の手の入らない自然に咲いている広い野原のことを「花野」という

榛名湖の花野で毎年「夢二忌俳句大会」があり
高野ムツオ先生が選者として参加
薄、女郎花、撫子…。七草ではないが有名なのが松虫草

花野行く一人に道の生まれけり   稲畑汀子

俳句を作るためには一人にならないといけない
自分の思考が花野と対話をしながら俳句にしていくことが大切
私が師事した稲畑汀子先生の句として実際の花のを見ていると
同時に自分の人生 この先の美しもの さみしいもの
そういうものが感じられる奥深い句

稲畑汀子先生はカリスマ。俳句においては怖い方。
普段はお優しいが、句会になるとめちゃくちゃ怖くなります。
榛名山は活火山 地中にはマグマが眠っている

・特選六句発表 兼題「花野」
花野行く自分で決める終着点   成田乱泊(らんぱく)
(人生にも言える)
花野道もうほっといてくれないか   長山香織
(話しかけないで)
花野行く手話に花の名咲かせつつ   野々村澄夫
(人間のときめきも見えてくる)
大花野妻の浄土もかくあらむ   久塚謙一
(以前妻と行った花野で浄土もこんな場所なんだろうと…。)
花野より招待状の届くころ   町田憲一
(花野のレストランから…。)
記念日を忘れた人と花野ゆく   福原あさひ
(滑稽味が俳句には大切)

・特選三席 兼題「花野」
一席 花野より戻りて籠の鳥放つ   鈴木研児(けんじ)
二席 花野径(みち)きのふの雨の行潦(にわたずみ)   芝田太
(径は小道のこと 行潦とは水たまりのこと)
三席 エゾシカの跳ねては沈む花野かな   酒谷百合子
(「鹿」は秋の季語 北海道を言うが為なので全く問題はない)
動物の季語 「熊」は冬の季語

・俳句やろうぜ
若手俳人探査隊長 黒岩徳将
メキメキポッサーバナナはぼくの朝ごはん   松尾和希
和希くんの両祖父は俳人 松尾隆信 矢野春行士
父 松尾清隆 母 矢野玲奈 ご両親も俳人
松尾家・恒例の句会
祖父の結社の句集には和希くんの絵が掲載されている

俳句づくりの技
「歳時記」から季語を選ぶ俳句づくり
秋の蝉鳴いて見下ろす木々のかげ   松尾和希
「目で見て 音を感じるのが大事」
肌の感じも影で感じるのもいいな

・坂東彌十郎の一句
花野行く先に朧な誰そ彼   坂東酔寿彌十郎
(「朧」は春の季語 誰そ彼はたそがれの語源)
添削 花野径(みち)幻の君見えかくれ   
(「君」をどう捉えるかは読み手次第)

・柴田の歩み
鹿は秋 熊は冬

■NHK短歌 テーマ「鳥」
選者 大森静佳 ゲスト 木村優里 司会 尾崎世界観
年間テーマ「❝ものがたり❞の深みへ」

短歌は言葉の「意味」ではない部分が結構重要
身体表現やバレエからヒントを

羽ばたきに息継ぎはあり飛ぶといふ鳥の驚きかたを愛する
吉澤ゆう子

・歌に❝ものがたり❞あり
入選九首 テーマ「鳥」
三席 ブレーキを離せば光る坂道で心臓からだんだん鳥になる
舟樢(ふなと)いま
「あ、海」と声が響いて小説は羽根を休める鴎となれり
くらたか湖春(こはる)
 斉唱のむくどりむくどりむくどりが声で一樹を持ち上げんとす
古関聰(あきら)
せせらぎの光の粒で綴られた一行詩として白鷺は立つ
石川真琴
一席 東京で死んだら渡り鳥になり故郷の海でもう一度死ぬ
芋高(いもたか)舞
鳥の名をひとつ覚えてまた少し空に近づく右の手のひら
古川柊(しゅう)
 辞めたって私のかわりに渡るだろいつもの信号いつもの鳩が
森内詩紋
二席 光源のようなさくらの球体にメジロ発信メジロ着信
麻倉遥
「家の周り、白鳥だらけ」と言う妻の息はずみたり頬紅くして
髙井勝巳

・ものがたりの深みへ
白鳥の湖を見て
白鳥の裡(うち)なる腕(かいな)しならせて信じてみたいあなたの声を
大森静佳

短歌は素っ気なく書いても感情的に伝わってしまう
想像する余地を残してあげる方がいい

もう夜を待たなくていい天国のPas de Deuxひとりでも踊るから
大森静佳

・言葉のバトン
まっさらな白紙を前に全能感(ぜんのうかん)
金子崇 漫画編集者

きみの香りが残る窓際
文月悠光(ゆみ)
つまらないこと(一部抜粋)
心臓はなぜ、自分の意志で止めることができないのだろう。
止まらないことも心臓の持つ別個の意志なのか。
目に見えてあらゆる手足よりも わたしの、大切なもの、
傷ついてはならない一つの意志は、見えない からだの内部にある。
文月悠光「パラレルワールドのようなもの」思潮社

2024年9月15日日曜日

仲野太賀さんと伊藤沙莉ちゃん&「勉強したくない時に読む本」&「大谷吉嗣」

田名網敬一氏に捧ぐ
終わらない記憶の冒険秋の雲
幕閉じた記憶の冒険秋高し
唯一無二の記憶のままに照葉
拾い集めた記憶のかけら星月夜
現実と夢の行き来や月の入

■「あさイチ」より
仲野太賀さんが見た伊藤沙莉ちゃんとは
本当天才だなって思いますユーモア シリアス
あらゆる表現がすごく的確でそれを全部ひっくるめて
いとおしさがある お芝居のうまさ以上のものが
のっかっちゃっている感じ
天性のものがある人だなって本当に思いますね

撮影前の記者会見の伊藤沙莉ちゃん
「道を切り拓く人はたくさんの苦労や努力
いろんなことと闘ってきた人だと思うので…。
強さもそうですけど弱さを含め人間らしく
その方を表現できたらいいなと…。
人間味のある人間をちゃんと描きたい」

■理想的本箱 君だけのブックガイド「勉強したくない時に読む本」
吉岡里穂 太田緑ロランス 幅允孝

・勉強の哲学 来たるべき馬鹿のために 増補版 著者 千葉雅也
勉強を通じて自由になりたい人に捧げる
その原理と実践

深く勉強するというのは、ノリが悪くなることである。
単純にバカなノリ。みんなでワイワイやれる第一段階

いったん、昔の自分がいなくなる という試練を通過する。
これが第二段階

勉強するというのは何かの専門分野のノリに引っ越すことである
その先で、来たるべきバカに変身する。第三段階

ツッコミ&ボケ 
アイロニー(根拠を疑うこと)&ユーモア(見方を変える事)

・「自分の木」の下で 著者 大江健三郎 画 大江ゆかり
さらに先を生きる子どもたちに残した真心
なぜ学校に行かねばならないのか

・センス・オブ・ワンダー 著者 レイチェル・カーソン 上遠恵子 訳
喜びと驚きが綴られている
机の前で勉強することだけが学びではない
身近な自然からも人は多くを感じることができる
ここにきてよかった
センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見張る感性
知ることは感じることの半分も重要ではないと固く信じている

■偉人・敗北からの教訓 
第58回「大谷吉嗣・関ケ原に散った智将の野望と真実」

大谷吉嗣 敗北の伏線
家康の野心を見抜けなかった
豊臣家に絶対的な忠誠を誓っていた

大谷吉嗣 敗北の瞬間
作戦が希望的観測を元に作られていた
四将の裏切りを予測できなかった

吉嗣の敗北から学ぶ教訓
時には隠忍自重も大切にすべし

2024年9月14日土曜日

あの本、読みました?万城目学&青山美智子

海陽へリュウキュウムラサキ羽広ぐ
野の草や風の意のまま身を任せ
秋の雲忙しそうに流れをり
田舎より今日も秋果の届きをり
いま昔夜食を前に丸暗記

■あの本、読みました?
万城目学&青山美智子…中学入試に出る小説は時代を写す鏡!
本と受験 中学入試を知れば今がわかる
鈴木保奈美 角谷暁子 おおたとしまさ 国定栄太

・中学受験で注目されるジェンダー

祇園寺沙織。新船中学校生徒会長兼剣道部副部長
有名人だ。ボーイッシュな雰囲気と整った容姿から、
学校中の女子たちのあこがれの的となっているカリスマ。
通称「ウサギ王子」…。
(中略)
「六年生のころ、友だちになった女の子がいたの。
世間一般に言われている意味で、つまりはそれも偏見だけど、
女の子らしい女の子だった。フリフリしたかわいい服を着て、
絵を描くことと、お菓子作りが好きで。
その子が私にタルトタタンの味を教えてくれた。」
そう言って、祇園寺先輩は、ぎゅっと眉間にしわをよせる。
「その子の家で、その子が作ってくれたタルトタタンを食べたとき。
こんなにおいしいものがあるのかって、そう思った。
だから、そう伝えた。そしたら、あの子、
ほっとしたように笑って、言ったんだ。」
―私さ、羽紗(うさ)ちゃんのこと、ちょっとこわいって思っていたけど、
気のせいだった。
―なあんだ。やっぱり羽紗ちゃんも女の子なんだ。
「その声はひどく弾んでいて。だけど私は
ぶんなぐられたようなショックを受けた」
「きみの話を聞かせてくれよ」の一文 
村上雅郁著 カシワイ絵/フレーベル館

今の中学入試で求められる生徒
重松清の作品が出題される理由
青山美智子の作品が出題される理由

おおたとしまさが保奈美さんに薦める本
「夏草冬濤」井上靖著/新潮文庫

国定栄太が保奈美さんに薦める本
「Blue」川野茅生著/集英社

・中学入試に出た作家2位!青山美智子の描く世界とは?
出題される作家第2位 青山美智子から見た中学入試
出版された作品すべてが出題されている

「パパ来ないんだー。今日は私、パートで延長保育したけど、
たっくんいるからパパに会えるのかと思ったのに」と、
輪の中からあきらかにがっかりな声がして、
私は思わず足を止める。なんだ、人気者なのね、
輝也パパは。振り返らずに私は、再び歩き出した。
「木曜日にはココアを」の一文 青山美智子著/宝島文庫

自分の作品の問題が解けない理由

「サンライズ・クリーニングのカバヒコよね、おばあちゃんは」
雫田(しずくだ)さんがそう言い、おばあさんと顔を見合わせて笑った。
「カバヒコ?」初めて聞いた名前だ。きょとんとしている私に、
雫田さんが説明してくれた。
「その先に日の出公園ってあるんだけど、そこにいるカバ」
「あ、知ってます!」あのオレンジ色のアニマルライドだ。
あの子、カバヒコっていうんだ。
「カバヒコにはね、自分の体の治したいところと同じ部分を触ると
回復するっていう伝説があるのよ」「ええっ」
素直に驚いて、叫び声が出た。おばあさんが大真面目な顔で言う。
「ほんとだよ。あたしなんてカバヒコの腰をなでたら
ヘルニアが治っちゃったんだから」
あんな、ペンキの剥げたカバにそんな力が。
「人呼んで、リカバリー・カバヒコ!」
人差し指を立てた雫田産がドラマチックに言い、
おばあさんがぼそりと続けた。「…カバだけに」
カバだけに、リカバリー・カバヒコ。思わず頬が緩む。
「リカバリー・カバヒコ」青山美智子著/光文社

執筆で意識していること
その①:作中で誰も死なない
その②:ハッピーエンドのちょっと前で止めている
    夢の叶う一歩手前、最高の幸せの直前で止めている
その③最後に驚きを作る
その④:過去作品の登場人物を出す
その⑤:公共性を大事にする

「月の立つ林で」「鎌倉うずまき案内書」はどんでん返しが待っている。
えっ!そうだったのという結末が…。

・遅咲き作家青山美智子 Debutは2017年47歳
33年書きつづけていた 諦めるきっかけがなかった

・青山美智子(SF作家だと思っている)が保奈美さんに薦める本
「137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史」
クリストファー・ロイド著 野中香方子翻訳/文藝春秋
最新刊は「138億年のものがたり」として刊行

青山美智子女史の今年の秋発売される本は
「人魚が逃げた」PHP研究所

2024年9月13日金曜日

金秋戦「1人めし」&「1人暮らし」

ピラカンサ見つけた目白急降下
純白の木槿(むくげ)こっそり咲きはじむ
木槿(むくげ)開(あ)く陽光受けて育まん
鮮やかに白き大輪木槿(むくげ)滿(み)つ
仲秋や寝室よりも涼し居間

■ プレバト纏め 202
4年9月12日
秋の俳句タイトル戦「金秋戦」開幕!

・Aブロック 1人めしで一句
1位 的場浩司 削(そ)げし頬月下貪るパンの耳
季語:月下 映画のOneSceneみたいな光景
生々しい体験が流れ込んできた 映像事実を描写すれば伝わる
貪る 動詞の選び方が良かった 
削げしと貪るがつかず離れず響き合う 頬と耳でも響き合っている
俳句の骨法が分かった人だからできる

2位 立川志らく 生きる為に飯を喰う外は蛍
光景・場面・人物 全部立ち上がる
足して17音にしたい意図はわかる 
自由律ならもう一歩踏み込んで「を」を取った方が良かった
添削 生きる為に飯喰う外は蛍

3位 こがけん ソーキ煮のとろ火見ている夜長かな
ソーキ:豚の骨つきアバラ肉 夜長と火の取り合わせ
見ているは冗長な言い方ではあるが時間経過を表現している
マイナス点にはならない 季語夜長をしみじみと詠嘆
吸収率は見事 「一人めし」テーマ性のささやかな減点

4位 水野真紀 一人めし半値太刀魚喰(は)むいざや
太刀魚が秋の季語 リアリティーがある
添削 半値なる太刀魚ひとり食(は)むいざや
   半値なる太刀魚ひとりいざ食(は)まん

5位 馬場典子 夜半の秋ひとり味わうアルファ米
季語夜半の秋とアルファ米の取り合わせはおもしろい
「味わう」は書かない方が得する
どういう気持ちどんな夜どんな私どんなあなた 
書けなくなってしまう 外せば色々やれる
秋夜:秋の季語 一般的な秋の夜の総称 その日のことが書ける
ここを楽しんでこその俳句
添削 困憊(こんぱい)やひとり秋夜のアルファ米
   傷心やひとり秋夜のアルファ米
   お疲れさまアタシ秋夜のアルファ米

・Bブロック 1人暮らしで一句
1位 森迫永依 薄めたシャンプー朝冷のワンルーム
一人暮らしのあるあるリアリティー 1人と書いてないのだけれど
一人暮らしに違いない ちょっと情けない気持ち
朝冷:秋の季語 秋の朝に肌の冷たさを感じること
朝寒:秋の季語 晩秋に感じる朝の寒さ
朝の慌ただしい時間がここにあると想像させてある
8音と10音 結果的には字余りの俳句 内容と手をとり合っている
その判断も良しとする

2位 森口瑤子 空(から)の巣症候群のような夜長
大胆な比喩季語:夜長を残りのフレーズで比喩しているだけ
独自性・真実味がちゃんと入っている 
子どもが一人暮しした後の親の気持ち 
切り取り方・発想で来ると思わなかった
テーマの中の一つ 喪失体験・寂しさ
どっしりと読み手が心で受け止める

3位 柴田理恵 今日よりはひとり分なり秋の風
「よりは」で別れ方が伝わってくる
「なり」と言い切ったところが良い
「あ~清々した」という気分が表現できている
心に沁みる句 季語に全部託してある 
清々はしているのだけどどこか寂しい
自分の体の一部がなくなっているかのような
言いたいことは全部季語に託してある これが俳句というもの

4位 皆藤愛子 のろのろと包帯広げ干す秋夜
「一人」とは書いていないけど 広げ干すという動作
一人暮らしの心細さが感じられる 心地いいけど寂しい
季語秋夜に頼りない感じもある 
読み方によっては介護の可能性がある テーマ性で損をした

5位 春風亭昇吉 母からの手紙無月の段ボール
無月:秋の季語 仲秋の名月の夜に雲が広がり月が見えないこと
季語の使い方が良い ドラマ・物語が入っている
季語も生かしてある 1人暮らしも押さえてある
類想感が順位に出た 類想類句は戦うべき一番大きな壁

Cブロックの次回のお題「一人旅」

2024年9月12日木曜日

あの本、読みました?凪良ゆう&麻布競馬場

青き空枯れゆく木々よ秋の土
盆の月和睦なったか父母の仲
針鼠香りの道を追いかけん(無季句)
丁寧に正しく生きん秋の空
秋のほぼ日やさしくつよくおもしろく

■あの本、読みました?
~凪良ゆう&覆面作家・麻布競馬場が語る【本と東京タワー】
本と東京タワー この30年の移り変わりが!
凪良ゆう 
「汝、星のごとく」作家・凪良ゆう
江國香織の「東京タワー」を語る
雨とセットで出てくる 抒情的に描かれている
窪美澄の担当編集者が「じっと手を見る」を語る
竹村優子 間室道子 
麻布競馬場が初登場(こじれてる人だな 鈴木保奈美)

本と東京タワー 1990年代 江國香織著
凪良ゆう
「恋はするものじゃなく。おちるもの」
男性視点で書かれている

東京タワーの担っている役割は❓
十九歳の少年たち(途中で二十歳になりますが)の物語を
書こうとしたときに、それは東京タワーの見守ってくれる場所の物語にしよう
東京タワーのあとがき 江國香織著 新潮文庫

東京タワーは見守ってくれる存在

世の中でいちばんかなしい景色は雨に濡れた東京タワーだ。
トランクスに白いシャツを着ただけの格好で、
インスタントコーヒーを飲みながら、小島透は考える。
どうしてだろう。東京タワーが濡れているのをみるのはかなしい。
胸を押さえつけられる気がする。子供のころからずっとだ。
「東京タワー」の一文 江國香織著/新潮文庫

透にとって東京タワーは問いかける場所
東京出身の人にとっての東京タワーとは❓
なぜタイトルが「東京タワー」❓
「東京タワー」で印象に残っているシーン
それは私と陽子さんの問題であって、あなたが心配することじゃない、

「東京タワー」の一文 江國香織著/新潮文庫

耕二は東京タワーを見ているシーンがない

江國作品で色な小説は❓
「落下する夕方」角川文庫
林祐輔
私は冷静なものが好きです。冷静で、明晰で、しずかで、あかるくて、
絶望しているものが好きです。
「落下する夕方」あとがき

江國香織は要素を作品に取り入れている❓
憧れる女性像を作品に登場させる❓

「東京タワー」の詩史と「汝、星のごとく」の瞳子は似ている

▪間室道子 竹村優子
「東京タワー オカントボクと、時々、オトン」
リリー・フランキー著/新潮文庫

東京タワーが担っている役割は❓
東京タワーはオカン いつか一緒に登ろう

オカンが死んだ。その日、東京は突き抜けるような快晴で
青空がどこまでも広がる中、赤羽橋の交差点から
真っ赤な東京タワーが空にはしごを掛けていた。
「東京タワー オカントボクと、時々、オトン」の一文
リリー・フランキー著/新潮文庫

新緑の森に包まれた先には深紅の東京タワーがオレンジ色の
灯りで周辺を目映(まばゆ)く照らしている。坂道を抜け、その真下を
通りながらそれを見上げると、勇ましくパースの効いた
巨大なはしごが、月に向かって掛けられているようだ。
「東京タワー オカントボクと、時々、オトン」の一文
リリー・フランキー著/新潮文庫

東京タワーの灯りは「鎮魂」

▪「じっと手を見る」窪美澄著 幻冬舎文庫
物語の舞台は、富士山が「誇るべき世界遺産」としてではなく、
外の世界へ出ようとするものを阻む壁、または外の世界に
出た人間を引き戻す巨大な磁石のように感じられる町だ。
(本編の中では、東京タワーが「東京に収まるべき人間」を
引き戻す磁石の役割を果たしていると
感じられる描写があり、その対比には私は唸った)。
「じっと手を見る」
朝井リョウの文庫解説 窪美澄著 幻冬舎文庫

東京タワーは磁石

高速を降り、都心に近づいていく車のなかから、オレンジ色の
東京タワーを見た。この町が故郷だとか、心からほっとするとか、
残念ながらそういう気持ちは湧いてこなかった。
それでも、どこかで受け止められている、と僕は思った。
それがいやでこの町を飛び出したのに、逃げ出した僕を
そしらぬ顔で受け止めてくれる何かが確かにここにはあるのだ。
それが故郷と呼べるものなのだろう。
「じっと手を見る」の一文 窪美澄著 幻冬舎文庫

東京タワーを見てホッとしていた角谷
窪美澄は東京タワーをどう思っていたか❓

▪本と東京タワー 2020年代
麻布競馬場(こじれてる人 鈴木保奈美女史)
それは否定できないとご本人(笑)
東京タワーありきで作品は考えた❓
麻布競馬場にとっての東京タワーは❓
東京タワーは不幸の象徴

東京を知れば知るほど東京が遠くに感じます。
東京の真ん中に住んでるのにね。どの駅も10分はかかる
南麻布の陸の孤島の、家賃9万のボロアパートですけどね。(~中略~)
持ち帰りに失敗して、タクシー代を節約したいから
ポカリを買ってトボトボと歩いて帰っているとき、
もしかしたら僕は、東京に来なかったほうが幸せだったんじゃないか、
とふと思って、泣きたくなるときがります。(~中略~)
家につきました。正気でいたくなくて、冷蔵庫に入れていた
ストゼロを飲み始めました。酔うといつも「東京女子図鑑」を
見てしまいます。キラキラした港区。東京カレンダーみたいな暮らし。
僕にないものばかり。ペラペラのカーテンの向こうには
首都高が見えるだけで東京タワーは永遠に見えません。
「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」の一文
麻布競馬場著/集英社文庫

地方出身者は地元も不幸の象徴
東京へ出ていったものは脱落者
東京タワーを意識したキッカケ
愛と憎しみ紙一重

真っ白なウエディングドレス姿の彼女と、彼女の夫になった
タキシード姿のあの商社マン。丸の内中通りの、美しい前撮り写真。
白金高輪で買った長い名前の観葉植物の葉の上には
レース越しの優しい陽光。美しい朝。取り残された私と私の人生。
「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」の一文
麻布競馬場著/集英社文庫

街の取材は1回もしたことがない

「令和元年の人生ゲーム」麻布競馬場/文藝春秋
執筆のキッカケ
努力することを諦めた沼田君
なぜ作品に沼田君を書いた❓

僕は給料さえ貰えていれば、何をするかとかも正直どうでもいいんですよね。
圧倒的成長にも、自己実現にも興味ないですし。
だから、この大きな大きな会社で終身雇用に守られながら、
他の頑張ってる社員たちが稼いできた利益を毎月チューチュー吸いながら、
総務部かなんかでクビにならない最低限の仕事をして、
毎日定時で上がって皇居ランでもやりたいって、面接でそう言って
受かったんですよ。つまり僕の人生設計を会社が
ヨシと認めたってことじゃないですかぁ

麻布競馬場氏から鈴木保奈美さんへのオススメの一冊
キャンティ物語 野地秩嘉著/幻冬舎文庫

鈴木保奈美さんいわく 麻布競馬場氏は令和の田中康夫さん

1990年:見守ってくれる存在 江國香織
2000年:オカン リリー・フランキー
2010年:磁石 窪美澄
2020年:不幸の象徴 麻布競馬場

2024年9月11日水曜日

よみ旅in長野後編&「猿の腰掛」&「落し水」&第12回おしゃべり俳句前編

(田名網敬一)秋の朝記憶の冒険始まらん
天高し蓮に佇む鸛(こうのとり)
煩悩に打ち勝つ「観」や秋の声
秋の道幼き声のはしゃぎをり
蓑虫に占領されたブルーベリー

■夏井いつきのよみ旅!in長野 後編
夏井いつき ROLAND
松本城MEMO 戦国時代に築城された
歴史とこだわりの町 松本市
松本家具の工房 家具工房3代目 池田素民

薫風やスタジアムには山雅旗   大網悦子
薫風…夏の季語

雪の肌葉っぱで隠す朴葉(ほおば)餅   髙山良一
朴葉餅…夏の季語
俳句ひとくちMEMO 木曽地方では端午の節句に食べられる
柏の葉の代わりに朴の葉が使われるようになった
髙山さんMEMO 約30年前 海外の薪ストーブを
販売する会社を立ち上げた 約2,000万円の借金をつくった
薪ストーブは家の核の存在となる

老親と待つ「昆布ニュース」夏の山   佐々木由美
夏の山…夏の季語
佐々木さんMEMO 10月頃に昆布15本が送られてくる

わさびの産地 安曇野死(あずみのし) 
わさび農家 4代目 望月啓市さん
安曇野市のわさびMEMO 北アルプスから流れてくる水が湧き出ている!
わさびは上の方が甘く、下の方が辛い 糖度が16度ある
ツーンとくるけど抜けたあとに甘みがくる

湧水で長靴濡らし田草取   望月啓市
添削(「で」は散文的になるので「に」にし 「し」を「す」にすると完成)
湧水に長靴濡らす田草取
望月さんMEMO 大学卒業後 わさび栽培を継ぎ品種改良などを研究
現在輸出にも挑戦しています
昔は卓球で16位だったのでわさびで1位になろうと…。
世界に日本のわさびを広めたいというのが最終目標

山葵田のみづ百年を湧く大志   夏井いつき

漬物鉢今はメダカの棲みかなり   上條千枝子
メダカ…夏の季語

葉桜や収骨室を後にして   鈴木美樹
葉桜…夏の季語 花が散ったことを惜しむ思いと
若葉のすがすがしさをめでる思いを含む
「自分が死んだら骨なんて焼ききって拾わなくていい」と
亡くなる前夜言っていたお父様を詠んだ歌
「去り際の美学があったお父さん」ROLAND
父は終わってしまったけれど父のエネルギーがここにいっぱいある
すがすがしい気持ちで部屋を出た
家族のために最後はストーブを点けて旅立っちゃった
最後の最後に父の意外な姿を見たと感じた

■夏井いつきのおウチde俳句
・一分季語ウンチク「猿の腰掛」

名前だけ聞くと一体何ですか❓という気にもなりますが
キノコの一種でございます 秋にはたくさんのキノコが
季語として扱われているわけですが この「猿の腰掛」は
その中でもかなり巨大なものになります
木の肌からニョキニョキっと棚板のようにして生えていく
かなり大きく成長できるキノコになっております
これは漢方薬の材料ともなりまして「霊芝(れいし)」という名前で
ご存じの方もいらっしゃるかもしれません
季語として使った時には少し空想的な猿が腰かけるような
「猿の腰掛」という名前に心惹かれるそんな季語でもありますね

・一分季語ウンチク「落し水」

田舎で特に田圃の近くに住んでいた方は
目にしたことがあるかもしれませんね
秋の頃になって稲が実り始めてくると
稲刈りの準備のために田圃の水を抜くんですね
その水を抜くことを「落し水」といいます
そうすることによって田圃の表面が乾いていって
そこに歩みいって稲刈もしやすくなっていくと
そういうことになってまいります
地域ではそれぞれのタイミングを合わせて
行っていかなくてはいけないのが農作業でしたから
その土地の人達が一斉に「落し水」を開始する
そういうところもかつての季語の本意として
あったのではないかと思われます

■夏井いつき俳句チャンネル
【第12回おしゃべり俳句】子供達の言葉が俳句になる!【前編】

見て雲が遊びにきたよ花蜜柑   りん(3歳)
春休み下の動物園には何がいる   大空(ひろあき)(4歳)
きみはまだミルクねぇねはカギゴオリ   みくり(5歳)
ドラえもん見てないけどねあのね、春   行きずりの幼児+みづちみわ
けいまにはけいまのじじょうがあるの夏   けいま(5歳)
遠花火やさしいお医者さんでした   親類の子(5歳)
ぼくなんか足折れちゃった春の山   次男の孫(4歳)
夏の「鴨、うまそうっすね」風ざらり   偶然出会った小学生男子

2024年9月10日火曜日

偉人・敗北からの教訓 第57回 清少納言

(舟越桂氏)秋麗楠愛し掘りつづけ
名も知らぬ人に涙の秋の宵
地虫なく他人の傷みに気も留めず
人として智慧と慈悲持ち蚯蚓(みみず)鳴く
三福田(悲田・恩田・敬田)のための供養や野分(のわき)

■偉人・敗北からの教訓 第57回「清少納言・涙で綴った『枕草子』」
枕草子 身辺の雑感や随想を書き留めた随筆文学
唯一無二の随筆
清少納言の栄光と敗北
春はあけぼの やうやう白くなりゆく 山ごは すこしあかりて
966年頃誕生 父親は清原元輔
981年頃(16歳) 橘則光と結婚
一条天皇 藤原定子 宮廷サロンの中心人物へ
藤原道隆 急死 定子 出家 藤原道長
清少納言 再び宮廷に戻る 懸命に定子を支える
定子は子どもを出産後 急逝 1000年(35歳)
清少納言 宮廷を去ることに 清少納言の敗北 
なぜ清少納言は定子の死後も「枕草子」を書き続けたのか?
華やかな宮廷文化を作りあげた清少納言の敗北の瞬間

夜をこめて 鳥の空音は 謀るとも よに逢坂の 関は許さじ
小倉百人一首 清少納言の歌

随筆(エッセイ)に不可欠の要素 共感性 意外性
敗北の伏線~「枕草子」のウラ側~
をかし あはれ めでたし うつくし うれし 
自由奔放の精神 ゆえに批判したもの 「源氏物語」の作者 紫式部
「清少納言こそ得意顔をしたとんでもない人
風流を気どってぞっとするようなひどい時にも
『ああ』と感動し『素敵』とときめくことを見逃さないので
現実からかけ離れた『空言』になってしまう」「紫式部日記」より
空言(そらごと)と辛辣な批判

山本淳子女史 曰く
(定子と清少納言は)客観的には悲惨としか言えない状況にあった
現実を書き変えている部分もあり
現実に対する理解が(一般と)違うところもあった

「枕草子」の裏にあった悲惨な現実とは?
漢文の知識を持つ才女 清少納言
推定28歳で女房に出仕 
離婚して身軽になっていたので新しい世界に挑戦

岡本和彦氏 曰く
当時は「内裏(だいり)」という天皇の住まいがあった
定子は「登華殿」にお住まいになっていた
中心は「母屋」という主人になる方は母屋にお住まいで
その周りの「廂(ひさし)の間には女房たちが待る
中宮・定子の女房は30~40人 下級の女房:身の回りの世話
中級の女房:中宮の周りの控える 上級の女房:中宮と会話できる
清少納言はすぐに定子に話しかけられる
清少納言「私は恥ずかしさで一杯 涙が出そうだった」
「枕草子」より意訳
定子は新しい文化を作り出そうとしていた 
定子「少納言『香炉峰の雪』はどうなっているのかしら?」
清少納言は漢詩の一説だと気づく
香炉峰の雪は簾(すだれ)をかかげて見る 
清少納言「この通りでございます」
定子「その通りね」
「枕草子」より意訳
漢詩が描く情景をその場で示す

内裏に仕える貴族 殿上人 文化サロン

繁田信一
教養たっぷりな遊びとはまず歌のやりとり
清少納言のすごいところは漢文に関する知識を求める問いかけに対して
そのまま返さないで和歌で返すようなちょっとひねったことをして返す
そこが機転が利いているので男性陣が喜ぶ
定子さんも誇らしいことだし一条天皇にとっても誇らしい
「私の後宮には優れた文化サロンがあり」ということになる
機知とユーモアは清少納言にとっては天職だった

定子の父 関白・藤原道隆 43歳で急死
定子の弟 隆家と兄 伊周が花山法皇に矢を放った
二人は暗殺未遂で配流 いわゆる 長徳の政変
後ろ盾を全て失った清少納言は衝動的に出家
定子は中宮のまま内裏を出る 最愛の職場宮中を去る

服藤早苗
自分が(髪を)切っただけでお坊さんが来ていたわけでもない
本人も女房たちも出家したとか思っていなかったのではないか
道長や周りの取り巻きたちがうまく利用した

定子の叔父 藤原道長 朝廷第一の座に就く
権力を確かなものにする 清少納言を引き抜き
若手の上級貴族 藤原斉信との恋の駆け引き
「長徳の政変」というのは斉信の姉妹の家を舞台に行われた
藤原道長に事件を通報したのはこの斉信と思われる
清少納言は斉信との関係から「道長側に通じている」という
疑惑を同僚から持たれたと思われる
同僚に疑われた清少納言は里に引きこもる
定子を没落させた大事件
枕草子には「暗いできごと」は描かれていない
事実としては悲劇的であった定子の記憶を塗り替えて
「枕草子」には「素敵」とか「あはれ」とか
そのようにしか書かれていない
(紫式部は)「これは嘘だ」と決めつけている

定子の元に戻るのを拒み続けた そんな時定子から贈り物が届きます
何も書かれていない真っ白な紙でした 定子に語ったこと
清少納言「私は嫌なことがあって死にたくなったときにも
真っ白な紙とよい筆さえあればまだこの世は捨てられないなと
命が惜しくなってくるんです
「枕草子」より意訳
見たこと感じたこと 定子たちとの日々 幸せに満ちた出来事
清少納言「これを中宮様がご覧になれば 嫌なことを忘れて
自信を取り戻していただける そしてこれが世に広まれば
地に落ちた評判も元通りになるかもしれない
「枕草子」より意訳
こうしてできたのが随筆文学の金字塔「枕草子」

女房には訪れた人と応対する役割があった
問題は女性同士の嫉妬心
清少納言は他の女房から嫉妬の対象となった

▪背少納言敗北の瞬間
上司に心酔していた
仲間の嫉妬を受けるほどの才能を持っていた
~定子の死までのカウントダウン~
「枕草子」初稿 定子も「枕草子」を読んだ
定子からの手紙
「言わで思うぞ この『クチナシ色』の花のように
何も言わないあなたこそいちばん思いが深いと
私にはわかっています」「枕草子」より意訳

斬新なやり方こそ自分たちの文化
定子の元に戻る
貴族たちの娘が入内 藤原道長の娘 彰子
定子の出る幕はなかった 
しかし一条天皇は定子を諦められなかった
定子たちを「職御曹司(しきのみぞうし)」に迎える
役所をにぎやかな場所に変える
文化サロンは以前を上まわる大人気
幸せな出来事 定子を内裏に招きともに過ごす

山本淳子 曰く
一条天皇は男子「皇子」が生まれるようにと
賭けに出て定子を呼び寄せた
道長は定子を追い落とす企み
12歳の娘・彰子の成人式
強力なライバルの登場

定子の死まで1年5カ月
定子懐妊 出産のために側近の家に移る

繁田信一 曰く
これは相当淋しいこと 普通は誰か上級貴族の家を貸せばいい
叔父の道長が「じゃあうちで」と言えばいいのに
彼は「誰にも家を貸させない」くらいの裏工作をしていた

引っ越しの担当者が来ていなかった 道長の嫌がらせ
側近の家の貪弱さ 門が狭くて牛車が入らない 屈辱的な状況
清少納言はこの屈辱を笑い話に変えました

清少納言「ああ!腹が立つ!牛車で入れると思って
髪がぼさぼさなのに!殿上人や役人たちが
じろじろ見ているのもいまいましい!」
「枕草子」より意訳

山本淳子 曰く
自分をピエロに仕立ててそれで道化て一つのエピソードのしている
とてもつらい状況を笑いに紛らわす天才だった

定子の死まで1年2カ月
第一皇子 敦康(あつやす)親王 誕生
同じ日に彰子を后候補・女御にさせる
彰子の脅威 

定子の死まで10カ月
定子と子どもたちを呼び寄せる
しかし残っている墨絵には子どもたちの姿は描かれていない

山本淳子 曰く
特に親王は「一条天皇の後継者」であることを主張する形となる
道長に対して「反抗的な書物」と見なされる危惧があった
だから殊更に書かなかったのではないか

「枕草子」は政治に一切触れていない 実際には政治に大きな力
13歳の彰子に中宮の称号が授けられる 定子は皇后と呼ばれる
后の頂点に二人が並びたつ 定子が再び一条天皇の子を懐妊
藤原道長と一条天皇との権力争い 定子の苦しみ

定子の死まで7カ月
山本淳子 曰く
定子が「枕草子」に登場する「最終場面」
最後まで正式な妃として朝廷から認められていたのだ
定子という人の重みをきちんと主張するということではなかったか

定子が登場する最後の場面
進物の珍しい菓子を定子に差し上げる

その懐紙に書いた和歌
みな人の花や蝶やといそぐ日もわが心をば君ぞ知りける
「枕草子」より
苦しみをわかってくれるのは清少納言しかいない
「枕草子」では定子の苦しみに触れていない
いとめでたし

定子の死 当日
皇后定子 崩御(25歳)
「枕草子」は定子の最後の姿を伝えていない

服藤早苗 曰く
ものすごくショックだったと思う
ちょっと髪を切っただけなのに出家したと騒ぎ立てて追い落とそうとする
まさに政治 政治をよく分かった上で逆にそこを一切書かない
主の定子もそういうものをなるべく見せない
両方が支え合っている 
その中であの「枕草子」の素晴らしい随筆ができてきた
権力争いへの敗北
機知と笑いに満ちた文化は人々の心を捉えていく

公家たちの目標
自分の娘を入内させ天皇の外祖父になること

伊東潤の見解ポイント
定子の出家は最大のミスだった
出家が認定されると定子は后の地位を失う
中宮は「天皇家の祭祀」を司る立場がある
中宮の宗教は「神道」になる
尼さん(仏教)では「天皇家の祭祀」ができない
定子は中宮の座に留まっていればよかった
「出家した」となると道長の付け入る隙ができる
清少納言のねらい
定子のサロンの華麗な様を書き残していきたい

清少納言 敗北の瞬間
機知とユーモアで政治の力に抗った
後の世までその真価が伝わった

敗北がもたらしたもの~清少納言のインパクト~
定子の死後 女房の職から離れる
定子の死に打ちひしがれていた清少納言に力を与えてくれるもの
それは真っ白な紙と良い筆
清少納言は京に帰り「枕草子」の執筆を再開
「枕草子」はブログのように折々書かれ都で広く読まれた
藤原道長も読んだ 随筆のジャンルを切り開きました
兼好法師 鴨長明らに影響を与えていかました

少納言は男を男とも思わず
「日本文学史」(明治23年)より

服藤早苗 家悪
男性優位社会になってくると 活躍した女性たちには
おとしめる説話が一杯できてくる 男女対等だった歴史が
次第に女性が排除される 最後の輝きが平安中期だった

進んだ女性 平安時代の女性文化の力

山本淳子 曰く
政治世界ではないもう一つの力の世界 
それは自分たちの持っている文化だと「枕草子」は主張している
武力だけ暴力だけではない力が存在するのだということは
「枕草子」や「源氏物語」がしっかり1000年前に示してくれていた

面白くておかしい文化的なできごととして書き記された「枕草子」

道長は「枕草子」を「禁書」にしなかった
道長は定子の怨霊を恐れていた
怨霊による「病魔」として襲いかかることを恐れた
定子を鎮魂したい気持ちは清少納言と一緒だった
晩年の道長は様々な病気に悩まされた
定子のサロンがどこよりも雅で楽しかったと後世に伝えていきたい

敦康親王(999~1019)一条天皇の第一皇子母は皇后・藤原定子

伊東潤が描く アナザーストーリー
清少納言はシンガーソングライターに向いていた
You-Tubeでインフルエンサーになっていた
「枕草子」は「共感性」と「意外性」をうまく使っている

教訓
精神的に不安定な人には常に寄り添う
定子の悩みを聞いてあげられない時期だった
精神的に不安手になっている人には
常にその人の気持ちになって寄り添うことが大切

清少納言の敗北から学ぶ教訓
精神的に不安定な者には常に寄り添うよう心かがけるべし

2024年9月9日月曜日

兼題「虫」&題「文字」

(内藤礼女史)秋の星記憶のかけら積み重ね
ほしづくよパーツとなった記憶かな
秋の蝉最期の自分と向き合わん
天高し孤独磨きて内面へ
(舟越桂氏)楠に命吹き込む秋の空

■NHK俳句 兼題「虫」
年間テーマ「やさしい手」
選者 西山睦 ゲスト 黒澤麻生子 司会 柴田英嗣

コスモスや急ぐときにもにこにこと   西山睦

▪「やさしい手」俳句三選
透くやうな手を曳いてゆく花辛夷   黒澤麻生子
あたたかや同じ話を聴きにゆく   黒澤麻生子
死の床を正座で囲み秋日和   黒澤真麻生子

「生き余す」ではなく「生き切る」

▪今週の兼題「虫」
虫集く(すだく)コピーの束の淡き熱   砂山恵子
虫の声三交替の裏口に   山口誠
(「裏口」で詠むとしっとりした情景が生まれる)
一日の眼鏡をはづす虫の声   葦屋蛙城(あしやけいじょう)
虫時雨遊具錆びたるニュータウン   西順子
軒の端のカメラが覗(のぞ)く虫の闇   今井赫(かく)
仮眠するサービスエリア虫の声   関美奈子

▪特選三席
一席 夜を唄ひ昼を語らふ虫の原   木村眞実
二席 妻逝きて後手となりたる虫の聲   駒野目信之
三席 高速を虫の中へと減速す   寺尾当卯(あてう)

▪俳句やろうぜ 黒岩徳将
神奈川県平塚市に住む 松尾和希くん(10歳)
出会った感動を素直に描写する小学5年生
俳句の出会い
特に「季語」を入れることは関係なくて
「考えたことを入れればいい」と言われたので
思ったことを手帳に書くようになりました
好きな俳句
をりとりてはらりとおもきすすきかな   飯田蛇笏
音を表現する俳句が好き表現の仕方が面白いなと負った
クロイワ推しの一句
メキメキポッさーバナナはぼくの朝ごはん   松尾和希
耳と目 音に注目した句 音を感じる

▪柴田の歩み
必殺 裏口

■NHK短歌 題「文字」
年間テーマ「光る君へ」
選者 俵万智 ゲスト 根本知(さとし) 司会ヒコロヒー

▪入選九首 テーマ「文字」
二席〈弱い〉って書く手を弓のとこで止め〈強くなれる〉に変えて記す日
ニーナ
❝珈琲❞と書かれたメニューがありそうで蔦にうもれた茶店に入る
谷本和弘
老木がまどろむような夕暮れのシャッター街の張り紙の文字
常田瑛子
一席 彼という文字を散らして波にするように海へと撒かれる遺骨
葉村直
三席 天板(てんばん)にナイフで彫った風の字はあの教室を出られたろうか
前川泰信
忙しくて会えないだけだと思うため字で埋め尽くすスケジュール帳
桜井志乃
いつもならだらけてるけど幼子の前でははねてはらつてとめる
小金森(こがねもり)まき
 クセのない字を書く職場の先輩は南国アロハで今日も出勤
純子
気乗りせぬ会に遅れてメールには慌てたふりの誤字を打ち込む
青木一夫

▪「光る君へ」で短歌を10倍楽しもう!
文字にまつわるシーン 根本知
❝書は人なり❞というところをよく自分は考えるので
道長も感づいたというシーンはとてもうれしい 
文字が主役の場面 俵万智
当時は手紙を開いた瞬間に誰(が書いた)というのが分かる
コミュニケーションの重要なツールだった
平安時代当時の文字の面白さとは? ヒコロヒー
意外ときれいに整っていない
(俳優たちにも)もっと自由に書いていいと話している
模索しながら「この字すてきだな」をまねしていきながら
それを違う人に手紙を書くときに書く
一つのファッション
歌に対する着こなしがすてきだから
お会いしてみようかなと思った女性もたくさんいたと思う

「光る君へ」から学べる 短歌づくりのポイント
万葉に時代は耳から今は目で読む時代
ひらがな・漢字・カタカナのバランスや使い方に
心を砕いて表現の一部と思って文字使いを考えるべき 印象が変わる
一時あけ レイアウト的なことも
現代短歌では試みがされている 視覚を意識

ことの葉の芽吹きののちにむすぶ実は
すぎしあの日のあはれのかたち   根本知



















紀貫之という平安の歌人を大変尊敬している
「古今和歌集仮名序」に
「やまとうたは人の心を種としてよろづの言の葉とぞなれりける」
という文章がある
心が種ならば感動や経験といった栄養源があるだろうと文脈を読んだ

「古今集」の仮名序を長歌としてそれに向けて詠んだ反歌 俵万智
仮名序は「光る君へ」でも登場する
AIは心がない そこ(心)機械と人間の歌の一番の違い
私たち人間にしか詠めないものが歌 俵万智

今の気もちのまま 根本知

▪ことばのバトン
乱反射せよ呪(まじない)いのペン
ニコ・ニコルソン 漫画家

まっさらな白紙を前に全能感(ぜんのうかん)
金子崇 漫画編集者

2024年9月8日日曜日

100分de名著「ウェイリー版・源氏物語」(1)翻訳という魔法

行列の先はスシロー秋渇き
秋湿り強きな人へ群がりて
秋ともし逢えない時間愛育て
おけら鳴く人間知りて己知る
リアルから異形への道秋高し

■100分de名著「ウェイリー版・源氏物語」(1)翻訳という魔法
安田登(能楽師) 伊集院光 阿部みちこ

いつの時代のことでしたか、
あるエンペラーの宮廷でも物語でございます。

能になった二大古典 「平家物語」「源氏物語」
当時の人はみんな「源氏物語」を知っていた
それをもとに作られた2.5次元作品が能

与謝野晶子が初めて「源氏物語」を現代語訳した
1911年 翻訳開始 1912年~1913年出版
アーサー・ウェイリー 
1925年 英訳版 「源氏物語」第1巻を出版

文学者 正宗白鳥
「はじめて源氏物語の面白さが分かった」

「源氏物語」第一帖「桐壺」
いづれの御時(おほむとき)にか、女御(にょうご)、更衣(かうい)
あまたさぶらひ給ひける中に、いとやんごとなき際にはあらぬが、
すぐれてときめき給ふ有りけり。

「源氏物語A・ウェイリー版」毬矢まりえ 森山恵 訳
いつの時代のことでしたか、
あるエンペラーの宮廷での物語でございます。
ワードローブ(更衣)のレディ、ベッドチェンバーのレディ(女御)など、
後宮にはそれはそれは数多くの女性が仕えておりました。
その中に一人、エンペラーのご寵愛(ちょうあい)を
一身に集める女性がいました。
その人は侍女の中では低い身分でしたので、
成り上がり女とさげすまれ、妬まれます。
あんな女に夢をつぶされるとは。
わたしこそと大貴婦人たち(グレートレディ)の
誰もが心を燃やしていたのです。
病気がちで鬱(ふさ)ぎこむ彼女に、エンペラーの熱は
冷めるどころか、ますます彼女に溺れ、たしなめる
周囲の声にもいっさい耳を貸しません。
そのことは次第に国中の噂となっていきました。
ミン・ホワン(玄宗)皇帝の恋人、ヤン・クウェイフェイ(貴妃)の
ことをいう者も出てくる始末。けれど不満が燻ぶりつつも、
エンペラーの威光と寵愛は動かしがたく、
表立って彼女を叩く人はいませんでした。

異国のおとぎ話のようなはじまり

第一帖「桐壺」について
紫式部は宮中年代記(クロニクル)とおとぎ話(フェアリー・テール)が
混在したスタイルで書いている(ウェイリーの注釈)

古文から英語に翻訳すると?
・複雑な敬語がなくなる 
・守護の明確化 古文では主語が省略されていることが多い
・言葉のおきかえ

帝(天皇)⇨エンペラー
更衣⇨ワードローブのレディ
御簾⇨カーテン
琵琶⇨リュート
前裁(せんざい)⇨コテッジの前庭
修験者⇨エクソシスト
物の怪⇨エイリアン 外のものが内側に入ってくる
    「入ってきた」物の怪を「外に出す」役割がエクソシスト(修験者)

伊集院光
カフカの「変身」 主人公が「虫」に変わった
先生が「虫けら」に訳し直したら理解できた

エクソシストはキリスト教カトリックの言葉
キリスト教的な色彩が重なってくる

やがて彼女は幼いプリンスを産み落としました。
前世から、きっと深い繋がりがあったのでしょう。
国中を見渡しても比べるもののない、輝くような男御子です。
七歳になり、プリンスは文字を習いはじめました。
プリンスのその並外れた才能に、エンペラーは驚きます。
少年は、ふつうなら許されない皇族方のカーテンのうちにも、
自由に出入りするようになりました。
いかに武骨な兵士や無情な政敵でも、この子を見れば
微笑まずにはいられなかったでしょう。
さすがのコキデンも、追い払いはしません。
彼はまた、パレスのグレートレディたちとも、
打ち解けて遊びます。とても愛らしくはにかんで
ふるまうものですから、みな惚れ惚れ。習い事にも熱心で、
またたく間に上達し、彼の奏でるシターン(琴)や
フルート(横笛)の音は、楽しげに天へと翔(か)けのぼります。
もっとも、こうしてわたくしがプリンスを
ほめそやしてばかりいても、お聞きのみなさまは、
「そんな子はすぐ、つまらない大人になるもの」
とおっしゃることでしょうね。
こうしてフジツボのはかない美しさに、
幼いゲンジは初めて淡い恋心を抱いたのでした。
そうです、ゲンジ皇子は、その輝く美貌から
シャイニング・プリンスとかヒカル・ゲンジと
呼ばれていたのです。
フジツボ姫も、プリンセス・グリタリング・サンシャインン、
輝く日の宮と呼ばれ、讃美されていたのでございます。
ヒカル・ゲンジは12歳でプリンセス・アオイと婚約。
光君 Genji the shaining One
目の前に来ると嫌い通すことができない力が「シャイニング」
ヒカル・ゲンジ=「神」だと思えば女性遍歴を許せる?

ドン・ジョバンニ=(ドン・ファン)
17世紀スペインの伝説上の人物 ハンサムな好色漢
モーツァルトがオペラにした(1789年)
ドン・ジョバンニが関係した女性は「美の中で燃え立ち」
「輝かされ」「浄化される」(キルケゴール「あれか、これか」より)
月の光に詩を感じて風の音に松の笛を聴くように人生が変わる
ヒカル・ゲンジは出会った女性の
詩的なものを引き出す神的な存在ではないか
(ここで伊集院光氏が火野正平氏を語ってくださいました。
 一日も早く持病の腰痛を完治され「にっぽん縦断こころ旅」が
 再開されますように。楽しみにしています。)

「源氏物語」を翻訳した英国人
アーサー・ウェイリー(1889~1966)
左目をほぼ失命し研究者の道は諦め1913年大英博物館に就職
配属された部署で独学で中国語 日本語の古典を習得
一枚の浮世絵と出逢い 源氏物語が読んでみたくなった
たった一人で源氏物語の翻訳を続けた
1925年第一帖を発表するや英米でまたたく間に反響を呼んだ。
「ここにあるのは天才の作品である』(モーニング・ポスト紙)
「ヨーロッパの小説がその誕生から三百年にわたって徐々に得てきた
特性のすべてが、すでにここにあった」(ザ・ネイション誌)

語学の天才 アーサー・ウェイリー
ヴァージニア・ウルフが書評を出して
ウェイリー訳「源氏物語」を絶賛した

2024年9月7日土曜日

新美の巨人たち 舟越桂

君の色何色ですか❓秋の声
ミルトスや見えなきものの存在が(無季句)
海温異変秋刀魚激減鰯増
星月夜零れ落ちたる適量の愛
秋麗湧き上がりたるポップかな

■新美の巨人たち 異形の彫刻!舟越桂「水に映る月蝕」
舟越桂 曰く 
心象人物とは結局のところ自分自身なんじゃないか

トラピスト修道院 聖母子像 1977年
楠を使って初めて製作したデビュー作

天童荒太氏 舟越さんへの想い
人間のわからなさについて表現したい
人間が一番わからない
人間にとって光となるようなもの
生きていくことに対してイエスと肯定できる何かを
見出して届けられれば芸術家としては生きた証になる

おれたちは、たったこれだけのことを、
ただひとつのことだけを、言い続けていた。
「生きていても、いいんだよ。おまえは…
生きていても、いいんだ。
本当に、生きていても、いいんだよ」
「永遠の仔」より

「あの山があの大きさのまま俺の中に入る」
その後に生まれたのが「山と水の間に」1998年

(2022年 本人インタビューより)
若い時から人物を作るときは外斜視気味に作っていたんですね
どこを見ているかあまりわからないような
遠い所を見ているような視線が好きだけど
一番遠くにあるものは何だろう 自分自身なんじゃないか

一番わからないのは自分自身 己を突きとめようとしていた
汝自身を知れ
自分を知る=世界を知る

スフィンクスが少女に問いかける場面
稲妻よりも不意をついてくるものはなんだ
復讐よ
一番はかないものはなんだ
不当に所有することよ
世界を知るものはだれだ
自分自身を知るものよ
世界を知るものはだれだ
自分自身を知るものよ
この場面が「スフィンクス」制作となった

作品「スフィンクス」を見て 天童荒太氏
人間に挑戦的でもあるような新しい顔
これを持っていたカメラで撮影し「悼む人」の表紙とした。
その本が直木賞を受賞した。

世界を理解する一歩は自分自身をいかに見つめるか
混沌の中から俺は生きるに値するのか
人間は生きるのに値するのか
その形をどう現すかに芸術家はもがく
そこで問いかけているものは 私は誰?他人とは何?
愛とは何?運命とは何だろう?突き詰めると人間とは何か?
舟越さんの残した作品は人々にその問いを突きつける

「スフィンクス」への舟越桂さんの想い
あっ!と思った瞬間があって 
この人浮いているって思ったの
浮いている人の姿だと思って 
浮いているってことはなんだろうと思って
現実から少し切り離される 現実から自由になる
もしかしたら「祈り」ってそういうことかなって思った
人間がする「祈り」っていう思いが行為が
具体的な体のようなもので
祈りというものに姿を与えるとしたらこうなった

2024年9月6日金曜日

ケータリングで一句&知恵泉「石川数正」

ゆらりゆらパンパスグラス花穂つけ
温泉を好きな台風(10号)ついに消ゆ
銀蜻蛉恋の季節の多々羅川
銀蜻蛉水面ぎりぎり雄と雌
銀蜻蛉コウホネの茎へ尾を刺さん

■プレバト纏め 2024年9月5日
ケータリングで一句

特別永世名人の締めの一句 梅沢富美男
ロケ終盤夜食に並ぶ研修医
(季語は夜食 二重の場所に見せようとしている
 研修医の扮装をした役者 意図が前に出すぎる俳句は嫌う
 虚の季語 実の季語 2つの効果を夜食が持っている)

永世名人 傑作50選 村上健志
ゾンビらに取っておく差し入れの桃
添削(ゾンビと桃の取り合わせが良い 
   細部を書くのが取り柄なのに 主役級が先に食べて
   色も変わりかけた桃を描く事で現場がリアルになる)
差し入れの桃ゾンビらにニ十切れ

1位 風爽(さや)か豚骨臭のシーン8   大友加恋
(爽かが季語 爽かと豚骨臭の思い切って取り合わせ
 ギャップがシーン8で回収されて 
 風も漂ってくるみたいで良い)

2位 綿あめや葉月のかかと浮かせたる   星野真理
添削(季語は葉月 旧暦8月 新暦8月下旬から10月上旬にあたる
   難しい型 映像を書く事で心情を言おうとしている
   3音の季語なら色々入る)
ケータリングの端に綿あめある葉月

3位 秋時雨運ぶ弁当台無しに   城田優
添削(散文的 詩的な情景に乏しい 
   読者が想像する余地を残す)
弁当運ぶ自転車秋時雨

4位 前のスリム新米小盛り真似てみる   藤井隆
添削(新米が季語 最後の新米の映像を残す 
   心持ち季語が前に出てくる)
細身なる人真似新米を小盛り

5位 食の秋ケータリングで2キロ増え   熊谷真実
添削(散文 一行の普通の文章という意味 俳句のふりをしただけ
   詩がない 俳句は17音の詩 詩がないのは致命的)
楽屋への差し入れ多し食の秋

■先人たちの底力 知恵泉 選 その転職 スジはあるか? 石川数正
江戸時代中期の政治家「新井白石」
石川数正の悪判を広めた張本人ともされます
しかし、著書「藩翰譜(はんかんふ)」の中で
数正の出奔(しゅっぽん)を批判しながらも、
その能力については称賛の言葉を並べている
勇気にあふれ武略にもたけ主君徳川殿のために
命を捨てようとしたことは数えきれないことだ
裏切者とはいえ忠も功もなしと断ずることはできない
家康を一人前の戦国武将になるまで支え
天下人への道筋をつけた忠臣「石川数正」
人生をかけたった一度の転職でした

2024年9月5日木曜日

尾藤イサオの言葉&夏井いつきのよみ旅!in長野前編&「二十六夜待」

秋の空最期考え日々生きん
上り月日々の小さな心がけ
吾の中にある静けさや秋北斗
ピカソの腕に抱かれし山羊秋日和
秋の桑挿し木した枝すべて枯れ

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん
~昭和の大先輩とおかしな2人~#23【尾藤イサオ】

「あしたのジョー」の作画をされた「ちばてつや氏」とのコラボも。
尾藤イサオ氏の優しさに満ち溢れた画面でした。
尾藤イサオ氏の若々しさにはひたすら吃驚。
全盛期より魅力ある歌声をご披露くださいました。
次から次へと英語の歌詞まですらすら出てこられるだなんてUnbelievable。
色紙の言葉は「仕事様様ありがとう‼尾藤イサオ」
もっと歌を聞かせて欲しかったです。
最高でした!















■夏井いつきのよみ旅!in長野 前編
ROLAND 山口輝文(戸隠そば博物館とんくるりん 館長)

戸隠そばMEMO
寒さに弱い米や麦の代わりにそばが栽培された

億ションを買(こ)うて帰らぬ青胡桃   中島知恵子
青胡桃…夏の季語

学校は行くものじゃなくて建てるもの   ROLAND
学校を建てるぐらいのビッグなヤツになれ

風薫るがあたく娘詠う詩   風間陽介
風薫る…夏の季語 があたく…「おてんば」とか「やんちゃ」

俳句ひとくちMEMO
おしゃべり俳句…子どものことばに耳を傾けて作る俳句
「にゅうえんのみんななまえおしえてね」風間陽介さんのお嬢さま 風間一乃
「おとうさんのしわしわおでこやまわらう」風間一乃 地元紙に取り上げられた

おこびれを白寿と囲む五月晴   佐藤時代
五月晴…夏の季語 おこびれ…おやつのこと 
「こびる」とか「こびれ」とか小腹がすいたときに食べるもの

戸隠アウトドアガイド 秦孝之
小池ヶ池 水面に映る景色が絶景
秦さんMEMO 東京から移住して約35年
国宝・善光寺を案内する資格を取得!

夏の日の九頭龍(くずりゅう)の嶺(みね)今となり   秦孝之
旅人をやめた日青葉茂(しげ)れる日   夏井いつき

向日葵や友は社長となりており   山内和義
向日葵…夏の季語 奥さん…美紀 友人…増澤京子

新緑や飛行機雲の北に伸ぶ   平林信子
新緑…夏の季語

平林さんMEMO 転勤暮らしは約30年続いた


俳句を詠んだ方のエピソードに感銘を受けました。
NHK長野局のスタッフに乾杯❣素晴らしかった❣

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「二十六夜待(にじゅうろくやまち)」

一体この人事 どんな季語だろうといいますと
現在おそらくほとんど行われていないのではないかと思います
江戸時代の風流になります
陰暦7月26日の月の出を待って拝む信仰なのだそうです
阿弥陀如来が天に昇っていく様ということなのだそうですが
江戸の人達はこの上天を見るために川べりに詰めかけて
当時は相当な賑わいを見せたらしいですね
天保年間では風俗粛正として行っては駄目というような
動きもあったそうです
しかし1999年に書かれたこの歳時記の時点で
既にほとんど行われていないと言及があります
現在もほぼ絶滅している季語かもしれませんね

2024年9月4日水曜日

あの本、読みました?一穂ミチ

スクリューフレーション鷹鳥を祭る
秋の山遊オルタナティブ投資
墓掃除汗の出る出る草むしり
足音に秋の蛙や飛び出さん
水害や日本列島襲い来て

■あの本、読みました?
~直木賞!大阪のおばちゃん【一穂ミチ】の素顔&本を売る秘儀
鈴木保奈美 角谷暁子 内田剛 三浦舞
書店員の想いを伝えるラブレター

大阪のおばちゃんから直木賞作家に!
道のりと創作秘話に迫る

ヒット作の裏に名ポップあり!秘めた力とは?

「スモールワールズ」一穂ミチ著 講談社文庫
ポップとのつながり ポップとは湧き上がってくるもの
「この本に出合うために書店員になったのかもしれない」
「私、今、とても後悔しています。」

一穂ミチ 直木賞までの道のりと創作秘話
鈴木保奈美女史の作ったポップ
「誰にも起こり得る最悪のシチュエーションから立ち昇る
最良のエンディングを見逃さないでください‼」

「ツンデミック」ロマンス☆の一文 一穂ミチ著/光文社
翌々日の午前中には速達で薬が届き、さっそく試すことにした。
説明書には一錠とあったが、念のため
半分に砕いてオレンジジュースに溶かす。
ぐるぐるとマドラーでかき混ぜながら、
ふと、わたしは何をやっだろうと思った。
どうでもいいドリンクや軽食を配達してもらうため、
いや、一瞬すれ違った男と再会するため、
我が子に一服盛るなんてどうかしてる。

命への思い「祝福の歌」鈴木保奈美女史が一番心に響いた作品

映画「プリズン・サークル」2020年公開
受刑者同士の対話をベースに更生を促す刑務所のドキュメンタリー

「スモールワールド」花うた 加害者と被害者の文通
一穂ミチが描く人物像

「スモールワールド」魔王の帰還の一文 一穂ミチ著/講談社文庫
玄関では姉の二十八センチのスニーカーとでかいキャリーケースが
本人同様の存在感を放っていて、ゆうべがらがら
うるさかったのはこれか、と納得した。
二十七歳、身長百八十八センチ、体重怖くて訊けない、
路上でファッション誌のカメラマンに声をかけられたことはないが
総合格闘技(地下プロレスだったかも)からのスカウト経験あり
占い師によると前世は古代ローマの剣闘士、名前は真央だが
あだ名は「魔王」。そんな規格外の姉が、突然出戻ってきた。

鉄二「どうせお前のDVだろ」
真央「お前は今姉に向かって『お前』言うたんか?」
鉄二「耳をがっと掴まれれば即座に
『すいません何でもないです』と謝罪が口をついて出る。
(中略)
真央「ん?何じゃピアスなんか空けとるんか。頭は金髪じゃし
野球止めた途端に色気づきよって、どういう新規開店じゃ」
鉄二「痛いって!」
父「こらそのへんにしときなさい、鉄二の耳がちぎれる。
真央の場合はDVするつもりがなくてもなあ…」
母「そうなのよね、ゴリラが小鳥をかわいがろうとして
握りつぶしちゃった みたいな可能性も」

一穂ミチ女史から鈴木保奈美女史へお薦めの一冊
方舟を燃やす 角田光代著 新潮社

2024年9月3日火曜日

天才画家の肖像 ゴッホとゴーギャン(2002年)

芒原(すすきはら)共通理解なきままに
ペルソナの犠牲となりて秋懐(しうくわい)
ペルソナを演じ続けて秋あわれ
ペルソナの支配は続く秋湿り(あきじめり)
自己と自我どちらも己秋を生く

■天才画家の肖像 ゴッホとゴーギャン(2002年)
ゴッホとゴーギャン二人のひまわり
Vincent Van Gogh
出会いのひまわり 始まりを告げる「ひまわり」(友情)
Gauguin
ひまわりを描くゴッホ(決別) いすの上のひまわり(ゴッホの死から10年後)

2人の生涯の中で象徴的に存在している

マルケサス諸島 ヒバオア Gauguin最期の2年を過ごした場所
快楽の家 56歳で亡くなる直前に書いた「アヴァン・エ・アプレ」
Paul GauguinとVincent Van Goghの出会い 1887年 モンマルトル
Vincent Van Goghひまわり と作品を交換
1888年 Vincent Van Goghアルルへ

第1週 黄色い家
第2週 製作開始
第3週 ぶどう畑・喜びと悲しみ
第4週 ゴッホの挑戦、挫折
第5,6週 対立 Paul Gauguin著「アヴァン・エ・アプレ」
3枚目の「ひまわり」「別れのひまわり」
第7,8週 別れのひまわり
Paul Gauguin ひまわりを描くゴッホ
第9週 破局
Vincent Van Goghは右耳を切り落とす
Vincent Van Gogh35歳 Paul Gauguin40歳 9週間で終焉
Vincent Van Gogh「からすの群れ飛ぶ麦畑」画家としての最後の作品

亡くなる1年前にVincent Van Goghが書いたテロへの手紙より
「僕がたとえ成功しなくとも僕の仕事は受け継がれてゆくだろう」

Vincent Van Goghの死から10年 
Paul Gauguinがタヒチで描いた「いすの上のひまわり」
この絵があるからこそPaul Gauguinも
Vincent Van Gogh同様に尊敬しています
ひじ掛けいすのうえのひまわり
まるで腕を広げて歓迎しているようです
彼はいすに自分のサインを記しています

Paul Gauguin「アレアレア」楽しむという意味
テハアマナという13歳の現地の女性と結婚

我々はどこから来たのか
我々は何者か
我々はどこへ行くのか Paul Gauguin 1897年
この絵画を完成させ密林に押し入り服毒自殺を嵌りました
飲み込んだヒ素が多すぎたため吐き出してしまい未遂に終わる
死の縁に遭っても絵を描くことを選んだ

パリで二人が出会い作品を交換したVincent Van Goghの「ひまわり」
アルルでの共同生活を始める時
Paul Gauguinを迎えるために描いたVincent Van Goghの「ひまわり」
緊迫の共同生活の終わりに描いたPaul Gauguinの「ひまわりを描くゴッホ」
最後はPaul Gauguinがタヒチで描いた「いすの上のひまわり」
二人にとってのこの絵は「実りのひまわり」
Paul Gauguinの心に最後に現れたのはVincent Van Goghかもしれない

2024年9月2日月曜日

兼題「桃」&題「白」

夾竹桃(きょうちくとう)苦熱に耐える同志かな
美味しいがまた届きをり桃洗う
秋扇どこへ行くにも手放せず
意識飛ぶ目が閉じていく秋暑し
枯葉落つ残る暑さが迫り来る

■NHK俳句 兼題「桃」
第一週のテーマは「俳句の凝りをほぐします」「整理整頓」
選者 堀田希何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣

伝わらない句 分かりづらい句 ダメ
言葉が整理整頓されていない
分りやすい句って❓
言葉の置き方がきちんとしている
不用意な分かりづらさを作っていない⇦この日本語おかしい

言葉の整理整頓 3つの凝りポイント
1)三段切れ
一句が五・七・五でそれぞれ切れている句
俳句では避けた方がよいとされている
春待つや色麩(いろふ)がふたつおかめそば
春待つや色麩ふたつおかめそば   小川軽舟

電話切る相手の後に春惜しむ
惜春や相手が切つて電話切る   小川軽舟
語順を変えて中七下五を一括りとした

三段切れ解消 ツボポイント
①一句の中を1つか2つのフレーズにする
②語順を変えてもいい

2)語順
アジアめく雨南瓜煮る大阪に
大阪にアジアの雨や南瓜煮る   小川軽舟

語順を整理整頓するだけで分かりやすくなる

泥になる泥に降る雪うつくしく
泥に降る雪うつくし泥になる   小川軽舟

語順のツボポイント
作りながらいろいろな語順を試す

3)山本山
水平線永遠に清しき夏の航
水平線永遠に新し夏の航   小川軽舟
(清しきは連体形 新しは終止形 中七できるだけで分かりやすくなる
上五か中七で切っておくと 山本山はだいたい解消する)

山本山というのは上五と下五が名詞で
中七がどちらに掛かっているか分かりにくい句

頑固な山本山
アート橋真下に見ゆる登山道
(見ゆる=見える連体形 字余りを恐れずに助詞を入れる)
アート橋▢真下に見たり登山道
アート橋真下に見たり登山道   庄司浩平
アート橋より真下に見たり登山道   堀田幾何
アート橋真下に見たり登山道   柴田英嗣
アート橋から真下に見たり登山道   堀田幾何

山本山のツボポイント
分かりやすさのためには字余りを恐れず助詞を入れる
整理整頓のツボ
声に出して読んでみる

▪今週の兼題「桃」
初秋の季語 桃の「実」のことを指す
桃を剥く 汚れやすい 香がいい 病気の人が食べる
類想を避けるのは難しい 類想から具体的にする 深める

特選六句
傷むとは透き通ること桃啜(すす)る   蜘蛛野燈香(くものすみか)
医師去つて臨終の部屋桃匂ふ   陌間(はざま)みどり
(生と死とのコントラスト)
桃の皮くの字にむけるろの字にも   糸川ラッコ
桃剥けば躊躇(ためら)ひ傷のごときもの   小圷(こあつく)秀樹
鍬胼胝(くわだこ)は我の勲章桃すする   黒澤正行
 台無しに剥いて私の桃となり   八田(はった)昌代

▪柴田の歩み
声に出す

庄司の歩み
整理整頓はシンプルにわかりやすく(心も…)

■NYK短歌 題「白」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「❝私❞に出会おう」。初心者のための短歌入門 2年目の飛躍へ

▪飛躍の扉
今回は「疑問形のパワーを使ってみる」。

ひとりで池を五周する人あり算数の入試問題に
大松達知(たつはる)「アスタリスク」
疑問形を加えると
なにゆゑかひとりで池を五周する人あり算数の入試問題に
疑問形のパワー①
人の内面を探る言葉となる

これはまだ私だらうか手のひらに光をためて顔を洗へり
門脇篤史「微風域」
疑問形のパワー②
自分の心の扉を開く

消えゆく言語たとえばチョロテ語といふことば人間をなんと呼びて消えしか
川野里子「ウォーターりりー」

▪入選六首 題「白」
隣屋(となりや)が毀(こぼ)たれ脇のモルタルをさらす真白きBARパルテノン
小野小乃々(おののこのの)
かつて攻められたかもしれぬ白鷺の城にwelcome百五十万人
樋町(ひまち)加奈
 白布(しろぬの)に白い刺繍をするように湯船の中で号泣している
二宮珊瑚
白すぎてAIみたいに見えるけどこれは人です亡くなった父
水沢わさび
たくさんの溝を隠して重役の来る日は白銀世界の職場
松本尚樹
一席 与えれば光を増していく吾子の乳に嚙みつく乳歯の白さ
まちのあき

▪秀一郎さんの短歌添削
すいません!謝るのは君ばかり白のワイシャツじゃなくなる俺
内藤秀一郎
すいません!謝るのはなぜ君ばかり白のワイシャツじゃなくなる俺

あむさんの短歌添削
大逆転一番そばで支えてた金メダリストの白いイヤホン
深尾あむ

▪秀一郎あむの飛躍のカギ
三越のライオンに手を触れるひとりふたりさんにん、何の力だ
荻原裕幸「永遠青天症」
三越のライオンに手を触れるひとりふたりさんにん、おまじないか?
深尾あむ
三越のライオンに手を触れるひとりふたりさんにん、四人目どこやら?
ヒコロヒー
三越のライオンに手を触れるひとりふたりさんにん、生きてんのか❓
内藤秀一郎

疑問形は結句についた場合 全体を疑問に変える力がある
余韻が残る

▪ことばのバトン
制服の内ポケットが光り出す
伊東敏恵 NHKアナウンサー

乱反射せよ呪(まじない)いのペン
ニコ・ニコルソン 漫画家
手をのべてあなたとわたしに触れたきに息が足りないこの世の息が
河野裕子
ニコ・ニコルソンさんが初めて感動した三十一文字
「呪文よ世界を覆せ」のポップ
「世界を変えるにはたった31文字で十分だ
売れない芸人和歌で人生逆転へ!」

2024年9月1日日曜日

マーク・トウェインの名言(1)

台風過日本列島舐め回し
繰り返す進路変更秋出水
秋出水あと5センチで回避せり
恐怖去る台風去りて秋の空
青き空台風一過箒(ほうき)持ち

■マーク・トウェインの名言(1)
「人生で必要なものは無知と自信だけだ。
 これだけで成功は間違いない。」

「人類は一つのとても効果的な武器をもっている。
 それは笑いだ。」

「正しい友人というものは、あなたが間違っているときに味方してくれる者のこと。
 正しいときには誰だって味方をしてくれるのだから。」

「自分が多数派の側にいると気づいたら、もう意見を変えてもいいころだ。」

「優しさとは、耳の聞こえない者も聞くことができ、
 目の見えない者も見ることができる言葉なんだ。」

「夢を捨ててはいけない。
 夢がなくても、この世にとどまることはできる。
 しかし、そんな君はもう生きることをやめてしまったのだ。」

「カエルを二匹飲み込まねばいけないときは、大きい方から飲み込むこと。
 それと、あまり長いあいだ見つめないことだ。」

「真実をしゃべるなら、何も覚えておかなくていい。」

「やったことは例え失敗しても、20年後には笑い話にできる。
 しかしやらなかったことは、20年後には後悔するだけだ。」

「名声は霧、人気は偶然の出来事。
 この世でただ一つ確実なもの、それは忘却。」

「もし腹をすかせた犬を拾って不自由なく暮らせるようにしてやれば、
 噛んだりしないものだ。
 これが犬と人間の根本的な違いである。」

「友人たちが『若く見えるよ』と誉めだしたら、
 あなたが年をとったしるしだ。」

「自分を元気づける一番良い方法は、誰か他の人を元気づけてあげることだ。」

「愛はもっともすばやく育つものに見える。
 だがもっとも育つのが遅いもの、それが愛なのだ。」

参照:https://iyashitour.com/archives/23491