2023年11月27日月曜日

題「高速道路」

「久し振り」声かけらえて冬銀河
始まりは吐き吸って終わらん冬の道
日向ぼこエンドルフィンのありがたき
未来の医学はケアの引き算冬灯(ふゆひ)
茶を点てて飲み干すまでのゆとりかな

■NHK短歌 題「高速道路」
選者 岡野大嗣 ゲスト 田根剛 司会 尾崎世界観
第4週のテーマは「グッとくる瞬間」

多根剛氏 曰く 「帝国ホテル建築には
品格・継承・挑戦の3つのテーマがあった」

岡野大嗣
高速道路は現世の裏返しのエリアみたいな感じもする

夕方のサ-ビスエリアで息を吐くあと百年は持たない肺で
岡野大嗣
(時間を前借してる感じがある 
 時間が早送りされている中でサービスエリアに来ると
 自分の通常の時間を取り戻した感覚になる)

▪入選九首 テーマ「高速道路」
渋滞の東北道のしりとりにルイ一族の永遠はある
鳥原さみ
三席 宮本浩次(ひろじ)の大音量の夜だった葬儀より戻る常磐道は
佐藤せのか
多根 尾崎 私 かろうじて生まれてきたしかろうじて灯る深夜のサービスエリア
武井宏美
四階から高速道路の光る列眺めていただけ九歳の夏
堤朱子
高速道路逆走している夢を見た二学期最初の国語の時間
山田歌子
コンビナートの隙間を縫って風になる高速しかないこの町が好き
つきひざ
一席 海老名らへんから寝落ちてたすごい角度の首で眺める東京の夜明け
前田小春
二席 私 真夜中の高速道路で取り戻す「わたし」を制限速度の中で
久保哲也
プルタブに引っ掛ける指高速は月と眠気がずうっと近い
常田瑛子

▪表現者の原点
「場所の記憶」を考えながら
建築をどのように作るかが大きなポイント
エストニア国立博物館
2016年26歳の時 初めて国際コンペに友人と一緒に応募した
敷地の傍らに消しゴムで消されたような
真っ白なスペースがあった
実際見ていたら巨大な滑走路が横たわっていた
調べるとソ連軍の軍容基地の滑走路が残されたままだった
知ったあとにそれを無視できず
その時代を乗り越えるようにエストニアの未来が拓かれたらと
滑走路から延びるようにナショナルミュージアムがつながって
でき上る提案をした 突然一等賞に選ばれた
元々あった場所には記憶があって
そこを引き受けてその先の未来を示すというのが
建築にはできるのではないかと言うのを
初めてこのプロジェクトで気が付いた
同じ場所でもありながら違う記憶が重なっていくという所に
建築が関われるのではないか
新しいものを求める近代的な思想だと
新しいものが一番大事 僕らとしては
人類がこれまで生きてきた過程も含めて
継続して作っていきたい

「自分らしく」ということに拘ることをやめてからが長い
建築にはもっと大きな役割がある
この場所にしかできない建築があるのか
「場所」を中心に考えている
自分は考古学者のような仕事の仕方

岡野大嗣
自分の中にある記憶や感情を掘り下げながら
(短歌を)作るようにしている
多根さんは「自分らしさ」を捨てながら
外にそれを見つけている感じがする

掘り下げていくと自分の言葉から
内なる心に繋がるということに近い

▪それぞれの高速道路
川の上オリンピックの走馬灯闇夜を走る記憶の欠片
多根剛

テーマから最初に浮かんだのが首都高のうねるような動き
2021年のオリンピックに繋がった時にあれだけ大騒ぎしながらも
終わったら跡形も無く忘れ去るように感じが
走馬灯のように消えていってしまったよう

首都高に街の記憶は綻(ほころ)んでまたたく走馬灯のスピードで
岡野大嗣

新しくなることにフランスは拒否反応が激しい
街は自分の誇りとして思っている時に
それをどう自分たちから次の世代に大事にしていくか
価値観は変わりました
建築がないと街のイメージがつかない

「記憶を継承する」みたいな
だいそれたことは仰っていない気がする

記憶の未来があると思っているので
今あるものを失っていくと未来が失われていく
という危機感を感じている

▪ことばのバトン
黒板に「・(てん)」だけ残る昼休み 飛騨神岡高等学校

ざわめきながらしんとしている 作家 池松舞

5月7日負け
三分で攻撃が終わる阪神はウルトラマンにも負けてしまうな
池松舞「野球短歌」(ナナロク社)より
10月9日負け
阪神のホームは今日も遠すぎてどこにも帰れぬ私みたいで
池松舞「野球短歌」(ナナロク社)より

辛い悲しい切ない
「でも」っていうその感情をのせるものに
五七五七七の定型が自分の気持ちを引き上げてくれて
詠みながら気づいてきた

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