2023年10月23日月曜日

テーマ「逆転」

秋の声長く続いた性加害
いじめっ子いじめられっ子秋さびし
沈黙の存在感や十三夜
扇風機ストーブ同居秋の居間
耽美主義の鬼才ビアズリー秋思

■NHK短歌 テーマ「逆転」
選者 岡野大嗣 ゲスト 為末大 司会 尾崎世界観

忘れものがあなたを思い出すときにあなたは忘れものを思い出す
岡野大嗣

忘れものを思い出す主体は自分自身だが
思い出す主体が逆転している
忘れものの方が私のことを思い出して
それをきっかけとして自分も思い出している
「忘れられもの」ですね

▪岡野大嗣の❝グッときた九首❞
入選九首テーマ「逆転」
一席 網棚に荷物を上げるあの夏の外してしまったスリーポイント
麻倉遥
おはようと言って眠りにつく父を横目に捉えた高三の夏
西園寺梨瑚
バーガーにかじりつくときバーガーの包みにかじりつかれてしまう
竹林ミ來(みらい)
 山﨑の﨑がたつさきだったので弁護士として初の意義あり
中里正樹
三席 かつたためにまけてきたこときづかないだからあなたはこれからまける
●○○〇○○〇○○〇○○〇○○〇○○〇○○〇○○〇○○〇○○〇●
文野やよい
網戸越し他の誰かへ向けられた歓声を聞くバイトの帰り
桃園ユキチ
お母さんを産みたい。困ってない眉で笑うところを見てみたいから
瀬生ゆう子
本名は何だったっけ一度だけ不良を頭突きで泣かせたメガネ
高原すいか
二席 河川敷でひとり空きカン蹴りながらわたし勝ったと思ったんだよ
へそごま

▪表現者の原点
練習してフォームを
身につけなきゃいけないスポーツは
全部嫌だった
走るのは自由にしていいし大きくやっていいし
だからそういうのだ好きだった

心と体の関係っておもしろい

僕らはそのままの心を表現するというより
結果を出したい試合に対して
ぴったり合う心の状態に持っていく
自分の心を羊飼いの羊みたいに寄せていって
あるべきところに心を持っていきたい
自分の心に直接手を突っ込むよりも体のほうでやる

「うあまくなる」っていうのにすごく興味があった
「うまくなる」は最後の方は
「なんかいいよね」の世界

最後は「解放」自分が表現できると解放感がある
最初は窮屈っぱいんだけど
実はすごく解放されていくような

▪それぞれの「逆転」それぞれの「表現」
追い込まれ守る自分にきがついて捨ててしまえばいまここからだ
為末大
選手がピンチの状況になるときに
体にフォーカスする心じゃなくて
2つが重なっておもしろいなというところから考えていった

観念の歌と思ったが体が最後に座っている
一気に景色が開かれた
岡野大嗣

ここからだわたしがわたしを飛びこえて背中に風の火が熾(おこ)るとき
岡野大嗣

▪ことばのバトン
ぷるぷるぷるつれない君の河鹿鳴く
尚学館高等部 花岡杏吏

ぼくらの隙間を抜けてゆく風
高田高等学校 文芸部 神田実咲
(忘却は逃げだとおもう眼の奥に刺さったままの花火の欠片)

筑波大学付属高等学校

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