2023年5月1日月曜日

第24回NHK全国俳句大会 題詠「千」

鉄柵にしがみつくよにのぼり藤
神光寺(しんこうじ)甘き香りを百五十年
気力失せ闘い破れ春の暁(あけ)
ITに取り残されて鳥曇
行く春や見たいものしか見ない人

■第24回NHK全国俳句大会 題詠「千」
司会 小西政親 
出演 西村和子 夏井いつき 岸本尚毅 宇多喜代子(ZOOM)

西村和子選
千木(ちぎ)高し神在月(かみありつき)の大社(おおやしろ)
笠原義子

小澤實選
太箸(ふとばし)や祖母の名みどり母千秋
加野庸子(ようこ)

宇多喜代子選
黒塗りの碗の千鳥やお元日


阪西敦子選
秋雲(しゅううん)は千々(ちぢ)と錆びゆく観覧車
さがたさとこ

井上弘美選
千枚田みな力抜き冬に入る
石川定子

堀本祐樹選
夏の夜や千の皿鳴る地下の街
ありあり

岸本尚毅選
貝寄風(かいよせ)や帆柱(ほばしら)に貼る千社札
日野久子
(貝寄風 かいよせ 3月下旬ごろ吹く西風)

髙柳克弘選
千代紙を折って秋思を小鳥とす
平本魚水
(秋思 秋となって心に何かを感じたり思ったりすること)

星野高士選
千万の露ふんで露こはしゆく
古賀紀子
(最後の五音の勝負 岸本尚毅先生)

夏井いつき選
舌頭千転(ぜっとうせんてん)さて鬼灯(ほおずき)の鳴らしごろ
佐々木一朱実(いずみ)
(松尾芭蕉の言葉 舌頭千転 俳句を作る際何度も音読すること)

▪てこずる兼題 克服心得
西村和子
俳句は言葉遊び 自分の直接経験や間接体験を使って作り上げる
袋回し 制限時間を設けて題に対して句をつくる喜び
ちょっとてこずった題 籠
蛍籠吊す踵を見られけり  西村和子
尻込みしないでとにかく作ってみる

夏井いつき
① 辞書などでその字の単語を探す
② 歳時記でその字の季語を探す
てこずるのが楽しい
てこずった題 米大統領不倫
米大統領不倫りんりんりんごむく
困った時のリフレイン

岸本尚毅
てこずった題 進(しん)
前へススメ前へ進み手還ラザル 池田澄子
進撃の巨人の如く春に笑む 岸本尚毅
進撃の巨人 別冊少年マガジンで連載アニメ化もされた漫画

▪龍太賞
「大鳥居」雑賀絹代
神鶏の声まつすぐに梧桐(あおぎり)へ
沈金の色なり神の錦鯉
赤子来てゐる本殿の朝涼し
原爆忌ぽつんと社家(しゃけ)の日向水(ひなたみず)
はじめから逃げる溝(かま)への縞蜥蜴(しまとかげ)
檜皮葺(ひわたぶき)しとどに秋の黴雨(ついり)かな
ここも参道ひぐらしの切通し(きちどおし)
おもむろに男のひらく秋日傘
月明にぬれて揺るがぬ、位樫(いちいがし)
今年米ふはりと握る三角形
良夜かな嬰に喃語(なんご)といへるもの
鯉の口こぽりこぽりと秋の昼
曼殊沙華蕊(しべ)ほんぱうに奔放に
落日を吸ひて全(まった)き熟柿かな
小鳥来る木の神様の大鳥居

▪自由題
髙柳克弘選
次の風青田(あおた)を渡り始めけり
中村誠之(のぶゆき)

西村和子選
白鳥の声の暮色(ぼしょく)となりにけり
永田芳子

星野高士 井上弘美選
ほんたうの白になるまで雪しんしん
吉田貴蘭(きらん)

阪西敦子選
噴水の祈りの面(おもて)隠しけり
矢代秋

小澤實選
浴衣ひるがへし太鼓を打ちに打つ
友田しげを

夏井いつき選
孤独死にあたたかな死後二日かな
佐藤直哉
(あたたか 春の季語)

岸本尚毅選
屋久島の有線を聞く甘藷畑(いもばたけ)
志々美(ししみ)久美

宇多喜代子選
今日の月赤坂で見て家で見て
穂積輝子

堀本祐樹選
ロシア語を学び続けて春を待つ
小峯千枝子

地名はすり込まれ効果が可能 夏井いつき
夏の月御油より出でて赤坂や 松尾芭蕉

▪大会大賞
ほんたうの白になるまで雪しんしん
吉田貴蘭(きらん)

貝寄風(かいよせ)や帆柱(ほばしら)に貼る千社札
日野久子

夏の夜や千の皿鳴る地下の街
ありあり
たいやきや巨人のしもんのような雲
いといと六歳

次回の題「平(へい)」

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