2023年5月2日火曜日

第24回NHK全国短歌大会 題詠「千」

低き自己肯定感や鳥曇
蜃気楼深く高くへ誘われ
夏近し全ての個性受け止めて
行く春や愛することに疲れ果て
春の空日々筋肉が落ちにけり

■第24回NHK全国短歌大会 題詠「千」
司会 小澤康喬 
出演 永田和宏 東直子 笹公人

▪題詠「千」
俵万智選
千年を超えて私をかき乱す期末テストの光源氏よ 
赤松みなみ
友達は透明人間顔さえも分からないまま半年経って
オンライン授業子を呼ぶ声がしてふっと実家に帰りたくなる

千葉聡選
千冊はこの指でページ繰っただろう私はひとりぼっちじゃなかった
簾田淳美

笹公人選
千冊の哲学書よりなほわれを大人にしたり君との別れ
福島隆史

三枝昂之選
しゅっしゅっとかぶら鉋(かんな)にかけられて千枚漬けは冬を重ねる
藤井里美

江戸雪選
千回を超えて通いし老人ホームひなたぼっこの思い出ばかり
楠みや子

佐佐木定綱選 東直子選
夕光(ゆふかげ)を使ひ切るまで影を連れ一人刈り行く千枚田かな
小泉浪士

高野公彦選
千年後夢のかけらの宇宙ゴミが土星のように輪になる地球
桂仁徳

小島なお選
千年も万年も生くこの亀に優しい人と記憶されたい
佐藤大介

永田和宏選
千羽鶴、千人針も役立たぬそんな事皆わかっていたのだ
小笹岐美子

▪近藤芳美賞
「息をする文字」
あの頃の上司の歳になってみて思い出すのは手帳の厚さ
声高にDXが語られた経済雑誌を棚へと戻す
書架にある古い文書を開くたび手書きの文字が息をしている
リスキリング予算一兆円というななめ読みして研ぐ米二合
涼やかな青空出社の足元は白のオニツカタイガーにする
長野恵梨香

▪自由題
江戸雪選
まんじゆしやげだしぬけに咲く赤赤とひとは突然きゆることあり
遠藤千惠子

佐佐木定綱選
再婚の意味を知る子と知らぬ子が砂のトンネル開通させる
神谷小百合

東直子選
隣室のラジオが聞こえてくる夕べこれから眠る町が膨らむ
薄暑なつ

永田和宏選
最期まで一人称は「ママ」なりき「ママは幸せだった」とわたしに
村田知子

高野公彦選
嫁ぐ朝父にもらいし花鋏(ばさみ)五十年たち今朝萩を切る
後藤初子

三枝昂之選
あきまへん、大型店に囲まれて店を閉じます、親父よ御免
加藤文男
厨辺(くりやべ)の母の気配に起きる朝昭和の火には匂いがあった
店裏の野良猫たちに罪はない苛めも詐欺も万引きもしない
店閉めるん、さびしい困る手押し車の客と一緒に泣きそうだった

永田和宏先生の言葉
歌は生活を助けることにはならないけれど
精神的な余裕を生む力がある 

小島なお選
海へ行くみたいに自転車こいでゆくドラッグストアにもちょっとある海
小川洋子

俵万智選
真空のパックに鋏を入れし時切り身は大きく深呼吸なす
近藤則子

笹公人選
玄関を閉めた閉めない閉めたはず動詞活用みたいな朝(あした)
佐藤一央

千葉聡選
「用務員さんに挨拶を」新任校へ向かはむわれに父はひとこと
鈴木和子

▪大会大賞の発表
千年を超えて私をかき乱す期末テストの光源氏よ 
赤松みなみ

夕光(ゆふかげ)を使ひ切るまで影を連れ一人刈り行く千枚田かな
小泉浪士

再婚の意味を知る子と知らぬ子が砂のトンネル開通させる
神谷小百合

三作品が選ばれた理由 永田和宏先生
作者の押しつけがましさがない
読者の側が踏み込んで想像しよう
という気にさせるのが良い。

どのような大会でしたか❓ 東直子先生の言葉
希望を見出したいと言う思いが
生まれてきたんじゃないかと思う所があった

次回の題「平(へい)」

0 件のコメント:

コメントを投稿