2023年5月6日土曜日

言葉にできない、そんな夜。&無人駅で一句

とれとれの春人参の高き香
観音寺牡丹の香と蜜蜂と
花筏鳥は悠々横切らん
最後の姿水面に映す山桜
陽に向かい背を比べをりチューリップ

■言葉にできない、そんな夜。
ゲスト 小野花梨 桐山照史 吉澤嘉代子 永井紗耶子
司会 小沢一敬

▪おいしいものを食べた時の高まる気持ち

それが口腔で一丸となって爆発する。
アイスが、パイが、クリームが、
ただでさえ豊かな個性のきらめきが、
潰しあうどころか
手を取り合って大爆発、
おいしさの頂点を突き抜ける。
平野紗季子「生まれた時からアルデンテ」

「美味しいバターを食べると、
 私、なにかこう、落ちる感じがするの」
「落ちる?」
「そう。ふわりと、
舞いあがるのではなく、落ちる。
エレベーターですっと
一階下に落ちる感じ。
舌先から身体が深く沈んでいくの」
柚木麻子「BUTTER」

からすみを舐めるように食べて、
飲み込むビールの美味しさは、
何故か誰かに「馬鹿野郎!」
怒鳴りつけたくなるような
美味しさである。
西加奈子「ごはんぐるり」

ガツンと満腹になるような
劇薬的なインパクトに、
頭がビリビリと痺れた。
突如現れたこの世の全背徳感を
凝縮したようなその料理は、
変なホルモンがビュービュー
分泌されたのかと思うほど
おいしかった。
朝井リョウ「そして誰もゆとらなくなった」

💮聞き管理能力が足りなかった…。   小沢一敬

▪夕焼けを見たとき
オレンジジュースを流したような
きれいな夕あかねの空だった。
三浦綾子「石の森」

中庭は夕闇と西日が入り混じって
薄紫色のセロファンに
包まれたようだった。
小川洋子「博士の愛した数式」

ただ単調に澄んでいたものの中(うち)に、
色が幾通りにも出来てきた。
(中略)
「空の色が濁りました」
と美禰子がいった。
夏目漱石「三四郎」

美しい夕焼けほど、
見覚えがある気がする。
何も知らなかった頃、
言葉も覚えていなかった頃、
赤ん坊だった頃、
誰かに抱かれたまま見た景色が
こんな美しさだった気がする。
燃えるあの色の向こうに、
過去も未来も待っている気がした。
最果タヒ

「その時、どうだったね。
やっぱり、こんなに大きかったかね。
こんな工合に、ぶるぶる煮えたぎって、
血のようなかんじがあったかね。」
「いいえ」(中略)
「朝日は、やっぱり偉いんだね。新鮮なんだね。
夕日は、どうも、少しなまぐさいね。
疲れた魚みたいな匂いがあるね。」
太宰治「みみずく通信」

■プレバト纏め 2023年5月4日
無人駅で一句

永世名人 村上のお手本
村上健志
青き踏む影の少なき無人駅 
添削(青き踏む 晩春の季語 
   春に芽生えた青草を踏みながら楽しむこと。
   無人駅はこの単語だけで詩になっている。
   しかも五音なので詠まれることが多い。)
青き踏み影のみ増ゆる無人駅

「青き踏めマスクを鳩として放て 夏井いつき」
青き踏めと言えばこの句が浮かんできます。
夏井いつき先生の代表作品です。
村上さん、この句では弱すぎたと思います。短慮!

特別永世名人 梅沢富美男の締めの一句
梅沢富美男
まくなぎのただ中にあり無人駅 
(二音で勝負した。「あり」と言い切ったことで
 不快さや恐ろしさのようなものが一挙に増した。)

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