2023年5月30日火曜日

題「あくび」

優しさに満ちた無視あり夏木陰
決心の臍(ほぞ)を堅めん夏の月
取り出すべきか記憶の小骨夏の星
星涼し消した記憶の蘇る
走馬灯見るたび気付き出会いあり

■NHK短歌 題「あくび」
選者 岡野大嗣(だいし) ゲスト 岡本知高 司会 尾崎世界観

年間テーマ グッとくる瞬間

▪岡野大嗣の「グッときた九首」テーマ あくび
君のその大きな口に吸い込まれお腹に住宅街を作りたい
ムフ
「んなぁ」って子猫があくびしたことを病床の母にメールしてみる
かぐやうさぎ
もう一度あくびをしたら別れると決めてしまえば後は待つだけ
今井遼
あくびのあと必ずああつて声の出るわたしのなかのわからないわたし
いずみ野
なんだかんだ春はあけぼの海と朱(しゅ)ときみのあくびときれいな銀歯
草波(くさなみ)ことり
せかい以外こわいものなどないきみの空気を食べるみたいなあくび
葉村直(なお)
力こめ両手広げてあくびなせば八十路のわれにぴかぴかの朝
鍵山奈美江
💮あくびしただけでみんなにほめられるほんとよかったうまれかわつて
そんなぢゅんこ
真夜中に発作にあえぐぼくの背を撫でるあなたのひそかな欠伸(あくび)
長尾桃子

▪表現者の原点 岡本知高

短歌は31音という型があるから
そこに言葉を当てはめていけば
パズルみたいに出来上がってしまう
工場的に作る作業になってしまう
自分のうちにあるものが乗ってこないと
ただの言葉で歌にならない
岡野大嗣

▪それぞれの「あくび」それぞれの表現
発声フォームは授業中の口腔鼻腔に広がる宇宙
岡本知高

短歌のたねが大事
歌を詠む動機となった心の動き

神様のこらえあくびにふくらんでわたしの声を待つ冬銀河
岡野大嗣

▪岡野大嗣の「あくび」
めむたく鳴ったらおしえてよおやすみは人間のままできるさえずり
岡野大嗣
自分のなかのわからない自分に声をかけている感じ
ふと寝落ちしてその時にたてる寝息は
鳥で言うと「さえずり」みたいなものじゃないかと思った

▪ことばのバトン
あの歌も羽根といっしょに埋めました 
梅﨑実奈

(食べてから帰れと置き手紙横に、炒飯、黄金色の炒飯)
「希望」と名付けた木の根元へと
小坂井大輔

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