2026年3月7日土曜日

あの本、読みました?真藤順丈&木内昇

寺山(修司)の嫌う表現春の鳩

宙に浮くピネレの城や春の謎

(寺山修司氏)春の風山高帽に別れ告ぐ

マグリットの洗礼受ける風光る

春怨や叫び続けた低い声

寺山の言葉は俳句いぬふぐり

 

■あの本、読みました?20251113日放送

真藤順丈 木内昇 鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

 

・累計発行部数200万部突破

「国宝青春篇」吉田修一著/朝日文庫

物語の始まりは東京五輪開催の昭和39

 

池谷真吾

昭和の暗くて深い闇を背負うような部分は

確かに今の価値感からすれば信じがたいが

この小説を読んだ時に心を動かされることには理由があって

 

昭和を描いた小説 さまざまな顔を持つ昭和を描いた小説

戦後編

   「青い壷」有吉佐和子著/文春文庫

昭和100年激動の時代を描いた小説

 

   「国宝青春篇」吉田修一著/朝日文庫

物語の始まりは東京五輪開催の昭和39

池谷真吾

「国宝 下 花道篇」の一文 吉田修一著/朝日文庫

「…なんや、あんたのこと気に入ったわ。あんたの忠義心か親心か知らんけど、

それに免じて、あの娘のことは諦めたる。指つめて帰ったらええ」

組長の口からさらっと出た言葉にざわついたのは組員たちのほうで、

当の徳次はといえば「子故に捨つる親心」と口にしながら、すでに覚悟が

できていたような心持ち。もしかすると、事務所に連れて行ってくれ、

と頼んだときから、いや、ヤクザと関わりのある暴走族から綾乃を

連れ戻すと決めたときすでに、その覚悟はできていたのかもしれません。

その後、徳次のまえに用意されましたのは、白木のまな板と

良く磨かれた鑿(のみ)でございます。

袖をまくり、酒を口に含み、淡々と準備を進める徳次に、

「あんた、役者の付き人にしとくの惜しいわ」とは組長で、

「兄弟の盃交わしたんが、あいにくの色男。しゃーないですわ」

答えながら、小指の関節に鋭いを鑿を置きました徳次は、

その小さな鑿の上に自分の体をのせたのでございます。

 

昭和を描いた小説 戦後編

   「オリンピックの身代金()()」奥田英朗(ひでお)/講談社文庫

東京五輪前夜 

 

   「デモクラシーのいろは」森絵都(えと)/KADOKAWA

 

   「罪の声」塩田武士(たけし)/講談社文庫

モチーフ グリコ・森永事件 

 

   「宝島()()」真藤順丈著/講談社文庫

直木賞受賞作 返還前の沖縄が舞台 見逃されてきた真実にスポット

戦後日本の中でのヘビー時代なんで読み物として見せるときに

ウチナーンチュ(沖縄人)の受けてきた悲劇だけではない陽性の

逞しさとか

 

戦後の沖縄を描いた理由

オンちゃん(孤児)のモデル 孤児がどう生きていくか❓ 孤児=英雄

戦果アギヤー:米軍基地から物資を盗み出して人々に分け与える若者のこと。

物語でオンちゃん、グスク、レイは戦果アギヤーとして登場。

昭和100年の今年にスポットをあてる理由

刑務所でのレイとグスクの会話 

レイは仲間と脱走するため暴動を企んでいる

 

「宝島()()」の一文 真藤順丈著/講談社文庫

「おまえは来ないのか、相棒(グー)。ここには兄貴(ヤッチー)はいないぞ」

「玉砕しない。死んだらオンちゃんも捜せなくなる」

「だろうな、おまえは来ない。おれは行くからさ」

「待たんね、おまえは自分の言葉(ドゥー・ヌ・クトゥバ)を見つけたのかよ」

「ああ、なんだって?」

「お前が言ったことやさ、どんなやつが英雄なのかって」

「ああそれな、そうだねえ」レイは少し間を置いて、

「虐げられた人たちを解放できるのが英雄さぁね。そのために戦える“力”を

そなえるのが英雄さぁね。

おれたちが追いかけてきたのは そういう男だったさ、おまえも知ってるよな」

ああ、そうだな。コザでいちばんの戦果アギヤーはそういう男だった。

だけどおれはこう思う。グスクはようやく見つけた自分の言葉

(ワー・ヌ・クトゥバ)を口にしたのさ。

「この世界には、いったん転がりはじめたら止められないものがあるのさ。

貧乏とか病気とか、暴動とか戦争とかさ。そういうだれにも

止められないものに、待ったをかけるのが英雄よ。

この世の法則にあらがえるのが英雄よ」

 

❝英雄の不在❞があぶり出すもの

沖縄の方言を多用した意図

 

「畦(あぜ)と銃」真藤順丈著/講談社文庫

真藤順丈の描くもの 骨格の書ける人 天性を持った人 

中上健次もそう 最初っから「この人凄い」と思っていた 木内昇

 

最新作「英雄の輪」真藤順丈著/講談社

 

昭和を描いた小説 戦前・戦中編

   「地図と拳()()」小川哲(さとし)/集英社文庫

直木賞受賞作 山田風太郎賞受賞作

石本とは東横線の代官山駅で待ち合わせた。

(中略)

四辺を坂道で区切られた区画のちょうど中心に目的のアパートがあった。

同潤会が設計したという重ね建て四戸は、鉄筋コンクリート造りで、

下階は東西が出入り口となっており、上階には北側の階段から

上るようである。大震災の後に建てられたことは間違いないようだが、

モダンというよりは紋切り型の建築だった。

二階の手前が中川の部屋だった。

(中略)

明男はあわてて立ち上がった。尻の下にはフランス語の論文が置かれていた。

「ル・コルビュジェ」石本がそう口にした。

中川が「知ってるのか?」と聞き返した。

 

   「かたばみ」木内昇著/KADOKAWA

戦争を描くときも「戦争の中に人生がある」というよりは

「人生の中に戦争があった」という視線で描きたい

生き抜く人たちの日常を描いた家族小説

 

執筆のきっかけ

激動の時代昭和を描いた小説特集

《読む朝ドラ》戦時下の日常を描いた「かたばみ」

ステップファミリー:血縁のない家族関係 が書きたかった

戦死した球児たちを描きたかった 美化してはいけない リアルに

神代神:出征した早稲田大学野球部のエース 神代清一のニックネーム

執筆する上で気をつけたこと 逞しい感じを描きたかった

生き抜く人を描きたかった

 

「かたばみ」の一文 木内昇著/KADOKAWA

「この校庭のどこでもいいですから、

みなさん好きな場所に寝っ転がってください。

そうして、よくよく空を見てください」

雲間から太陽が少し覗いている。わたる風が頬や首筋を励ますように

さすっていく。生徒たちは梯子の言葉に顔を見合わせている。

「さ、早く寝転んで。しばらく空を眺めたら、ご自身が戦争が

終わってあとにやりたいことを大きな声で言ってみましょう。

寝転んだままでいいですからね」

(中略)

ことに今は戦時下で、子供たちは我慢を強いられている。

思考まで統制されている。思ったことを思ったままに

口にすることさえ、慣れていないのだ。

(中略)

しばらく静かな時間が流れた。やがて、最初に寝転がった幸子が、

「髪飾りをつけて、赤いスカートをはいて、銀座の街にお買い物に行きたい」

と、小さな声で発した。そこから、「父さんと海釣りに出掛けたい」

「とびきり甘い飴を三十個なめる」控えめながら声が連なっていく。

「もっと大きな声で。空に届きませんよ」悌子は明るくうながした。

「父さんと母さんとまた一緒に住む」

「兄ちゃんと腹一杯文字焼きを食べる」大声で叫ぶうちおかしく

なってきたのか、生徒たちは空を向いたままケラケラ笑いはじめた。

 

時代の空気感を描くために参考にしたもの

 

権蔵:悌子の下宿先の家主の義兄 六助:権蔵の仕事仲間

「かたばみ」の一文 木内昇著/KADOKAWA

「六さんは、生きてて楽しいですか?」思わず訊くと、急になんだね、

と六助は眉をひそめたが、やがて揚々と答えた。

「楽しいもなにも、生まれてきたんだから生きるんだよ。

それが生命っていうもんだよ。あのね、よくあるだろ、

「人はなぜ生きるのか」ってな問答が。不毛だよー、ありゃ。

ごちゃごちゃ考えてねぇで、どんどん生きりゃいいんだよ。七面倒くせぇ」

 

戦争の中に人生がある。のではなく、人生の中に戦争があった。という視点。

 

   「普天を我が手に 第一部」奥田英朗/講談社 担当編集者 伊藤蓮矢

昭和元年に生まれた4人の人生を描く

「普天を我が手に 第二部」奥田英朗/講談社

「普天を我が手に 第三部」1217日発売予定

 

奥田英朗がこだわった点

竹田耕三:日米開戦に反対する陸軍の少佐

清濁併せ持つ時代 

紡績工場で起こったストライキ。

矢野一家の親分 矢野辰一がストライキをたき付けた男女を監禁する。

「誰だ、貴様たちは!大方湯川紡績に金で雇われたやくざだろう!

早く解放しろ!自分のやってることがわかってるのか!」

男は大声で言い返した。ただし膝が震えているので虚勢だろう。

「女はどや。二度とせんと言うなら、勘弁したってもええけどな」

「誰が勘弁してくれって言った。わたしは最後まで闘うぞ!」

女も降参しなかった。

辰一はいくつか組合潰しをするうちに、彼らの扱いがわかってきた。

みなが揃って同じような決め口上を言うのは、何かに洗脳されている

からである。従って手打ちはない。「そうか。ほなら覚悟せえ」

辰一はそう言うと、貞夫から日本刀を受け取り、抜いた。顎で子分たちに

指示を出す。子分たちは男の縄をほどき、左腕を真横に伸ばした。

二の腕にさらしを巻いてきつく縛り、二人がかりで抑え込んだ。

「な、何をするか」男が動揺した声を発する。

「おのれ、右利きか」「そうだ」「ならええ」

次の瞬間、辰一は日本刀を力一杯振り下ろした。

男の左腕が、肘から切断された。ポトリと土間に落ちる。

「うわーっ!うわーっ」男は数回絶叫したのち、気を失った。

 

昭和初期の空気感

 

福澤徹三:ホラー 怪談実話 クライムノベル 警察小説など

幅広いジャンルの作品を手掛ける小説家

 

今回取り上げた作品を読むと

 

竹田志郎:軍人・竹田耕三の息子 アメリカの捕虜となり

帰国後は日本の捕虜収容所の通訳に 

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