寒(かん)きびし月のにほいの降りて来し
厳冬やショパンに耳を傾けん
(エリック・ルー)計算し尽くされし音冬の月
(ケヴィン・チェン)冬銀河小指伸ばして鍵盤を
(ワン・ズートン)冬日没る奏でる音に酔いしれて
■NHK俳句 兼題「雪」
選者:和田華凜 ゲスト:吉田慎司(中津箒職人) 司会:柴田英嗣
年間テーマ「季語からみるDNA」
自分たちで栽培してホウキモロコシという草と綿の糸
ベンガラという天然染料 家の近くで間伐した胡桃の枝
シンプルで素朴で美しいものが好き
アトリエショップに書店のスペースがあって品の8~9割が詩歌の本
言葉と物は環境が似ていると思う 言葉は世の中にあふれているが
全部大切に使われているか 吟味(して使われ)いるか(疑問に思う)
一つ一つ確かなもの 手触りを感じたり考えたりしながら
世の中に広がってほしい それが(実現できている)最たるもの
ぎゅっと(吟味された表現の中に)厚みがあるのが俳句かなと思う 吉田
俳句は「寡黙の詩」と言われている 饒舌になりすぎない
吟味された言葉で余韻余剰を含んで
どこまでも広がる世界観を詠めたらいい 和田
雪中保存 雪の中に野菜を入れておく
0度以下にならないのでずっと保存できる 生活の知恵 吉田
「雪」から見えるDNA
日本の四季の美を言い表す言葉で「雪月花」がある
雪は溶ける 月は欠ける 花は散る 日本人は時と共に
失われゆくものに美を見出す 和田
工芸でも欠けとか傷とかゆらぎとか 変化というものが美しい
完璧で動かないものを目指してはいない
世界観として共通するところはある 吉田
しかし消えてしまうけれど 春が来ればまた花が咲く
冬が来れば雪が降る 月も満ち欠けがある 再生の約束というのが
日本人の心にまた会えるという安心感を与えている 和田
自然素材を使っているので相手も変わるし自分も変わる
全て循環していく 人間もその一部 循環の中に美しいものや
生き方がある 咲く花も散る花も美しいというのはその循環が
美しいという世界観 俳句とか工芸とかには関わらず(日本人)
みんなが持っているもの 吉田
・名句鑑賞
いくたびも雪の深さを尋ねけり 正岡子規
情景だけ聞くと普通のことですけど 強い力を感じる
バックグラウンドを知ると 外をがんばって
見ようとしている感じとかいろいろ想像させる(句) 吉田
子どもの心のように雪の深さをまた見たいなと思っている所と
病状がひどいのかなという所と 両方感じる句
寝たきりの状態になっても俳句は読み続けられるんだよ
(人生の)最後の最後まで詠もうよ
それも子規は言いたかったと(思う) 和田
泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟
空から真っ白な雪が降ってきて 土に落ちて泥になっていくという
一瞬の美を瞬間的に写生した見事な句
美醜の対比がいい 吉田
写生の名句だと思う 和田
・特選句 兼題「雪」
雪のごと真っ白な猫雪と逝く 百瀬はな
雪降れば雪のかたちにラテアート 寺尾当卯(あてう)
周波数合わせて雪の声を聴く タケオ
風花や左遷地に解く僅(はつ)かな荷 柏原才子(さいこ)
雪こんこん母を待つ子の鏡文字 翠簾屋(みすや)信子
天界に裂け目あるらし雪止まず 岡本戎(えびす)
・特選三席
一席 雪原に地上絵残す鳥けもの 山下民子
二席 雪しまく電車は過去へ向かふ如 星野芳美
三席 裁判所は左右対称雪真白(ゆきましろ) 武井保一(ほいち)
・はみだせ!教室俳句
愛媛県宇和島市立明倫小学校 芳谷あゆみ先生
秋の暮れ父とキャッチボール猛特訓
秋の暮父とボール五十球
ポイント マンツーマンでの俳句添削
秋うらら爆弾おにぎりのりいっぱい
いっぱいより6枚の方が面白いと添削
夕月夜部屋のあちこちカレー臭 清家まなみ
できれば自分なりの言葉を探してって言います
ポイント リアルな体験を自分の言葉で表現
続けると上手になるし慣れる
必ず苦しくなるので大丈夫って言い聞かせます
俳句も財産なので 心の財産
・吉田慎司の一句
雪満ちて五センチ浮かび歩く子ら 吉田慎司
寝雪といって雪が一面 積もったまま真っ白になる
大人も子供も車も全部浮いている 結構シュール(非現実的な)な状態
「五センチ浮かび」ていう措辞(そじ)が抜群 雪国ならではの表現
「満ちて」「浮かび」「歩く」動詞が3つ入っていると散文的になる
動詞が多いと作文見たくなる
俳句的には表現を動詞ではなくして見るのも良い 和田
単語に歯切れがあって味わいがあるのが俳句 吉田
添削 雪の朝五センチ浮かび子らの靴
情報量が増えてシャープになりました 吉田
・年間テーマ「季語から見るDNA」
名句には人生も含まれている 柴田英嗣
■NHK短歌 テーマ「機械」
選者:永田紅 ゲスト:伊藤亜紗 司会:尾崎世界観
年間テーマ「“理科のことば”で羽ばたく」
美学とは言葉にしにくいこと(人間の感覚的な世界)を
言葉を使って分析する学問
身体と機械がどのように関わるのかを研究
機械とは感情や人間性がない 冷たいものと位置付けられている
一方で昔から夢を託すものでもある AIが浸透している時代
機械と人間の関係も変わっていきそう
機械が詠み込まれた歌
窓枠が並ぶがごとし顔顔顔 隣の部屋へはみ出せぬまま
永田紅
・入選九首 テーマ「機械」
映写機の光がわたしを通るとき私も映画なんだとおもう
まつのせいじ
三席 AIが色づけをした帰還兵の肋(あばら)の影は縞(しま)をつくりぬ
佐藤綾子
一席 ミキサー車みたいに推敲しておりぬ寝かすと固まってしまう歌を
深海泰史(しんかいたいし)
二席 自転車の車輪まわればその影と仏式(ふつしき)バルブの影もまはれり
中尾亜由子(あゆこ)
私 歯車と言われたくないこの俺も社会の一員とは言われたい
中村聡
除湿機の満水の水を捨ててやる私の涙も入った水を
さくさくら
妻のいない夕暮れ時は泣けてくる厨(くりや)の家電にやさしくされて
樋口勉
薬包紙(やくほうし)ひらひら包むうつくしさ吾より奪いし分包機(ぶんぽうき)なり
中谷眞理
もうちょっとつまらなそうにしておくれ見守りカメラのお留守番猫
田中啓子
・“理科のことば”ピックアップ
耐久性テストで回り続けてるモーターみたいな君を止めねば
原拓
耐久性テスト:製品が長期間の使用に耐えるかを評価するテスト
このテストの前提として「壊れるまでやる」
機械と人間の違いを考えさせられる歌
人間が持っている機械性 「スイッチ入っちゃうと止められない」伊藤
・私の“理科のことば”
「私たちは生まれながらのサイボーグである」アンディ・クラーク
ペンも自分と一体のものとして感じる
「私」「心」が物理的な身体の領域を超えて「人工物」や
「自分ではない物」に染みていく 伊藤
人間は外部の物に対応する力がある 永田
デバイスが変わると表現も変わる 永田
小説家の谷崎潤一郎 晩年は高血圧でペンを持てなくなった
口述筆記したら(小説を)書けなくなって苦労した 伊藤
言葉ではない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ラン!
加藤治郎
デバイスが変わって「!」を連打できるようになって生まれた歌
・ことばのバトン
ぎゅうと握って愛をユリイカ
安部若菜(NMB48)
⇩
溶けきった黒がつま先まで来てる
reina(Iyrical school)
夜をイメージして詠んだ
夜の海を見ながら孤独を感じている時に誰かに手を握られて
理屈じゃなく愛を見つけた 自分の輪郭を取り戻した
いつか歌集を出せるようになりたい
次回のNHK俳句 兼題「海鼠」
選者:高野ムツオ ゲスト:岩田由美 大谷弘至 サンキュータツオ 関取花
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