2026年1月17日土曜日

第2回あの本大賞

冬干潟漂着物と目があいて

(フランス)誠実と忠誠へシフトする冬 

(フランス)月氷る勇気・誇りへ光あて

冬銀河美を貫かん日本人

存在へ所作忍ばせん冬の月

 

■あの本、読みました?

人気作&話題作が続々ノミネート…今夜決定!第2回あの本大賞

石原正康 池谷真吾 河北壮平 間室道子 中村江梨花 

鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P

 

ノミネート①「ひまわり」新川帆立/幻冬舎

二人がかりで私の身体を押さえ、リクライニングをあげていく。

どっと息苦しくなった。突然、水中に投げ込まれたみたいだ。

頭がくらくらする。めまいがして、呼吸が浅くなる。

息ができなくて苦しい。ほんの何十センチ、

目線が上がるだけなのに、脚がすくむような感じがした。

 

ノミネート②「この夏の星を見る」辻村深月/角川文庫

今年 映画化「この夏の星を見る」感動の青春小説

「来週、よろしくお願いします」綿引が言った。改めて、画面に向き直る。

(中略)

「予定だと十七時五十二分頃からISSが観測できそうです。

市野先生、参加校、結局どのくらいになりましたか」

「五十二校です。沖縄から北海道まで、

全都道府県というわけにはいきませんが、

日本の南から北まで、参加してくれる学校があります」

森村と才津が息を吞むのが聞こえた。「凄いな…」「おっ、そんなにか」

「その声を満足そうに聞いて、市野が笑う。

(中略)

皆が頷き合う。それを見て、綿引が言う。

「―失われたって言葉を遣うのがね、私はずっと抵抗があったんです。

特に、子どもたちに対して」

(中略)

「実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。

それはわかる。だけど、彼らの時間がまるごと 何もなかったかのように

言われるのは心外です。子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。

きちんと、そこに時間も経験もありました」

 

ノミネート③「音のない理髪店」一色さゆり/講談社

「聴者はイメージがしづらいんですが、じつは生まれてからずっと

日常会話を聞いているから日本語を意識せずに使えるんですよね。

赤ちゃんは言語獲得期と呼ばれるあいだに、

およそ一万五千時間も自然に日本語が耳に入るとされます」

「一万五千時間も」と、私は呟く。「はい。けれど、ろう者は違います。

聞いたこともない言語を、正しく理解しているのかもわからないまま、

目で追っていくしかない。たとえば『あ』という音がどんな

音かもわからず、ただ記号として暗記するしかないんです。

だから聞こえる人の何倍もの努力が必要になるし、

苦手意識を持つのはごく当たり前のことです」

 

ノミネート④「青い壷」有吉佐和子/文春文庫

帯のコピー 原田ひ香「こんな小説を書くのが私の夢です」

「オードブルはフォアグラだよ。トゥール・ダルジャンから届けさせた」

トゥール・ジャルダンは鴨料理で有名なパリのレストランだけど、

お皿の上に乗っていたのは、サツマイモの潰したものだけ。

シェリーのティオ・ペペも、飲んでみると日本酒だったわ。

(中略)

「あなた、楽しいわ。素晴らしいディナーですわね」

「人間には贅沢というものが必要なんだ」

「ええ、本当に、そうですわ」「味覚というのは、教養だからね」

 

ノミネート⑤「世界99上・下」村田沙耶香/集英社

私自身がそうであるように、他の皆の振る舞いもぜんぶ模倣なのかもしれない。

だとしたら最初の「典型的な人間」はどんな人だったのだろう。

みんな中身がからっぽなら、誰かが「私はからっぽです」と言えば、

「そういえばそうでした」「ぼくもそうでした」ということになり、

それが「典型的な人間」になるのかもしれない。

 

パラレルワールドの方が現実に近い?

 

ノミネート⑥「C線上のアリア」湊かなえ

介護=女性はおかしい

「菊枝さんのおむつ、替えてあげて」邦彦の表情が凍りついた。

邦彦に会ったら言わなければならないと思っていたことだ。

(中略)

「男に母親の下の世話はできないよ」勝手な言い分なのに、

不思議と腹は立ってこない。生理的な感情は仕方ないのかもしれない。

「でも…」責任はある。

 

👑ノンフィクション賞

「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著/小学館

 

👑エッセイ賞

「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」小原晩著/実業之日本社

 

ノミネート⑦「#真相をお話しします」結城真一郎/新潮文庫

ひとしきり事件の経緯を語った慎一が、窓の外に視線を移した。

(中略)

これが事件の全真相。たしかに悲劇は起きたものの、いちおうは解決をみた。

そう思った瞬間だった。

「ただまだこの事件には、片桐さんが知らない事実があります」

(中略)

「実はあのとき、あの家に私の家族は誰一人としていなかったんです」

耳を疑った。

 

ノミネート⑧「問題。」早見和真著/朝日新聞出版

「いいね?中学受験なんかじゃ何も決まらないよ。

難関校に行ったおかげで幸せな人生を切り拓ける人もいるだろうけど、

行きたい学校に行けなかったから豊かな人生を送れる人だっている。

たぶん同じくらいの数がいる」「うーん」

「どっちにしても、いま十和ちゃんが自分のすべてだと

思っていることは、意外とすべてじゃないから。たとえば将来君が

何かで大成功して、自伝を書くとする。そこで綴られる

中学受験のことなんて、一行か、二行くらいのものだよ」

「そうなの?」

(中略)

「筆圧の強い一、二行にするために君は今がんばっているんでよ」

最後にわざわざ言い直して、父は誇らしげに鼻先に触れた。

 

執筆のキッカケは娘とともに挑んだ中学受験

 

ノミネート⑨「踊りつかれて」塩田武士著/文藝春秋

こだわった公判シーン

SNSが定着して十年が経ち、もう当たり前のツールになっていると

多くの人が思っています。

(中略)

「醜い言葉の刃で誰かを追い詰めること」

「感情に任せて私刑を誘発すること」

「噓の情報をタレ流すこと」

「正確さよりも面白さを優先すること」が、

いつ認められるようになったのでしょうか?

(中略)

「匿名性」は悪意の免罪符ではありません。

人間の成熟度をシビアに測る物差しです。

 

フィクションだから書けるSNS社会の問題点

 

ノミネート⑩「イン・ザ・メガチャーチ」朝井リョウ/日本経済新聞出版

便利になる、楽になる、頭を働かせなくてよくなる。それに人は抗えない。

聴きたい曲ごとにCDやレコードを入れ替える人なんてもう絶滅危惧種だし、

イントロは邪魔で、曲の一番おいしいところをすぐに味わいたいという

リスナーがぐっと増えた。

(中略)

疲れたくない。傷つきたくない。自分からは何もしたくない。

だけど全てが欲しい。自分が抑圧されたり、

軽んじられることだけは一切許さない。

時代の変化をこんなふうにしかとらえられない自分が、

音楽事業に直接的に関わる部署から早々に

フェードアウトしたのは自然の成り行きだったのだろう。

 

40代を描ける理由

 

ノミネート⑪「皇后の砦」阿部智里著/新潮社

描かれている世界観

「真夜中になって、こんなところにきたのはどうして?」

「それは…」ナオミが言葉に窮していると、早とちりしないでね、

とティアは悪戯っぽく笑いかける。「私、責めているわけではないのよ。

あなたは巣の宮のどこに行ってもいいし、何をしてもいいのだもの」

(中略)

「どこに行っても、何をしてもいいということが、

こんなに重いことだとは思ってもみませんでした…」

「あら」どうしたの、と問われて、ティアの冷たい手を両手で握り返す。

「私ちっとも分かっていなかったんです。何をしてもいいということは、

何をしても許されるということではないのだと」

 

ノミネート⑫「ブレイクショットの軌跡」逢坂冬馬著/早川書房

「俺が後藤さんみたいになるには、どうしたらいいでしょうか」

急な話だったので、友彦はあっけにとられた。

後藤さんみたいとは、何のことだろう。

「板金一級ってこと?それとも課長になりたいの?」

「そうじゃなくって…それも、あるんすけど、あの、

後藤さんみたくかっこよく働いて、修理箇所見るだけで

タワーでどこ引っ張るか分かって、ボルトも溶接も完璧で、そんで、

しっかり働いて家族を幸せにしてる感じです。後藤さんは、かっこいいっす」

(中略)

「世の中には、なにがなんだか分からないほど難しい仕事をして

一年に何億円も稼ぐ人が大勢いるし、俺は一生かかっても

そっちにはいけないよ。でも善良さっていうのは、最大の資産じゃないかな」

 

ヤングケアラーと毒親について

 

👑本から見つけた名言集

「踊りつかれて」塩田武士著/文藝春秋

「匿名性」は…人間の成熟度をシビアに測る物差し

 

「匿名性」は悪意の免罪符ではありません。

人間の成熟度をシビアに測る物差しです。

 

あの本読みました?大賞

6位「音のない理髪店」一色さゆり/講談社

4位「ひまわり」新川帆立/幻冬舎

4位「青い壷」有吉佐和子/文春文庫

3位「この夏の星を見る(上・下)辻村深月/角川文庫

👑1位「世界99(上・下)」村田沙耶香/集英社

👑1位「イン・ザ・メガチャーチ」朝井リョウ/日本経済新聞出版

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