2025年8月3日日曜日

あの本、読みました?小川糸、三浦しをん

腎不全お元気そうね夏太り

シャント術浮腫か?浮腫みか?蟇(ひきがえる)

食べて寝るただそれだけの夏を生く

血の滲む術後のガーゼ夏の夕

リン・カリウムを食べられぬとは李(すもも)

 

■あの本、読みました?

山が舞台の名作~小川糸、湊かなえ、三浦しをん、松永K三蔵

鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P

 

「バリ山行」松永K三蔵著/講談社

「今夜はジビエ」小川糸/幻冬舎文庫

「神去なあなあ日常」三浦しをん/徳間文庫

「山女日記」湊かなえ著/幻冬舎文庫

 

本日のテーマ 名著に山あり

山に登る 山で暮す 名作を深堀り 

山が舞台の作品 その魅力とは

 

・サラリーマンが書いた芥川賞作品

「バリ山行」の一文 松永K三蔵著/講談社

 

バリ:一般的な登山道ではない「バリエーションルート」のこと

山行(さんこう):登山に行くこと

「バリ」に注目した理由 松永K三蔵の登山歴

 

白い陽射しの中、ストックをつきながら登山道を歩く。

繁る青葉の陰に入ると僅かに涼しさを感じた。

山には既に蝉が鳴き頻(しき)っていた。

平日はハイカーの数は少なく、私は淡々と登山道を辿って歩いた。

山の陰に廻り込むと木立の中は暗く、どこか寂し気に感じられたが、

そんなことが今の自分の気分には合っていた。

何が変わったのか。山は変わらない。

すると変わったのは自分自身で、自分を取り巻く状況だった。

社長はいつも角氏に連れられて外出して社内のおらず、

服部課長は苛々しながらアーヴィンの事務所に張り付いていた。

いつの間にか常務が座っていた席に移った

植村部長は一日中PC画面を覗き込んでいる。

 

会社勤めの経験から描いたもの

 

ベテラン社員 妻鹿(めが)の人物像

 

「会社がどうなるかとかさ、そういう恐怖とか不安感ってさ、

自分で作りだしているもんだよ。それが増殖して伝染するんだよ。

今、会社でもみんな ちょっとおかしくなっているでしょ。

でも、それは予測だし、イメージって言うか、不安感の、

感でさ、それは本物じゃないんだよ。まぼろしだよ。」

 

実は幻の「不安感」 危機に接することで得るもの

 

「カメオ」松永K三蔵著/講談社

会社から理不尽な命令に憤る主人公を描いた松永K三蔵のデビュー作

仕事に翻弄される姿

 

・山岳小説の最高峰

「孤高の人()」新田次郎著/新潮文庫

「孤高の人()」新田次郎著/新潮文庫

昭和初期の登山家 加藤文太郎を描いた山岳小説の金字塔

 

・女性が登る理由

「山女日記」湊かなえ著/幻冬舎文庫

菊地朱雅子(すがこ)幻冬舎担当編集者

「山女日記」執筆のきっかけ

当時菊地さんも登山を始めたばかりだった

山へ行きたいから始まった小説

登山時の湊かなえ 風景を焼き付ける特殊場能力を持っているのでは❓

 

「山女日記」の一文 湊かなえ著/幻冬舎文庫

眼下に広がる雪渓は大きい。ここを歩いてきたのか、と見入ってしまう。

雪の白、空の青、山の緑。原色の絵の具を水で薄めずに

カンバスに塗り付けたような、夏のコントラストが美しい。

 

数ある湊作品 「山」の小説ならではの魅力

励ましの言葉をストレートに書いている作品だと思う。

 

・山で暮す人

   山へお引越し

山暮らしのきっかけ

 

「今夜はジビエ」の一文 小川糸/幻冬舎文庫

雪の結晶1228

夜、酔った勢いで防寒して外に出て、星を見た。

すごいすごいすごい、天然のプラネタリウム。

車なんか来ないのでそのままゴロンと道に寝っ転がり、

雪の上に大の字に手足を広げて星を見る。

最高に幸せな時間だった。

 

山暮らしの魅力 山暮らしの「不便」 山暮らしの「恩恵」

 

   鎌倉の山

「ツバキ文具店」の一文 小川糸著/幻冬舎文庫

「今日は、お天気がいいから、ガーデンにしません?」

バーバラ夫人が提案した。(中略)

ガーデンは、紀ノ国屋の角を曲がったところの、スターバックスの

手前にある。この季節、向こうに広がるのんびりとした

山の景色を眺めながら、外のテラス席で食べるのが気持ちよかった。

 

鎌倉が舞台の小説で山を描く理由

 

「ツバキ文具店」の一文 小川糸著/幻冬舎文庫

海はエネルギーが強いから、そこにいるだけで身体が重たくなる。

 

ハイキング自体はなかなか気持ちのよいものだった。

私の後ろを歩くパンティーが大声で歌うので、なんとなく

他の三人も小声で唱和する。どうやらパンティーは、

スピッツのファンらしい。大の大人がハイキングをしながら

歌ったりして、何やっているんだろう。頭ではそう思うものの

山道を歩きながら歌うのは、思いのほか爽快で病みつきになる。

パンティーの歌声に一抹の迷いもなかったのも、他のメンバーに

大きな勇気を与えたのかもしれない。下り坂になる度、少しずつ

汗が引いていく。濃厚な土の香りが、普段眠っている脳みその

どこかを激しく揺さぶっているのを感じた。途中から、やっぱり

この新年の行事に参加して良かったと思えるまでになっていた。

 

山が人の心情に与える影響

 

   山で回復

「小鳥とリムジン」の一文 小川糸著/ポプラ社

「普通に生活してると、つい頭でっかちになって、情報を全て

頭で全て処理処しようとしてしまうから。でも、山に入ると、

どんどん自分がなくなっていくというか、体だけになっていくんだよね。

頭で考えようとせずに、体で感じることだけで生きる、みたいな。

そうやって自然の中に身を置いていると、ほんの一瞬だけど、

自分が無になって、周囲に溶けるんだ。その溶けてる状態が、

最高に気持ちよくて、やめられない」

(中略)

「ある日、僕は人里離れた静かな森の中で、一輪のユリの花と

出会ったんだ。そのユリは、人知れず、木陰でひっそりと

咲いていたんだけど。その姿が、ものすごく生命力に溢れていて、

魅力的で、まるで妖精みたいだった。僕はその姿を見て、

号泣しちゃったの。あんまりにも気高くて美しいから。

それで気付いたんだ。花屋さんで売られているユリの花は、

本来の姿ではないんだって。本来のユリの花は、こんなふうに、

大自然の中で人知れず咲くものなんだ、って。」

 

一輪のユリが表すもの

 

   山のお仕事小説

「神去なあなあ日常」三浦しをん/徳間文庫

国田昌子 徳増書店担当編集者

 

林業を舞台にした小説を書いたきっかけ

執筆時の三浦しをん

 

「神去なあなあ日常」の一文 三浦しをん/徳間文庫

日射しはますますあったかい。気温が上がると、空気にいろんな

においが混じりはじめる。小川を流れる澄んだ水の甘さ。

いままさに土を押しのけようとする草の青さ。どこかで

枯れ枝を焼く焦げくささ。冬のあいだに山深い場所で死んだ

獣のかすかな腐臭。なにもかもがいっせいに動き始め、

新しい季節を迎えようとしている。

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