腎不全お元気そうね夏太り❓
シャント術浮腫か?浮腫みか?蟇(ひきがえる)
食べて寝るただそれだけの夏を生く
血の滲む術後のガーゼ夏の夕
リン・カリウムを食べられぬとは李(すもも)
■あの本、読みました?
山が舞台の名作~小川糸、湊かなえ、三浦しをん、松永K三蔵
鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P
「バリ山行」松永K三蔵著/講談社
「今夜はジビエ」小川糸/幻冬舎文庫
「神去なあなあ日常」三浦しをん/徳間文庫
「山女日記」湊かなえ著/幻冬舎文庫
本日のテーマ 名著に山あり
山に登る 山で暮す 名作を深堀り
山が舞台の作品 その魅力とは❓
・サラリーマンが書いた芥川賞作品
「バリ山行」の一文 松永K三蔵著/講談社
バリ:一般的な登山道ではない「バリエーションルート」のこと
山行(さんこう):登山に行くこと
「バリ」に注目した理由 松永K三蔵の登山歴
白い陽射しの中、ストックをつきながら登山道を歩く。
繁る青葉の陰に入ると僅かに涼しさを感じた。
山には既に蝉が鳴き頻(しき)っていた。
平日はハイカーの数は少なく、私は淡々と登山道を辿って歩いた。
山の陰に廻り込むと木立の中は暗く、どこか寂し気に感じられたが、
そんなことが今の自分の気分には合っていた。
何が変わったのか。山は変わらない。
すると変わったのは自分自身で、自分を取り巻く状況だった。
社長はいつも角氏に連れられて外出して社内のおらず、
服部課長は苛々しながらアーヴィンの事務所に張り付いていた。
いつの間にか常務が座っていた席に移った
植村部長は一日中PC画面を覗き込んでいる。
会社勤めの経験から描いたもの
ベテラン社員 妻鹿(めが)の人物像
「会社がどうなるかとかさ、そういう恐怖とか不安感ってさ、
自分で作りだしているもんだよ。それが増殖して伝染するんだよ。
今、会社でもみんな ちょっとおかしくなっているでしょ。
でも、それは予測だし、イメージって言うか、不安感の、
感でさ、それは本物じゃないんだよ。まぼろしだよ。」
実は幻の「不安感」 危機に接することで得るもの
「カメオ」松永K三蔵著/講談社
会社から理不尽な命令に憤る主人公を描いた松永K三蔵のデビュー作
仕事に翻弄される姿
・山岳小説の最高峰
「孤高の人(下)」新田次郎著/新潮文庫
昭和初期の登山家 加藤文太郎を描いた山岳小説の金字塔
・女性が登る理由
「山女日記」湊かなえ著/幻冬舎文庫
菊地朱雅子(すがこ)幻冬舎担当編集者
「山女日記」執筆のきっかけ
当時菊地さんも登山を始めたばかりだった
山へ行きたいから始まった小説
登山時の湊かなえ 風景を焼き付ける特殊場能力を持っているのでは❓
「山女日記」の一文 湊かなえ著/幻冬舎文庫
眼下に広がる雪渓は大きい。ここを歩いてきたのか、と見入ってしまう。
雪の白、空の青、山の緑。原色の絵の具を水で薄めずに
カンバスに塗り付けたような、夏のコントラストが美しい。
数ある湊作品 「山」の小説ならではの魅力
励ましの言葉をストレートに書いている作品だと思う。
・山で暮す人
①
山へお引越し
山暮らしのきっかけ
「今夜はジビエ」の一文 小川糸/幻冬舎文庫
雪の結晶12月28日
夜、酔った勢いで防寒して外に出て、星を見た。
すごいすごいすごい、天然のプラネタリウム。
車なんか来ないのでそのままゴロンと道に寝っ転がり、
雪の上に大の字に手足を広げて星を見る。
最高に幸せな時間だった。
山暮らしの魅力 山暮らしの「不便」 山暮らしの「恩恵」
②
鎌倉の山
「ツバキ文具店」の一文 小川糸著/幻冬舎文庫
「今日は、お天気がいいから、ガーデンにしません?」
バーバラ夫人が提案した。(中略)
ガーデンは、紀ノ国屋の角を曲がったところの、スターバックスの
手前にある。この季節、向こうに広がるのんびりとした
山の景色を眺めながら、外のテラス席で食べるのが気持ちよかった。
鎌倉が舞台の小説で山を描く理由
「ツバキ文具店」の一文 小川糸著/幻冬舎文庫
海はエネルギーが強いから、そこにいるだけで身体が重たくなる。
ハイキング自体はなかなか気持ちのよいものだった。
私の後ろを歩くパンティーが大声で歌うので、なんとなく
他の三人も小声で唱和する。どうやらパンティーは、
スピッツのファンらしい。大の大人がハイキングをしながら
歌ったりして、何やっているんだろう。頭ではそう思うものの
山道を歩きながら歌うのは、思いのほか爽快で病みつきになる。
パンティーの歌声に一抹の迷いもなかったのも、他のメンバーに
大きな勇気を与えたのかもしれない。下り坂になる度、少しずつ
汗が引いていく。濃厚な土の香りが、普段眠っている脳みその
どこかを激しく揺さぶっているのを感じた。途中から、やっぱり
この新年の行事に参加して良かったと思えるまでになっていた。
山が人の心情に与える影響
③
山で回復
「小鳥とリムジン」の一文 小川糸著/ポプラ社
「普通に生活してると、つい頭でっかちになって、情報を全て
頭で全て処理処しようとしてしまうから。でも、山に入ると、
どんどん自分がなくなっていくというか、体だけになっていくんだよね。
頭で考えようとせずに、体で感じることだけで生きる、みたいな。
そうやって自然の中に身を置いていると、ほんの一瞬だけど、
自分が無になって、周囲に溶けるんだ。その溶けてる状態が、
最高に気持ちよくて、やめられない」
(中略)
「ある日、僕は人里離れた静かな森の中で、一輪のユリの花と
出会ったんだ。そのユリは、人知れず、木陰でひっそりと
咲いていたんだけど。その姿が、ものすごく生命力に溢れていて、
魅力的で、まるで妖精みたいだった。僕はその姿を見て、
号泣しちゃったの。あんまりにも気高くて美しいから。
それで気付いたんだ。花屋さんで売られているユリの花は、
本来の姿ではないんだって。本来のユリの花は、こんなふうに、
大自然の中で人知れず咲くものなんだ、って。」
一輪のユリが表すもの
④
山のお仕事小説
「神去なあなあ日常」三浦しをん/徳間文庫
国田昌子 徳増書店担当編集者
林業を舞台にした小説を書いたきっかけ
執筆時の三浦しをん
「神去なあなあ日常」の一文 三浦しをん/徳間文庫
日射しはますますあったかい。気温が上がると、空気にいろんな
においが混じりはじめる。小川を流れる澄んだ水の甘さ。
いままさに土を押しのけようとする草の青さ。どこかで
枯れ枝を焼く焦げくささ。冬のあいだに山深い場所で死んだ
獣のかすかな腐臭。なにもかもがいっせいに動き始め、
新しい季節を迎えようとしている。
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